アリサがアナグラにやってきた。
パッチリとした瞳。雪のように透き通った白い肌。負けん気の強い態度。
口から出る敬意の欠片もない言葉の数々。
平然と上から喋るロシアっ娘は、あっという間にアナグラの雰囲気を険悪にした。さすがやでえ…。
ただまあ、彼女が精神的に不安定でメンタルプログラムが組まれているらしいことがツバキ女史から僕やリンドウ、サクヤさんと言った面々には個別にこっそり教えてもらった。リンドウもサクヤさんからも聞いたかどうかの確認されたけど、僕に教えたところでどないせえっちゅうねん。20型ガット真やぞ。足手まといェ…。
要は気にかけてほしいということなんだろう。気の強いツバキ女史が珍しく心配そうにしてたし…。
まあそれはそれとして。
おくしゅり(坑アラガミ化薬)をペイラー榊博士が作っている間、僕は普段の任務をこなしつつ、人型のアラガミを捜索することになった。
あの後榊博士に真っ先に
「人型のアラガミなんてそこらにたくさんいるじゃないですか」
と言ったら、
「本当かい!?」
なんて気色ばんで詰めよって来た。
そこらにたくさんいるじゃない。シユウが。
そう答えると、
「違うよ…。確かに人型だけども…」
とか言ってがっくりしていた。
じゃあ神機兵かな(すっとぼけ)
…シオ?フェンリルの旗?なんのことやらさっぱりわかりませんね。
今のところ、ユウ君が成長してくれることとリンドウが生きている確率をあげる以上にストーリーに介入するつもりはない。無印やらバーストをやってきた身としては、下手な介入で原作から外れる方が不味いと思うの。主に終末捕食が。月があんなんなってしもたからね。仕方ないね。
つまり、さよなら幻想の平和。いらっしゃい世紀末。
どうあがいても世紀末なあの感じの世界へようこそ。楽しくなってきましたねぇ(ゲス顔)
さて、今日は(悪い)噂で持ちきりのアリサたんが、リンドウ&サクヤさんという超絶高生還率パーティーで出撃している。
うん、それはいいんだ。それは。
だけどね?だからと言って、残りの第一部隊に僕を突っ込むのはやめてください。僕はジーナさんとが良いんだい!そう思ってクソデカため息をついていると、神機を担いだフードマンなソーマが声をかけてくれた。
「なに今さら暗い顔してやがる」
そうは言うけどさぁ…。
僕たちは今、贖罪の街の出撃前の高台にいる。
メンバーは僕ことエリック上田。
そしてコウタ君。元はツバキ女史の神機とか羨ましい。僕の20型ガット真と交換しよう。
さらにユウ君。君、このあいだオウガテイルを狩る任務で出たヴァジュラを倒したんだってね。ヒバリちゃんが言ってたよ?交戦は避けて下さいって言ったはずなのに、気付いたら戦ってたって。そしてさらっと倒してたって。…彼女の負担は計り知れない。
ええい、極東の神機使いは化け物か!
ところでその新型神機いいね。僕のと換えない?
あとソーマ。このあいだ君リンドウに叱られてたね。
放っておくと自分から死にに行くようなやつには何度だって言うぞ。絶対に死ぬな。って。
彼の友人としては、リンドウの提案に賛成である。君影の主人公やからね。
…ところで皆さん、お気づきいただけただろうか。
そう、このメンバーだと、リーダーは僕になるということを。
コウタ君(新人)、ユウ君(期待の新人)、ソーマ(死に急ぎ野郎)、上田(一応二年目)。
はい。出撃前にもツバキ女史とヒバリちゃんから言われました。今回のリーダーは自分だから頑張れと。気が乗らないけど、まあやりましょう。
「よし!じゃあまあ始めようか。
とりあえず、今回の第一目標の共有をしよう。
今回の第一目標は、『絶対死なないこと』。以上!」
「や、それでいいんすか」
コウタ君がツッコミをいれるも、正直これが真理だ。それでいいです。
三回死ねば(というか戦闘不能になれば)ミッションは失敗になる。
でもね。無印のストーリー終了後のストーリー用のこう、光ってるミッションがあるじゃない。あれだと特にそうなんだけど、割りと普通に三回死ぬ。乱戦は特に。
マータとピターの組み合わせは凶悪でしたね…。ええ。
だが、自分一人でもなんとか生きてさえいれば、まだ可能性はある。他をリンクエイドしまくる機構となるのだ。それで乗り切ることが出来る時もある。死なないのが一番です。
「コウタ君。今は倒せなくても、生きてさえいれば倒せる日が(いつか)来る(かもしれない)。だから、それでいいんだよ」
「そういうもんっすかねー」
「ソーマ、ユウ君。いいね?」
「…(コクリ)」
「…チッ」
若干不安なメンバーもいるけど、今回の相手はノーマルグボロ、かつ危険度2のミッション。
油断と慢心をしなければ、五分から十分で無事に倒せるはず。
さあ、僕たちの戦いはこれからだ!
僕は颯爽と神機を持って、高台から飛び降りた。