旅行が終わって家に帰った僕は彼女からのお礼のメールにお礼で返して、それから泥のように眠りこけた。
連休が明ける頃には僕はそろそろ“きちんとした食事”をとる必要があるはずだったけれど、何分食欲がわかない。
旅路で変なものを食べすぎただろうか、彼女からの連絡も全くないことも含めて僕は内心で首を傾げながら連休の残りをすごした。
尤も、連休が明けても僕は内心首を傾げたまま過ごす羽目になった。
靴箱を開けるとそこにあるはずの上靴は影も形も見つからなかった。
はて、落とした覚えもないのだけれど、と疑念を抱いたその時。
「おはよう…」
その声は間違いなく若い雌の人間、つまり女生徒のものだったけれどそこには明確な殺気が込められていた。
僕は相手が誰であろうと挨拶をされて無視をするほどの無礼者ではないので、挨拶をしてきた相手、つまり「親友さん」におはようと挨拶を返した。
親友さんは僕を数秒睨みつけたかと思うとふん、と鼻を鳴らして教室へ向かった。
僕はいよいよキャパシティが足りなくなって、立ち尽くした。
数秒して冷静になった僕は靴箱の周りを探し始めた。しかし僕の上靴はそこにはなかった。
誰かが間違えて履いていってしまったのだろうか、それなら気がついた時に返してくれるだろうと思って僕は靴下のままで足元に気をつけながら教室に入った。
教室に入ると僕をいつぞや感じたことのある不快感────不躾な視線やひそひそとした話し声が包み込んだ。
僕は一瞬それらに圧倒されたけれど、すぐに無視することに決めて、席に座った。
今日はテストの返却日だから、問題用紙と筆記用具さえあれば事足りる。
僕はそれらを机の上に出した。
いつものように文庫本の世界へと旅立とうとした僕を引き止めたのはいつもガムを勧めてくる彼だった。
「なぁ、【噂されてるクラスメイト】、お前、山内の事好きなの?お前がストーキングしてるって噂になってるけど」
「そんなことしたことないけど?」
むしろ僕の日常に割り込んで掻き回しているのは彼女の方なのだけれど。何を勘違いされているのだろうか。
「あと、なんで上靴捨ててんの?ガムでも踏んだか?」
「君が捨てなければガムなんて校内で踏まないよ。なくしてて困ってたんだ。ありがと」
「お、そうか。なら良かった。ガム要る?」
「要らない。どこにあったって?」
「男子トイレのゴミ箱」
「ありがと、取ってくるよ」
そう行って僕は彼が教えてくれたトイレへと向かった。
なんにせよ彼がいなければ僕は上靴を見つけることが出来なかったのだから、彼には感謝する必要があるだろう。
それから、その日のうちは特に変わったことは無かった。
返却されたテストは解いた時の感触通りいつも通りの、つまりまあまあの出来だった。
彼女が遠くから見せたテストははっきりとは見えなかったけれど丸が沢山着いていた。
次の日も僕は彼女と話をしなかった。
教室の戸締りで遅れるという彼女よりも先に図書室で本の貸し借りの受付をしていた。
先生が会議に向かってから来た生徒は1人の女生徒だけだった。
彼女はカウンターに僕しかいないことを認めると、不躾な、なんというかあまり気持ちの良くない視線を僕に向けながら「桜良は?」と聞いた。
教室にいるのではないかと教えてあげると足早に立ち去っていった。
僕は何かしただろうか。
遠くから一際軽蔑を含んだ敵意が顔を覗かせている気がしたけれど、他の生徒からの視線と同様に僕は無視を決め込んだ。
こうも連日投稿していると腕が痛くなりつつある小人です。このハイペース投稿は絶望を嗤え以来だと思います。とはいえ完結が見えてきました!原作よりも結構短くなる予定ですので悪しからず…
次話もなるだけ早く投稿しますので感想等お願いします。