「そろそろ休んだらどう?もう少しで終わり、って量じゃないでしょ」
山積みになった書類を見てイフェイオンが言う。
かなり大規模な騎士団になったということは、任務の数も多くなるということ。
たまにこうして任務が重なると、それはもううんざりするほどの書類を作る必要がある…
「それが仕事だもの、団長はもっと頑張らないとだよ。はい、お茶淹れたよ」
彼女はなんというか、飴も鞭もない。仕事量を見て、これならできるよね、と不可能ではない量を押し付けるといったスタンスを感じる。
もう少し優しい言葉も欲しいが、全て目を通したいのでまあ自分でやるしかないだろう。
ひとまずは淹れてくれたお茶で一服するとして、
…なんじゃこりゃぁ………
「…そんなリアクションになるくらい苦いんだ、これ」
苦い。ひたすら苦い。人生の中で一番苦いお茶なんだが。しかもその反応は失敗とかではないのか。
「うん、すごく体にいいけどものすごく苦いお茶なんだって。この前街で見つけた」
体に良かろうがいくらなんでも苦すぎる。こういう方針で復讐することにしたのかと思ったくらいだ。
ちょっと待ってくれ、「その手があったか」みたいな顔をしないでくれ。
「…その手があったか」
わざわざ口に出さないでくれ、不安になる。
「いやいや、団長に倒れられたらみんな大変だからね。病気になられたりしたら困るもの。これは必要な痛みなの」
「決してこういう大義名分で少しずつ復讐すれば私の元々の目的を果たしつつ団長と一緒にいられるなとか思ってないよ」
絶対思ってる、途中から露骨に目を逸らしたぞ…
「そういうわけだから。健康のため、全部飲んで?ね?」
…多分遠回しに自分の気持ちを伝えてくれたのだろう、少しだけ顔が赤い気がする。
なんにせよ、そんな顔で見られていては残す訳にもいかないか…
そうしてかろうじて飲み干したお茶は、一口目よりほんの少し甘い味が…
いやしない。やっぱり人生で一番苦いお茶だった。
「やっぱり団長は、危機感が足りないよ」
手足の動かない自分に跨り、イフェイオンが告げる。
夜食と言ってイフェイオンがくれた中のお茶にしびれ薬が仕込んであるなんて思ってもみなかった。普通警戒しないと思うのだが…
「ダメだよ団長、また前の私みたいに団長をどうにかしようとする人が来るかもしれないんだよ?」
前は…たしかに警戒したかもしれないが、今は違うだろう。
「演技に演技を重ねて、団長を籠絡しようって人もいると思うの、こんなふうに」
そう言うと彼女は動かないことをいいことに自分の服をはだけさせる。
「次からちゃんと警戒するように、最後までしておかなくちゃ…ね?」
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