本編及び原作の時系列を全て無視しておりますのでご注意ください。
年越し回
志賀家の大晦日は淡々としている。
そもそも年越しそばなんて喰種には食べられないし、僕は人混みが嫌いだから初詣なんて行かない。
というか初詣の出店の匂いだけで不快だ。従って僕が正月に外に出るとしたら
まあ尤も、数日前に
と、思っていたまさにその時だった。
心のどこかで待ち望んでいたのかもしれない、日常を壊す携帯電話の着信音が鳴った。
「未読メール:1件」と表示されている画面を見て僕は久しぶりに長いため息をついた。
ボタンを1回押すと、所々が絵文字に彩られた画面が表示された。
「【仲のいいクラスメイト】くん、暇?暇だよね!私初詣に行きたいんだけど、行くよね?じゃあ明日、朝7時に近くの神社に来てね!」
僕は再びため息を漏らした。
どうやら断る余地はないらしい。
「分かった」と返信すると直ぐに再び携帯電話がなった。
「ちなみに【仲のいいクラスメイト】くんはガキ使派?紅白派?」
「プロレス以外は軟派だね」
そう返信して、僕は明日に備えて布団に入った。
ちなみに僕はあまりテレビは見ない。
大晦日もそれは例外ではない。
─抗議するように鳴った携帯電話を僕は意図的に無視した。
2×××年 1月1日 7:12
「ごっめーん【仲のいいクラスメイト】くん、待った?」
「うん、なんとなくこうなる気がしてたから大丈夫」
僕は既に甘ったるい香りや焦げ臭さに噎せ返りそうになりながら答えた。
「ところで、ど~う?」
そう言いながら彼女がクルリと一周してみせた。
着物の袖がヒラリと揺れる。
「うん、まずあけましておめでとう、それからなんの感想を求めているのかわからないけれど着物は似合ってるよ。」
「ふ〜ん、それだけ?でもまぁ、ありがとね!」
そう言って彼女は顔を綻ばせた。
「それじゃ、行こ!」
「ちょ、待って!」
5分後
「僕前に言ったよね?」
「え?」
「人の手を掴んで急に走り出すと危ない。」
「そうだっけ?人混みではぐれたらダメだと思って、それにそう言って、君も楽しそうじゃない?」
「そんな事は無い」
「でも両手にほら、『振ったら伸びるアレ』とか『先に風船がついてて空気が抜ける時にピーってなるやつ』とかそこの店で掬った金魚とかスーパーボールとか…」
「そんな事は無い」
「だって最後の方は私が引っ張られ…」
「そんな事実は認めない」
「もう分かったよ」
謎の勝利感の獲得とプライドの保持に成功して僕は満足していた。
気がついたら手に名前のわからない色々な物を持っていたけれどまあ気にしない。
「そんなふうに言うけど君だってリンゴ飴にベビーカステラ、焼きとうもろこし、綿菓子。どれだけ食べるのさ」
「私はいいの!どうせ最後なんだし!死ぬ前にやりたい事をしてるだけだからね!」
そんなこんなで時間は過ぎて、夕焼けの赤い光が消えていくような、そんな時間帯。
「【仲良し】君」
「どうしたの?」
「楽しかったね!」
「…うん、そうだね」
これは冗談。僕が素直になるという、そんな、他愛のない冗談だから。
「お?素直になったじゃん!どしたの?悪いものでも食べた?」
「君みたいに暴飲暴食はしないと心に決めてるんだ」
生き残る為にも。
「それで、君の方こそどうしたの?」
「どうしたって?」
「まあ、それならいいんだけど」
「いや、こんな日がずっと続けばいいのになぁって」
「あのさ、そういうことをそんな雰囲気で言われると僕も困るって知ってる?」
「なーんちゃって!もー【仲良し】君ったら、心配してくれたの?ありがと!」
「そんな事」
ないとは言えなかった。
「ま、私は最後まで楽しくやりたいことをして生きるだけだからね!それまでずっと君を振り回し続けるよ!」
「振り回してる自覚はあったのね、てっきり生まれつき迷惑な人かと」
「失礼な!」
この後近所迷惑だと怒られたのは言うまでもない。
「あ、そうだ画面の前のみんなと【仲良し】くん!」
「前半誰に言ってるの?」
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
「おーい、聞こえてるー?」
ということであけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。
P.S.
年越し回という建前で初詣デートする二人を書きたかっただけなんです許してください