少女と歩む異世界使い魔(ペット)ライフ   作:若丸 一叶

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初めてのオリジナル作品です。
ものは試しと思って読んでみてください。

※自信は一切ありません!!


突然の落下

青と白で彩られた空間を縦に割りながら駆け抜ける物体が一つ。

それは、一切の抵抗も出来ずに自由落下を余儀なくされた少年・若村千秋だった。

 

一言で言うならば、千秋は紐なしバンジー改め、パラシュート無しのスカイダイビングの真っ最中なのだ。

 

「意味がわからない。」

 

千秋はまさにそう言うしかなかった。気づいたら彼は既に落ちていたのだから。実際には、言うといっても彼は余りの空気抵抗に喋ることは疎か、動くこともままならないのだが。

 

結果、千秋は悲鳴一つ上げることが出来ずに空の旅の終焉を迎えた。

 

ざっばーーーん

 

豪快に水飛沫を上げながら全身を水面に打ち付け、あまり痛みに意識を失いつつ千秋は沈んでいった。

 

「……何でこうなった?」

 

千秋は、体と意識が沈んでいく中、ここまでの経緯を振り返る。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「おじいさん、大丈夫ですか?荷物、持ちましょうか?」

 

1人の少年が大きな荷物を抱え辛そうに歩く老人に話しかけた。

突然声をかけられ驚く老人に少年・若村千秋は言葉を続けた。

 

「あまりに辛そうだったんで…、つい声をかけてしまいました。よろしければこれ運ぶの手伝いますよ」

 

多少強引な千秋に圧倒されながら老人は荷物を渡しながら目的地を告げ、そこへ2人で向かった。

その後、たわいのない雑談をしながら最後に老人の「ありがとう」を持って締めくくる。

 

これが、本日4度目となる千秋の善行だった。朝は怪我をした小鳥の治療をし、昼に弁当を忘れた友人に弁当を分け、放課後は小学生を事故から助け、そして先程の荷物運びである。

 

傍から見たら頭がおかしいと思われかねないこれらの行動は、総て『善を積もう!巡り巡って我が身に帰るその日まで』を信条に生きる千秋にとって当たり前のことだった。

 

そして、一通りやることをやって満足した千秋は帰路につこうと歩き出す。

 

『……す……け…、だ……れか、た…すけ…て』

 

不意に聴こえた声にすぐさま当たりを見渡して確認する千秋の目には声の主はおろか人影一つ映らなかった。だが、あまりに不鮮明でありながら必死なSOSを無視することが千秋には出来なかった。

 

千秋は、周りに人がいないことを確認し返事をすることにした。恥ずかしさなど二の次、人命救助が最優先という事だ。

 

「どこにいるか教えてくれ!力になれるかわからないが、俺が助けてやる!」

 

すると、千秋は急な喪失感のような浮遊感のような謎の感覚に襲われた。何故なら千秋の足下が急に消えたのだ。後は、落下するだけである。

 

そして、

 

『言ったわね。じゃあ待ってるから!』

 

と千秋の耳には聴こえたのだった。さっきの鬼気迫るような雰囲気はどこに行ったのかと問いたくなるよう軽さの声で。

 

そして、時間は冒頭に戻り更に千秋の意識は絶たれた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

暗く、ゴツゴツとした岩肌に包まれた洞窟の中、少女の声が響いていた。

 

「あぁー、どうしよう!もう、なんで起きてくれないのかなぁ?ちゃんと、できる限りの治療したはずなんだけど。もしかして死んじゃったかな?でも、一応鼓動は聞こえてるから大丈夫なはずなんだけど」

 

オロオロ、あわあわしたような雰囲気で一人喋る少女の声。

 

「うっ!……ここはどこだ?て言うか俺は生きてるのか?」

 

唸るようにしゃべりながら、千秋は起きようとする。どうやら少女が介抱をしていたの千秋のようだった。

 

それに気づき、

 

「どうやら無事のようね。安心したわ」

 

話しかけられた千秋は、感謝を述べようと声の方へ振り向き、悲鳴をあげたのだ。その洞窟の中で響きあい、反響に反響を重ね、耳を塞ぎたくなるほどの悲鳴をあげたのだ。

 

何故なら、千秋が振り向いた先にはまず、芸術のように美しいプラチナブロンドの長髪があった。次に、少し鋭さがあり淡い赤みのある眼が髪の下から見ている。さらに、少女のあどけなさと大人の色香が混ざりあったような愛らしさのある顔立ちをしていて、そして磁器のように白く美しくまたどこか冷たげな肌をしていた。

そんな、17,8歳ぐらいの美少女の『生首』がそこにはあったのだ。

 

悲鳴をあげたチアキを誰が攻めれただろうか?

 

だが、そんな千秋を少女は許しはせず、睨みつけながら訴えた。

 

「感謝の言葉はないのかな?命の恩人なんだけど、わ・た・し」

 

千秋は何とか硬直から立ち直り感謝を述べる。

 

「あっ、……ありがとう」

 

なんとも歯切れの悪い「ありがとう」だった。

 

未だ不服そうにしながらも少女は千秋に喋り出す。

 

「まあいいわ。私は、レティシア。詳しい話は後でするからまずは、自己紹介をお願いできる?その姿についても詳しいことを聞きたいし」

 

と言われ、千秋は促されるままに自己紹介をしようとして、ふと違和感を感じたのだった。というのもやけに視界が低く、体が小さい気がしたというものだった。

そして千秋は、恐る恐る視線を手のひらへと向けるとそこには何とも愛らしい白と黒の毛に覆われた肉球があった。

 

「えっ⁉︎いや何これ。待て待て待て!いや、肉球って。意味わかんねえよ、……嘘だろ」

 

二足歩行をしながらパニクる、2本のツノと2本の尻尾と白と黒の毛に覆われた、垂れ耳の小動物が1匹。それがどうやら千秋のようだった。

 

「あのね。1人でパニクるの君の勝手なんだけどね、私の質問にも答えてくれないかな?その白と黒の犬とも猫ともつかないような、謎の愛玩動物の姿が本来の君じゃないってことでいいの?あと、せめて名前ぐらいは教えてもらえないと、話しづらいんだけど」

 

1人喚く千秋に、多少の苛立ちを隠す様子もなくレティシアは、千秋に話しかけた。

 

千秋としてみれば、急にパラシュート無しのスカイダイビングからの着水、さらに少女の生首と会話をして、小動物の姿をした自分ともなればパニックになるなという方が無理な話だったのだが、レティシアの言葉と剣呑な目のお陰か少しばかり冷静さを取り戻した。

 

「あの、取り乱してしまってすみません。俺は、若村千秋です、レティシアさん」

 

できる限り丁寧な口調で真面目に千秋は返事を返した。

 

「チアキって言うのね、了解したわ。あと、今更そんな取り繕った喋り方をしなくていいわよ」

 

少しばかり棘のあるレティシアの言い方にイラっとしながらも、レティシアの言葉に甘えることにして、千秋はここまでの経緯を話すことにした。

 

「……で、気付いたらここで目を覚ましたって訳なんだが、どうしてこうなったのか説明してもらえるんだよな、レティシア」

 

話すことは話したんだから次はお前が話せとでも言うように千秋はレティシアに話を振った。状況が状況のため、原因はレティシアにあると踏んだ千秋が今度はレティシアに説明を促したのだ。

すると、今度は少しバツの悪そうな表情になりながらレティシアは口を開いた。

 

「えぇ。まず、チアキをここに召喚したのは私。……流石に、はるか上空に召喚されるなんて思わなかったけど。そのことに関しては悪いと思ってる」

 

申し訳なさそうに喋るレティシア。

 

「なるほどな。じゃあ、この姿はどうしてだ?なんで俺を呼んだんだ?ここはどこだ?」

 

聞きたいことが山ほどあった千秋の少々矢継ぎ早な質問に対して、さらに居心地の悪そうな表情になりながらも説明をするレティシア。

 

「そんなに同時にいくつも聞かないでよ!……まず、ここについては、チアキにとっての異世界にあたる世界よ。別に、チアキだから選んだんじゃなくて、あなたが私の声に応えてくれたから召喚しただけ。結局のところ誰でも良かったのよ、……繋がりさえすれば」

 

どうやら千秋があのSOSに返事をしたことで二つの世界が繋がり千秋の召喚に成功したようだ。

だが、誰でも良かったという言葉が、千秋にとっては引っかったがその事実に気づくことなくレティシアは続けた。

 

「で、その姿に関してなんだけど。過去にもね、何度かこの世界以外の世界から人が訪れることはあるんだけど。そういった人たちは全ての人が例外なく、この世界の種族の内のどれかの要素を取り込んで変質してしまうの。その姿もきっとそれが原因だと思う。だから元の世界に戻ればきっと元通りになるはず?」

 

なんとも申し訳なさそうにレティシアは告げた。に対して、姿のこと以上に気になるワードの登場に千秋は反射的に反応した。

 

「戻ることができんのか!?」

 

そう、日本に戻れる可能性の方が大事だった。すると、レティシアの表情が変わる。言うならば、自分の目論見通りに事が進みだしたことからの安堵の表情だった。

 

「えぇ、可能よ。でも、直ぐには無理。流石にこっちの世界に呼び込むのとは違って別世界に送るのは難易度が格段と違うわ。そこで、話は戻るけど私の体探しを手伝ってくれない?そうすれば、体を取り戻した状態の私が元の世界に返してあげる」

 

と言いつつ、千秋の反応を伺おうとしたレティシアに対して、

 

「了解した、今から探しに行こう!」

 

即答だった。千秋にとって人を助けることに今更抵抗など存在せず、さらに自身の帰還に繋がるのなら断る理由などありはしなかった。

 

今にも探しに行ってしまいそうな、逸る千秋を落ち着かせながらレティシアは自身について説明を始める。

 

そこからの話はこうだ。

 

約300年前に天才的魔術師だったレティシアは、罪人に祭り上げられ処刑が行われようとしたが、不死者だったレティシアを殺すことは出来ず、体をばらばらにすることで無力化という形にしたらしい。

そこから、体を取り戻すために300年かけて魔力の回復に務めたレティシアは、頭部のみで魔術を使い自身の手足になって体集めをさせる従者の捜索と召喚を行った。

そして、溺死仕掛けていた千秋を湖の底に作った空洞へと魔法で回収、治療を行ったのだった。

 

「て感じね。質問はある?」

 

話し終えてひと段落ついたような雰囲気を出すレティシアに、千秋は疑問をなげかけてみることにした。

 

「まず聞くんだが、なんで従者が必要なんだ?ていうか、なんで首だけなのに魔法が使えるんだ?」

 

正直ずっと気になってはいたのだった。

 

「魔法を使うのに実際、肉体なんて必要ないの、魔力と術式を編む意識があればね?逆に重要なのは魔力の方で、魔力の補給に従者が必要になるのよ。というのも、首だけの私じゃあ、魔力の生成量も、空気中からの吸収量もたかがしれてて、300年掛けて貯めた魔力も人1人呼ぶので精一杯。でも、従者を経由することで魔力の回収の効率をよくすることができる。ていうのも、従者と主を繋ぐことで相互に魔力の譲渡をしあえるから、従者自身の十全に溜まった魔力を分けてもらうってこと」

 

「なるほどな。で、俺をその従者とやらにしてこき使って体を探しつつ、自身の回復も行うってことか」

 

「そういうこと!で、私が復活したらチアキを元の世界に返してあげることも出来る!!私も救われて、チアキの望みも叶う、まさに一石二鳥でしょ」

 

「事情は分かった。じゃあ、まずは契約だな。どうやってすんだ契約って?」

 

ひと通り聞くことも聞けた千秋は話題を先に進めるためにレティシアに訊ねた。

 

すると、レティシアは途端に顔を赤くしてしまった。何を恥ずかしがっているのか分からない千秋は急かすのだった。

 

「なんか知らないけど早くしないか?時間がもったいないだろう」

 

対して、レティシアは顔を赤く染めたまま今にも消えそうな声で呟いた。

 

「目を閉じて」

 

正直何がしたいのか理解できなかった千秋だが仕方なく目を閉じることにした。

 

すると、千秋の口が何やら優しい感触に襲われた。

 

ちゅっ

 

なんともささやかで小さな音を立てながら、レティシアは千秋に対してキスをしたのだった。

 

そして、レティシアは契約の呪文を唱え始める。

 

「『先の契りの口吸いをもって、レティシア・メイザースの名の下に若村千秋を従者とし、我が身に尽くさんとする。また、今日よりチアキ・メイザースと名乗りその身をメイザースの名をもって縛らんとする』、これで契約は完了よ。よろしくね、チアキ」

 

レティシアは、まっ赤な顔のままそう告げ、チアキに笑いかけた。

 

首だけでありながらも、レティシアの浮かべた笑顔の愛らしさは、チアキに成り行きとはいえ、この娘をまずは助けてやろうと心に誓わせるには十分だった。

 

そして、急な疲れに襲われたチアキ眠りについてしまった。

 




どうだったでしょうか?

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