あまりにも突然の親友さんの叱咤によって僕は重大なことに気づかなかった。
教室に戻った時、彼女は教室にいなかった。
少し抜けているところがある彼女だから、てっきり寝坊による遅刻だと思っていたけれど、そういう訳ではなかった。
その理由を僕が知ったのはその日の夜のことだった。
彼女は入院していた。
僕は平日の間悩みに悩んで土曜日の午後に彼女の病室に赴いた。
病室のドアを開けると彼女は何やら僕の知らない踊りをしていて、振り付けの中で振り返った彼女は僕の存在をそこに認めると、病人であると思えないほど大きな声でぎゃあぎゃあと叫んでからベッドに入って掛け布団に潜った。
「開ける時はノックくらいしてよ、君が急にくるだなんて…」
くぐもった声が布団の中からした。
「それはごめんね、これ、お土産」
そう言うと彼女はバッと布団を捲って飛び出した。
「あ!苺だ!食べようよ!」
彼女は一見普段と変わらない様子に見えた。
「それで、一体どうして入院なんて」
「そりゃ膵臓だよ、盲腸だと思った?」
「学校ではそういうふうに説明されたけどね」
「そりゃまだキョウコにも言えないよ〜ま、でも薬さえ飲んだら2週間くらいで学校に復帰するから、寂しがっちゃダメだからね?」
誰が、とは言えなかった。
というか、言い返せなかった。
キョウコさんから言われたこと、ぶたれた痛み。
僕は本当にここにいていいんだろうか
「おーい、大丈夫ー?」
「ああ、ごめん」
僕は彼女の声で我に返った。
「何か悩み事?聞くよ?」
僕は、少し逡巡してから親友さんのことは伏せて話すことにした。
「僕はさ、本当にここに居ていいの?」
「急にどういうこと?」
「この前の元カレさんみたいに僕は君のことを深く思ってるわけじゃないし、この席は本当に、僕が座ってていい席なのかなって」
「何言ってんのさ!」
その質問に、彼女は少し憤慨してみせた。
「君は私が息抜きの為に誘って来たんだよ!?君は私の意思に合わせてここに居てくれてるんでしょ!?それにそれはタカヒロとか、周りの人が決めることじゃない!君が決めることだよ!」
ああ、やはり彼女は僕と鏡写しで正反対だ。
僕がここ数日間、ずっと悩み続けてきたことにこんなに早く答えを出してみせたんだから。
彼女はそれから穏やかな表情で僕に言った。
「あのね、私はいつもこう思ってるんだけどね、人はずっと自分の進む道を自分で決め続けてるんだよ。君は私の隣にいてくれるって選んでくれた。私は君に隣にいてほしいって思って、そうなる選択肢を選んだ。それが交差して、今君は私の病室の椅子に座ってるんだよ。だから、君は君が私の隣にいたくないって本気で思わないなら、そこに居ていいし、私は嬉しい。」
僕は、少しの気恥しさと大きな罪悪感を覚えた。
今すぐ自分の本性を暴露したい衝動をすんでのところで抑えた。
「それじゃ勉強の時間だね、ちょうど苺も食べ終わったし。」
僕は話題を変える他に選択肢がなかった。
「えー、もう少しゆっくりしようよ〜さては照れたな〜?」
「うるさい馬鹿」
「君ってたまに酷いよね!ところで顔色がちょっと悪い気がするんだけど大丈夫?私より先に死んじゃダメだよ?」
「僕は普段の行いがいいから多分そんなことにはならないと思うから安心してね」
僕は少しスッキリした心持ちだったけれど、妙な体の重さが残っていた。
やばい…UAいっぱい伸びて感想も沢山頂いてるのに文字数が少なめだ…
この調子で行くとそろそろ終盤です。今作は原作よりも早めの時系列で終わることになるので。
それまでどうぞお付き合い下さい