ファイアーエムブレム Echoes ~大陸を翔る竜騎士~ 作:ユキユキさん
ーユキー
マルス王子一行と別れた俺は、アリティア城を目指しながらも目に付くグラ兵に攻撃を与え続ける。直ぐにアリティア城へと向かい、リーザ王妃とエリス王女の生存を確認することが一番なのかもしれないが、脱出を図るマルス王子が最優先になるのは当たり前である。
ぶっちゃけ脱出路を海と定めた俺は、船を確保する為に港へと寄ったわけで。そのせいでアリティア城が落ちているっぽい、遠目で見ても煙が立ち上っているし、空を飛ぶ竜が見える。思いの外…グラ軍の侵攻が早く優秀だったようだし、ドルーアからマムクートの増援があったみたい。…空を飛んでいるのは飛竜でありマムクート、イドゥンもそう言っているし間違いない。そう考えると…、リーザ王妃とエリス王女の生存は極めて低い。
そう考えるとマルス王子、この目で確認したのもあるが生きている。そして、アリティアからの脱出の為に行動をしている。これだけ言えば分かるだろう、彼等を追撃させぬように攻撃を仕掛けるのは必須事項である。生きているか分からぬ二人よりも、生きているマルス王子の為に行動をするのは間違っていないと愚考する。
港方面の敵は蹴散らしておいたが、こちらの方はまだ多い。故にこちらから港方面へ増援が行くとも限らない、マルス王子一行が安全に脱出出来るようにグラ兵を叩いておく。敵の視線を俺に向けさせ、港へ大軍を行かせぬようにする。彼等の生存率を少しでも上げること、欠けることもなく脱出させたい。マルス王子のカリスマ、経験豊富なジェイガン、忠誠心の高いフレイ、アベル、カイン等の忠臣達。俺が掻き乱して混乱させたグラ軍は、マルス王子一行を止められずに脱出を許すと読む。リーザ王妃とエリス王女が救えないかもしれない、その代わりと言ったらあれだがマルス王子の援護を。罪滅ぼし…? なのかは自分でも分からないが、やれるだけやらねば…。
くははははは! 数多くの兵を攻撃され、大打撃を受けるグラ軍ってところか? これぐらい痛め付ければ、仮に追撃へ出ても小隊程度になるだろう。マルス王子一行の安全を確信した俺は、グラ軍への攻撃を切り上げてアリティア城へと向かうのだが、その途中で目敏く見付けてしまうトラブル体質というべきか。それはいいとして…重装兵を中心に編成されている一部隊、その中心にいる偉そうな親父を発見する。グラ軍の指揮官ってところか? …ならば、彼に挨拶でもしていこうか。追撃部隊の可能性もあるし、もしそうであるのならマルス王子一行に危険が。まだ健在かもしれない、リーザ王妃とエリス王女には申し訳ない。直ぐに向かわない俺を許してくれ、その代わりに…マルス王子一行の安全は俺が確実に確保してみせる!
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ージオルー
メニディ川にて邪魔者であったコーネリアスを討つ為にグルニアのカミュと組んだのだが、討ちたかったコーネリアスはカミュの手により討ち取られた。…残念なことではあるが仕方がない、この勢いを殺さぬままワシはアリティアへ侵攻。疾風が如く進軍し、城に立て籠るリーザら王族の悉くを討つつもりであった。だが想像以上の抵抗に手を焼く、…アリティア軍の精強さは本物であった。それでも数の有利で攻め続け、遂にアリティア城を制圧することが出来た。しかし…マルスとかいう小僧がおらぬ! 聞けば既に脱出しているというではないか! …小僧を逃すわけにはいかぬ故、追撃の部隊を出せば新手が現れ蹴散らされたという。しかも港の部隊をも蹴散らされ、港と数隻の船を奪取された。…たった一騎、たった一騎の竜騎士にだ! なんと不甲斐なき部下達よ! その竜騎士とは何者なのか? マケドニアは友軍故にないとは思うのだがな…。
竜騎士のことはこの際置いておくとして、今はあの小僧だ! 思案の末にリーザとエリスを使い、小僧を誘い出す作戦を思い付き、今…まさに実行せんとした時、
「…この地は我が治める、貴様はグラへと帰れ。…人間臭くて不快である。」
ドルーアよりマムクートであるモーゼスが派遣されてきた。
…………!? 何故だ、何故こうも早く…! それにこのアリティアはワシが欲する地、それをドルーアは奪うというのか! 自然とモーゼスを見る目が厳しくなる、この化物風情が…! そんなワシの顔を見て、…モーゼスは邪悪に嗤い、
「元よりこの地は我らドルーアが、…我が治めると決まっていた。人間如きに、貴様如きにはくれてやらぬ…。それとも、我に逆らい奪ってみるか? もしそうなれば愉快よな、…貴様も、…貴様に従う虫が如き兵達も、貴様の国に住まうゴミ同様の家族も民達も、…このようになるのだからな!」
そのようなことを言って、投げ出してきたモノにワシは戦慄を覚えた。それは…、
「リーザ……!!」
アリティアの王妃であるリーザの首、…幽閉しておいた筈なのに! …その表情は恐怖に歪み、その瞳は虚空…。
「見せしめの為にな、…その身体を八つ裂きにしてくれたわ。今頃…城の中庭にて、烏の餌となっていよう…。もう一人の女はなかなかに美しい、ある程度楽しんだ後にでも…。クカカカカカ……!!」
牙を剥いて嗤うその顔は醜悪、ワシの目に再び映るはリーザの首…。
「…この城は、…この国はモーゼス殿にお任せする。…ワシは、…ワシは自国へ戻る!」
そう言う他…、なかった…! 踵を返し、王座の間を退室するワシに背後から…、
「それでいい、…それがお前達人間のあるべき姿だ! …ククククク、…クカカカカカッ!!」
おのれ…、おのれ…、おのれおのれおのれおのれぇぇぇぇぇっ!!!
逃げるように城外へと出たワシは、部下達に命じる。
「アリティア各地に派遣している全部隊へ知らせよ、これ以上の進軍・制圧は無用! 各部隊速やかに本国へと撤退せよ! …よいな、速やかに撤退だぞ! 従わぬ者は捨て置け…!!」
ワシ自身も速やかに親衛隊をまとめ上げ、撤退の準備を整える。最早…マルスの小僧を追撃する気もない、…している暇などないのだ。長居してリーザの二の舞はごめんだ、…あのような惨たらしい死など迎えてなるものか! …しかし、そんなワシの心情を嘲笑うかのように…、
「「「「「うわぁぁぁぁぁっ!?」」」」」
突如、撤退の準備をしていた兵達の悲鳴が上がった。
悲鳴の上がった方へ視線を向ければ、一騎の竜騎士が目に入る。ワシの目の前で、多くの兵達を蹴散らすその姿は報告にあった通りだ。…強い! 直感的にそう感じた、…この竜騎士と戦うのは得策ではない。あの竜騎士は、ドルーアのマムクート達、グルニアのカミュ、マケドニアのミシェイル、カダインのガーネフ、そして死んだコーネリアスと同等かそれ以上の化物だ。ワシでは太刀打ち出来ん、ましてやアリティア侵攻で疲弊している我が軍では…!
しかしあの竜騎士はこのワシを狙っている、そう…分かるのだ。絡み付く殺気に喉が渇く、先程のモーゼスより鋭利な敵意だ。…このアリティアは死地なのか? どうにも死が見え隠れする。アリティアは求めてはならん地なのだろうか? 分からん、分からんが…一刻も早く本国へと戻らねばならん、それだけは分かる。
…が、そんなワシの前に立ち塞がったのはあの竜騎士。…もうここまで辿り着いたというのか!
「…お前がグラ軍の指揮官か?」
上から見下ろされ、槍の穂先がワシを指す。動くことの出来ないワシではあるが、
「…そうだ! ワシこそがグラ国王のジオル、アリティアを裏切り滅ぼした男よ!」
そう簡単に引きはせぬ、ワシは王なのだからな! 怒鳴るようにそう言い放つワシに、
「…お前がグラ王、…アリティアを滅ぼした男か。何故こんな所にいるのか疑問ではあるが、…丁度いい。アリティアの王族、…リーザ王妃とエリス王女を解放しグラへと帰れ。さすれば、この場は見逃してやろう。…王としての誇りがあるのなら、この場に限り捨てるといい。少なくとも、…自国を想う心はあるのだろう?」
その竜騎士は、ワシの目を見詰めながらそう言ってきた。…この竜騎士は、…この男はこのワシを、…このワシを見逃すというのか!? アリティアを裏切り滅ぼしたこのワシを…!!
ワシの心中は荒れ狂っている。手中に治める筈のアリティアをドルーアに、…モーゼスに奪われた。そしてこのワシの命は、目の前の竜騎士に握られている。…これ程の屈辱を一日で! 王である誇りがこの屈辱を返せと訴えてくるが、それ以上に…自国にて待つ娘の顔が思い浮かぶ。荒れ狂う心の中に娘が思い浮かぶのだ、…何ということか。…自身の死を前にして思い浮かぶのが娘とは、……ぐぅ~…っ! お…おのれぇ~…っ!!
「…元より自国へ戻るところよ、アリティアのことは諦めたわ!」
吐き捨てるようにそう言った。竜騎士の男は一瞬驚き、先程までの敵意を弱めて…、
「ならば、リーザ王妃とエリス王女を解放しろ。…と言いたいが、出来ぬ事情があるのか?」
槍を向けながらもそう問い掛けてくる。故にワシは言ってやる。
「もうワシにはどうにも出来ん、…アリティアはドルーアに、…城はマムクートに奪われたわ! …リーザ、…貴様の言う王妃は無惨にも八つ裂きにされ殺された! 幽閉場所の塔から引き摺り出され、…見せしめの為と言って惨たらしくな! …その娘エリスはまだ生きているようだが、奴の口振りから察するに…長くはないだろう! 同じように惨たらしく、いや…それ以上に辱しめを受けてから殺されるだろう! …ワシ如きでは、…どうにも出来ぬわ!」
ドルーアのマムクートに王妃は殺され、王女もその命は風前の灯と竜騎士に言ってやった。
吐き捨てるように言ってやったワシは、目の前の竜騎士を睨み付ける。ワシの無念さをぶつけるように、…しかし竜騎士は動じずに、
「…嘘ではないようだ、…しかしそうか。リーザ王妃はそのように…、だがエリス王女は未だ健在。彼女だけは助け出さねばならぬ、…絶対に。…堕ちたマムクートには、…相応の報いをやらねばならない!」
ワシに向けていた槍を引き、その視線はアリティア城へ。ワシに向けていた視線とは違う、…何か異質さを含んでいるような。
「…グラ国王ジオルよ、…その身にいずれ裁きが降る。その時まで生き抜いていろ、…そして忠告だ。そのまま進むのもいいが、身内のことを考えてやれ。それが出来れば、腐っても王であったと俺は声高らかに称賛するだろう。」
アリティア城から視線を外さずに、ワシに対してそう言ってきた。ワシがした行いを否定もせずに、腐っても王であれ…と!? 罵倒であれば返せたものの、…これでは言い返せぬ。この男…、底が知れぬわ…!!
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ーユキー
グラ軍の指揮官を見付けたと思ったら国王だし、既にリーザ王妃は殺されてしまったらしいし、エリス王女も命の危機に瀕しているみたいだし、…俺の目的を完璧には果たせないと知った。まさか既に、ドルーアのマムクートがアリティア入りしているとはな。いや…この目で飛竜のマムクートは確認しているが、当事者の口から聞くと…ってヤツだ。リーザ王妃のことは無念である、…しかしながらエリス王女はまだ生きている。彼女だけでも助けたい、…マルス王子の為に!
イドゥンも怒っている、堕ちたマムクートに…! これは一撃を加えなければ、決して落ち着かない…ってヤツだな。一応情報をくれたジオルは見逃そう、本当なら…この場で討ち取らなければならないのだがね。名前を聞いて思い出したが、コイツには美人な娘さんがいる。名前は…忘れてしまったが、その美人さんの父親をここで討つのは…。とりあえず、美人な娘さんのことを考えろと言ってやったぜ。せめて…娘孝行でもしてやれ、…ジオルのおっさん。
…そういうことなんで、いざエリス王女救出の為にアリティア城へ! と思い、飛び立とうとする俺に対し…、
「エリス王女は城の北にある塔に幽閉されておる筈だ、…城の主であるモーゼスには気を付けることだな!」
どうにでもなれ! っていう感情の籠ったジオルからの情報、まさかこの俺に提供してくるとはな。ジオルはただの野心家ではないらしい、…律儀な野心家とでも言おうか。そんなことを思いながら、俺はアリティア城へと向かう。エリス王女救出を必ず成し遂げ、モーゼスとかいうマムクートを含めたドルーア勢。奴等にはキツいお灸を据えねばならない、イドゥンもそれを望んでいる。…というか自身でやっちゃうんだろうな、…城に着いたら自由にさせよう。まぁ…とにかく、俺もイドゥンも気合が入っている。さぁ…俺の槍とイドゥンの牙、ドルーアの羽虫達に受けて貰うとしよう!!
ふひー…。