第零艦隊これくしょん初期型   作:朝比奈たいら

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第四章『七番艦の同類、一番艦の相棒』

 

深海棲艦による横須賀鎮守府襲撃の傷も癒え、更に鎮守府を騒がせた幽霊騒動が収まった頃。

重巡型艦娘である加古は自分の部屋でぐうたらとベッドに寝転がっていた。

あれから深海棲艦の二次攻撃が行なわれるわけでもなく、

幽霊騒動の際に提督が予想したスパイも発見されていない。

横須賀鎮守府は至って平和そのものである。

そうなると、兵器である加古はやる事が無いのであった。

 

正確に言えば、暇潰しの方法はいくらでもある。

駆逐艦の電は真面目に訓練に取り組んでいるし、

重巡仲間の青葉は何か面白い話はないかと日夜鎮守府内を駆けずり回っている。

つい昨日などは、武装を解き人間に混じって東京へ向かおうとしていた。

本人は日帰りのつもりらしかったが、一応第零艦隊は鎮守府に待機中であり

正式に休暇が出されたわけではない。

下手をすれば、脱走兵扱いされてもおかしくはない行為だ。

最も、もしそうなったところで

「艦娘は兵器であり人間ではないから脱走兵ではない」という言い訳も出来てしまうのだが。

他の艦娘達も、それぞれ思い思いに過ごしている。

 

人らしい生き方だとか役割だとか言っても、やはり加古の好きな事は寝る事である。

一体何故自分がこんなにも寝ぼすけなのかは自分でもよく分からない。

もしかしたら自分の元となった通常艦艇に由来するのかもしれないが、

だとしたら横須賀鎮守府への着任は五十分ではなく4ヶ月は寝坊したはずだ。

ならば、自分はおよそ後3ヶ月と29日と1390分は寝坊出来るのだろうか。

いや、既に生まれてから呉や横須賀着任後でかなりの寝坊をしているのだが。

 

何にせよ、戦いが無ければ加古は安心して寝ていられる。

どうせ何か問題が起きれば警報に叩き起こされるのだ。

寝られる内に寝ておくのも兵士のやる事であろう。

艦娘は兵士ではなく兵器であるが、細かい事は気にしない。

今の加古にとって、艦娘と人間の境界は曖昧なものになっていた。

 

「グッドモーニング、加古サン! 隣に提督が寝てたりしなくて良かったネー!

 もしそうなったら私は二人をブッコロしてたかもしれないヨ。

 そういうのをナイスボートっていうらしいけど、

 私はボートじゃなくてどう見てもバトルシップなんだけどネー!」

 

轟音と共に扉が開かれ、加古はベッドの上で大きく跳ねた。

叩き起こされるのが警報でなかったのは予想外だった。

むしろ警報の方がまだ静かである。

身体を起こして闖入者を見やると、

彼女は嫌な音を立てた扉を不思議そうに押したり引いたりしている。

まさか敵襲ではなく、仲間の攻撃で自分の部屋が損傷するとは思わなかった。

 

「金剛さん、とりあえずそれ以上扉を壊さないで下さい。

 で、何か用ですか?」

 

「提督に呼んで来てくれって頼まれたのヨ」

 

「提督に言われたんだったら、あたしの部屋に提督が居ない事ぐらい分かりません……?」

 

「何かね、急に他の艦隊から模擬戦の申し込みがあったらしいヨー。

 とりあえず手の空いている艦娘でデュエルするらしいワ。

 加古さんは間違いなく暇してるって提督が言ってたノ」

 

「一応寝るのに忙しいんだけど、まぁいいや。

 他の艦隊って、呉鎮守府とかからですか?」

 

金剛は、顎に人差し指を当てて思い出す素振りをする。

やっぱり西洋生まれはやたらオーバーアクションをするのだなぁと思った。

 

「それが、呉じゃないノ。

 この横須賀チンジュフの、第三艦隊なのヨ」

 

 

 

艦娘という兵器が実用化されると、彼女達が拠点とする鎮守府は大幅な改装がなされた。

多くの人間は人型艦船などという怪しい兵器を当てにしたくはなかったが、

実際深海棲艦に対抗するには艦娘の能力が必要不可欠だったのである。

そんなわけで、この横須賀鎮守府にも艦娘用の設備が次々と配置されていた。

幽霊騒動の場となった修理ドックも、艦娘用に新設されたものである。

 

第二次大戦中に比べ、鎮守府はその姿を大きく変えている。

この横須賀鎮守府には通常艦艇が係留される区画と、艦娘を主戦力とする第零艦隊の区画。

そして第三艦隊の区画が存在した。

今までの加古の行動範囲は、第零艦隊が実質占有している区画である。

なので今まで第三艦隊の艦娘には会った事が無かった。

 

鎮守府襲撃の際には、第三艦隊は第零艦隊とは別の区画で戦っている。

第零艦隊は利根やその他数名の負傷者を出したが、

第三艦隊はほぼ無傷で残りの敵を討ち取っていた。

比率で言えば第零艦隊と交戦した敵は全体の70%近い数であったものの、

第三艦隊に所属する艦娘は第零艦隊よりも少ない。

にもかかわらず損害を出さなかったというのは、

第三艦隊の指揮官や艦娘が優れていたからであろう。

そんな第三艦隊の艦娘と、加古達は模擬戦を行なう事となったのだった。

 

「――迷った」

 

金剛と共に提督が待つ広場へと向かった加古。

そこには十数名の艦娘が集まっており、提督は彼女達の前で模擬戦の事を伝えた。

その後、加古は武装を施して集合場所である港に向かっていたのだが、

何せその場所は第零艦隊ではなく第三艦隊の区画である。

同じ鎮守府であるが、来た事の無い場所なので加古は少々道に迷っていた。

 

集合時間はそろそろである。

ただでさえ寝坊の常習犯であるのに、

この上道に迷いましたでは皆に何を言われるか分かったものでない。

とりあえず急がねばと走り出した加古は、曲がり角から現れた人にぶつかってしまう。

電とぶつかった時の様に、金属を打ち鳴らす音が廊下に鳴り響いた。

 

(あいたた、まただよ。

いくら艦娘だからって、

人間サイズなんだから通常艦艇みたいにそうそう衝突しないだろうに)

 

ぶつかった相手が、大丈夫? と手を差し伸べてくる。

金属の音がしたという事は、彼女も艦娘なのだろう。

返事を返そうと、相手の顔を見る。

そして加古は驚いた顔をして固まった。

相手の艦娘が、自分とそっくりな顔をしていたからだ。

 

「おお! 何だ、加古型じゃん」

 

へそ出しのセーラー服にアホ毛。

自分とまったく同じ容姿をした相手の艦娘が言う。

彼女の台詞で、加古は初めて気がついた。

 

「えっと、もしかして、私と同じ型の……」

 

「そー、あたしは古鷹型重巡の加古……の、七番艦だよ」

 

艦娘は量産型の兵器である。

それ故同じ容姿、同じ性能をした艦娘が多く建造されていた。

第零艦隊所属の加古の正式名称は、古鷹型重巡洋艦加古十八番艦。

十八番目に作られた加古である。

この日本軍には、加古が十八人も居るのだった。

 

「初めて同型を見たよ! あたしは加古型の十八番艦。

 ええと……なんて呼べばいいかな?

 七番艦だから、姉さんとか」

 

「ややこしいからねー。

 普通にナナとかでいいんじゃない?」

 

「それだとあたしがジュウハチって名前になっちゃうよ。

 ナナだったらまだ名前っぽいけどさ」

 

「じゃあ、分かりやすく七号と十八号でいいよ。

 ……で、十八号は第零艦隊所属だよね。

 あたし、今からそこと模擬戦やりに行くんだけど――」

 

「あたしもだよ。ちょうどよかった」

 

偶然出会った加古型の二人は、

同類を見つけた喜びに笑みを浮かべつつ声をハモらせたのだった。

 

「集合場所には、どうやって行けばいいか知ってる?」

 

 

 

「……せめて誰かと一緒に行動するとか、遅刻を見越して早く動くとか出来ないのかお前は」

 

案の定遅刻した加古は、提督にもはや叱るのも面倒だと言わんばかりの表情をされる。

まだ模擬戦は始まっていない様子であったが、遅刻は遅刻だ。

一緒に来た加古七号も、第三艦隊の艦娘達に同様の顔を向けられている。

やはり加古型は皆似た者同士なのだろうかと、加古は苦笑した。

 

「――だから時間を守るってのは軍隊だけじゃなくて人として……

 おい、人の話を聞け妖怪へそ出し寝坊」

 

「はいはいはいはい! ちゃんと聞いてるから、スカート引っ張んないでぇ!」

 

説教を聞き流していた加古のスカートを、提督が引っ張る。

艦娘に人権があったならセクハラでとっ捕まる行為だ。

第零艦隊、及び第三艦隊の艦娘達がそれを見てひそひそと噂を始める。

特に金剛や電の表情の変わり様は誰の目にも明らかだった。

加古は提督に反撃するふりをして耳打ちをする。

 

(提督! そういう事すると、金剛さんとかに目ぇつけられるんだけど!

いくらショタコンを隠したいからって、あたしをカモフラージュに使わないでよ)

 

(何を言ってる、こうやって人の目に触れる場所でやらないと。

衆道なんて今時流行らないから、下手すればロリコンより評判が悪くなる)

 

(だったら金剛さんとか、明らかに提督が好きな人にやればいいじゃん)

 

(あいつらは……本気で迫ってくるからなぁ。

俺は完全な同性愛者じゃないけど、恋愛は好きじゃないのよ。

こうやって皆とわいわい騒ぐのは良いけど、マジもんの恋愛はドロドロになるから)

 

金剛や電を見るに、既に手遅れな気がしないでもないと加古は思っている。

何にせよ、関係無い自分が巻き込まれたのは迷惑だ。

提督が悪い人間だとは思わないが、恋愛が絡むとなると別である。

今のところ、加古はそういうのに大して興味は無い。

ましてやショタコンを隠す為に利用されるのは不本意だ。

 

「いよう、マイド!」

 

二人がじゃれ合っていると、一人の女性が現れて提督に向かって手を上げる。

艦娘ではなく、人間の女だ。

階級章を見る限り、中佐である。

大戦後、人材不足と男尊女卑撤廃運動により女性の軍人も増えていた。

それでも女性の左官はそうそう居ない。

きっとかなりの実力者なのだろうと、加古は思う。

その女性が近づいてくるのを見て、提督は不満気な顔をした。

 

「修子、久しぶり」

 

「言うほどではないんじゃない? 鎮守府襲撃の後始末で会ったし」

 

「そうだったっけ。事後処理で、援軍にも来なかった漁夫の利野郎には会ったけどな」

 

「だからそれはごめんって。でも、空母を沈めてそっちに敵機を回さないようにはしたよー」

 

皮肉を言う提督と、それに明るい顔で返す女中佐。

何やら親しげであるが、この女性は提督の知り合いなのだろうか。

加古は模擬戦のメンバーとして集められていた電に聞く。

 

「あの女の人は?」

 

「祖音修子中佐といって、第三艦隊の司令官です。

 こちらの提督とは同僚の戦友で、お互い駆逐艦の艦長だったみたいなのです。

 お二人は後に対深海棲艦艦隊の提督に抜擢されて、

 今では協力して横須賀鎮守府で艦娘艦隊を指揮しています。

 修子さんも、提督と同じくらい艦娘に理解のある方ですよ」

 

「マイドってのは?」

 

「提督の本名は米土平(まいどひとし)なのです。

 提督はあまり自分の名前を好きではないらしいのですけど」

 

今更ながら、加古は自分が提督の名字すら知らなかった事に気付く。

そういえば、着任の時も提督は自分の名を名乗らなかった。

自分の名が好きではないとしても、それはどうなのだろう。

加古と電の会話が聞こえたのか、提督は憮然とした顔をする。

 

「なぁ修子、俺は一応第零艦隊では『提督』の名で通ってるんだが」

 

「私だって、第三艦隊の提督だよ」

 

「うー、いいかげん改名届を出した方がいいのかな。

 米土平って、まるで米国領土みたいな名字で。

 せめて名字だけでも変更したいんだよなぁ、例えば山本とか植木とか」

 

「マイドってのも十分強そうに聞こえるけどねー。

 何か一人で無敵艦隊提督って感じするじゃん。

 まぁ、植木って名字でも良さそうだけど」

 

「いっその事、平(ひとし)の読みを変えてタイラってのもありかな。

 ウエキ・タイラとか宇宙すら救えそうな名前だろ。

 後は沖田とか古代とか。

 俺が中国系だったら、ウェンリーとかでも良かったな」

 

「何でもいいけどさー、模擬戦はー?」

 

第三艦隊の加古七号があくびをしながら声を上げる。

提督二人は今思い出したかの様な顔をしてから、各艦娘の編成に移った。

第零艦隊は真面目に訓練中だった連中や、

加古の様に暇を持て余している艦娘を中心に十数名を集めている。

戦艦長門を旗艦に、航空戦力として加賀。

砲撃戦の加古達重巡に、軽巡や駆逐艦の電水雷戦隊を組む事にした。

ちなみに青葉は暇人の一人であったが、

無断外出の罰により軽巡くぜがわの大砲手入れをさせられているのでこの場には居ない。

 

第三艦隊を見やると、あちらには《長門型戦艦陸奥》の他、

正規空母である《翔鶴》や《瑞鶴》の姿が見えた。

うらやましいなと、提督は思う。

あの正規空母二人は第零艦隊には配属されていないのだ。

第零艦隊には設計された艦娘の内ほとんどの型が存在するものの、

いくつかの艦種はまだ配備されていない。

古鷹型の加古にしても、第零艦隊への異動にこぎつけるまでそれなりに苦労したのだ。

 

「提督、第三艦隊の要はやはり翔鶴や瑞鶴だと思うか?」

 

「まぁ、あの二人が厄介な戦力なのは間違いないな。

 だけど、問題は全体の戦術と旗艦にもある。

 長門は水上打撃隊を連れて指揮系統を遠距離砲撃で潰してくれ」

 

「戦術、か。空母を中心として後退攻撃といったところだろうか。

 私も連合艦隊旗艦を務めた者であるのは誇りであるが、

 やはり戦艦としてはどうしても戦術や航空戦力に対抗意識を持ってしまうよ。

 艦隊戦というものは、大艦巨砲主義が勝敗を決するものだと思いたい」

 

「その考えを変えなきゃ、第一戦隊の旗艦はずっと赤城のままだぞ」

 

「ならさ、私が実力をつけるだけだ」

 

長門が微笑を浮かべながら言う。

それでもいい、と提督は思ったが口には出さなかった。

提督個人としても大艦巨砲主義者であり、航空機を軽視する傾向がある。

しかしそれが間違いであるのは前大戦が証明していた。

個人的な感情で長門を褒めるのは簡単だ。

だが、彼女が持つ間違った思想を認めてしまえば、長門は確実に死ぬであろう。

だから提督は長門に対して、

自分も心の中では賛同しているその考えが間違いであると言わねばならなかった。

 

第三艦隊が正規空母の二人を用意した以上、確実に航空機主体の戦法になるはずだ。

世界史上最大の戦艦《大和》が航空機の攻撃により撃沈されたように、

長門も第三艦隊の航空機により撃破されると提督は考える。

ならば、翔鶴と瑞鶴を早々に撃沈するしか勝つ道は無い。

この模擬戦は加古が横須賀鎮守府に着任した時と同様、

お互いが目視で相手を発見したと仮定した戦いとなる。

ならば、開幕に長門の砲撃で空母を沈める事だって出来るはずだと。

 

「作戦はこうだ。まず長門の他、戦艦や重巡が一斉射撃。

 その後全速で前進して距離を詰める。

 相手は空母を守りながら後退するだろうから、

 航空機を加賀と赤城……ああ、赤城は入渠中だったな」

 

正規空母の赤城は先日提督に修復材をぶっかけられて復活したはずだったが、

つい昨日再び負傷してドック入りしていた。

その原因は戦闘での傷ではなく、

基地隊員が野球をしていた時に打ち上げた球が赤城の脳天に直撃した為である。

野球のボールなぞ、砲弾を撃ち合う艦娘にとって大した損傷にならないはずなのだが、

赤城は直上から飛来したボールに酷く精神的なショックを受けたらしい。

身体に異常は無いものの、メンタルケアを考えて休息中であった。

 

「えー、じゃあ、加賀の航空機が敵機を牽制する。

 他は前進して加速をつけつつ雷撃を行い、陣形を崩した後に近距離での砲雷撃に持ち込む」

 

「異論ナッシング!」

 

「私達駆逐艦は全速で前進した方がいいのでしょうか。

 それとも、他の方と足並みを?」

 

「電達駆逐と軽巡艦隊は……そうだな、足並みは揃えてくれ。

 どうせ修子の野郎は小細工を使ってくるだろうから、出来るだけ孤立は避けたい」

 

「了解なのです」

 

「よし、全艦配置に着いてくれ」

 

作戦が決まると、両艦隊は指定位置に着く。

人間である提督二人は港の縁に立ち、戦場を見守った。

審判である第零艦隊の戦艦霧島が開始の笛を吹く。

第零艦隊はすぐさま、第三艦隊に向けて一斉に砲撃した。

遠距離といっても、目視出来る距離である。

戦艦や重巡の砲は十分射程範囲内だ。

 

放たれた砲弾が第三艦隊の艦娘達へ降りかかる。

何発かの命中弾を出し、一人が撃沈判定を受けた。

他にも損傷を負った者も居るらしい。

第零艦隊は即時前進に移る。

陣形は空母の加賀を後方、戦艦の長門を先頭とした鋒矢(矢印型)だ。

本来は旗艦を後方につける陣形であるが、長門の装甲を鑑みての配置である。

長門がやられた場合は、加賀に指揮権が移行する様になっていた。

 

「艦隊! この長門に続け!」

 

第零艦隊が砲撃を行いつつ突進する。

それに対し、第三艦隊は横一列の単横陣で迎え撃った。

その陣形に、提督は違和感を感じる。

この状況で、単横陣は防備に適した陣形とは言いがたい。

陸戦の様に塹壕があるわけでもなければ、後方に援軍が居るわけでもない。

海の上だから高所を取れたわけでもない。

隣の祖音修子を見やると、彼女は得意気な笑みを隠さずにいた。

 

「あれじゃあ魚雷に当たって陣形が崩れて、各個撃破されるぞ。

 空母すら後ろに下げてないじゃないか。

 単横陣が防戦向けの陣形だと言っても、この状況じゃあ」

 

「誰が防戦してるって」

 

修子が笑ったまま返す。

提督は十秒ほど考え込んでいたが、その言葉が意味するところに気付いた。

電流が走ったかの様に顔を勢いよく上げ、第零艦隊の艦娘達に大声を挙げる。

 

「止まれぇ! そいつは単横陣じゃあなぁーいッ!」

 

遠くで提督で何かを叫んでいる。

第零艦隊の面々がそれに気付いた時には手遅れであった。

よく見れば、第三艦隊の艦娘は端に近づくほど大きく見えている。

その陣形が単横陣ではなく、鶴翼(V字)の陣だと真っ先に気付いたのは加賀だった。

 

「止まって、罠です!」

 

「何だと?」

 

長門が後ろの加賀を見やった瞬間、第三艦隊が一斉に砲雷撃を返してくる。

密集しての突撃を行なっていた第零艦隊は砲弾と魚雷を受け、次々と脱落していった。

長門自身も魚雷を受け、撃沈判定が出される。

それだけではない。

最も後方に居たはずの加賀にも、攻撃は届いていた。

指揮官を失った第零艦隊は混乱する。

 

「何で後方に居た加賀さんにまで――!」

 

「加古さん、敵の陣形は横陣ではなく、鶴翼です!

 第三艦隊は、私達をX字に捉えて十字砲火をかけてきたのです」

 

何とか攻撃をやり過ごした加古と電。

しかし第零艦隊の数は半数に減少していた。

そしてなお、その十字砲火により攻撃を受け続けている。

このままでは近づく前に全滅してしまうであろう。

 

これは俺のミスだ、と提督は撃沈されてゆく可愛い部下を見ながら悔やんでいた。

第三艦隊が空母を中心に輪形陣を取り、航空機中心の迎撃を行なうと思い込んでいた。

それくらい裏をかかれると予想出来なかったのか。

第一に、第三艦隊は第零艦隊と同じく初期の頃から活躍し続けている艦娘艦隊である。

修子が単なる単横陣での迎撃などするはずがない。

彼女の戦術眼を読み切れなかった自分の失態だと、提督は顔を自分への怒りに歪める。

 

「指揮は電が引き継ぎます。

 各艦は単縦陣を組み、左翼より突入!」

 

「そうか、あっちも指揮官の空母を叩かれれば――」

 

少なくとも今よりはマシになる、と加古が言おうとした時だった。

第三艦隊の方が先に単縦陣を組み、第零艦隊の側面に回りこみ始めている。

その先頭を走る艦娘を見て、加古は混乱に思考を停止させてしまう。

第三艦隊によるT字陣形が完成され、先頭の艦娘は声を張り上げた。

 

「撃ち方!」

 

攻撃を受け、第零艦隊は壊滅する。

電も必死にかわし続けていたが、さすがにこの戦力差は覆せなかった。

戦闘が終わった後、第三艦隊の先頭を切っていた旗艦が加古に近づいてくる。

彼女は得意気な顔をして、加古の胸を主砲で叩いたのだった。

 

「誰が指揮官だって? 十八号」

 

こうして第零艦隊、長門艦隊は第三艦隊の加古七号艦隊に撃破された。

第三艦隊の損害は二隻撃沈、数名の小破である。

艦娘自体の性能差がこの結果を招いたのではない事は、誰の目にも明らかだった。

提督は口をへの字に曲げて修子を見やる。

彼女はくつくつと笑うと、提督の肩を叩いた。

 

「戦場全体の大局ばかり見てるから、小規模で単純な戦術に負けるんだよ」

 

「……俺が戦術家として大した腕じゃないのは分かってるつもりだった。

 まさかこれほどとは思わなかったけどな」

 

「じゃあ、練習するしかないね。さ、次の試合やろ」

 

「なぁ修子。何度も弱い者いじめをして楽しかないだろ。

 何で急に模擬戦やるなんて言い始めたんだ」

 

「んー、何かさ。そろそろ大規模な作戦とか始まりそうな気がするんだよね。

 例えば、私達両艦隊を使った進攻作戦とかさ」

 

「イイ頭してるお前が言うなら、そうなるんだろうよ」

 

その後、第零艦隊と第三艦隊は何度か模擬戦を続けたが、

結果は全て第三艦隊の勝利に終わった。

模擬戦が終わり、提督が司令室へ戻った時。

横須賀鎮守府司令から、

東南アジアに棲息する深海棲艦に対する掃討作戦を行なえとの書類が届いていたのであった。

 

 

 

ベトナムの東、南シナ海に存在する諸島に、第零艦隊と第三艦隊は居た。

第零艦隊は主力である第一分艦隊、空母機動部隊である第二分艦隊の第一航空戦隊、

遊撃部隊である第三分艦隊の第三戦隊、

機動遊撃艦隊である第四分艦隊の第二水雷戦隊を今回の作戦に投入していた。

その他は横須賀鎮守府で留守番である。

日本本土防衛の必要があるにもかかわらず、

これだけの数を投入出来た今回の作戦はだいぶ大掛かりなものである。

 

日本帝国としては、東南アジアの制海権確保は重要なものであった。

それは資源を生み出す為というよりも、政治的な意味合いが強い。

第二次大戦後、植民地政策は世界的に批判され、各国の植民地は次々と独立していった。

日本が進出した東南アジアも、既に多くの国が日本の手を離れて独立している。

日本の資源産出地域の占領が不可能となった今、

東南アジアとは国交を結び貿易によって資源を獲得せねばならない。

アメリカを始めとした連合国とは終戦を迎えているものの、

地理的に日本にとって東南アジアは重要な位置にあった。

 

それだけでなく、植民地政策が批判された事により

各国は植民地に対して独立を支援し友好関係を結ばざるを得なかったのだ。

だから正式には日本領土であっても独立を求めた朝鮮半島や台湾の独立も認めている。

朝鮮半島は大韓帝国として、台湾は台湾共和国として独立が完了していた。

両国は元日本領土であった為、比較的友好な関係を築けている。

もし戦争中に深海棲艦が現れず第二次大戦が続いていたのなら、

日本は敗戦国となりこの二つの国家もただでは済まなかっただろうなと祖音修子は語っている。

その話を彼女との食事の席で聞いた提督も、彼女の予想は正解だなと考えていた。

 

「今回の目的は南シナ海の制海権確保と、

 諸島にある深海棲艦基地に対する砲撃なんだよね?」

 

軽巡洋艦くぜがわに乗艦していた加古が提督に聞く。

燃料の浪費を防ぐ為、多くの艦娘達は自力で航行せずにくぜがわに乗っていた。

燃費の良い駆逐艦達はくぜがわを中心に輪形陣を取り、偵察と周辺警戒を行なっている。

質問を受けた提督は地図を開き、艦娘達に見せた。

 

「この辺りは2キロから10キロくらいの島が点々とあるからな。

 そこが深海棲艦の基地となっているらしい。

 艦隊を叩いて制海権を取り戻し、東南アジアとの輸送ルートを確保する。

 もちろん東南アジア各国とは話をつけてあるから大丈夫だ。

 基地を砲撃して深海棲艦を掃討したら、後は上陸した陸戦隊が島を制圧する。

 ただ、小銃を持った兵は囮くらいにしかならんし、

 戦車や対戦車砲じゃあ深海棲艦を仕留めるのは難しい。

 艦隊戦と沿岸砲撃の時点で勝負を決する必要がある」

 

「Hai、提督。敵の数とかは分からなイ?」

 

「少なくとも、鎮守府を襲った229艦隊よりは少ないと見積もってる。

 でも正確には分からんな。

 あいつらどこからでも涌いて出るから、もしかしたらそれより多いかもしれん。

 第三艦隊も居るが、油断はしないようにな」

 

それから第零艦隊は利根と第二分隊第一航空戦隊が偵察機を飛ばし、

諸島の敵戦力確認を行なう。

利根が所持しているのは《零式水上偵察機》という水上機である。

水上機は水面に浮かび滑走する事が出来る飛行機で、

飛行甲板の無い巡洋艦でも運用する事が可能な艦載機だった。

対して第二分隊の旗艦、正規空母《蒼龍》には《彩雲》という艦上偵察機が配備されている。

彩雲は水上機ではないので空母でしか運用出来ないものの、

その性能は零式水偵を遥かに上回っていた。

 

各艦から発進した偵察機は、周辺の索敵及び諸島の偵察に向かう。

もうしばらく進めば、艦隊は諸島を捉えられる距離に着く。

その前にどの程度の深海棲艦がおり、島々がどの様な状況にあるかを知る必要がある。

しばらくすると、彩雲から通信が入った。

正規空母蒼龍は、身体に備え付けられた通信機で無線を受信する。

 

「こちら彩雲四番機、ツリー島は深海棲艦の泊地として要塞化されている模様。

 敵艦の数は戦艦2、重巡8、軽巡4、駆逐艦12、軽空母2を確認。

 なお、敵軽空母による艦載機の攻撃を受けるもこれを振り切りました。

 我ニ追イツク敵影無シ、です」

 

「……との事です、提督」

 

「ふむ。蒼龍、彩雲隊を再度敵泊地に向かわせてくれ。

 その時、彩雲は島の南東方面に敵艦隊をおびき出すように。

 俺達はこのまま北東から進撃して、泊地を砲撃する。

 その上で敵艦が戻ってくるようだったら、迎撃」

 

「しかしそれでは敵艦に逃げられた場合、戦線を縮小されますが」

 

「もしそれで艦隊決戦が起これば、うちの戦艦隊が勝つさ。

 ……第三艦隊も、それでいいな!」

 

「ねぇマイド少佐、今回の作戦の指揮権が誰にあるか知ってる?」

 

「ぐ……以上の作戦を具申致します、中佐殿……!」

 

「まー悪い案じゃないからね。それでいいよ」

 

「だったら最初から納得しろ!」

 

提督の作戦通り、第零艦隊と第三艦隊は北東から進攻を開始した。

陣形はお互い空母を中心とした輪形陣である。

蒼龍の彩雲が敵艦隊を島から引き剥がす事に成功したとの報告を受けた両艦隊は、

速度を上げて最も北東にあるツリー島へ向かった。

先行した利根の零式水偵が、再度ツリー島の要塞を確認する。

 

「ツリー島は艦船の停泊地及び、沿岸が砲台によって武装されているそうじゃ。

 深海棲艦の姿は見えないが、砲台は自立駆動であろう。

 艦隊が帰ってくる前に破壊せんとな」

 

「よし、第零艦隊各艦載機は発艦開始。

 戦艦隊の砲撃が終わり次第、航空爆撃に入る。

 爆撃終了後は、後方に待機している通常艦艇の陸戦隊が突入。

 島の防衛に移り、敵艦が引き返してくるようだったら迎撃する」

 

「了解。一航戦赤城、全機爆装にて艦載機発進!」

 

提督の指揮により、各空母の艦載機がツリー島に向けて発進する。

次いで、島を射程に捉えた長門戦艦隊が主砲を一斉射。

砲弾は敵泊地に着弾し、砲台を吹き飛ばしてゆく。

対空砲にも被害を受けた敵要塞は、赤城達の航空部隊によって更なる爆撃を受けた。

土がめくれ上がり、木々が吹き飛ぶ。

本来ならこんな手段は誰もが使いたく無いが、命と引き換えには出来ない。

遠距離砲撃と爆撃によって、要塞はほぼ無力化した。

 

さすがに、と加古は思う。

第零艦隊主力、第一分艦隊の威力は伊達ではない。

彼女達だけでもこの諸島は奪還出来るのではないかとすら思える。

これは負けていられないと、気合を入れた。

第三艦隊も居るこの戦いでは、下手すれば足手まといになりかねない。

 

砲撃後、戦艦隊を先頭に第零艦隊は南回りに沿岸へ突入する。

第三艦隊は北側からだ。

ツリー島南側の砲台はほとんど破壊されていたが、まだいくつかは生きている。

戦艦を温存する為、加古達第三戦隊が残りの砲台を掃討した。

深海棲艦の砲台とは、空中に浮遊する球形の物体である。

《浮遊要塞》と呼ばれるその物体は、時には艦載機、時には砲を用いて

主に拠点防衛や艦隊護衛用兵器として配備されていた。

 

数の減った砲台は利根を旗艦とする加古達第三戦隊に駆逐される。

第三艦隊も北側の沿岸砲を破壊し、島の南側にて両艦隊が合流した。

後方で待機していた陸戦隊の人間達が、島に突入する。

彼らの仕事は島全体を制圧する事。

深海棲艦や浮遊要塞がまだ陸地に残っている可能性もある。

それらを掃討し、ツリー島を臨時の基地とするのだ。

 

陸戦隊が上陸してしばらく。

蒼龍の彩雲に釣られた深海棲艦隊が引き返してくる

その数は、先程の報告よりも多い。

深海棲艦にもどうやら無線の類があるらしく、

ツリー島が攻撃を受けたのは伝わっていたのであろう。

深海棲艦隊は他の島々から援軍を連れて、ツリー島を奪還しに来たのだった。

敵空母から発進した航空機が、第零艦隊及び第三艦隊へと向かってくる。

 

「陸戦隊が砲撃される前に、敵艦隊を叩く。

 戦艦隊と第三戦隊は単横陣で迎撃、第一水雷戦隊は左翼、第二は右翼に梯形陣で展開。

 その陣形を保ちつつ前進し、敵をデスゾーンに捉えて十字砲火する。

 空母は沿岸にて待機、艦載機にて敵航空機を攻撃」

 

「それって私の猿真似?」

 

提督の言う戦法に、修子中佐の乗る駆逐艦《たつとも》から無線で茶々が入る。

 

「良いところは学ぶ!

 味方に敵意や対抗心をむき出しにしてたから、太平洋戦争では負けたんだ」

 

「いいんじゃないの、別に。

 私達は側面に回り込めって事でしょ」

 

話が早くて助かる、と提督は口には出さずとも修子に感謝した。

異論を唱えないという事は、戦法が間違っていないという事であろう。

今回の戦いは、自分にとっての試験になると提督は考えていた。

修子中佐を試験官に、自分の指揮官としての能力が試されるのだと。

少なくとも、提督は修子中佐に学ばなければならないほどには

戦術家としての才能を持ち合わせていなかった。

 

第三艦隊が敵艦隊の側面に回り込みつつ、

第零艦隊は修子中佐が模擬戦で使った鶴翼の陣形を以って前進する。

両翼が駆逐艦と軽巡洋艦で、魚雷によるX字攻撃を狙った陣形だ。

戦艦隊と重巡は正面からの撃ち合いを始める。

空中では、艦載機によるドッグファイトが繰り広げられていた。

 

正面からの殴り合いで、無傷で済むとは誰も思っていない。

第零艦隊も深海棲艦隊も、砲弾を受けて損傷する。

加古も至近弾を受け、右脚に破片が突き刺さった。

脚から脳天まで痛みが走り抜けるが、重巡にとってはこの程度の傷は小破扱いにもならない。

一瞬動きを鈍らせた加古を、利根が叱咤する。

 

「止まるな! 砲だけでなく機銃も使え、脅しくらいにはなる!」

 

利根はそう言って、敵艦を真正面に見据え砲撃を続けていた。

よくもそこまで頑張れるなと、加古は感心する。

彼女は鎮守府襲撃の際、命に関わる重傷を負っている。

にもかかわらず、今こうやって撃ち合いに参加している。

怖くならないのだろうかと、加古が疑問を持つのも無理はない。

 

だが利根にとって、そんな問題はとうに克服したものであった。

彼女も電がどうやって第零艦隊を初期から支え、

艦娘としての生き方を見出したのかを知っている。

電に感化されたのは加古一人だけではない。

ただ、利根の考えはまた違うものだ。

彼女は自分の生き方を、『我思う故に我あり』と考えていた。

これは考える事で自身を証明するというより、

自分が自分の主義に則って行動する事が自分の存在意義を決定すると利根は解釈していた。

 

人間は長い歴史を持ってしても、

我思う故に我ありなどという単純な事に気付くのに多くの時間を費やした。

艦娘の歴史は浅いが、所詮人間に作られた物体である。

利根が人間と同じくこの当たり前の考えを会得したとしても、

艦娘自体が優秀だという事にはならない。

だがそれは、艦娘が人間と変わらない心の持ち主だと言うに等しい理論に感じたのだ。

 

だから利根は戦っている。

深海棲艦が人間や艦娘に危害を加えるから。

艦娘が兵器として作られた存在だから。

そのどちらでもあり、どちらでもない。

利根が戦うのは、自分自身の『我思う故に我あり』に準じただけなのだ。

まぁそれには、彼女が読んだ一冊の小説に影響されての事もある。

その本を読んでから、ますます自分を「我輩」と呼ぶのが好きになった。

 

今は、利根が加古にそれを説明している暇は無い。

敵艦隊との距離はどんどん縮まっている。

そして第零艦隊の両翼が敵艦隊を雷撃の交叉位置に捉える。

電と天龍が身体の探照灯(サーチライト)で発光信号を送り合い、タイミングを計る。

両翼の水雷戦隊が一斉に魚雷を放った。

 

修子中佐が使った十字砲火、デスゾーン戦法は単純ながら優れた攻撃方法であった。

魚雷は敵艦隊に飛び込み、多数の深海棲艦を轟沈せしめる。

その隙を逃さず、第三艦隊が横から突入した。

深海棲艦隊は見る見るうちに数を減らし、壊走する。

数分後、敵艦隊の掃討が完了した第零艦隊は鬨の声を挙げていたのだった。

 

 

 

「や、十八号。戦果はどうだった?」

 

戦闘後、加古はツリー島に仮設された前線基地に居た。

基地といっても、敵が築いた要塞の跡地を再利用しただけのものである。

そこら辺のドラム缶に腰掛けながら人間達が右往左往するのを見ていると、

まったく無傷の加古七号が話しかけて来た。

もちろん今は作戦中であり、両者とも武装は解いていない。

人間達はたまに加古二人を見やり、あれが同型艦の艦娘かと噂する。

 

「ああ、七号。あたしはさ、全然だよ。

 長門さん達戦艦隊には到底敵わないし、重巡では利根分隊長や青葉、那智さんにも。

 駆逐艦や軽巡だって大活躍だったから、あたしなんかの出る幕は無かったよね。

 でも七号は、第三艦隊の旗艦として頑張ってる。

 さっきの側面からの突撃だって、七号が先陣切ってたでしょ」

 

いったいどこでこんなに差がついたのだろうと、加古が肩を落とす。

それを見て、一体何が残念なのかまったく理解出来ないという風に加古七号は返した。

 

「ねえ十八号。あたしが何で活躍出来るか知ってる?」

 

「そりゃあ、あたしと違って七号はお姉さんだし、経験豊富って事だからじゃないの?」

 

「それもあるけどね、あたしの身体は何度も近代化改修を重ねてるんだよ」

 

加古七号はそう言って自身の艤装を示す。

 

「死んだ艦娘の遺品や、余剰パーツを使ってね。

 だから十八号よりも性能は良くて当たり前なんだ。

 でも、十八号はあたしよりもずっと凄い事をやってる。

 建造されたばかりで経験も無く改修もされてない重巡が、

 敵のフラグシップを撃沈したってね。

 あたしだったら絶対出来なかった。

 十八号は、もっと自信を持って良いと思うよ」

 

それだけ言うと、加古七号は自分の部隊へと戻っていった。

重巡フラグシップを撃破したのは加古一人の功績ではなく、仲間達と一緒に戦った結果である。

加古一人だけが優れている事にはならない。

しかし、七号の言葉は少しばかりの勇気を加古に与えた。

自分でも何かが出来る。

自分でも役に立つ事が出来る。

まだ自分自身の生き方というものを完全に確立出来てはいない加古であるが、

こうやって仲間達を触れ合う事が自分を高めてくれるのだろうと、それだけは理解出来た。

加古はドラム缶から飛び降り、第三戦隊のもとへ向かう。

反省会が、まだだったからだ。

 

 

 

「――提督、彩雲が艦娘を一隻捉えたとの事です」

 

ツリー島沿岸に停泊したくぜがわの艦橋内で、蒼龍が報告する。

戦闘が終わったといえど、二次攻撃は警戒すべきだ。

報告を聞いた提督は怪訝そうな顔をする。

 

「艦娘が一隻? うちでも第三艦隊でもないとすると、呉鎮守府の艦隊か。

 でもそれにしては、一隻ってのは変だろ。

 偵察にしても無用心過ぎる」

 

「それが、損傷を負っている様子です。

 落伍した艦という可能性もあります。

 ……あっ、彩雲から報告。相手は発光信号を送っているようです」

 

「何て言ってる」

 

蒼龍は無線に耳を澄ませ、一度二度頷いてから言った。

 

「発光信号はワレフルタカ。我、古鷹、です」

 

 

 






~後書き~



プロットは一章を書き始めた時点で最後まで出来てるので、
後は9月の設定集発売までに完結を目標。
一週間に一章書ければ良いのだが。
進行状況や詳しい話は活動報告を見てもらえると助かります。

ちなみに、ゲーム内でのコメントはでたまか無責任艦長。
第一艦隊の名前は星界モーレツ銀英ヤマト隊です。
名前だけでもう負ける気がしない。

艦これで戦艦に興味を持った人は、
PS2、PC、PSPで『鋼鉄の咆哮』シリーズという
砲から煙突一本まで自由に艦船を作って無双するゲームがあるのでおすすめ。
無印からやってもいいですが、最新作であるPSPの
『ウォーシップガンナー2ポータブル』なら初心者でも分かりやすいんじゃないんでしょうか。
自分もPS2版無印を久しぶりにプレイして、
前部のみに15.5センチ砲三連装四基12門を装備した駆逐艦もちづき改やら、
25.4センチ砲三連装六基18門の軽巡てんりゅうやらでボコスカやってます。
さぁ、皆も鋼鉄の咆哮をやろう!(ダイレクトマーケティング)
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