「…で、またこの男くさい面子なのかい?」
「まー、そう言わないで下さいよ。なんか、サクヤさんはツバキさんから話があるらしくって」
「何でもいい…。さっさと行くぞ…」
「…」
やあ皆。今日は僕こと上田エリックとツンツン無口系ヒロインソーマ、あと我らが主人公ユウ君と、おまけでコウタ君の四人でミッションに来ている。
目標はボルグ・カムラン。ヒバリちゃん曰く、
『緊急要請です。「ボルグ・カムラン」が上陸しました!今回が極東での第一例ですね…
早期の駆除をお願い致します!』
ってユウ君に言ってたけど…。あれ、僕博士のおつかいでボルグ倒しまくってたような…。あれは堕天種の雷だからノーカン的な?
そう思って見てたら、ヒバリちゃんにニッコリ睨まれたでごさる。ひえっ。あれは
『余計なことは、言わないでくださいね?』
という脅しだ…。きっとそうにちがいない…。
「さて、今回のリーダーはユウ君…で、いいのかな?」
「…」
さっきからユウ君全然喋ってくれない訳だが。
「まあ、とは言え僕は後衛だし、コウタ君も後衛。ソーマは前衛だから、ユウ君は前衛寄りの遊撃…ってところかな」
まあ、前にこのメンバーで動いた時とあらかた一緒である。つかユウ君、これは君がやることやで?
「そいつに何を言っても無駄だ…。
猪突猛進の死に急ぎ野郎にはな…。集合の合図も、各員索敵の合図も出しゃしねえ…」
「あ、ソーマ!何もそんな言い方しなくたっていいだろ!」
ソーマにコウタ君が何か言ってるが、
「…何か変な事考えてんじゃねえだろうな」
ソーマに睨まれました。なんでそんなに勘がいいのん…?アラガミ化すると、勘が鋭くなるの?僕もアラガミ化するしかないな…。
「さっさと行くぞ…」
「あ、おい!ソーマ!」
あ、ソーマが痺れを切らして行ってしまった。
やれやれ、僕達も行くとしようか。…っと、その前に。
「ユウ君、アリサ君の容態は…?」
そう問いかけると、ユウ君は黙って首を横に振った。復帰はまだ出来そうにない、か…。
「なら、アリサ君と話は出来たかい?」
そう聞くと、今度はしっかりと頷いた。ってことは、感応現象はもう起きた後か…。
「…ユウ君、彼女もまた、僕達と共に戦う仲間の一人だ。アリサ君のこと、よろしく頼むよ」
そう言うと、彼は頷いた。…いい目をしている。これなら安心かな。
僕は肩をすくめて、ユウ君と共に二人を追いかけた。
「いやー、意外と楽勝でしたね!帰ったらバガラリー見るぞぉ!」
「あっつぅ…」
場所が地下鉄なので暑いのなんの。ソーマはよくフードなんかかぶっていられるなぁ…。なんて。
呑気に考えていた時だった。
「…」
ソーマがじっと黙っている。恐らく原因は、先ほど僅かに聞こえた足音だ。一瞬聞き間違いかと思ったが、ソーマが警戒しているってことは間違いない。
僕はコウタ君とユウ君に静かにするよう人差し指を口に当てて、じっと耳を澄ます。
「ソーマ…」
「ああ…」
こういう時、ソーマは僕の言いたいことを理解してくれるので助かる。
ズン……。ズン……。ズン……。
一定の間隔で聞こえる足音が、徐々に大きくなる。…さっきまでの戦闘音を聞かれていたか…?
だが、大分時間が経ったはずなのに…。
そう考えた瞬間。
ゾクリと肌が粟立った。来る!
「ソーマ!」
そう叫んだ瞬間、グアアアアッ!という独特な咆哮が響き渡った。
馬鹿な、あれはハガンコンゴウのーーーーー。
そう頭では考えながらも、身体は直ぐ様音の発信源から距離を取る。そして直ぐ様聞こえてくる、アラガミの走る音。くそっ、通信も今は何故か聞こえない!かくなる上は…!
「全員戦闘準備!来るぞ!」
そう叫んだ時には、ソーマはもうハガンコンゴウに向かって駆け出していた。
くそ、乱入なんてゴッドイーター2からだろう!?
まさか支部長の差し金か、とも思ったが、それなら何故このタイミングで…?
なんにせよ、今はコイツを片付けるのが先決か!
僕達は、ハガンコンゴウに襲いかかったーーーーー。
「いやー…。ほんと、どうなるかと焦ったよ」
帰投するヘリの中、コウタ君が脱力しながら呟いた。正直、同感だ。
あの後、ハガンコンゴウを倒す直前くらいに通信が回復していることに気付いた。ヒバリちゃん曰く、ボルグを倒したか分からないまま通信不能に陥り、今まで復旧にかかっていたとのこと。
タイミング的には、僕達がボルグを倒す少し前くらいから通信が出来なくなっていたみたいだとソーマが教えてくれた。
僕達の通信機器に不具合が同時に発生したのか、アナグラからの通信に問題が発生したのかは分からないらしい。これからリッカちゃん達整備班が調べることになるんだろう。
ふと、ヘリの窓際の座るソーマが考え事をしているのに気付いた。ところで何でキミ地べたに座ってんの?
「ソーマ」
「………………………………………なんだ」
気付くのおっそ。とはいえ、声をかけられた事に気付かなくても、僕がソーマの顔を見ているだけで話しかけられたのだと分かるのはある意味凄いかもしれない。
「今回の出来事、どう思う」
「…さてな。ただ、偶然じゃねえ事だけは確かだ」
そう問いかけたが、ソーマはそう言ったきり、顔を反らしてしまった。ソーマはヘリの窓から、じっと空を見ている。
…なにやらキナ臭い。いや、それも今さらか。
一つだけ分かるのは、支部長が黒幕だということだ。
…それだけで充分な気がしてきた。