今日は世界遺産に登録されたH県M島に行ってきました。
赤い鳥居はやはり見ごたえがある。
そして、鹿に食べ物を狙われて囲まれて、
「まるでカツアゲされてるみたいね。」
と通行者に笑われる始末。
しかし歴史という物は素晴らしいと思いました。
関係ない話はこれくらいで、本編にどうぞ。
「大変言いづらい事ですが・・織斑一夏さん、貴方は現在、治療法の無い奇病に掛っています。しかも・・発見が遅かったため、転移が激しく・・元より治療法が確立していない病気なので臓器の移植しか完治の処置が有りません。しかし、此処まで多く転移していては・・元よりおそらく臓器移植の順番まで持たないかもしれないのに・・織斑一夏さんは血液型が特殊で、それに合った臓器はほぼ存在しません。申し訳ありませんが、手の施しようが・・今の医学では治し様がありません。」
「そ、それじゃぁ・・俺は・・死ぬんですか?」
「後‥おそらく長くて五年。短ければいつ大きな発作が起きてもおかしくない状況なんです。」
「弟は・・一夏は・・治らないのですか?」
「・・残念ながら・・。早期発見が出来ていればまだどうにかできたかもしれませんが・・今から臓器移植の順番を待っても・・もたないでしょう。」
そう言われて千冬姉はひざから崩れ落ちる。俺も、頭がどうにかなりそうだった。こんなに頑張って生きて来たのに・・後・・五年も生きていられないのかと・・。
「最後に確認します。俺の目を見て、お願いします。もう一度・・はっきり」
「・・分かりました。・・織斑一夏さん・・余命は後五年。それも希望的観測ですが・・。五年もたない可能性もあります。」
「分かりました・・。」
そして、放心状態でふらふらの千冬姉を連れて家に帰った。俺は部屋にこもり泣いた。途中、鈴が卒業証書を持って来てくれたが、千冬姉はまったく反応せず今のソファで座って頭を抱えているだけだった。俺は「風邪を移したら悪い」と言って顔を合わせず、ドアの投かん口から入れてもらった。ソレを抱えて部屋でまた泣いた。もしかすると、中学校も卒業できないのかと思うと・・そして、部屋の中をぐちゃぐちゃにするように暴れた。小学校の思い出の物も壊し、部屋の本棚の中身もぶちまけて。それでも収まらないこの気持ちを、虐められてきた原因の姉にぶつけてやろうと階段を下りて、そこで今から聞こえる叫ぶ声を聞いてふと我に返った。その声を聞く為に今のドアに近づく。
「だから!一夏を助けるために、頼む!!私の臓器をくれてやっても良い!だからお願いだ、束!!アイツを助けてやってくれ!!頼む!!たのむぅ・・。わだじの唯一の家族なんだぁ・・だがらぁ、だのむぅ・・。」
相手もそして、姉の思いも聞いた俺は冷静になった。あの姉がここまで泣きながら、覗いた先には、床に土下座をするようにへたり込んで電話をしている姉の姿を見た。
今までの厳しい姉を想い、俺は後悔した。
そして、部屋に戻り。部屋を片付け始めた。ソレを戻すごとに冷静に成る自分。考えと思いが固まっていく感じがした。あのさっきの姉を思い出すたびに・・、自分の胸に触れるたびに・・自身の心が冷え固まった。
その思いは凍りついた様に冷たい思いだが・・それでも、熱してはいけない事が分かった。後悔する事になるから。ソレを覚悟して、最後の物を机に置いた。それは、優勝したモンドグロッソの日に取った記念写真だった。
買ってもらっていた携帯を開く。・・そして、交換した電話番号を呼び出してかける。
呼び出し音が鳴り、数コール後に相手が出た。
「・・もしもし・・」
『君からかかって来るとは思ってなかったな、いっくん。』
相手は篠ノ之束。世界の大天災と呼ばれる相手だ。単刀直入に聞く事にした。
「千冬姉が言ったと思うけど・・俺を治せる?」
一抹の希望を乗せて聞くが、声のトーンを変えずに返事はすぐに返ってきた。
『それは無理だね。作り変えてサイボーグにでもならない限り、いっくんは治らない。いや、造り変えないと生きられない。』
「・・分かりました。」
『・・ちーちゃんみたいに罵らないの?【何が天才だ!!一夏の病気も治せない癖に!】ってちーちゃんからは言われちゃったけど。嫌い宣言はつらいけど、私にもできない事はあるんだよね。・・それで、いっくんは束さんに当たり散らさないの?』
「いえ、・・千冬姉のあの姿を見て逆に落ちついちゃいました。束さん、俺は・・」
「俺は人間として生きて、人間として死ぬよ。どれだけ短い人生だろうとね。」
『・・それで良いの?体の中を機械にしている人間だっているよ?』
「それでも、まだ人間な部分が多いでしょう。俺の場合はもう脳以外を代えるようなもんだろうし・・それって、人間じゃないじゃん。それじゃ、【織斑千冬の唯一の家族である織斑一夏】じゃなくなっちゃうもん。」
『・・強いね、いっくん。』
「俺は強くなんかない。千冬姉の姿を見て、どんだけ思われているか考えて、やっと決めた覚悟だから・・千冬姉の家族として。最後まで生きるよ。だから、相談に乗ってくれてありがとうございました。会えるか分からないから言っときますが、さようなら束さん。」
『うん、また会えるか分からないけど・・こういうのも何なんだとは思うけど‥元気でね。いっくん。』
そう言って電話を切る。涙が出て来た、やっぱり、俺は死ぬという現実に、最後の希望にも見捨てられたような気がして。
だからこそ、今泣いたら・・もう泣かない。最後の時は笑って逝こう。
その為に、思いっきり泣いた。卒業証書を抱きしめて、写真立を抱きしめて。
人生でコレと言うほどないほど泣いた。もしかしたら千冬姉には聞こえていたかもしれない。でも、抑えられなかった。
翌日から俺は笑うようにした。怒らない、泣かない。そんな顔で居る俺を千冬姉は心配したが、俺が追い立てるように
「俺が迷惑かけたのに、結局は千冬姉に迷惑かける事になっちゃったけど。それでも他人にまで迷惑かけちゃいけないよ。」
と言うと、しぶしぶドイツにまた教官の期間が有るからと戻って行った。そして、一日一回の連絡が日課になった。もし俺に何かあればすぐに日本に帰ると宣言したそうで頭を抱えたが。そんなこと言われたら、多少の事は言えないじゃんとか思いながら・・実際に軽い発作は何度もあった。それは、ちょっと体の調子が悪いと言って周りには誤魔化したが・・じりじりと体が蝕まれるのが分かった。
それは怖くなかった。覚悟を決めたから。
死ぬのは怖くない。
それでも誰かを悲しませるのは怖い。
誰かを残して行くのは怖い。
誰かの人生をゆがめてしまうかもしれないのが怖い。
自分を愛してくれていた人を残して、泣かせて、悲しまして、苦しませてしまうのが。
それが一番つらい。
誰より愛している姉を、唯一の家族と言ってくれたその姉を。
何より大事な、大切な家族を残して、悲しませてしまう事が一番つらい。
願うなら・・叶うなら、姉に思い人が出来て幸せな状態になる事を切に願いたい。
それなら何にも心配せずに笑って逝けそうだから。
もしも神さまが居るなら、俺のその願いをかなえてください。
治る可能性がないなら・・可能性が有る未来をください。
唯一の家族の姉が幸せになる未来をください。
感想でも頂きましたが、この作品の主人公は
基本シリアスな一夏君です。
オリキャラは出ますが、それは主人公やかませにはなりません。
それでは次回。