僕の数少ない知る人
それは僕にとって唯一の拠り所
琲世Side
「....刀奈....さん?」
僕はその人を見て、驚いてしまった。
あの"更織刀奈"さんが僕が生活する部屋にいるのだ。
その同時に"危機感"を察した。
「ひっっっっさしぶり!!!!」
すぐ様、刀奈さんは僕に突っ込んできた。
まるで弾丸のようにまっすぐと僕にくる。
「っ!!!」
僕は咄嗟に刀奈さんの両手首を掴み、動きを抑えた。
「やっぱり琲世くんはいつ見てもすごいね♡」
両手を抑えてるのだが、顔が僕の体に近く。
「や、やめてください....っ!」
僕より小柄な刀奈さんなんのだが、
見た目とは想像がつかないほどの力が僕の手に伝わる。
刀奈さんは決して"ただの女子高生"ではない。
「はぁーやっぱり強いね〜」
刀奈さんはそういうと顔を近くのやめ、「早く手を自由にして〜」と笑いながら僕に訴えた。
「わ、わかりました....」
僕はそう言うと刀奈さんの両手を離した。
一瞬その隙で僕を襲うではないかと言う不安があったが、
その心配はなかった。
刀奈さんはあの対暗部用暗部の『更織家』の当主であり、
表に出ていなかった僕にとって数少ない知る人物だ。
「....久しぶりに会って早速、これって疲れません?」
「えーなんなのその言い方は」
「す、すみません...」
更織さんは頰を膨らませ、怒っている仕草をした。
先ほどの抵抗で多少疲れてしまった。
彼女とは初めて出会ったのは僕がISの訓練をしていた時だった。
それは千冬さんではなく、"あの人"からの指名であった。
「ルームメイトって、もしかして刀奈さんの希望で」
「"刀奈さん"じゃなくて、"楯無さん”っと呼んでほしいな〜」
そういえば僕はあることを忘れていた。
今の刀奈さんの名前は、
現在刀奈さんは17代目楯無として名前は"刀奈"ではなく、
"楯無"と言う名前を名乗っている。
対暗部用暗部「更識家」の当主と聞くと真面目な人かなと初めは思ったのだが....
ちょこちょこと子供っぽい姿になり、僕をからかうと言う場面が多い。
少しめんどくさい....
「は、はい...楯....無さん...」
「ちょっとぎこちないぞ、少年!」
僕は"刀奈さん"の方が言い慣れたせいか、
妙に気恥ずかしくて言いづらい。
むしろ誰かがいない中でも刀奈さんと言いたいのだが、
刀奈さんは『それじゃあだめじゃん』と否定した。
何度か楯無さんと呼んで3度目、
やっとオッケーをもらった。
やっぱり刀奈さんはめんどくさいところは変わっていない。
「それで楯無さん.....僕と一緒になったのは..指名ですか?」
以前出会ったことのある"刀奈さん"とは、初めて出会う人より一緒いた方がまだいいと思うが...
一夏くんは男だからそちらの方が居心地はいいと思う...
「それは私の指名じゃなく、"織斑先生"から言われたの」
「え?千冬さんが?」
「"君のIS"は危ないことを耳にしているから、私を選んだのかも」
彼女は生徒会長、つまり"学園最強"である。
それは千冬さんから聞いた情報だ。
どの生徒も教師でも最強と言われているため、
その情報は本当だと言える。
そんな僕とルームメイトでいるの理由は、"ただ一つ"しか頭になかった。
「...."僕のIS"ですか」
「ええ、それが一番の理由だね」
刀奈さんはそう言うと、扇子をパッと開いた。
その扇子には『正解』と書かれていた。
僕はそのことを聞いて、気分が暗く感じてしまった。
そのように思い始めたのは"僕のIS"を初めて起動した時であった。
その時、僕はーーーーーー
「なーに落ち込んでるの?」
「え?」
ふと気がつけば刀奈さんが僕の両肩に手を置いていたのだ
「せっかく学園に来て1日目だし、ここに座って♪」
刀奈さんはそう言うとベットに座り、ぽんぽんっとベットに誘っていた。
にゃははっと笑い、僕が座るのを待っていた。
「あの...それよりも先に報告書を..」
「そんなの、"後で"出来るんじゃないの?」
「.....はい」
僕は刀奈さんの言われたようにベットに座った。
一体何をやるのか僕は予想は着いていた。
「やっぱ琲世くんの髪、黒くなってるね〜」
「はい...だんだんと黒く染まってます」
刀奈さんと前に会った時、いつも僕の髪をいじっていた。
その理由は僕の髪色の変化であった。
始め出会った時は真っ白な髪だったけれど、
ある程度月日が流れると僕の髪に変化が訪れた。
僕の髪が上から黒く染まり始めたのだ。
それに最初に気づいてくれたのは、刀奈さんであった。
それ以降、僕と別れるまで髪の変化を見るようにいじるようになった。
「あの時出会いたての琲世くんの髪が少し恋しいかな〜」
「ははは、それは恥ずかしいですよ、刀奈さん」
「あ、今"刀奈"と言ったね」
「すみません。楯無さん」
僕はすぐに訂正して返すと、
刀奈さんは『切り替え早〜い』と笑った。
「あの...楯無さん?」
「ん?」
「"刀奈さん"と言っていいのは、どの時でいいでしょうか?」
「ん〜どうだろうね〜」
刀奈さんはそう言うと、人差し指と顎に当て、考える仕草をした。
僕はその答えを言う時を固唾を呑む。
しかし、出た答えは....
「一体どんな時だろうね〜」
「....え?」
「少なくとも、この時はダメだね〜」
刀奈さんはそう言うと、僕の髪をくるりんと指で丸めた。
このプライベートに近い状態でも言えないだなんて、残念に感じた。
久しぶりの再開なのに
「そういえば、琲世くん?」
「はい?」
「先ほど言ってた報告書って、もしかして琲世くんの"おかーさん"宛てかな?」
「....”千冬さん”をお母さんとは言わないでくださいよ...」
確かに存在的にはそうだが....
口で言われるのは少し照れ臭くなる。
「えー、でも存在はそうじゃない?」
「確かに間違ってはないですけど...」
「お?そこは認めるんだね〜」
そう言うと刀奈さんは僕の髪をわしゃわしゃとくしゃくしゃにした。
「ちょっ!刀奈さん!」
「あ、もう一回言ったな〜」
僕が間違え刀奈さんと言ってしまい、刀奈さんはさらに僕の髪をくしゃくしゃにする。
このやりとりが何度も何度も繰り返しやられた。
僕は止めようとしたが、やはり刀奈さんは強かった。
軍隊の人よりも強いことがわかる。
そういえば、僕は千冬さん以外に報告しなければならない人物がいた。
その人は千冬さんも刀奈さん、もしかしたら一夏くんも知っている人物だ。