緋弾のアリア 時を守る武偵   作:心はニート

11 / 18
10.作戦会議と三角関係

 事後承諾になってしまったが、白雪さんの護衛任務についてアリアさんに連絡したところ、意外にも快く受けてくれた。

 『魔剣』に狙われる可能性のある白雪さんを護るため、キンジ、アリアさん、オレの3人でキンジの部屋に集まり作戦会議を行うことになった。部屋の中がなんかすごいことになっているが、それはいったん置いておこう。

 

「悪いな、まずは護衛任務を引き受けてくれてありがとう」

 

「『魔剣』はあたしも追っているの。ヤツはママに冤罪を着せている敵の1人なのよ。迎撃できればママの刑が残り635年まで減らせるし、うまくすれば高裁への差戻審も勝ち取れるかもしれない」

 

「ああ、『イ・ウー』の人間らしい。俺も兄さんを追うために情報が欲しいし、そいつに白雪が狙われていると聞けばな」

 

 協力的だとは思ったが、2人にもメリットがあるらしい。超偵ばかりを狙う誘拐魔『魔剣』。都市伝説と言われるほどに正体がつかめない恐ろしい敵だ。イ・ウーと言われると説得力がある。

 

「そうか、魔剣はイ・ウーの人間なのか。だったらオレの仮説もあながち間違ってないかもしれないな」

 

「仮説?魔剣について何か掴めているのか?」

 

「ああ、もしかするとヤツの尻尾をな」

 

「本当なの?ソウジ」

 

 そう、仮説だ。白雪さんを狙う魔剣と昨日の事件。証拠は無いが繋がっている気がしている。

 

「……昨日の朝、学校に白雪さんに化けた侵入者が現れた。かなりの強敵だったが、周りにいた奴らと一緒に捕まえて事なきを得たんだ」

 

「周知メールが来ていた。本物の白雪が校内の温室にいる時に同時間に現れたらしいな」

 

「ああそうだ。何故か見つかるリスクを負って廊下を堂々と歩いていた。何か理由があったのかと思って考えていたんだ」

 

「本物がいる時に、わざと見つかるようなマネをする意味があるって言うの?」

 

 あの時あいつが『白雪さん』だった理由。今回の『魔剣』の件と合わせれば一つの作戦が見えてくる。

 

「逆に考えてみたんだ。大勢の人間に見られる必要があった、ってな」

 

「見られる必要があった?」

 

「アリバイ工作だよ……白雪さんを誘拐するための」

 

「なんだって?!」

 

「……そういうことね。『白雪』が大勢の人間に見られている時に、本物の白雪を誘拐するのよ」

 

「……!そうなれば目撃証言もあやふやになる。白雪が同時刻に現れることで『いつ』『どこで』白雪と会ったのかという情報が交錯するのか」

 

「ああ、それこそが『魔剣』の手口。『魔剣』は2人組み、もしくはもっと複数人のチームじゃないか、って言うのがオレの仮説なんだ」

 

 これは仮説に過ぎない。だがこう考えれば『魔剣』が都市伝説だと言われる理由にもなるかもしれない。かく乱要員や目撃者を排除する役割を持った人間が組んだ誘拐チームならば、証拠を残さず迅速に誘拐できるだろう。目撃証言も不確かになり、捜査が困難になる。

 

「でも待って、ソウジ。だったら何も学校内じゃなくて、女子寮とかもっと離れたところに『白雪』を配置すれば良いんじゃないの?」

 

「そうだな。それに本物の白雪の方に『魔剣』が現れたわけじゃないんだろ?」

 

「だから仮説なんだよ。ヤツには他にも目的があったかもしれないし、見当違いかもしれない。昨日捕まえた侵入者も口が堅いヤツでなかなか吐かないらしい。でも無関係とも思えない」

 

 このタイミングで白雪さんに化けた侵入者が現れたことには『魔剣』と何かしらの接点がある気がしてならない。アリアさんも何か引っかかるのか、考え込むように俯いている。

 

「……その侵入者の目的ならあたしに心当たりがあるわ」

 

「侵入者に会ったのか?アリア」

 

「直接会ったわけじゃないけど、この前女子更衣室のロッカーを開けたらピアノ線が仕掛けてあったのよ。あたしが……その、身体的な理由で、ロッカーの中に潜り込まないと服が取れないのがわかってて、首の位置にちょうど当たるように設置されてたの。……そして白雪があたしのロッカーで何かやっているのを見た人がいる」

 

「……それはおかしいな。確かに白雪ならやりそうで怖いが、そんなトラップは強襲科の3年や諜報科じゃないと習わないはずだ」

 

「なるほど。それをやったのは侵入者の『白雪さん』で、本物の白雪さんに罪を着せるためか、校内でのかく乱と同時にアリアさんを狙った、ということかもしれないな」

 

「そうね。いくら嫌われてるからって、命まで狙われたらたまったもんじゃないわ」

 

 そんなトラップを仕掛けたとしたら、オレの感覚では100%偽者がやったと思うのだが、キンジの感覚ではやりかねないらしい。アリアさんが嫌われていると言うのは、恋のライバル的なアレだろう。……え?やりかねないの?白雪さん。そこまでしたらさすがに冗談じゃ済まないぞ。

 

「……とにかく、捕まえた侵入者が口を割らないことには、確かなことはわからないけど、今まで存在すら怪しいとされてきた『魔剣』だ。一筋縄じゃいかないと考えるべきだな」

 

「そうだな。それで具体的に白雪を護るための作戦はなんだ?」

 

「キンジが24時間体制で護る、以上だ。おはようからおやすみまで、そしてお休み中もお前が護れ」

 

「……俺はいつ寝るんだ?」

 

「寝るな、がんばれ。以上だ」

 

「以上だ、じゃない!普通は交代制だろ。それにずっと一緒にいれるわけ無いだろ」

 

 往生際の悪いやつだ、もうこれは決定なんだよ。白雪さんがどうしてもキンジと一緒じゃないと嫌だって言うんだ、仕方ないことなんだよ。というかなんで知らないんだ?こいつ。

 

「アリアさんに承諾とったハズだけど。白雪さんしばらくここに住むからな」

 

「ええ、聞いてるわ」

 

「俺が聞いてない!俺の部屋なんだから俺に承諾取れ」

 

「いいじゃない!ここで一緒に住んだ方が護りやすいし。白雪もそれが良いって言ってるんだから」

 

「なんで俺抜きで話が進んでるんだよ……」

 

 どうやらうまく連絡が通っていなかったようだな。でも今更どうしようもない。教務科にも言っちゃったし多分そろそろ来るし。

 

「そろそろ武藤が白雪さんと、荷物を載せてここに来るだろうから先にこの部屋を片付けよう、そうしよう」

 

「無駄に手際がいいな。俺じゃなくてお前の部屋の方に泊まらせた方が良いだろ」

 

「…………毎日オレの部屋からお前の身の回りの世話をしに行く白雪さんを見送るってなんの拷問なんだよ」

 

「何でそれが拷問になるんだ?」

 

 新手のいじめか?毎日オレの心に癒えない傷を残していくのか?なんて恐ろしいことを考えるんだキンジのヤツは。想像しただけで死にそうだよ。

 そんな恐ろしいことを考えるより今は部屋の片づけをすることが先決だ。

 

「……ところでこの部屋はなんでこんなにめちゃくちゃなんだ?銃痕とかあるけど」

 

「ああ、白雪がアリアに攻撃を仕掛けてな。アリアもその喧嘩を買ってこんな感じだ」

 

「アイツが悪いのよ!あたしは自分の身を守っただけだわ」

 

 白雪さんがアリアさんに攻撃を仕掛けた?そんな馬鹿な。オレの知っている白雪さんはおしとやかな女の子だ。そんな物騒なことをするなんて、にわかには信じがたい。

 ……いや、まてよ?可能性ならある。そうだ、まさかこれも――

 

「……キンジ、1つ聞かせてくれ。それは本当に本物の白雪さんだったのか?」

 

「ああ、いつもの白雪だった」

 

「…………」

 

「…………?」

 

「……そ、そうなのか?」

 

「間違いないな」

 

 自信満々に即答されてしまった。そう、なのか?違和感を感じているのはオレだけ……?もしかしたら『魔剣』の1人かと思ったが、幼馴染のキンジにここまで確信を持って断言されてしまうと納得せざるを得ないな。

 ……まてよ?まさかこのキンジもキンジじゃない?……いや、落ち着け。疑心暗鬼になるんじゃない。さっきまで会話をしていた感じでは、キンジから違和感は無かった。……!そうだ、昨日の侵入者は言っていた。オレに見つかった事を『想定内』だと。もしかしたらこちらが仲間を疑うように仕向けているのか?完璧な変装が可能だということを、こちらに見せつける意味合いもあったのかもしれない。

 だがそれも全て仮定に過ぎない。今確認できることはあまりないな。とりあえず白雪さんについて確証を得るべきか。

 

「ちなみに白雪さんはどんな時にそんな感じになるんだ?それと今回はどんな状況でそうなった?」

 

「基本的に俺が女と一緒にいる時だな、急に暴れだすんだ。今回は俺の携帯に、『女の子と同棲してるってホント?』に始まる49通のメールが来た。直後に白雪本人が突入してきて、アリアを見つけるなり攻撃して、この有様だ。……どうしてそうなるのか全然わからん」

 

「……わかれよ。バカなのかお前」

 

「?!今のでわかったのか?」

 

 ……そうか、白雪さんはそういうタイプの子か。口喧嘩程度で済むならかわいいもんだが、この部屋の惨状を見るに相当激しいみたいだな。自制が効かないというのはなかなか厄介だ、やりすぎたら誰かケガするかもしれないし。オレもしょっちゅうキンジを殴ろうとするからわかる。

 しかしそうすると、ここでキンジとアリアさんと一緒に住まわせることは失敗だったか?いや、逆にチャンスかもしれないな。うまいことやれば大人しくなるかもしれない。

 と、なると次に確認するべきなのはアリアさんとの関係だな。

 

「……それと今度はアリアさんにも聞きたいんだけど、キンジとアリアさんは付き合っているのか?っていうかお互い好きなの?」

 

「な?!そ、そそんなわけ、な、ないじゃない!!何言ってるのよ!!」

 

「誓ってな無いな。ありえないだろこんなお子様」

 

 これも違う?白雪さんの情報では2人はそういう関係のはずなんだがな。だがアリアさんはこういう恋愛話に耐性がないらしいし、キンジが嘘を言っている様子もない。……話の流れからして白雪さんの暴走による勘違いといったところか?

 何やら喧嘩を始めてしまった2人は置いておくか。今の人間関係を整理すると、アリアさんとキンジは付き合っても好き合ってもいなくて、白雪さんはキンジが好きすぎて暴走して、キンジは白雪さんの好意に気付いて無い、と。

 

 ……白雪さんを諭して、暴走を抑えられるようにするのが最善だろうか。いっそキンジと白雪さんが付き合えば丸く収まるか?少なくとも好意に気付けば今よりマシにはなるかもしれないな。

 

 

 そんなことを考えていたところで、武藤が白雪さんを連れてきたようだ。……このややこしい人間関係もどうにかしたいところだが、まずは護衛任務が優先だな。

 

 『魔剣』――得体のしれない奴だが何としてでも任務は遂行して見せる。どこからでも来い!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。