相変わらずの月一ペースです。もうちょっと早く挙げたいなんて思うんですが、そうもいかない感じです。
町の中は、日が沈んでいたため淡い街灯の明かりに照らされ、いくつもの宿屋が立ち並んでいた。
そんな数ある宿の1つを目の前にして、またも3人は立ち往生していた。
というのも、遡ること5分前のことである。事件は、宿屋の受付で起きたのだった。
「では、一部屋を3人でご利用ということでよろしいでしょうか?宜しければ、お一人様200メルとなりますので、3人分の600メルお支払いください」
受付の女性は、それなりに不自然な格好をしたチアキ一行に対して、不審がりながらも適切な対応をした。
「だってよ。俺持ってないから支払い頼むな」
チアキは、さも当然のようにレティシアを見ながら言った。
「はぁ?何言ってんのよ。私だったお金なんて持ってないわよ。当たり前でしょ。あんた馬鹿なの」
何馬鹿なこといってんのと言わんばかりの表情でチアキにレティシアは言った。何百年も穴倉にこもっていたのだから、当然といえば当然なのだが、レティシアの態度はチアキの癇に障ったようで、軽く青筋を立てていた。
「馬鹿はお前だ。そんなんでどうやって、宿に泊まるつもりだったんだよ」
チアキの言葉にレティシアは、反論する。
「知らないわよ。私お金に困ったことなかったんだから」
「アホか!今、現在進行形で困ってんだよ。あぁ、お前はもういいよ」
そう言って、レティシアからティアに視線を移して、チアキは訊ねた。
「ティア。お前は持ってよな?」
チアキは、藁にもすがる思いだった。もし、ティアが持っていなかったら野宿が確定な上、食事にありつくことも出来ないのだ。チアキ自身、食事をそんなに必要としない体ではあるが、食欲自体は人後に落ちていない。ゆえに、口調や表情は多少険しくなっていた。
そして、そんなチアキの圧に耐えかねたティアはつい視線をそらしてしまう。
「も、申し訳ございません、チアキ様。ティアも、1メルも持っておりません。今までは、必要としてきませんでしたから」
ティアは、視線を逸らしたまま、悲しげに頭を下げた。
「・・・・・・、そうか」
あからさまに落ち込むチアキ。ただ、レティシアと違い素直に謝るティアを責めることはできなかった。
「まあ、ないもんは仕方ないよな。だから気にすんなよ、ティア」
思いつめた表情をしだしていたティアを、チアキは一応慰めようとした。
「お気遣い、ありがとうございます。チアキ様」
チアキに対して、照れながらティアは返した。
バシッ
「っつ」
チアキのふくらはぎに痛みが走る。チアキは振り向き犯人に問いただす。
「レティシア、何しやがるんだ、てめぇ」
そんな怒り心頭のチアキを、上回る迫力でレティシアが問い返す。
「なんでティアと私で態度が違うのか説明しろ」
あまりの感情の高ぶりから、口調も崩壊気味である。が、チアキもその程度もう怯んだりはしない。
「当たり前だろ。相手の態度が違えばこっちも変わる。お前がでかい態度で来りゃこっちも高圧的になりもする。逆に、ティアみたいに素直に謝りゃこっちだって責めたりしねぇよ」
「何よ、差別するの?ティアと私で差別するんだ、あんた」
「差別じゃねぇよ。正当な区別だ。ティアみたいにされたいって言うならもうちょい否定的な態度を変えたらどうだ?」
「ふ、ふざけるんじゃないわよ!私は、主であんたは従者でしょ。あんたこそもっと私を大事にするべきじゃないの」
「い、言いやがったな、てめえ。……、あぁわかったよ、わかりましたよ。お前の望み通りにしてやるよ。まず、呼び方から変えりゃいいのか、レティシア様」
レティシアの表情がとたんにげんなりとした。
「やめてよ、急に呼び方変えるの。キモいんだけど」
チアキの血管がピクピクと動く。
「そう、ですか?ですが、大事にして欲しいとおっしゃるので、敬意を払うために様つけたんですが、お気に召しませんでしたか?」
ここまで来るとチアキの態度は、どこか慇懃無礼の様だった。
「ち・が・う・わ・よ。私がそういうのは嫌だってことは、知ってるでしょ。私に対してもティアに対する様に、気遣いや優しさを持って接しなさいって言ってんのよ」
ぶっちゃけまくりだった。途中から感情の制御が聞かなくなったのか軽く涙目でレティシアは喋っていた。
傍から見たらただの痴話喧嘩だったが、本人達は至って真剣だった。その為、周りのみには一切気付かず恥を晒していた。唯一、周りのや状況を把握していたティアも、2人に意見をするなんて考えはないため、止めることも出来ずオドオドとするのみである。
だが、そんな状況が長く続くはずはなく、あるひとりの人物によって終焉を迎えるのだった。
「あのぉ、」
「何?私は今忙しいからあとにして……」
声の方へ視線を向けたレティシアは凍りついてしまった。
「おい、どうした?」
レティシアの様子がおかしいと思い、チアキも同じ方へ向いた。そこには、笑顔のままであからさまに苛立ちを余すことなく2人にぶつける受付嬢が居た。
「お客様、ほかのお客様の迷惑になりますので、痴話喧嘩は外でやって頂けますか?」
いらだつ受付嬢の言葉で我に返った2人の周りには、かなりの人だかりができていた。
あまりのはずかしさから、3人は申し訳なさそうに宿を後にした。
そして、時間は現在に戻る。
3人は、締め出された宿屋を前にため息をついた。
「で、どうするの?お金が無い以上どこへ行ったところで、泊まることは出来ないわけだけど」
レティシアは、余程さっきのことが恥ずかしかったのか、いまだに顔を赤くさせたまま訊ねた。
「そうだよな。って言っても、この世界での金の稼ぎ方仕方自体俺は知らんしな。お前らは知ってんの?」
チアキも訊ねる。チアキにとっては、全てが未知の異世界である以上聞いていかないと知識も増えやしないのだ。
「あの、申し訳ないのですが、ティアも知らないです」
ティアはまたも申し訳なさ全開で誤った。
「まじか。逆にそんなんでどうやって生きてきたんだよ」
さすがにチアキも動揺してしまう。
「平たく言いますと、自身の魔法で冷凍保存していました。ティアは自身の機能の確認後、無駄なエネルギーの消費を下げるために、動かないで済むようにしたのです」
チアキの世界で言う所の『コールドスリープ』のようなものだと思われる。
「なるほどな。それで、生きるのに必要な知識を持ち合わせってないんだな。じゃあ、わかんなくて当然か」
再びチアキは、ため息をついた。そして、レティシアに視線をチアキは移した。
「で、お前は知ってんのか?」
「えぇ。自ら稼いだわけでたわけではないけど、一応仕組みは理解してるわ。いくつかあるんだけど、まずは冒険者として稼ぐ方法があるわね」
「冒険者なんて職業あんのか、この世界」
まず、チアキにとってはそのワードがすでに耳馴染みのないものだった。
「あるわよ。まず、冒険者っていうのはギルドっていう組合に所属する何でも屋の総称よ。ギルドに集まったたくさんの依頼をこなすことで賃金もらうわ。あとは、魔物を倒すことで手に入る魔石や鉱石やお宝の換金もギルドで行うから、それで生計を立てる冒険者もいるらしいわね」
チアキとティアはうなづきながら話を聞いた。
「冒険者はなんとなくわかった。で、ほかには、どんなのがあるんだ?」
「ほかなら、『商人として商売をする』、かしら。まあ、元手のない私たちには難しいわね」
「そうだな。ほかには、あるか?」
「簡単なのはこんなものね。この町で、できることは限られそうだし」
「じゃあ、冒険者になるということですね」
「だな」
「ええ」
話しのまとまった3人は、歩き出そうとする。と、そんな3人を呼び止める声が背後から聞こえてきた。
「少し、よろしいかしら」
3人は声の方へ振り向いた。そして、3人は同時に声の主から逃げる様に早足で歩き出した。
「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ。人の顔見て、即逃げ出すだなんて失礼でしょ」
そう言って、声の主が3人を追いかけてくる。
対して、3人はなお逃げ続けていた。だが、それは仕方ないとしか言えなかった。
「だって」
初めて見たものに対する恐怖から震えるのティア。
「だって」
あまりに衝撃的なその存在の恐怖から軽く涙目するレティシア。
「オカマは、怖いに決まってんだろうがー!」
そう、声の主は長身にしてガタイのいい男性がドレスをはためかしているのだ。チアキにとってそれはオカマと呼ぶにふさわしい存在だった。
そして知ってはいても、生で初めて見るオカマに対する恐ろしさはチアキにも当然有り、思わず逃げずにはいられなかった。
「オカマって何よ!私は、紳士にして淑女でもある人類の完成形よ。ふざけた名称をつけるんじゃないわよ。それとも、あなたが暮らす世界ではその呼び方が敬称として使われているのかしら?霊獣クン」
チアキは、思わず動きを止めてしまう。そして、オカマの発言に耳を疑ってしまった。チアキが、異世界出身であることと霊獣であることは一切伏せてきた筈なのに、それが見ず知らずのオカマにバレていることは大問題にほかならない。
「あら、やっと話をする気になったかしら?」
思わず立ち止まったチアキを見てオカマも止まりながら話しかけた。
「おい、あんた。なんで、俺のことを知ってやがんだ」
チアキは、オカマに訊ねた。
「ちょっと、あんた何立ち止まってのよ。早く逃げるわよ、怪物が迫ってるわ」
「そうですよ、チアキ様。あんなわけのわからない化け物からはとっとと逃げるべきです」
チアキにつられて立ち止まった少女達は、チアキに逃亡を促した。
「けど、あいつなんか俺のこと知ってるぽいし」
と言うチアキに対してレティシアは、呆れたような表情で言った。
「あんたは馬鹿なの?自分のこと知ってるっぽいからお話ししますっていうの?あんな化け物とはなすことなんてないの。さっさと行くわよ」
そう言ってチアキの腕を引っ張ろうとするレティシアが腕をつかんだ。それを振りほどいて、チアキが言い返す。
「馬鹿はお前だ、レティシア。冷静になって考えてみろ。俺の発言や行動から異世界から来たと察するのはあり得るかもしれないが、俺が霊獣だとははおもおもわねえだろう?よくは、知らないが霊獣はほとんど存在しないんだから。だってのに、俺のことを霊獣だって言い当てれるのはおかしくねえか?せめて、知ってる理由ぐらいは聞くべきだ!3人で話しただろう、不必要に目立ちたくない言って。俺のことがばれのは下手したらそれの妨げになりかねないだろ」
「そこまで言うなら、いいわ」
「かしこまりました」
チアキの熱弁に流されるがままにレティシアたちは頷いた。
「満場一致で、私の話を聞くことになったということでいいかしら?」
満を持して、オカマ登場である。律儀にも会話が終わるのを待っていたようだった。
「あ、あぁ。そのつもりだ」
その迫力と存在感に早くもくじけかけるチアキだった。
「じゃあ、場所を移そうかしら?チアキちゃん」
そう言ってオカマは一人歩きだした。
「移すってどこに?」
「ひ・み・つ」
キメ顔で振り向きざまにオカマは告げ、また歩いて行った。
「行くぞ」
「えぇ」
「はい」
意を決して3人はそのあとを嫌々ついていった。その背中からは絵も言えぬ悲しさがあったように思えた。
新事実発覚、連中お金を持ってませんでした。
次回は、オカマと晩餐会&新展開の予定です。
PS.
友人の勧めで小説家になろうさんでもあげることにしました。こちらにも挙げ続けますが、
よろしければそちらもよろしくお願いします。
あと、いつも通り感想待ってます。