ファイアーエムブレム Echoes ~大陸を翔る竜騎士~ 作:ユキユキさん
後半の話は、前回と違います。
ーユキー
最後まで王女達は俺のことを心配してくれたが、俺の考えは変わらずにアリティア王族を救うことを第一に行動しようと思う。王女達のことをスレイダーに頼み、俺はイドゥンと共に島を飛び立った。飛び立つ際に見た王女の顔が忘れられない、…俺は生きて帰りますよ。多少の無理をするかもですが、約束は守ります。生きて貴女の下へと戻ります、…って他の娘達は騒いでいるっぽい。心配して見送ってくれるのは嬉しいけど、もうちょっと淑女然とした感じで見送って欲しかったかな。
情報収集時に調べておいたルート、海上ギリギリを飛んでアリティア国内に侵入してみれば、多くの兵士がアリティア城の方角へ向けて進軍している。…グラ兵だよな? これ程の兵力を揃えて進軍しているのは。アリティアは最早、風前の灯ではないか! たとえ少数でもアリティア軍は精強、…だからと言って数の前には無力となろう。グラは本気でアリティアを攻め滅ぼそうと、…滅亡させようとしているな? …これはマズイぞ、悠長に構えている暇はない。
俺は見付からぬように海上を飛んでいる、イドゥンの実力で音も無く。しかしこの状況下での隠密行動は、辿り着いた時には手遅れ…ということになりかねない。故に俺は大胆に行く、隠密行動を止めようと思う。…すまないなイドゥン、これまでの苦労を無にする俺を許してくれ。そんな俺の気持ちにイドゥンは、気にするなと言わんばかりに大きく嘶く。その嘶きを合図に俺は体勢を小さくし、自身に対する抵抗を極力無くすようにする。そしてそのまま、イドゥンの最大速度で海上を滑るように飛ぶ。ちょいと厳しいものがあるけど、歯を食いしばって…目の前にそびえる崖に沿って急上昇。一気に上空へと舞い上がる、…グラ兵の驚く顔が目に入る。突如現れた俺達に驚くのは分かるが命取りだ、俺は獰猛な笑みを浮かべる。…目標は眼下のグラ兵、イドゥン…急襲するぞ!
勢いのままに急襲した俺達は、グラ兵を薙ぎ払って混乱させる。ある程度の打撃を与えながら、アリティア城へと急行した。この急襲により、アリティア城へ向かうグラ軍に少しの動揺が出てくれれば…。そう思いながらアリティア城を目指す俺達、上空からグラ兵に打撃を与えながら。
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ーマルスー
僕は姉であるエリスの言葉に従い、臣下であるアベルとフレイを伴い城を脱出する。途中、ジェイガンとカインの二人とも合流を果たした。しかし少数である僕達とは違って、対するグラ軍は兵力が凄くて層が厚い。多くのグラ兵達が僕らに襲い掛かり、徐々に追い詰められてしまう。
母上と姉上、二人を犠牲にしてまで脱出したというのに、僕達はこのまま終わってしまうのか? 裏切り者のグラによって、何も出来ないまま討たれてしまうのか? そんな思いが僕の中を駆け巡る。そんな僕の不安、…心情を察したジェイガンが、
「弱気はいけませんぞ、王子! 強く心を保つのです、諦めなければきっと…道が拓ける。そう信じて前へと進むのです! 城に残られたお二人の想いを、王子を逃す為に散った兵士達の想いを、…無駄にしてはなりませぬ!」
僕にそう言って、活を入れてくれる。……その通りだ、僕は生きなければならない。母上と姉上は、そして兵達は、僕を決死の覚悟で脱出させてくれたのだから。
僕は弱気になっていた自分の心を奮い起たせて突き進む、このアリティアから脱出する為に。祖国を捨てることになるけれど、それでも僕は生きなければならない。生きてさえいれば、この屈辱はきっと返すことが出来る、母上と姉上を救うことが出来る、…父上の仇が討てる、…そう信じて!
僕はみんなと協力し、グラの包囲を突破する為に戦うがやはり多勢に無勢。はっきり言って旗色が悪い中、その状況を察した臣下の一人であるフレイが、
「マルス様、ここは私が囮となり敵兵を引き付けます。その隙に、…その隙に脱出を!」
そんなことを言ってくる、…何てことを言うんだ!
「フレイを囮にだって!? そんなこと、…僕には出来ない! みんな生きてこの包囲を突破し、共にアリティアを脱出するんだ!」
僕はフレイの言葉を即座に否定する。しかし、フレイも頑なに食い下がってくる。…フレイの言いたいことは分かる、この状況を打破する為には誰かが囮になる、とても有効な一手だとは思う。しかし、それは死を意味する。これ程の兵力差で囮となってしまったら、確実に…生きて戻ることはない。そんなこと…! 僕はみんなと共に脱出をすると決めたんだ、誰か一人を犠牲になんて出来る筈がない。他に何か、何かある筈だ…!
そんな僕の想いが通じたのか、何やら敵兵が慌ただしくなり包囲網に綻びが! 僕はそれを見て決断する。
「敵の包囲網に綻びが出た今が好機! 後ろを振り返らずに、前へ…前へ突き進む! …僕に続け!!」
この機を逃すわけにはいかない、気を引き締めて突破を! みんなの心を一つにして進むのみ!
ジェイガンを先頭に、その包囲網を食い破らんとした時、
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
「ぎゃあああああっ!?」
「ひぃっ!? 何で竜騎士が!」
「弓兵! 奴を射殺…ぐはぁっ!!」
敵兵の混乱が更に深まっていく、一体何が!? …そう思った時にアベルが、
「マルス様、空をご覧ください…!」
アベルが指差す空へ視線を向ければ、上空から敵兵へ襲い掛かる一人の竜騎士が! …その竜騎士は、突撃と離脱を繰り返しながら敵の包囲網を食い散らかしていく。…凄い、僕にはその言葉しか思い浮かばない。
「突撃と離脱を繰り返すことにより、弓兵に狙われずらい状況を作っている。それと同時に歩兵をかき乱し、弓兵に射たせる隙を与えないよう立ち回り、隊長格を次々に討ち取っていく。一騎当千の竜騎士とでも言いましょうか…。」
厳しいジェイガンですら感嘆の声を上げる程、一体…あの竜騎士は何者なんだ。
その竜騎士の来襲により、
「…おのれ! …退け、退くのだ! …新手が現れたと、ジオル様への一報も忘れるなよ!」
将軍らしき者がそう叫び、混乱する兵達を纏めあげて退いていく。決死の覚悟が無駄になったけど、助かったことは事実。部隊を立て直すことが出来る、僕は安堵の息を吐いた。そんな僕達を見下ろす件の竜騎士、僕は彼を見上げる。大きく立派な黒き竜に跨がる目付きの鋭い男、頬に刻まれた傷が彼の凄みを高めている。その圧倒的な存在感と共に優しさも感じる、今は亡き父上のような雰囲気がある。そんな彼が、僕をその鋭い目で見詰めてくる。その視線の鋭さに僕は、無意識の内に息を飲んだ。そして…、
「…これより先にある港へ行かれるといい、船が無傷で停泊しているが故。」
彼は槍にて僕達の後方を差す、…僕達に脱出路を示したのか? …彼は味方と受け取っても良いのだろうか?
「信じる、信じないは貴殿に任せるが…。ただ一言、…私はアカネイア聖王国が王女であるニーナ様の命で動いている。」
彼の発言に僕は驚く、ジェイガン達も同じようだ。アカネイア聖王国が滅亡し、王族の全てが処刑されたと聞いていたけれど、…ニーナ様は生きておられたか!
彼がニーナ様の命で動いているのなら、
「助言、感謝致します。貴方の言われた通り、僕達は港へと向かってみます。」
彼を信じ、港へと行ってみよう。このまま陸路で脱出するよりも、海路の方が可能性がある筈。彼は僕の発言に笑みを浮かべ、…僕達を見回した後に、
「港周辺の敵兵は一掃した、危険は無いと思うが…急がれよ。停泊している船に確か…、タリスより一人の少女…名をシーダと言ったか。脱出の案内役として残している、…後は彼女に聞くといい。」
タリス…! そうか、タリス王が…。それにシーダ殿といったら、タリスの王女…。彼女が僕達の為に…。
「…私は先を急ぐ身故、これで失礼させて貰う。マルス王子、…脱出の無事を祈る。」
………!? …彼は僕のことを知っていたのか? …彼には色々と聞きたかったけれど、既に空へと上がり飛び去っていった。
彼の飛び去った方角を見詰めていると、
「彼が何者なのかは分かりません。しかし…ニーナ様の命で動いているのであれば、味方でありましょう。…考えるのは後ですぞ、王子。今は港へと向かい、シーダ様と合流することが先決かと…。」
ジェイガンの言葉でハッとする。…そうだ、彼の話ではシーダ殿が待っている筈。危険は今のところないと言っていたが、
「…そうだね、いつまでも危険が無いとは言い切れない。…シーダ殿が待っているようだからね! …みんな、行こう!」
僕は声を張り上げて、みんなと共に港へと向かう。…僕は絶対に生きて脱出してみせる! そして、いずれは…!
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ーユキー
グラ兵に打撃を与えながら城を目指していた俺は、ふと思い至り…港へと向かった。時間が無いのだが、一応…船を確保していた方が良いと思ったからだ。アリティアの王族は人が良いらしいからな、…助けられる民がいるのなら救おうとするだろう。故に大勢を脱出させる為に船は必要、グラ兵であるならば海までは追撃して来ないだろう。マケドニアも情報通りであれば、オレルアン攻略で忙しい筈。…海が最も安全な脱出路と言ってもいいだろう。故に俺は、神速をもって港を制圧する。
…で予定通り、神速と言ってもいい程の速さでグラ兵を壊滅させた。船の方も数隻確保出来たが、いつグラ兵が戦力を整えて攻め入ってくるかは分からない。さて…どうすべきか、そう考えていると…、
「…ああ! アリティアがこんな…! お父様に言われてきたけれど、…城は、…王族の方々は無事なのかしら。」
海から数騎の天馬騎士が、先頭の青髪の少女…見覚えが…。え~と、…シーダだっけ?
うろ覚えの知識にヒットしたわけだが、…こんな所に何故シーダが? と思ったけれど、…俺と同じ考えで来たんだと気付いた。……なるほど、ならば彼女らにこの港を任せよう。数騎の天馬騎士では攻め入れないが、要所の守備ならば何とか出来る筈。そう思い、彼女らの上空から舞い降りる俺。………当然、めっちゃ警戒されました。
…で俺は直ぐ様名乗り、敵ではないことを告げる。そしてアリティアの状況、俺の目的、この港のこと、これからのことを彼女らに説明したら納得し、この港の守備を引き受けてくれた。そして…、
「では、シーダ王女とタリスからの義兵の方々、この港をお願いする。今日中に私が戻らぬか、アリティアの者が来ぬ場合、速やかに港を捨てて逃げられよ。決して命を懸けて守ろうとするな、この地で散れば父親であるタリス王が嘆かれる。」
俺がそう言えば、シーダ王女は真剣な顔で、
「分かりました、ユキ殿の言われた通りにします。…ユキ殿、ご武運を。」
と返してきた。…幼いながらも聡い王女のようだ、…悪くない。
「途中、生き残りがいたらこちらへ誘導する。…それと、私の目的は先程言ったように内密で頼む。結果がどうであれ、知らぬ方が力となろう。では、後のことをよろしく頼む。」
俺はシーダ王女にそう言って、全速力でアリティア城を目指す。…この遅れは必要な遅れだよな? …ちょいと不安になったり。
グラ兵を蹴散らしながら進んでいると、抵抗し続けている一団を発見。シーダ王女に指示したこともある、助けて港へと誘導しますか! そう思って助けてみれば、その一団を率いているのはマルス王子! 驚いたし、助力をしてよかったと本気で思った。アリティアの王族を一人確保! …で、この中にはリーザ王妃とエリス王女がいないみたい。…まだ城にいるのか? だとしたら、早く城へと向かわなければ。…可能性はある、この目で確かめないと。
忙しない俺は名乗りもせずに、シーダ王女の待つ港へ向かうように伝えた。彼女達にマルス王子を保護して貰い、そうそうに離脱して貰いたい。どちらにも死なれては困る、少しでも死から遠ざけるようにしないと。…とにかく、俺はアリティア城へと向かわなければ。俺は挨拶もロクに交わさずこの場を去る、…来る途中でグラ兵をある程度蹴散らしてきた。…危険なく港へと行けるだろう、…たぶん。
無理矢理シーダ登場。
主人公も言葉使いが違う。
マルスとあまり話さない。
これもマルスの為です。
原作同様、雌伏の時を過ごしてください。