ヘスティアファミリアのソラールが使っていた。
特別な能力は無いものの持ち主と、送り主たちの心がこもったロングソード。
よく手入れがされている。
最近アイズがおかしい。ロキファミリアに所属する人狼ベート・ローガの心は穏やかではなかった。彼は朝食を食べながら想い人である
目線の先にはしきりに時間を気にしながら食事を摂る彼女の姿。彼女の周りでは
「最近アイズさん明るくなったような気がします」
「確かにねー。どうしたんだろう?」
彼女達の話の通りなのだ。最近表情が柔らかくなり肩の力が抜けたのか余裕があるように見える。そして最近は良く出掛けるようになった。たった一人でだ。フィンやガレス、リヴァリアは良い変化だと言っていた。しかし、ベートは納得がいかなかった。原因が何なのかを考える日々だ。そんな時だ、近くで団員がとある話をしていた。
「そういやこの前アイズさん男の人と歩いてたの見たんだ」
その言葉にベートの耳が動く。彼と話している女性団員はため息をつきながら朝食を食べていた。
「見間違いじゃないの?」
「ホントだって!よくわかんねぇけどバケツみたいな兜を被った男と歩いてたんだよ……」
身ぶり手振りで女性団員に説明する男。そこへ近づく1つの影。
「おい…その話詳しく聞かせろ」
◇
「太陽万歳!」
「太陽万歳…おはようソラール」
太陽に向かって太陽賛美と呼ばれるジェスチャーをとる男に声を掛ける少女。一人はロキファミリアの団員。剣姫と呼ばれる少女。アイズ・ヴァレンシュタイン。もう一人はヘスティアファミリアたった一人の団員。変人と言われているソラールだった。
「うむ?また貴公か!俺に話しかけるとは貴公もなかなかの変人だな」
その言葉を聞きムッとするアイズ。ソラールはウワッハッハッハハと笑っていた。
「冗談、冗談だ!さて今日も鍛練か?」
「うん…手伝ってくれる?」
「うむ!貴公は俺のクエストをよく手伝ってくれるからな!では早速行こうか!」
親しげに会話しながらダンジョンへと向かう二人。そんな二人を尾行する四人の男女が居た。
「あいつは確か……」
「何あれ…変なマーク」
「ぐぬぬぬ…アイズさんを…」
「ねぇ…帰りましょうよ…団長の側に居たいんだけど」
ソラールを睨み付けるベート。笑いを堪えるティオナ。ハンカチを噛むレフィーヤ。早く団長の元へと帰りたいティオネ。ベートは偶然にもソラールを知っていた。ダンジョンで変な奴がいると耳にするようになったのは5年程前、聞けば何の見返りを求めず協力してくれる黄金に輝く冒険者が居る。その身なりが鎧に太陽の装飾をした男であること。彼にそっくりだった。
初めて噂を聞いたときは気にも掛けなかったが次第に彼を称賛する声が増えていくのを聞くようになり気にくわない奴と考えていた。
生き残るのは強者。死ぬのは弱者。極端だが彼の考えはそうであった。弱者を助けるなど彼には考えられない。しかし、彼は巷ではツンデレベートと呼ばれるほどのお人好しである。
「気に食わねぇな」
吐き捨てるようにそう呟く。だが今はそんなことはどうでもいい。想い人が男と歩いている。それだけで十分だ。中途半端な優しさを振りかざす奴は
「む?すまんな。誰かが俺を呼んでいる!」
「仕方ない…頑張って…」
しょんぼりとしたアイズ。ベートの目の前でソラールが消えた。何が起こったが分からないベート。呆然と立ち尽くす彼に気づかずアイズはギルドへ向かうため人混みへと消えていった。
◇
「くそう!くそう!何でだよ!」
一人の男が2匹のコボルトとミノタウロスに追いかけられていた。あり得ない。17階層に居るはずのミノタウロスがなぜここにいると叫びたかったがそんな場合ではない。
ミノタウロスから逃げる男の名前はラリー。才能無しのラリーが、彼の二つ名である。彼は所属しているファミリアでは後ろ指を指されて笑われる男であった。彼はファミリアに所属してからの7年間、レベルが1から動かなかった。それでもファミリアの力になりたいと必死に汗を流し、血反吐を吐き、手がボロボロになるまで剣を握り振るった。しかし、弛まぬ鍛練を経ても彼はいまだレベル1のままだった。
仲間から笑われる日々。ラリーは今日こそはと一人鍛練のために七層に足を踏み入れた。一人で行くべきではないとギルドの受付に言われたのだが聞き入れなかった。もう笑われたくない。バカにされたくない。それだけが彼を動かしていた。だがそれがいけなかった。運悪くミノタウロスに遭遇。しかもコボルトもだ。戦おうにもレベルが違いすぎるのと狭い通路。必死に食らい付きダメージを与えるも効いていない。更にミノタウロスに攻撃をしようにもコボルトに邪魔され、隙をつかれて一撃を喰らう。
「俺は…こんな…あんまりじゃないか…何もできてない…何も残せてない」
盾は割れ、剣も折れ、戦える状態ではなかった。
「グオオオオオオ」
雄叫びを挙げ突進してくるミノタウロス。その瞬間彼の心の中で何かが折れた。
たすけてくれ…
突進してくるミノタウロスだったが彼の背後から光る槍のようなものが飛んできた。バチバチと音を立てながらミノタウロスの顔面に直撃。ミノタウロスが怯んでいた。
「間に合ったか!貴公大丈夫か!」
ラリーの目の前には盾を構え自分を庇ってくれる黄金に輝く戦士がいた。
◇
「ブモオオオオオオオオオ!」
怒り狂うミノタウロス。地団駄を踏み標的をソラールへと変えた。石のような拳がソラールに迫る。
「ぬっ!」
盾でミノタウロスの拳を受け止める。ソラールはカウンターは不可能だと判断し距離を空ける。そして懐からあるものを取りだし口に含む。緑花草である。この草はスタミナの回復を早めるアイテムでありアストラでは重宝される草である。攻撃をするのにも防ぐのにもスタミナ管理が大切であり、スタミナ管理を怠ると死に至る。
「貴公!見ていないで共に戦ってくれ!俺一人では倒せない」
声を掛けられたラリー。彼は戦う男の背中を見て考えていた。敵の攻撃を捌き、攻撃を叩き込む彼でさえ一人では倒せないと言う。彼はよろよろと立ち上がり予備のショートソードを構えた。
よく考えろ…
敵は連携を得意としているが、コボルトはそこまで強くない。一人の時はコボルトに邪魔されてミノタウロスにやられたが、今は二人居る。なら…
「黄金の戦士!あんたはコボルトを!俺はミノタウロスを引き付ける!」
「承知した!」
ラリーは懐から石ころを取りだしミノタウロスの顔面へ投げつける。
「こっちだ!どうした?!才能無しの俺を倒せないのか化け物め!」
ミノタウロスは怒り狂いラリーを狙う。その隙にソラールはコボルトの一匹をカウンターで仕留める。もう一匹が飛びかかってきたのを確認し彼は雷の槍と呼ばれる奇跡を左手に持ったタリスマンで出現させ、コボルトへゼロ距離で叩きつけた。
「よし!貴公今行くぞ!」
ソラールは
「さっきのお返しだ!釣はいらねーぞ!くたばりやがれ!」
目の奥へ奥へと刺す。ミノタウロスは暴れるも次第に動きが鈍くなりぴたりと動かなくなった。
VICTORY ACHIEVED
「やった…やった!」
おれはやった!
歓喜し涙を流すラリーの姿を優しく見守りソラールは使命を達成し、その場から消えるのであった。
ラリーは助けてくれた男に感謝しようと探すも黄金に輝く戦士の姿はなかった。その代わりに彼のポケットには太陽のメダルと呼ばれるものが入っていた。
◇
「あ!ソラールくん!もう戻ってたんだね!」
日も暮れて辺りが暗くなる時間。バイトを終えたヘスティアは協会の外の祭壇へ祈りを捧げるソラールを見つけて駆け寄った。
「我が主神ヘスティア様。今日も太陽の戦士として使命をまっとうしてきました!」
ウワッハッハッハハと笑うソラールを見てつられて笑うヘスティア。
「うんうん。初めは見たことないスキルだったけど人助けのためのスキルだって分かってよかった。それにしても太陽の戦士ってほんとソラールくんにぴったりだね!」
「今日も助けたのかい?」
「はい。心が折れてもなお立ち上がる
後に不屈のラリーと呼ばれる男がオラリオで有名になるのは遠くない話である。
遅くなりました。ごめんなさい…
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