難産だったんです展開が思い浮かばなくて。
とりあえずなんとか形になったので投稿します。
今年中に完結できる気がしない…
とにかく頑張ります。エタらせはしません!
※最初の方に少し残酷な描写があります。苦手な方はお気をつけ下さいませ。
お伽噺の中の登場人物は、ハッピーエンドが約束されていて、「あとは幸せに過ごしました、めでたしめでたし」で済むことが約束されている。
だが、実際の人間はそうでないことの方が多い。
僕は足元に血まみれで転がっている中年の男を赫眼で見下ろしながら僕はそう思った。
きっとこの男もまさか自分が襲われて喰われるだなんて思わなかっただろう。
赫子を出した僕を見て腰を抜かした彼は身動きすら取れずに一撃で心臓を貫かれ、死んだ。
隣に転がったケーキの箱が男にも守るべき家庭があったことを僕に主張していて、少しばかりの罪悪感を僕に与えた。
何を考えているんだ、僕は。
今しがた浮かんだ考えを振り払うように僕は首を二度三度振った。
人間に必要以上に情を抱いてはならない。
常々思っていた事なのにどうした事か。
まさか桜良とかいうあの女に絆されたのか?
そんな事があるはずがない。
思考がまとまらない。
久しぶりの狩りで少し動転しているのだ。
冷静に、冷酷に…
僕達喰種は人間を捕食しなければ生きていけない。
だからせめてもの償いに僕は“好き嫌い”せずに人間を喰べる。
風の噂では人体の一部だけを好んで喰べたり、食欲に任せて必要以上に捕食する喰種がいることも聞いているが、正直非合理的だとしかいいようがない。
両者ともにそんなことをすれば死体の捕食痕や量から
どれだけ強い喰種でも、いや、強い喰種だからこそ、慢心すれば討ち取られてしまう原因になりかねない。
だから不必要に目立つことは避けるべきなのだ。
最も死体も残さずに血痕だけ残していく僕も異端といえば異端なのだが。
それはともかく、と珍しく纏まらない思考回路を無理やりせき止めた僕は手を合わせて「頂きます」と言ってから男の死体に貪りつく。
最近あまり捕食していなかったからか、随分と美味に感じられたのだが。
「む。」
これは膵臓か。
相変わらず苦くて美味しくない。
ふとそんな考えが浮かび、、馬鹿馬鹿しいと振り払った。
昨日の夜中、隣の県で殺人事件が起きたと思われているらしい。
随分言い方が曖昧だがこうとしか言えないのだ。
何しろ血痕と所持品を除いて人間が丸ごと消えてしまっているのだから。
朝のテレビはその話題で持ち切りだった。
通り魔なのかはたまた捕食されたのか、気の毒なことだと内心で
昨日からずっとこんなことばかりしている気がする。
学校もその話題で持ち切りかと思ったが、そういう訳でもなくて、かと言っていよいよ始まろうとしているテストの話題が話されているのかと思えばそういうわけでもなかった。
クラスメイト達は僕に好奇心と悪意が同居した視線をチラチラと僕に向けながらひそひそと仲間内で噂していた。
彼らにとって隣町の知らない男性の死よりも、クラスで空気のように掻き消えて居なくなってしまいそうな僕と人気者の彼女が休日にお茶していたという事についての真相の方が気になるようだった。
「ねーねー、【地味なクラスメイト】君ってさー、桜良と仲いいの?」
そう聞いてきた女生徒───名前は正直よくわからない──の視線は、他のクラスメイトに比べてずっと穏やかなものだった。
きっと周りの雰囲気に乗せられて聞きに来たんだろうなと思うと、僕如きに労力を割いている彼女に少し同情した。
「別に、たまたま会っただけだよ。」
だから僕も穏やかに答えた。
疚しいことなど何も無かったが、肯定すると根掘り葉掘り聞かれてしまうのは確実だろう。
僕はこの
それに彼女の秘密を知られてしまってはいけないだろうから。
幸い性根から真っ直ぐなのだろう女生徒は僕の嘘を信じて仲間たちの元に報告しに行った。
僕は一難去ったと小さく溜息をついた。
その時、いつの間にか前に立っていたテスト監督の教師が「それでは始めてください」と言った。
なんとか休憩を挟みながらとはいえ4時間に渡るテストを終えて、今回もいつもくらいの点数を取れているだろうという手応えを感じながら僕は黙々と掃除して、鞄を背負い帰ろうとした。
「ちょっと待ってよ【仲のいいクラスメイトくん】!」という声に呼び止められて振り返ると、満面の笑みを浮かべている彼女と、朝と同じような視線を向けてくるクラスメイトが居た。
「図書委員の仕事があるからちょっと来て欲しいって。」
彼女の言葉に僕は頭の中で今日の予定を辿ったがそんな事を言われた覚えはなかった。
怪訝な顔をした僕に彼女は「さっき先生に言われたの。どうせ帰っても勉強しないでしょ?」と言った。
「勉強はしないけど、人の心を読むのは感心しない。プライバシーの侵害で訴訟してあげようか?」
「あ、図星だった?ごめんね〜でも君って案外表情で思ってることわかるよ?」
そう言われて僕は思わず頬に手を当てた。
そんなに表情が変わっているだろうか、と確かめるようにペタ、ペタ、と手のひらで確かめる僕を見た彼女に爆笑され、僕は少し気を悪くした。
図書室に着くと、呼び出された僕と彼女は「試験中だし早めに閉めることにしたの」という先生の言葉と共にあえなく追い出されてしまった。
更に気を悪くした僕に、彼女は笑いながら詫びるだけで、どうしてこんなことをするのか訊ねると、「別に、いたずらが好きなだけだよ?だって君面白いんだも〜ん」と言った。
「いつかピノキオみたいに鼻が伸びて誰にも相手されないようになればいいよ。」
「もう膵臓以上に罰は受けませ〜ん」
「そもそも罰を受ける心当たりがあるの?」
「えっとね〜無いや!」
そんな中身も意味もないけれど、少し心臓のあたりが温かくなるような会話をしながら僕達は下足箱へと向かった。