ファイアーエムブレム Echoes ~大陸を翔る竜騎士~   作:ユキユキさん

5 / 13
最近は涼しく、眠気との戦いが激化中。


第4話 ~俺、村を去る

ーアルムー

 

僕は見惚れてしまった、じいちゃんの戦いぶりを、騎士達の戦いぶりを、そして…ユキの戦いぶりを。…じいちゃんが強いのは分かっていた、僕の師匠でもあるから当然だ。ユキが強いのも分かっている、たまに稽古をつけてくれるから。…あの騎士も、これ程強いとは思わなかった。じいちゃんぐらい強いかもしれない、…そんな人にあんなことをしてしまったのかと密かに恐怖した。だって、…ヘタをしたら殺されていたかもしれないんだよ?

 

…それはいいとして、この墓地での戦いは凄い。特にユキがいつもと違う、獰猛な笑みがいつものユキとは似ても似つかないのだから。そして何より目を引くのが、ユキと共に戦う黒い竜の存在。伝説上の生物である竜と共にあるユキ、…一体ユキは何者なのだろうか? 僕は勿論のこと、たぶんセリカもエフィ達も、僕達の中に知っている者はいない。ユキと竜はどういう存在なのか? …じいちゃんは知っているのかな?

 

それと戦う前に叫んだユキの言葉、…目に焼き付けろ。…言われなくてもそのつもりだった、…僕はまだまだ弱い。目の前で繰り広げられている戦いに、憧れと同時に恐怖を覚えて震えている。あの騎士だって強い、…そんな人に僕は! …僕は自惚れていたんだ、…それがはっきりと分かった。ユキの言葉、何かを守る為には強さが必要。そして何より、…心強くしていなければならない、…それが何となく分かった。

 

…竜のことが凄く気になるけど、今はこの戦いを目に焼き付けなきゃ。今の僕にはそれが必要なんだ、言葉では教えられない何かを感じること。この戦いで少しでもいいから学ぶんだ、そうしなくちゃ強くなれない。セリカを、エフィを、グレイ達を、村のみんなを守れない。守る為の力を僕は手に入れる、…今日この日から、この目の前の戦いを前に誓う! 僕は…、強くなる!!

 

 

 

 

 

 

一方的な戦いの中、山賊達は全滅した。じいちゃん達が勝ったんだ、数をものともしないで!

 

「…すげぇ! 山賊達をあっという間に倒した!」

 

「めちゃくちゃ強いじゃん、ユキ兄達!」

 

グレイとロビンが飛び出してきて喜んでいる、じいちゃんとユキはあの騎士と何かを話してから僕達の下へ。

 

「じいちゃん、ユキ。全員倒したんだね! …凄いよ、…凄すぎるよ!」

 

「「「………。」」」

 

僕もグレイ達と同じようにはしゃいでいたけど、…三人は黙ったままだ。どうしたんだろう? 嬉しくないのかな? グレイ達は未だにはしゃいでいるし、エフィも安堵の表情を浮かべて僕の隣にいる。セリカも無事だし、じいちゃん達も無傷。とても喜ばしいことだと思うんだけど、どうしたのかな?

 

「どうしたの? 元気ないね。山賊達から僕達と村を守ったんだよ! …嬉しくないの?」

 

守る為の戦い、それに勝って守ることが出来たんだよ? どうしてそんな顔をしているの?

 

僕が怪訝な顔をしていると、セリカが僕を見て…、

 

「違うの、アルム。そうじゃないの…。」

 

悲しい顔で小さく呟く。セリカ…、どうしてそんな顔をするの? そう思っていると、

 

「少年よ、このお方…セリカ嬢はやんごとなき存在である。万が一を考えて、彼女はこの村を出て行かねばならん。」

 

僕達の勘違いでヒドイ目に遭ってしまった騎士が、真っ直ぐに僕を見てそう言ってきた。

 

「……えっ? ど、どうして? 何でそうなるんだよ。…そんな、…嘘だよね?じいちゃん、…セリカ。」

 

騎士の言葉に動揺してしまう。聞こえていたんだろう、グレイ達も動きが止まり、エフィも僕の袖を掴んでくる。きっと浮かれている僕に、僕達を諌める為の嘘だよね? そんな望みを込めて、セリカに聞くも…、

 

「……ごめんね、アルム。約束、守れなくてごめんなさい…。彼の言う通りよ…。」

 

聞きたくない答えが返ってきた。

 

僕はセリカの答えを聞き、

 

「そんな…謝らないでよ、セリカ。まるで、本当にここから出ていくみたいじゃないか。」

 

僕は狼狽える、信じられないと。しかし…、

 

「さぁ、ぐずぐずしている暇はない。村へ戻り、支度を整えるのだ。…セリカ。」

 

「はい、おじい様…。」

 

じいちゃんとセリカはそう言って、村へと戻ろうとする。そんなこと…!

 

「待ってよ! 待ってったら!! ねぇ、じいちゃん。ちゃんと教えてよ!! 何でセリカが村を出ていかなきゃいけないの!? …ユキ、ユキからも何か言ってよ! セリカが…、セリカが…!!」

 

さっきから何も言わないユキ、ユキなら…きっと!

 

でも…、

 

「さて、…俺も準備をしなくては。スレイダー達も来い、手早くすませないとダメだからな。」

 

そんなことを言う、…何を言っているのさユキ! セリカが出ていこうとしているんだよ? 何でそう冷静に…、

 

「…俺達も出ていかなければ、荷物の整理とか色々とやるべきことがある。お前達にも渡す物が…。」

 

ユキの発言に僕は固まる、グレイ達も目を見開く。セリカも振り向く、泣きそうな顔で…、

 

「えっ…? 今、何て…?」

 

何が起きているの? セリカ だけではなくユキも? 何で…?

 

────────────────────

 

ーセリカー

 

とても悲しいけどおじい様やスレイダーの言うように、私は村を出なくちゃいけない。これ以上みんなを、村を危険な目には遭わせられないから。遭遇したのがスレイダー達ではなかったら、間違いなくアルム達は…。これから先も、同じようなことが起きるかもしれない。私がいなければ、…ヒドイことにはそうならないと思う。だから私はこの村を出ていく、これはおじい様と決めていたことだから。みんなと会えなくなる、アルムと…ユキさんと。それはとても悲しいことだけど、仕方のないことなんだ…。

 

私が村から出ていっても、みんなはここにいる。そう考えれば、…我慢は出来る。遠く離れてしまってもラムの村を思い浮かべて、そこにアルム達がいると思えば…。短い間だったけど、それでも築き上げた絆は消えない、繋がり続けると信じて。私達はこの場所を通して繋がっている、そう思えばこの先も私…。

 

おじい様に促されて背を向けた、その時聞こえた言葉が、

 

「…俺達も出ていかなければ、荷物の整理とか色々とやるべきことがある。お前達にも渡す物が…。」

 

背中越しに聞こえた言葉に、私は動きを止めてしまう。…バラバラになってしまうのね? この村で繋がっていると思っていたのに、この繋がりが消えてしまうのね?

 

……ううん、違う。それでも消える筈がない、私達には…! 私は振り向き、ユキさんを見詰める。ユキさんは私の視線に気付き、笑みを浮かべて…、

 

「何、…今生の別れというわけではなかろう。俺達が運命という名の糸で繋がっているのなら、…いずれまみえることが出来よう。泣きそうな顔をするものではない、新たな門出故に…笑うといい。」

 

そう言った。…ユキさんの言葉が、…私の心に響いた。

 

…ユキさんの言う通りだ、これが最後ではない。始まりみたいなものなんだ、いつかきっとまた会える。そう信じて前へ進めば、見えない糸で繋がる私達は…! 悲しむよりも笑顔で、笑って旅立つ方がいいに決まっている。今日この日が思い出となって、また会う時に笑って懐かしむ。…悲しい思い出にするよりも、未来の為の思い出に。……うん、…元気が出てきた! ありがとう、…ユキさん。

 

────────────────────

 

ーユキー

 

俺達も出ていく、俺は確かにそう言った。この村に要らぬ火種が燻らないように、アルム達を含めた村人達がいつも通り過ごせるように。火種になりかねないセリカは旅立ち、火種どころでは済まされない俺の存在もなくさなければならない。そして死んだことにし、それが村を救うことに繋がるスレイダーと共にな。いずれ旅立とうと思っていたし、丁度いい頃合いだろう。

 

アルム達は混乱していることだろう、いつも通りの日常が突然…なくなるのだから。生きていれば、今日の出来事以上の理不尽を感じる日が来るだろう。これもまた日常の…、思い出の一コマとして処理出来ればいいが。何だかんだでアルム達は強いから、まぁ大丈夫であろうと俺は割りきるけどね。冷たいと思うかもしれないが、これも村の為。村の平和の為には仕方のないことなのだ、…俺はこのまま村を去る。

 

竜を操る騎士なんざ、このバレンシア大陸には存在しない。俺は確実に火種どころか、…厄災と言った方がいいかもしれん。俺の存在は争いの素になる、…戦乱の世になるのは早すぎるからな。これは自惚れではない、…竜という存在はそういうものなのだ。真なる俺を口止めにしても不安が残る、アルム達は子供故にポロリ…なんてことがあるかもしれない。だが口止めをして俺が旅立てば? 共にいるよりも、そちらの方がポロリ…という状況になりにくいと思われる。少しでも可能性の低いものを選ぶのは常識、…そうだろう?

 

そしてスレイダーはツイてない、この一言で全てを語れる。死んだことにされるのが、ツイてないの一言でいいのかはどうでもいい。俺と幼なじみであることが悪いのだ、そのせいで実力が高くて人望があって、権力者にとっては邪魔でしかない男。スレイダー自身、この国の腐りっぷりに愛想を尽かしていたから、彼自身にとっても渡りに舟であろう。奴のにこやかな顔がそれを語っている、分かりやすい奴だ。

 

スレイダーの部下である三人、名前は…え~と。エンリケ、ラムザ、グスタフ…だったな。コイツらも災難ではあるがスレイダー曰く、『クレーベを頼れば、今以上の環境となろう!』とのこと。再就職先? を示すなんて、相変わらず優しいか男だよな。まぁ俺も知らぬ仲でもない為に、彼らには餞別を贈るけれど。この三人はスレイダーよりも世渡りは上手いから、さほど心配はしない。

 

 

 

 

 

 

…とにかくここでグダグダしていても、ただイタズラに時間が過ぎるだけ。大陸を渡る予定の俺には時間がない、そういうわけで俺は、

 

「俺達は大陸を渡らなければならない、…数年は会うこともないだろう。」

 

そう言ってアルムとセリカ、グレイ達に笑いかける。そして…、

 

「今日この日から離れ離れになるわけだが、まぁ…どうってことはないだろう。お前達がどう思っているかは分からんけど、別々の道を歩んでも繋がってはいる。まぁ不安に思ったり、何かしらがあるかもしれないが大丈夫だ。俺とは違いお前達はまだ幼い、…これも経験さね。」

 

そう言ってから、懐より数回のお守りを取り出しそれぞれに投げ渡す。

 

「ほら、これをやるから。…俺の相棒の鱗で作ったヤツ、お守りってところだ。効果の程は知らんが、気休めにはなるんじゃないか?」

 

子供っていうのはこういう物に弱いんだろ? …思い出の品ってヤツだ。

 

渡し終えた俺は速やかにイドゥンへ騎乗、

 

「お前達、そこそこの時間…世話になったな! …色々あるかもしれんが頑張れよ、お前達の成長を期待しているぜ。」

 

そう言いながら、少しずつ空へと上がっていく。

 

「これから先…、再会することがないっていうのが一番なんだが、神のみぞ知るってところか?」

 

ニヤリと笑って…、

 

「じゃあな、お前達! …忙しない俺を許せ、そしてまた会おう! とでも言っておくか。とにかく頑張れよ? …因みにスレイダー達はあの場所に来い、…いいな? ……改めて、…あばよ!」

 

とか言って、この場を去る俺ってば忙しない。

 

…アルム達には悪いことをしたな、何が何やら分からなくなっているだろう。まぁ思い立ったら吉日というし、惜しめば別れづらくなるかもしれんしな。気の利いた言葉も言えず、物で釣った感があるけど良い思い出になるだろう、…なればいいな。

 

今頃スレイダー達も俺ん家、隠れ家へ向けて馬を走らせていることだろう。……今思ったんだが、スレイダーの愛馬…どうしよう? なぁイドゥン、…運べる?




途中でわけが分からなくなるって普通ですよね?

うん、…きっと普通だ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。