私事なんですが昨日部活(剣道)の試合で同級生みんな勝ち進むなか一人だけ初戦敗退してしまいました……。゚(゚´Д`゚)゚。
この小説も素振りの後投稿しました。
部活も小説も頑張るぞ‼︎
「スズメちゃ〜ん‼︎この織田上総介が遊んでやるど〜‼︎」
信長様が、城の庭でスズメを追っている。
「あぁ、待ってよ、飛んでかないでよスズメちゃ〜ん‼︎」
あの桶狭間での激戦から数年。織田家は本拠を清洲城から小牧山城に移していた。
なぜかって?それは……
「山田ちゃん、城を空飛ぶ鳥に近い山の上に建てたけどやっぱり小鳥ちゃんは遠いかな〜」
そう、ある日信長様がいきなり「朱に交われば赤くなるというし小鳥ちゃんと遊べば空飛べるようになるかな〜♪」とか意味不明なこと言いだして標高の低い清洲から標高の高い小牧山の頂上に拠点を移したのだ。
「はい、まあ山の上と言っても鳥はさらにその上を飛びますからね〜」
私がなんかテキトーなことを言うと、信長様は庭の真ん中で駄々をこねだした。
「あぁんもう‼︎なぜ小鳥ちゃんはこの上総介から逃げるのじゃ‼︎」
いい歳した尾張の国主が城の庭の真ん中でジタバタ……これじゃあ信長様に討たれた今川義元がうかばれないかもね……
信長様は、しばらくジタバタしていた。しかし、いきなりピタリとジタバタするのをやめ、大きな声で叫びだした。
「猿‼︎猿‼︎こっちゃ来い‼︎」
「はい‼︎ただいま‼︎」
藤吉郎が足早に庭に入ってきた。桶狭間の時は物見であった藤吉郎も、その後順調に手柄を立てて、今では信長様お気に入りの家来となっている。
「美濃攻めの支度をせい‼︎稲葉山城を奪うと他の家来どもに伝えよ‼︎」
「え?」
「聞こえなかったか?小牧山は低い‼︎稲葉山城は小牧山よりも標高が高いから小鳥ちゃんとも遊べる‼︎分かったらとっとと美濃攻めの支度をせんか‼︎」
その言葉に、私も藤吉郎も唖然とした。
稲葉山城というのは、美濃(現在の岐阜県南部)の国主、斎藤龍興の居城である。確かに、標高は小牧山よりも稲葉山の方が高い。
美濃の斎藤家とは、信長様の父、信秀公の代から争いを続けていた。信秀公も稲葉山城を攻め落し、美濃を織田家のものにするという野望を持っていた。
しかし見たところ信長様は信秀公の意思を継いで美濃を攻略しようとしている訳ではなさそうだ。
「はっはっは‼︎空の上でわしを笑っちょる鳥ども‼︎待っておれ‼︎わしが稲葉山城に入ったらみんな捕まえてやるからな‼︎がっはっは‼︎」
私たちは、とりあえず織田家中の面々に、美濃攻めを報告することにした。
ま、しかし攻めてみたはいいものの、「小鳥ちゃん」という、意味不明な動機で美濃がそう簡単に落ちる訳はない。
「むき〜‼︎なぜ勝てんのじゃ〜‼︎」
織田軍は屈強な斎藤軍により、敗北を繰り返していた。
「もうやだ‼︎小牧山で小鳥を獲る方法を考えた方が早いかもしれん‼︎」
信長様は、無責任なことをほざき、暴れまわる。
「まあまあ、信長様、戦は辛抱ですよ。」
私はこの脳みそがかにみそ疑惑のくそ男を殴りたい気持ちを抑えながらなだめる。
「とりあえず軍議を開き、これからのこと考えましょう。」
織田家の家来一同が軍議の部屋に集まる。柴田勝家、丹羽長秀、佐久間信盛、林秀貞などの重臣から木下藤吉郎などの身分の低い者までそうそうたるメンバーだ。
どの家来も個性の強いものばかりだ。
私は筆頭家老だからこの中でも一番上座の方に座った。ここから見ると、皆不安な面持ちでざわめいている。確かに、先の桶狭間の時信長様はろくに軍議も開かず単騎突撃(笑)を敢行したのだから、今回はどうなることかと不安になるのも無理はない。
私は、信長様が部屋に来るまで、これでもかというほど質問や文句、愚痴などを聞かされた。
「そもそもなんでいきなり美濃攻めしたんだ。」
「全くだ。いきなり山田殿から美濃攻めを聞かされたが、理由とかをきちんと説明していただきたい。戦はむやみにするものではないですからな。」
佐久間信盛、林秀貞なんかは部屋に入ってくるなり私に文句を言ってきた。
(「小鳥ちゃん」なんて言ったらブチギレられるだろうなぁ)
とか思いつつ私は反論した。
「美濃攻略は先代信秀公の悲願。信長様はこの志を継ぎ、戦を決意されたのだ。決して小鳥ちゃんが理由ではない‼︎」
「小鳥……?」
「あ、いや、なんでもない。」
「もうそんなごちゃごちゃ言ってないで屈強な我ら織田軍がなりふり構わず稲葉山城めがけて突進すれば良いのじゃ‼︎あの今川義元をも倒した我らなら斎藤なぞボコボコじゃ‼︎」
そうわめくのは柴田勝家ら織田家の中でも武闘派の面々である。
こういう人間は言い方を気をつけないとすぐ頭に血がのぼってもはや軍議どころではなくなる。
「確かに我らは東海道一の弓取りと称された今川義元を討ち果たした。しかしそれは過去の話だ。問題は今だ。あの頃と今では状況が違う。桶狭間での戦は『守り』の戦であったが今回は『攻め』の戦だ。きちんと家中の間で議論し、これからのことを決めねばならん。」
「しかし桶狭間では信長様はろくに軍議も開かずに今川勢めがけて突進していかれた。攻めは最大の防御という。信長様は気迫の突進こそが最強の戦術だということがわかってらっしゃるのだ‼︎」
「だが今まで我らは斎藤軍に勝ててはいない。」
「気迫が足らんのだ‼︎根性が足らんのだ‼︎
元気があればなんでもできる‼︎ダー‼︎」
柴田勝家はなんかどこぞのプロレスラーみたいなことを言っている。
「まあまあ柴田様、戦の前はきちんと作戦を立たねば。我々は悔しいですが斎藤方に押され……」
藤吉郎が柴田勝家をなだめようとした。しかし
「黙れこの猿‼︎いつからわしと対等に話せるようになったのだ、この兵卒上がりめ‼︎身分をわきまえよ‼︎」
と怒鳴られていた。
さすがは鬼柴田と恐れられる男である。私は彼の気迫に吹き飛ばされそうであった。
だが私はここで負ける訳にはいかない。私は筆頭家老として、織田家の為(その織田家の当主があのバカアホクソカスゴミダコなんだが……)にもこの個性派集団をまとめあげねばならないのだ‼︎
「柴田殿、落ち着いてくだされ。ここは軍議の場、一旦落ち着いて作戦を考えるだけ考えましょうぞ。そこで良き案が出なければ突撃を軸にした行動をすればいい。この軍議は信長様の意思でござるぞ。」
「むむむむ……あいわかった。」
この柴田勝家という男は織田家への忠義なら負けない、という男だから、信長様の意思と言えば黙らざるを得ない。
「ところでなぜ戦の前に開かれるはずの作戦会議を、戦が始まった後にやるのでござる。今我々は斎藤軍に押されているがあまりにも軍議を開くのが遅くはあるまいか。」
織田家中では比較的冷静な丹羽長秀が正論を吐いた。
全くである。しかし、今までまるで作戦がないかのように美濃に攻めていたが、実は信長様がいろいろ(今考えれば余計なことを)考えていたのである。
「よっしゃあ‼︎美濃攻めじゃあ‼︎」
信長様は、美濃攻めを家中に発表してからしばらくの間、珍しくいろいろ考え、行動していた。
「よし‼︎美濃について詳しそうな人間を家来として召しかかえよう‼︎」
とか
「美濃についての情報を集めるぞ‼︎」
とか、なんかいつものバカっぷりはどうしたといわんばかりの行動力で着々と美濃攻略にむけて張り切っていたのだ。
しばらくして、信長様は美濃について詳しいという美濃出身の武将、明智光秀なる男を連れてきた。
「はじめまして、明智光秀です。」
明智光秀に初めて会ったとき、なんて行儀の良い人なんだろうと感心したのをよく覚えている。
(こんな素晴らしい人が、よくあのキチガイボケナス男の要請に応じたな……)
(この人もパッと見まともでも本当はキチガイなのか、それともよっぽどお心が広いのか……)
そんなことを考えながら私は、日々軍の編成や、武器の調達などをしていた。
そんなある日、信長様が急に兵五百と明智光秀を連れてとある原っぱに出かけた。
私も信長様について来いと言われて、なんだろう?と思いながらついていった。
原っぱに到着し、兵五百がそこに全員到着すると、信長様は明智光秀にこんなことを懇願した。
私は、それを聞いて卒倒しそうになったのをよく覚えている。
「光秀‼︎空の飛び方教えて‼︎」
私は、それを聞いて唖然とした。明智光秀も、口を開けたまま動かないでいた。
「ほら、敵、斎藤龍興は小鳥ちゃんたちに近い稲葉山城に住んでいる。だから毎日小鳥ちゃんたちと戯れてきっとすでに空を飛べるようになっているはずだ‼︎
この度光秀に来てもらったのは他でもない‼︎美濃に伝わる飛行の術を我が手勢五百とわしに教えて欲しいのだ‼︎」
信長様の目はマジであった。マジであったからこそ唖然とした。そして心の底から思った。
(コイツ……もうだめだ……)
光秀も同じことを考えたらしい。
「ひ、飛行の……術、ですか?」
光秀は目を丸くし、呆れている。
「そうじゃ‼︎飛行の術じゃ‼︎」
「すみません、信長様……まことに申し上げにくいのですが……人間は空を飛べません。」
光秀が至極真っ当なことを言う。
だが信長様は引き下がらない。
「そんなこと言って‼︎尾張人のわしには美濃の飛行の術を教えれないと申すのか⁉︎」
「いや、そういうことじゃなくて……その……ですから……人間は……」
「ええい黙れ‼︎おぬしわしに逆らうというのか⁉︎せっかく雇ってやったのにこの裏切りものめ‼︎いいもん‼︎だったらこの手勢五百はわしが、今まで小鳥ちゃんと戯れてつちかってきた経験で立派な飛行部隊にしてみせる‼︎」
そういって信長様はそれから約半日、ずうっと手と腕の振り方を延々と手勢五百に教えていた。忠実な手勢五百人は戸惑いの表情を浮かべながら夜遅くなるまで腕を振っていた。
その様子を原っぱの端で見ていた私に、光秀がこっそり
「謀反起こした方が尾張の為になるのでは?」
と言ってきた。とっさに、
「いやいや、我が主にはきちんとお考えがあってああやって無益な……いやためになる腕の振り方を教えているのです。」
と反論した。もちろん、本心とはまるで逆であったが、こうでも言わないと尾張の面子が保てなかった。
夜の原っぱ、いい大人が五百人で腕をバタバタ振っている、非常にシュールで滑稽な様子は、とても目が当てられなかった。
その後、自分たちが攻められる前に織田を叩こう、と思った斎藤軍が何度も攻めてきて、何度も応戦したが、織田家の大将が毎日ずうっと腕を振る練習をするもんだから兵の士気も上がらず、連敗記録を更新し続けたという訳だ。
そして私が、どこに勝機があるのか全く分からない作戦を自慢に思っている信長様をなんとか説得して、今こうして軍議を開いているのだ。
丹羽長秀が言うように、あのアホたわけゴミクズが変な作戦を思いつく前にこうして軍議を開くべきであった。
「信長様の、おな〜り〜‼︎」
信長様が「おな〜ら〜‼︎」とかくだらないこと言いながら軍議の部屋に入ってきた。本当に殴りたい。
「では、信長様もいらっしゃったところで軍議を始めましょう。何か良い意見のある人はどんどん出してください。」
私は、「飛行部隊養成戦法、うまくいくと思うのにな、」とか言ってるアホをほっといて軍議を始めた。
「……そもそも我々は美濃を攻略する為の拠点がない……」
最初に口を開いたのは佐久間信盛であった。
「左様、稲葉山城に突撃するにも突撃の為の拠点がないと話にならん‼︎」
あくまでも突撃にこだわる柴田勝家も同調した。
確かに、これまで織田軍は尾張小牧山から軍を出していたが、それでは少し美濃からは遠すぎた。美濃を本気で攻め落としたいのなら、敵の本拠、稲葉山城に近い場所に軍の駐屯地がある方が良い。
「しかし、問題はどうやって拠点をつくるか、でござる。」
丹羽長秀がそこに口を挟んできた。
「と、いうと?」
「まず稲葉山の近くに拠点をつくるとなると、尾張と美濃を隔てる木曽川、長良川、揖斐川などの大河を渡らねばなりません。さらに拠点となる砦をつくるとなると時間が少なからずかかりますがあまりにも時間をかけると我らの動きを察知した斎藤軍に攻撃され、拠点づくりを阻まれてしまう。」
「ふむふむ」
「要はいかに早く、斎藤軍にやられずに、大河の流れにめげずに強固な拠点をつくれるか、ということでござる。」
丹羽長秀はそう話をまとめた。
「むむむむむ……」
「難しい問題じゃ……」
「ふむ……斎藤軍は我々が拠点をつくるのを黙ってみている訳がない。」
「斎藤の来襲を防ぎながら拠点づくりなど……できる訳がない……」
議論は完全に止まってしまった。
「お腹空いたぞい☆」
険しい顔で必死に思案している我々の横でなんか信長様がほざきだした。蹴りたい殴りたい叩きたい。
「おぉ〜い、あれの用意をせい‼︎」
信長様が叫ぶとなにやら小者たちが慌ただしく動き始めた。何やら竹を半分に割ったようなものを長く繋いで、それを組んでいる。どうやら、それを台所まで繋げているようだ。
「よぉし水を流せ‼︎」
信長様が指示すると、長い竹の管に水が流れ出し、それにそうめんが流れてきた。
「やった‼︎成功じゃ‼︎室内流しそうめん成功じゃ‼︎」
私たちは、呆然とその光景を眺めていた。
「台所からそうめんを運ぶよりも流す方がはやいからのぉ‼︎」
(アホや……)
私がそう思ったその時、後ろの方で叫び声がした。
「それだ‼︎」
声の主は、部屋の隅の方に座っていた、木下藤吉郎。なみいる重臣たちの間をすり抜け、私のところへやってきた。
「ご家老‼︎運ぶよりも流す方がはやいでござる‼︎」
「は?」
私は、藤吉郎までもが壊れてしまったかと一瞬不安に思った。
「美濃と尾張の間の大河の近くに拠点をつくるのなら川を利用すれば良いのです‼︎」
「と、いうと?」
「まず川の上流で拠点となる砦の材木をきりだします。そしてそれを川に流し、途中で組み立てながら拠点をつくる地点まで持っていきます。そして流されてきた、途中まで組み立ててある材木で砦をつくります。そうすれば普通に砦をつくるよりもはやく砦をつくることができます‼︎早くすれば一夜にして砦をつくることができます‼︎」
一同静まり返った。
「……藤吉郎の意見に反論のある者は?」
「……」
「では藤吉郎に砦づくりを任す‼︎見事斎藤軍を防ぎながら見事一夜にしてつくってみせよ‼︎」
「ははっ‼︎」
その後、藤吉郎によって砦は異様なスピードで完成し、それを拠点に、織田軍は美濃を攻撃した。
あまりにも織田軍がはやく砦をつくってしまったことに驚いた斎藤軍の中には織田軍に寝返る者も続出し、永禄10年(1567年)、ついに美濃稲葉山城は陥落した。これにより織田家は尾張、美濃の二カ国を治める戦国大名となり、信長は天下布武への道を歩みだした。
しかし、その天下布武のきっかけがまさか「小鳥ちゃん」だったとは、後の世の人間は、知る由もない。
お楽しみいただけましたでしょうか?
次話もお楽しみに〜♪
(僕の小説の評価、感想、お気に入りなど待ってま〜す☆
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