史上最強のトリッキー対決 (打ち切り)   作:蓬莱玉の三難門

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史上最強のトリッキー対決 (打ち切り)

扉を開け、控え室から出ながら俺は一人呟く。

「・・・ようやくここまで来たな。いや、来ないわけがなかろうて。この大会にて俺が優勝することは確定事項なのだからな。」

そういいながら俺は愛剣を握る。もちろん武器に意思などあるわけがないので反応はないが、そんなところ気にしてはいけない。そんなことより気にするべきことは、強く握ったら折れかねないことだ。

閑話休題、俺の名前は『赤城 六手』。そして今俺がいるここは『全世界総合戦』の会場だ。全世界総合戦って言うのはその名の通り総合、つまりなんでもありの戦いの場だ。例えば自分の身のこなしで戦いに挑む人や、他人よりリーチの長い得物を用いて有利に戦う人、頑丈な鎧で敵の攻撃を受け付けないなんて人など、己に一番適していると思った戦い方でみんなが優勝を目指す、そんな戦いの大会だ。しかもこの大会はローカル規模じゃない。世界規模の開催が行われるビッグイベントだ。そんな大規模なイベントの決勝戦に今俺はいる。そう、つまり俺はこの時点で日本で1,2位を争うほどの力を持っているということだ。

とはいえ、俺は他の人と比べて特殊だった。まあそうだろう。何故なら、強く握ったら折れかねないような得物を使っているからだ。まあそれは後々紹介するとしよう。俺はこの誰も対策を立てることはおろか、予想することもできないような得物で相手の意表を突き、ここまで苦戦することもなく来ることができた。

聞いた話によると、これから戦う相手も珍しい得物を使っているそうだ。どうやら凄く硬いらしい。特殊な金属でも使っているのか、もしくは鎧が硬いという意味なのか、それはわからない。何故なら俺は、戦う相手については本番まで何も知らないでおきたいからだ。相手の対策を立てることに楽しさはない。戦いの中で学び、そして倒す。それこそが俺の中での『戦い』だからだ。

「もうじき入場の時間です。準備はよろしいでしょうか。」

俺の横に立つスタッフが話しかけてくる。

「ああ、問題ない。」

とうとう本番だ。俺はこの戦いに勝利し、日本一の強さを誇るときが。

「それでは入場してください。」

スタッフに促されるまま俺は通路を歩く。俺が舞台へと見えると、客の拍手が歓声へと変わる。その喜びと重みが俺を程よい緊張へと導いてくれる。さあ、いつでも出てくるがいい。日本二番目の実力者、井村 小豆よ!!

「それに対しブルーコーナー、井村小豆選手の入場です!!」

スピーカーから響くその掛け声と同時に、向かいの通路を歩いてくる人影が見える。彼の名前は井村小豆。俺と同じくしてこの大会を決勝まで勝ち抜いた者であり、ここで俺に倒される相手だ。

二人ともフィールドの中心へと相見える。常識のように握手を交わし、挨拶をする。

「よくぞ、俺に倒されに来てくれた。精々俺を引き立てられるように粘ってくれ。」

「緊張しているからって出任せを言うのはよくない。安心しろ、俺がしっかりと勝利を掴んでやる。」

俺は井村を煽ってみるが、奴は冷静に返してきた。まあいいだろう。それだけいう井村が敗北に苦しむ様を、俺は誰よりも間近で見られるのだからな。

「ところで、何故お前は優勝を目指す? ぜひ教えてもらいたい。」

「そんなのは簡単だ。ただ誰よりも強くなりたい。たったそれだけ。たったそれだけだが俺にとってそれは大いなる意義があることだ。お前はどうだ?」

「驚きだ。俺も同じ、誰よりも強くなりたい、誰よりも強いことを証明したいからこその優勝だ。」

「なるほど、ここまで辿り着いただけあって似たもの同士ってことだな。そいつは嬉しい話だ。」

それだけ言って俺が立ち位置に着こうとすると、井村が呼び止めてきた。

「すまない、最後に1つ、お前の相棒の自己紹介をしてくれないか? 戦うその瞬間まで何も知らないのがルールってもんだろう?」

正確にいえばそれはルールでもなんでもないのだが、まさかここまで俺と同じなようだ。ここまで同じだと何故かいつも以上に心が躍る。

「俺の愛剣、名前はない。しいていうなら――――」

俺はここで一回言葉を区切る。そして鞘から愛剣を抜き出しいう。

 

 

 

「――――紙スプーン、だな。」

まあ、紙スプーンといってもただの紙スプーンではない。戦闘用に改造された、特注品の紙スプーンだ。ナイフ程度のサイズ、従来の何十倍もの強度を誇る紙質。戦うために取り付けられた刃。それは紙スプーンといっていいのかは怪しいものだが、紙スプーンなのだから紙スプーンなのだ。それを見て井村は一瞬固まるが、すぐに復活して狂気じみた笑みを浮かべた。

「・・・ハハッ、最高だ赤城六手! まさか決勝でトリッキー対決ができるとは到底思っていなかった! いいだろう、俺もお教えしよう。これが――――」

そう笑いながら井村は肩にかけた保冷バッグから一本の得物を取り出す。

「――――これが俺の愛剣だ!!!!」

そういって取り出すと同時に吹雪のような低温が辺りを包む。その冷えた靄に包まれるように井村が握っていたもの。それは――――

 

 

 

「あ、あずきバー!?」

そう、かの井村屋株式会社が提供するアイス、あずきバーだった。その硬度は瞬間的とはいえダイヤモンドの次に硬い物質であるサファイアを上回ったという噂さえある。確かに鈍器のような類の武器としてはうってつけかもしれない。しかし、そうは言ってもアイス。それは瞬間的な値であって、武器として長期利用することは厳しいものだ。そうなると本人は氷魔法の使い手か、もしくは替えとなるあずきバーを何本も所持しているということだろう。しかし、例えそれでもタイムリミットはやってくる。逆にいえばそこまで逃げ切ることができれば勝てる可能性は高い。

「そうだ、あずきバーだ。おいしいだろう? 味的にも、状況的にもな。」

「ああそうだ。驚きだよ、井村。最高のトリッキー対決、なんと最高の状況じゃないか。」

「おっと、その呼び方はやめてくれ。小豆で構わない。その代わり俺は六手と呼ぶがな。」

「ああ、構わないさ。そうしてくれ。それじゃあいいバトルをしようじゃないか。楽しみにしているぜ。」

「もちろん。六手を倒し、最高の勝利を手に入れてやる。お前こそせいぜい粘ってくれよな。」

そうしてお互いは背を向け立ち位置に着いた。レフェリーの声が響く。

「それでは始めます。レディー・・・ファイト!!」

その声で俺らは飛び出す。この紙スプーンを使った戦い方は色々ある。基本はその軽さを活かし、速さで相手を翻弄する。重装備の相手には隙を狙った精密な攻撃を。相手が遠距離型や魔法を使うとしても、この速さがあれば乗り切ることはできる。果たして今回はどのような戦い方をするのが的確だろうか。

取り敢えずそのスピードをもって突っ込んでみる。




読んでくださりありがとうございました。続きはないです。よほど何かない限り書かないと思います。以上・・・。
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