近未来忍者的な世界で生き残るためには?   作:スラム街のオーク

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割とノリと勢いで書いていこうかと。


1話

 一つだけ、一つだけ誰にも負けない、とんでもなくロクデモナイ宝があるとしよう。

 

 キミはそれを手に取るか? それとも投げ捨てるか? 

 

 まぁ、何が聞きたいかと言うとだな……チート能力を渡されたらどうする? ってことだ……。 遠い昔に思える淡い前世の記憶。通り魔に殺された俺は輪廻転生なるものを経験した。

 

 元の性別は男だったはずだが、今生は女である。 いわゆるTS転生だな。 故あって一人称が私になるのはご愛嬌だと思う。

 

 さて、話がガラッと変わるが、前世の記憶を思い起こした時、この世界線が何処なのかを特定できたあの日ほど絶望した日はないと思う。

 

 東京湾に佇む人工島、〈東京キングダム〉なるモノをご存知だろうか? 彼の地がある世界線と言えば……《魔界騎士 イングリット》《鋼鉄の魔女 アンネローゼ》《対魔忍 アサギ》と言う陵◯系エロゲーに出てくる人工島だ。

 

 ああ、もうわかっただろうか? ここはリリス系エロゲーのアミダハラやらの地名も見受けられることから対魔忍の世界線と思われるのだ。 私の性別は女だ。

 

 まぁ幸い、両親は資産家なので対魔忍になることはないのだが……わかるか? 両親は資産家だ。 誘拐されかけたことが何度もあるんだけど、泣いていいよね? 

 

 身代金要求なら別にいいよ? なにさ、生殖猿オークに視姦されて、中学生で貞操の危機に陥らないといけないってなんだよぉぉぉぉぉ!? 

 

 まぁ、転生時に得た能力で切り抜けたけどさ……クマ並みの膂力持つ妖魔族とはいえ、オークは基本的に欲望に忠実なアホだ。

 

 私はモブキャラとはいえ見た目は儚げな、美少女らしく、美少女×オークのくっころ展開を幻視したか? 

 

 まぁ、未だに貞操は守ってるから、なんともいえないけどね。 さて、来月には女子高生デビューだ……気乗りしねぇなぁ……

 

 ☆

 

「ひぃぃぃ!?」

「マデ、オンナァァァあ!」

「オデ、ガ捕まエダラ、イチバンダカラなッ!」

 

 東京キングダムから離れてるはずのこの街に、なぜかオークが湧いた……粗末ながらも拳銃で武装したオークがな! 

 

 そのオークに追っかけ回されてる哀れな同級生を逃がそうと私は囮になった……あの子は病弱で私にとっては親友だったんだよ! 見捨てられるわけないだろ、私のバーカばーか! 

 

 まぁ、逃げ足の速さには自信はある。 対魔粒子とか言うモノは持っていないが、転生時に希んだ〈魔力〉を持っているからな……いや、待て。 オークが私を追いかける理由ってまさか……目を付けられた?

 

 魔力は通常「魔のモノ」が扱うモノだ。 しかし、魔女に弟子入りすることで師の魔女より継承する刺青を媒体に魔力を宿すことができるとも聞く。

 

 あ、私は「聖杯」の魔術式を持つ錬金術師である。

 両親、祖父母にも黙ってるけどね。 父方の家系的に高名な錬金術師の子孫な私は先祖返りと言う名の突然変異で魔力をその身に宿したのである。 まぁ、実際は……転生特典みたいなもんだけどさ。

 

 等価交換、質量保存の法則をガン無視でありとあらゆるモノを生み出せる魔法領域の魔術式「聖杯」はトンデモナイ代物だった。 土を金に錬成できるし、宝石にも錬成できる。 ただの土塊でも……ね?

 

 こんな夢のような魔術、目を付けられてもおかしくはないとは思うけども。

 

 でも、おかしくもある。 錬成した魔導アイテムの「封魔のアミュレット」で漏れ出る魔力を封じていたはずなんだけどなぁ……

 

「ドマレ、コムスメぇ!」

「考える余裕くらいちょうだいよ!?」

 

 パァンッと乾いた発砲音、しびれを切らせたオークが威嚇射撃をして来た。

 

 でもノマドとか言う組織……まだ崩壊してないのかな? 主要キャラ、アサギさんの年齢さえわかればどこらへんの時系列か予測は立てれると思うけども。

 

「もういいや……ねぇ、オークさん、死んでくれないかな?」

 

 もう、なり振りなんて構ってられない。 私は青く長い背中までの髪をまとめて一括りにしていた髪留め、封魔のアミュレットを外して魔力を解放。

 

 振り返った私は愛らしく嗤う。 そして右眼、その翡翠色の瞳に光を宿して……パチンと指を鳴らした。 アスファルトが蠢動して足元に、魔力で描かれたぼんやりと光る半径5メートルほどの錬成陣が浮かび上がる。

 

 錬成陣の中で私は足元のアスファルトを魔力で掴んで浮遊させると錬成により元素そのものを創り変える。質量保存の法則、等価交換の法則ガン無視で石油の成れの果てのアスファルトを金属に、鋼鉄(・・・・)に変換した。

 

 変換した鋼鉄の一部を足元に落として残りを加工(クレイミング)して盾を作り出して魔力で掴み浮遊させる。 浮遊する鋼鉄の盾に驚きながらも、攻撃を選択した拳銃持ちのオークが放った、襲いくる拳銃弾を弾き地に叩き落とす。

 

 と、盾しか作れないと思ったのか、一体のオークが私に飛びかかって来たが……

 

「だからあなた達は劣等種なのよ」

「グギャ……」

 

 すかさず私とオークの間に盾を滑り込ませると、加工。 盾の前面に隙間もないくらいにびっしりと、鋭角の円錐を瞬間的に創り出す。 哀れ、飛びかかって来たオークの末路は全身を余すことなく串刺しにされた。

 

 え? 先ほど足元に落とした鋼鉄の塊……何に使うのかだって? いや、ちゃんと意味はあるよ? 

 

「オイ、抜けガケ……?」

 

 仲間の死で動揺しないか、さすがと言うか何と言うか。 心の中で嘆息しながら、私は足元の金属塊に攻撃命令を与える。

 

 根を下ろす植物のように、錬成陣の範囲外に突如として鋼鉄の荊の蔦が生える。 と言うか、足元の金属塊から蔦を伸ばして、地を潜行させただけなんだけどね

 

 蔦は瞬く間にオークの身を縛り上げて身動きを取れなくしていた。

 

「ナ、ナンダコレハ!?」

「さようなら」

 

 愛嬌を振りまくように微笑み、私は蔦に命令を出す。 突然だが、この鋼鉄の蔦、その先端は細く尖っている……まるで槍の穂先のように。

 

 何が言いたいかと言うと、オークの急所という急所目掛けて蔦が突き進むとどうなるかってことだ。

 

 蔦に串刺しにされたオークが苦痛と恐怖で断末魔をあげた。 そのあとにできるのは前衛的なスプラッターオブジェってだけなんですけどね。

 

 私はオークの返り血を錬成陣の中で水に変えて、魔術で起こした風で濡れた制服を乾かす。 目の前のオークの遺体やら何やらを蔦を用いて錬成陣に引きずり込むと、別のものに錬成する。

 

 私の錬金術は任意で等価交換を行える……つまり、事後処理の証拠隠滅には体積を極小にできる等価交換が一番いいはずだ。

 

 オークの遺体を元に金を錬成する。 成人したオークの遺体二つを使えば……約20グラムほどの金を精製できた。

 

「ふぅ……どうせ得られる情報も無いからって殺しちゃったけどなぁ。勿体無いことしたかしら?」

 

 そう呟きながら私は、その場を後にした。

 

 ☆

 

 あれから数日の時が経ち、色々と調べ物をした。 どうやら、あの時のオークははぐれ魔族だったようだ。 というのは……ここは首都圏外郭放水路の近くなので……その奥には、ゲームで確かヨミハラが存在していたはずだ。

 

 そこからオークが逃げ出してくることがよくあるのだが、あの時は対魔忍が巡査を行なっていなかったらしい。 まぁ、人的被害がゼロな訳だから、何とかなったと思う。

 

 あの後最大まで錬成陣を広げてオークどもが居た痕跡全てを消して証拠隠滅したはずだ。 私の居た痕跡も消したかったけど、さすがに魔力で気づかれたかもしれないので、足早にその場を離れる判断をした。

 

 吉凶は不明だけどね。 錬成陣を描くと残留魔力がどうしても残るからなぁ……早く錬成陣なしで錬金術を使えるようになりたい。 そんなことを考えながら自宅への帰り道。

 

加持谷月夜(カジタニツクヨ)ね?」

「失礼ですが、貴女は?」

「その返事は本人でいいのね? 私はアサギ。 井河アサギ。 少しばかりお話を聞かせて欲しいのだけど……先日、貴女が斃したオークについて」

 

 ジーザス、まさかの主要キャラが私を訪ねてくるパターンだった。 アサギさんは間髪入れずに本題を話してくれた。

 

「単刀直入に言わせてもらうけど、貴女を保護もしくは殺害の命令を受けてるの……どういう意味かわかるかしら?」

「……さ、殺が!?」

「貴女がノマド、米連に目をつけられてるのは私たちからしても見逃せない……そのチカラは危険と判断されているわ……どうするかの判断は貴女次第よ?」

「はぁー……貧乏くじですね。 わかりました。 ついてきてください」

 

 私は元々タイミングを見計らって世捨て人見たくどっかで細々と生きて行くつもりだったが、仕方ない。 オーク程度なら倒せるが、主要キャラ最強格のアサギ嬢に太刀打ちできるはずもない。

 

 ので、コソコソと準備して居た計画を実行することにした。 外郭放水路近くの草むらにきた私は錬成陣を描き、魔術による認識阻害を解いて隠して居たものを出現させる。

 

「それは、ボディケース?」

「ええ、遺体を入れておくためのアレです。 錬成しました」

 

 言いながら私はジッパーを下げて、そこにしまって居た私の遺体(・・・・)を草むらに放り出した。

 

「な、コレは……」

「これで加持谷月夜は死にました。 まぁ、だからと言って、私を見逃してくださいとは言いませんよ」

「どうすると言うの?」

「貴女の刀か何かで心臓付近を貫いてもらえられば死んだことにできます。 これ、魂のない人形ですから」

 

 淡々とした口調で私は促した。 逡巡してアサギさんは刀を遺体の心臓付近に突き刺して、血を溢れさせた。

 

「では、契約成立です」

「契約……?」

「今死んだ私と無関係な、ここにいる少女を匿ってもらえますか? もちろんタダとは言いません」

 

 こうして、私は対魔忍の元に降った。 加持谷月夜はこの日より死亡し、影の世界で生きることと相成ったのである。

 

 ☆

 

「死んだことになっている……か」

「はい、書類上では、ですが。 ……どうなさいますか、お館様」

「あの小娘のチカラは万能だ。 優秀な錬金術師でもある……何としても手中に収めたいが、今は雌伏の時」

「御意。 では、私たちは監視を続けましょう」

 

 ☆

 

「そうか、アサギが先手を……よかろう、今は泳がせる」

「よろしかったのでしょうか、ブラック様」

「いずれ手中に収めればいい。 ともかく、あの小娘ならば「賢者の石」の錬成も可能だろう……が、今は期ではない」

「かしこまりました……」

「イングリットよ、桐生に天誅を下したいかもわからんでもないが、その機会は必ず与えてやる。 今はまて」

「ハッ! かしこまりました!」

 

 ☆

 

 少女は力を持つべきではなかったか、それとも……陰謀と謀策が月夜から目を離すのはまだまだ遠い先の未来


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