ごめんなさい。前回の投稿からだいぶ空きましたが、どうにかこれだけは投稿させていただきます。
今回は絡みの少なかった加蓮とシェリルの話です。
ハァイみんな、シェリルよ!
ファーストライブからしばらく経ったわ。
あのライブの成功をキッカケに私、結構注目されてるみたい。
当然!・・・なんて言うわけにはいかないわよね。
あくまでスタートを切っただけ。もっともっと、頑張らないとね!
「奈々ちゃん、ご馳走さま。また来るわね。」
ここは【346カフェ】
事務所の施設内にあるカフェなんだけど、レッスン終わりにここに来るのが最近の私のマイブームなの。
「ありがとうございました、シェリルちゃん!キャハ!」
彼女は【安倍 奈々】ちゃん。
アイドルなんだけど余裕がある時はここの仕事を手伝ってるんですって。
なんでもお客さんの笑顔がアイドルとしての自分の力になるからだとか。
私と同い年の17歳なのに、すごく立派だわ。
私も見習わないとね!
さてさて、今日の予定はもう無いし奈緒は仕事だし。先に帰ろうかし・・・あら?
「…」じー
私の足下に黒い子猫が寄って来たわ。こっちをじーっと見てきてる。首輪があるから誰かの飼い猫かしらね。
それにしても・・・
「かわいい…」
そんな言葉が思わず漏れた。
しょうがないじゃ無い、可愛いんだから!
「よーしよし。どうしたのかにゃー?」
しゃがみ込み子猫に呼びかける、恐るおそると言った感じに近づいて来る子猫。
その仕草がいちいち。可愛い。
もう少しで撫でられる。
と、その時だった
カシャッとシャッター音が聞こえたのは。
「へっ?」
らしく無い間抜けな声が漏れる。
音のした方を向くとそこには...
「あっ、バレちゃった?」
加蓮がいた。いちゃった。いてしまった...
「ッッッッツ!!」
顔が熱くなるのがわかる。おそらく真っ赤になってるわよね。
いいえ、落ち着きなさいシェリル。
まだ、希望は...
「ふふっ、シェリルったら。かわいいにゃー」
・・・
「北条...加蓮...」
「あっ、その、怒った?」
見られた。見られたかぁ。見られたなら...
「北条......加蓮ゥゥゥゥゥ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁシェリルが切れたぁぁぁぁぁ!!」
叫びながら全力疾走で逃げようとする加蓮。
ふふっ、甘いわねぇ...私を誰だと思ってるの?
そう、私は...シェリル。
「待ちなさぁぁぁぁい!!」
絶対逃がさない!!
三十秒後
「ぜぇ...はぁ...シェリル...はぁ...速すぎ...」
「当然...はぁ...私は...ぜぇ...シェリルなんだから...」
案外、あっさり捕まえたわ。
加蓮って意外とスタミナ無いのね。今も息切れ激しいし。まぁ私もだけど。
さて、こうしちゃいられないわね。
「加蓮...写真のデータを...消しなさい...」
やや凄みながら加蓮に告げる。
流石に恥ずかしいわ。あんなデレデレした姿。いやたしかに、あの子猫は可愛いかったし。だけど私にもプライドがあるし。
そういえばあの子、置いてきちゃったけど誰の猫だったのかしら?
「えぇ...はぁ...いいでしょ?可愛いかったよ、シェリル」
「そういう問題じゃないわよ...」
あっけらかんとしながら答える加蓮。
だけど、私のイメージの問題というか、なんというか...
「大体...いっつも奈緒とかに抱きついてるでしょ?」
うっ、それを言われるとなんとも...
「それにみんなにも需要があるし...」
「ちょっと?」
加蓮の漏らした言葉に私は凄む。
「あはは、冗談だよ。冗談。」
笑顔で軽く流す加蓮。
この子は本当に...
「ふぁ〜ちょっと休憩〜」
私の目線を受け流すようにベンチの方に向かう加蓮。
本当、掴み所がないというか。
私も彼女の後を追う。
「あー、疲れた〜」
「いや、自業自得でしょ?」
ぐいー、と背伸びをする加蓮。
楽しそうな笑顔を浮かべてるけどそもそも追いかけられるようなことしたのは加蓮だし。で、
「データを消すつもりは?」
「無いよ!」
・・・ハァ
「他の人には見せないでね...」
「りょーかい」
笑顔で敬礼っぽいポーズをとりながら答える加蓮。
まぁ悪用する様な事は無いだろうからこれ以上は追求しないでおくわ。
ところで...
「ねぇ、加蓮。」
「ん?どうしたの?」
私はこの機会に気になっていた事を聞いてみることにした。
「どうして毎回毎回、写真を撮ってるの?加蓮ってそんなに写真が好きだったかしら?」
割といつも写真を撮っている加蓮に聞いてみたかった質問。
この子のプロフィールには趣味が写真とはなかったはずだけど?
と私が聞いた途端、加蓮の顔色が変わった。
悲しそうな表情を浮かべる加蓮。
ちょ、どうしたのかしら?
「あー、うん。その...ね?」
加蓮?
「シェリルには話してなかったよね。あの事は...」
あの事?
「私ね、小さい頃は体が弱くてね。ずっと入院生活だったんだ。同世代の子たちと遊ぶこともできずに。病室で過ごしていたの。でね?今は治療のかいあって元気なんだけどさ...その...副作用っていうかね?私...
時々、記憶が無くなるの...」
「!?」
「だからね。こうやって写真を撮ってるの。大切な事を忘れてしまわない様に。失いたく無いからね...」
そんな...そんな事...
「う、嘘...よね...加蓮...そんな事って...」
「うん」
・・・ハァ?
「えへへ。嘘だよシェリルなら一発で気付くかなぁって思ってたんだけどなぁ。奈緒が好きなアニメのキャラの設定がベースだよ。」
あぁ、なるほど。いたわね、うん。
そう...
「加蓮...」
「うん?どうし...いひゃゃゃゃは!
私は思いっきり加蓮の頬っぺたをひっぱった。
「うぅ、痛いー。」
「自業自得よ。」
頬っぺたをむにむにとなでる加蓮。
同情はしないわ。
「全く。あんな嘘つくからよ。」
「あははー。ゴメンね?」
小首を傾げながら謝ってくる加蓮。
仕方ないわねぇ。
「だけどね。」
何かしら?
「体が弱かったのは、本当なんだよ。」
「えっ?」
薄い笑みを浮かべながら呟く加蓮。
彼女はそのまま話を続ける。
「体が弱かったのも、入院生活が長かったのも本当。一番酷い時で、命の危機があった時もあったくらいね。」
「そんな...」
「えへへ、嘘みたいだけど、これは本当。あっ、でもでも。今は大丈夫だからね。そりゃあー、体力はシェリルはおろか凛と奈緒以下だよ。まぁそれでもアイドルとしては問題ないのは知ってるでしょ?」
「それは、そうね。」
実際、加蓮がトライアドプリムスのメンバーに劣っている点なんて感じた事は無い。でもそう言えば...さっきも息切れが激しかったわよね...
「あっ、変なこと気にしてる?大丈夫だよ。むしろさっきのは楽しかったし。」
私の考えを見透かして笑顔を向けてくる加蓮。
「まぁそれでね。写真の事だよね。あれは日課かな?」
「日課?」
「そう、私が死にかけた後、お母さんたちがね。思い出を残すために写真を撮りだしたの。当時はカメラでね。私も借りて目に付いた景色をパシャりとね。
もちろん見ての通り。心配しすぎだったわけで。私はこうして大きくなったし。もう全然大丈夫なんだけど。」
笑顔で語る加蓮。
だけど、その笑顔は...
「私、今がすっごく楽しいんだよね。アイドルとして過ごしている日々がね。凛がいて、奈緒がいて。もちろんシェリルがいて。いっぱい友達や仲間ができてさ。」
薄く、儚げな。
「だから。忘れないように。消えてしまわないように、こうして写真を撮り続けてるんだよ。」
・・・
「・・・」
「あれっ?シェリル、どうしたの?」
「悲しい事、言わないで...」
「へ?」
加蓮にその気がなくても、私の思い過ごしでも、
「悲しいこと言わないで!」
私は立ち上がりながら大声を出していた。
「シェリル...?」
驚いた表情の加蓮の事を見据えて私は感情のままに言葉を紡ぐ。
「今だけじゃ無いわよ、明日も明後日も、これからも、ずっと。楽しい日々は続くわ。消えたりなんて、忘れさせたりなんて。私が、シェリル・ノームがさせないわ。だから、だから...」
勝手なこと言ってるわね。だけど...
「ありがとう」
加蓮は優しい笑顔を浮かべる。
「ごめんね、変な言い方して。大丈夫だよ、シェリル。私は頼まれたって消えたりしないよ?だって、こんな楽しい日々が、こんな素敵な友達がいっぱいできたんだもん。」
「加蓮…」
優しく言い聞かすような加蓮。
「そ・れ・に!」
?
「私は加蓮、アイドル【北条 加蓮】なんだよ!ファンを置いていなくなる訳にはいかないよ!」
ちょっ、
「それっ!私のセリフじゃない!」
「あはは!一回言ってみたかったんだ!」
先ほどとは違う、天真爛漫な笑顔を見せる加蓮。
そんな可憐な笑顔に、私も釣られて笑い出すのだった。
それでは皆様。
良いお年を!