ファイアーエムブレム Echoes ~大陸を翔る竜騎士~ 作:ユキユキさん
ーアルムー
僕は見惚れてしまった、じいちゃんの戦いぶりを、騎士達の戦いぶりを、そして…ユキの戦いぶりを。…じいちゃんが強いのは分かっていた、僕の師匠でもあるから当然だ。ユキが強いのも分かっている、たまに稽古をつけてくれるから。…あの騎士も、これ程強いとは思わなかった。じいちゃんぐらい強いかもしれない、…そんな人にあんなことをしてしまったのかと密かに恐怖した。だって、…ヘタをしたら殺されていたかもしれないんだよ?
…それはいいとして、この墓地での戦いは凄い。特にユキがいつもと違う、獰猛な笑みがいつものユキとは似ても似つかないのだから。そして何より目を引くのが、ユキと共に戦う黒い竜の存在。伝説上の生物である竜と共にあるユキ、…一体ユキは何者なのだろうか? 僕は勿論のこと、たぶんセリカもエフィ達も、僕達の中に知っている者はいない。ユキと竜はどういう存在なのか? …じいちゃんは知っているのかな?
それと戦う前に叫んだユキの言葉、…目に焼き付けろ。…言われなくてもそのつもりだった、…僕はまだまだ弱い。目の前で繰り広げられている戦いに、憧れと同時に恐怖を覚えて震えている。あの騎士だって強い、…そんな人に僕は! …僕は自惚れていたんだ、…それがはっきりと分かった。ユキの言葉、何かを守る為には強さが必要。そして何より、…心強くしていなければならない、…それが何となく分かった。
…竜のことが凄く気になるけど、今はこの戦いを目に焼き付けなきゃ。今の僕にはそれが必要なんだ、言葉では教えられない何かを感じること。この戦いで少しでもいいから学ぶんだ、そうしなくちゃ強くなれない。セリカを、エフィを、グレイ達を、村のみんなを守れない。守る為の力を僕は手に入れる、…今日この日から、この目の前の戦いを前に誓う! 僕は…、強くなる!!
一方的な戦いの中、山賊達は全滅した。じいちゃん達が勝ったんだ、数をものともしないで!
「…すげぇ! 山賊達をあっという間に倒した!」
「めちゃくちゃ強いじゃん、ユキ兄達!」
グレイとロビンが飛び出してきて喜んでいる、じいちゃんとユキはあの騎士と何かを話してから僕達の下へ。
「じいちゃん、ユキ。全員倒したんだね! …凄いよ、…凄すぎるよ!」
「「「………。」」」
僕もグレイ達と同じようにはしゃいでいたけど、…三人は黙ったままだ。どうしたんだろう? 嬉しくないのかな? グレイ達は未だにはしゃいでいるし、エフィも安堵の表情を浮かべて僕の隣にいる。セリカも無事だし、じいちゃん達も無傷。とても喜ばしいことだと思うんだけど、どうしたのかな?
「どうしたの? 元気ないね。山賊達から僕達と村を守ったんだよ! …嬉しくないの?」
守る為の戦い、それに勝って守ることが出来たんだよ? どうしてそんな顔をしているの?
僕が怪訝な顔をしていると、セリカが僕を見て…、
「違うの、アルム。そうじゃないの…。」
悲しい顔で小さく呟く。セリカ…、どうしてそんな顔をするの? そう思っていると、
「少年よ、このお方…セリカ嬢はやんごとなき存在である。万が一を考えて、彼女はこの村を出て行かねばならん。」
僕達の勘違いでヒドイ目に遭ってしまった騎士が、真っ直ぐに僕を見てそう言ってきた。
「……えっ? ど、どうして? 何でそうなるんだよ。…そんな、…嘘だよね?じいちゃん、…セリカ。」
騎士の言葉に動揺してしまう。聞こえていたんだろう、グレイ達も動きが止まり、エフィも僕の袖を掴んでくる。きっと浮かれている僕に、僕達を諌める為の嘘だよね? そんな望みを込めて、セリカに聞くも…、
「……ごめんね、アルム。約束、守れなくてごめんなさい…。彼の言う通りよ…。」
聞きたくない答えが返ってきた。
僕はセリカの答えを聞き、
「そんな…謝らないでよ、セリカ。まるで、本当にここから出ていくみたいじゃないか。」
僕は狼狽える、信じられないと。しかし…、
「さぁ、ぐずぐずしている暇はない。村へ戻り、支度を整えるのだ。…セリカ。」
「はい、おじい様…。」
じいちゃんとセリカはそう言って、村へと戻ろうとする。そんなこと…!
「待ってよ! 待ってったら!! ねぇ、じいちゃん。ちゃんと教えてよ!! 何でセリカが村を出ていかなきゃいけないの!? …ユキ、ユキからも何か言ってよ! セリカが…、セリカが…!!」
さっきから何も言わないユキ、ユキなら…きっと!
でも…、
「さて、…俺も準備をしなくては。スレイダー達も来い、手早くすませないとダメだからな。」
そんなことを言う、…何を言っているのさユキ! セリカが出ていこうとしているんだよ? 何でそう冷静に…、
「…俺達も出ていかなければ、荷物の整理とか色々とやるべきことがある。お前達にも渡す物が…。」
ユキの発言に僕は固まる、グレイ達も目を見開く。セリカも振り向く、泣きそうな顔で…、
「えっ…? 今、何て…?」
何が起きているの? セリカ だけではなくユキも? 何で…?
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ーセリカー
とても悲しいけどおじい様やスレイダーの言うように、私は村を出なくちゃいけない。これ以上みんなを、村を危険な目には遭わせられないから。遭遇したのがスレイダー達ではなかったら、間違いなくアルム達は…。これから先も、同じようなことが起きるかもしれない。私がいなければ、…ヒドイことにはそうならないと思う。だから私はこの村を出ていく、これはおじい様と決めていたことだから。みんなと会えなくなる、アルムと…ユキさんと。それはとても悲しいことだけど、仕方のないことなんだ…。
私が村から出ていっても、みんなはここにいる。そう考えれば、…我慢は出来る。遠く離れてしまってもラムの村を思い浮かべて、そこにアルム達がいると思えば…。短い間だったけど、それでも築き上げた絆は消えない、繋がり続けると信じて。私達はこの場所を通して繋がっている、そう思えばこの先も私…。
おじい様に促されて背を向けた、その時聞こえた言葉が、
「…俺達も出ていかなければ、荷物の整理とか色々とやるべきことがある。お前達にも渡す物が…。」
背中越しに聞こえた言葉に、私は動きを止めてしまう。…バラバラになってしまうのね? この村で繋がっていると思っていたのに、この繋がりが消えてしまうのね?
……ううん、違う。それでも消える筈がない、私達には…! 私は振り向き、ユキさんを見詰める。ユキさんは私の視線に気付き、笑みを浮かべて…、
「何、…今生の別れというわけではなかろう。俺達が運命という名の糸で繋がっているのなら、…いずれまみえることが出来よう。泣きそうな顔をするものではない、新たな門出故に…笑うといい。」
そう言った。…ユキさんの言葉が、…私の心に響いた。
…ユキさんの言う通りだ、これが最後ではない。始まりみたいなものなんだ、いつかきっとまた会える。そう信じて前へ進めば、見えない糸で繋がる私達は…! 悲しむよりも笑顔で、笑って旅立つ方がいいに決まっている。今日この日が思い出となって、また会う時に笑って懐かしむ。…悲しい思い出にするよりも、未来の為の思い出に。……うん、…元気が出てきた! ありがとう、…ユキさん。
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ーユキー
俺達も出ていく、俺は確かにそう言った。この村に要らぬ火種が燻らないように、アルム達を含めた村人達がいつも通り過ごせるように。火種になりかねないセリカは旅立ち、火種どころでは済まされない俺の存在もなくさなければならない。そして死んだことにし、それが村を救うことに繋がるスレイダーと共にな。いずれ旅立とうと思っていたし、丁度いい頃合いだろう。
アルム達は混乱していることだろう、いつも通りの日常が突然…なくなるのだから。生きていれば、今日の出来事以上の理不尽を感じる日が来るだろう。これもまた日常の…、思い出の一コマとして処理出来ればいいが。何だかんだでアルム達は強いから、まぁ大丈夫であろうと俺は割りきるけどね。冷たいと思うかもしれないが、これも村の為。村の平和の為には仕方のないことなのだ、…俺はこのまま村を去る。
竜を操る騎士なんざ、このバレンシア大陸には存在しない。俺は確実に火種どころか、…厄災と言った方がいいかもしれん。俺の存在は争いの素になる、…戦乱の世になるのは早すぎるからな。これは自惚れではない、…竜という存在はそういうものなのだ。真なる俺を口止めにしても不安が残る、アルム達は子供故にポロリ…なんてことがあるかもしれない。だが口止めをして俺が旅立てば? 共にいるよりも、そちらの方がポロリ…という状況になりにくいと思われる。少しでも可能性の低いものを選ぶのは常識、…そうだろう?
そしてスレイダーはツイてない、この一言で全てを語れる。死んだことにされるのが、ツイてないの一言でいいのかはどうでもいい。俺と幼なじみであることが悪いのだ、そのせいで実力が高くて人望があって、権力者にとっては邪魔でしかない男。スレイダー自身、この国の腐りっぷりに愛想を尽かしていたから、彼自身にとっても渡りに舟であろう。奴のにこやかな顔がそれを語っている、分かりやすい奴だ。
スレイダーの部下である三人、名前は…え~と。エンリケ、ラムザ、グスタフ…だったな。コイツらも災難ではあるがスレイダー曰く、『クレーベを頼れば、今以上の環境となろう!』とのこと。再就職先? を示すなんて、相変わらず優しいか男だよな。まぁ俺も知らぬ仲でもない為に、彼らには餞別を贈るけれど。この三人はスレイダーよりも世渡りは上手いから、さほど心配はしない。
…とにかくここでグダグダしていても、ただイタズラに時間が過ぎるだけ。大陸を渡る予定の俺には時間がない、そういうわけで俺は、
「俺達は大陸を渡らなければならない、…数年は会うこともないだろう。」
そう言ってアルムとセリカ、グレイ達に笑いかける。そして…、
「今日この日から離れ離れになるわけだが、まぁ…どうってことはないだろう。お前達がどう思っているかは分からんけど、別々の道を歩んでも繋がってはいる。まぁ不安に思ったり、何かしらがあるかもしれないが大丈夫だ。俺とは違いお前達はまだ幼い、…これも経験さね。」
そう言ってから、懐より数回のお守りを取り出しそれぞれに投げ渡す。
「ほら、これをやるから。…俺の相棒の鱗で作ったヤツ、お守りってところだ。効果の程は知らんが、気休めにはなるんじゃないか?」
子供っていうのはこういう物に弱いんだろ? …思い出の品ってヤツだ。
渡し終えた俺は速やかにイドゥンへ騎乗、
「お前達、そこそこの時間…世話になったな! …色々あるかもしれんが頑張れよ、お前達の成長を期待しているぜ。」
そう言いながら、少しずつ空へと上がっていく。
「これから先…、再会することがないっていうのが一番なんだが、神のみぞ知るってところか?」
ニヤリと笑って…、
「じゃあな、お前達! …忙しない俺を許せ、そしてまた会おう! とでも言っておくか。とにかく頑張れよ? …因みにスレイダー達はあの場所に来い、…いいな? ……改めて、…あばよ!」
とか言って、この場を去る俺ってば忙しない。
…アルム達には悪いことをしたな、何が何やら分からなくなっているだろう。まぁ思い立ったら吉日というし、惜しめば別れづらくなるかもしれんしな。気の利いた言葉も言えず、物で釣った感があるけど良い思い出になるだろう、…なればいいな。
今頃スレイダー達も俺ん家、隠れ家へ向けて馬を走らせていることだろう。……今思ったんだが、スレイダーの愛馬…どうしよう? なぁイドゥン、…運べる?
途中でわけが分からなくなるって普通ですよね?
うん、…きっと普通だ。