ベルがヘスティア・ファミリアに入団した際にソラールから渡されたもの。学んだこと、失敗したこと、助けてくれた者の名前などがびっしり書き残されている。
「今日はみんなおつかれさん!さぁ!飲んで食べてや!」
入店してきたのはロキ・ファミリアは乾杯の声と共に宴を始めた。周りの人々は畏怖と敬意の視線で彼らを見る。
『ロキ・ファミリアだ…出来るときいている…』
『なるほど…強い。これが本物か…』
『ダイスンスーン…』
彼らの笑い声や話を聞く限り遠征の打ち上げであるのは明白だった。ソラール達は彼らから離れた場所で食事をしていたため気づかれていない。彼らはここのお得意様であるとシルから説明を受けるソラール。そんな彼の隣で萎縮してしまっているベル。異変に気づくのに時間は掛からなかった。ベルが先程からチラチラ見ている剣姫、アイズに目をやる。なるほど、ベルが慕っているのは彼女かと理解し納得するソラール。そして彼らが彼女の
ある程度時間が過ぎた。その時であった。
「そうだアイズ!あの話を聞かせてやれよ!」
大きな声で話す人狼。その声色は酔っているのが分かるほど頬を上気させ機嫌よく話し出した。
エンカウントし、上階へと逃げ行くミノタウロスのこと、ミノタウロスに襲われていた少年のこと。彼の口から語られるその少年が笑い者にされている。ソラールはふと隣のベルを見た。拳を握りしめ、唇を噛み締め、瞳を揺らしている。あぁ…なるほど、彼らがトマト野郎と笑い者にし酒の肴にしているのは…ベルなのかとソラールは理解した。
「それにしても情けねぇ野郎だぜ…」
「ほんとざまぁねぇよな。ったく、泣き喚くくらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての…」
ソラールの動きが止まり話に聞き入る。
「ドン引きだぜ…なぁアイズ?」
次第にその少年への批判へ話は転向していく。
「ああいうヤツラがいるから俺達の品位が下がるっていうかよ、勘弁して欲してほしいっての……」
あぁ…これは堪らない…気に入らない…なぜ…なぜ否定する…
ソラールの心の中でどす黒いナニかが渦巻く。
「いい加減にそのうるさい口を閉じろベート。ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利はない。恥を知れ」
共に酒の席に参加するエルフが咎めるように注意する。彼女と剣姫だけがその話に参加することなく静かに静観していた。
「流石エルフ様ってか?ふざけんな!救えねぇヤツラを擁護して何になる?英雄気取りの大馬鹿野郎をよ!それはてめえの失敗をてめえで誤魔化すための、ただの自己満足だろ? ゴミをゴミって言って何が悪い…それにあのトマト野郎…あの太陽を探してるっていってる
ベートが
「変人ってあの太陽の絵が装飾されてる鎧を着た人のこと?」
おずおずとティオナはアイズへと視線をやる。アイズは下を向き表情が伺えない。
「あぁ…何が太陽だよ。雑魚が夢見てんじゃねーよって話だ。それに人助けをしてるんだってな?雑魚が雑魚を助けてんじゃねーよ。あいつのせいで勘違いの馬鹿が増えるんだ!アイズもそうだろ?あんなやつじゃなくて強い雄にめちゃくちゃにされてぇだろ?」
「ベートよせ。酔ってるのかい?それ以上は僕が許さないよ」
止めに入る
団長を勤めているフィンの耳にも彼の噂は届いていた。一切の見返りを求めず、助けを求めし者を助ける。ギルドにも一目置かれている存在だ。彼のお陰で駆け出しの冒険者の死傷者が減ったのだから。力無き市民や駆け出し冒険者からすれば尊敬の対象。それを酔った勢いだからと言って貶すことは市民だけで無く周りの冒険者をも敵に回すことになる。
その瞬間ソラールの隣で黙っていたベルが立ち上がり駆け出した。予想外の動きに呆然としていたソラールとシル。そんな二人を置いてベルは店の外へと出ていった。
「ベルさん!」
「ベル!!すまないミア殿料金はここに置いていく!」
「アンタ!お釣りは…じゃなくて!お金は要らないって言っただろ?!」
ミアの言葉に後ろ髪を引かれつつソラールもベルを追い店の外へと出ようとする。
「なんだ?食い逃げか…ってソラールさんの連れじゃないか?」
「何があったんだ?」
「ソラール……」
ソラールに気づいたアイズ。驚きの表情と申し訳なさが入り交じった表情で彼を見つめていた。
ソラールは立ち止まりロキ・ファミリアの面々を見渡しながら悲しそうな顔をした。
「……俺のことは何と言ってくれても構わない。馬鹿にしようが、罵ろうがな。俺自身変人だと自覚しているし言われ続けてきたから慣れている」
憤りを隠せない声でロキ・ファミリアへ伝える。
「
「待って!!」
吐き出すようにそう呟くとベルを追い店の外へと飛び出していった。アイズの静止も聞くことなくオラリオの夜の町へと消えていった。
◇
「ベル!ベル!」
「ソラールさん……」
町を走り回り思い当たる場所を探して回ったソラール。もしかしたらダンジョンへ向かったのかと思ってバベルへと向かうと思った通りダンジョンへ向かっていたと思われるベルがバベル前の広場で立ち止まっていた。
「貴公…良かった。自棄になってダンジョンへ向かったかと思った」
「あはは…確かにそう考えたんですけど…ソラールさんに注意されたことを思い出して……」
冷静になったのか、乾いた声で笑ながらそう答えるベル。しかし彼はこちらに向こうとしない。
「貴公。あまり気にするなとは言わない。だが俺は貴公を…」
「悔しかったんです」
ソラールの声を遮るようにベルが絞り出すように話し出した。
「僕のことで笑われるのはいいんです…事実です…でもそれ以上にソラールさんが…関係のないソラールさんがバカにされたんです!」
嗚咽を混ぜながら肩を震わせるベル。背中越しの為表情は伺えないが泣いているのは明らかだった。
「悔しかった!僕のせいでソラールさんをバカにされて!でもそれ以上に言い返せない僕自身に腹が立って!許せなかった!僕の勝手な行動のせいでソラールさんに恥をかかせて!」
次第に声がでかくなっていく。何も言わずただ黙って聞くソラールだった。
「だから…だから…今度は笑われないように…馬鹿にされないように!強くなりたいです!!ソラールさんや神様に恥をかかせないように」
振り向いた彼の顔は悔しさと悲しさをかき混ぜたような顔でぐちゃぐちゃになりながら涙を流していた。前に進む彼の姿はまさしく戦士であった。ソラールは頷き優しくベルを抱き締めた。
「貴公は強くなる。踏みにじられて倒されても何度でも立ち上がればいい。努力は裏切らないわけではない。結果がでないこともある。それでも…」
「貴公が憧れているあの
申し訳ないです。
言い分けはしません。
さぁ!パイルバンカーを打ち込んでくれ!