「お兄ちゃーん!」
「ん?」
いつも通り、ジーナたんと共にけっこう時間がかかりつつも、一度も死ぬことなくグボロを解体した帰り。
ゲートをくぐってロビーに入ると、愛しい妹の声が。はて?何故に?
そう思っていると、たたたっと階段を上ってくるエリナの姿が。お兄ちゃんはここだ!エリナー!
「きゃー♪」
かわいい声を上げながら勢いよく抱きついてくるエリナを全身で受け止める。ああもうエリナはかわいいなあもう!
「…その子がエリックの妹さん?」
ジーナがエリナを見つめながらこちらに問いかけてきた。心なしか、若干普段僕を見る目よりも優しげな気がするのは気のせいか?その優しさを僕にもください。
「そうだよ。…さ、エリナ。
彼女はジーナ。僕の頼れるパートナーだ。ご挨拶しなさい」
「うぅ…」
エリナにそう言うも、エリナは僕の身体の陰に隠れてしまった。
「ジーナ、エリナはシャイなんだ…」
「…」
そう言って僕は肩をすくめた。こればっかりはなぁ…。
エリナは僕の背中からぴょこりと顔だけ出して、ジーナを見ている。
すると、ジーナがそっ…とエリナに近付いて、エリナのそばでしゃがんだ。
「…私はジーナ・ディキンソン。貴女のお兄さんの仲間よ」
「ジーナ、さん…?」
「ええ」
そう言って、ジーナは優しく微笑みながらエリナに向かって聞いた。
「貴女のお名前、聞かせてくれるかしら…?」
ジーナさん、その笑顔を普段の僕にも分けて下さい。
そんなことを考えながら、エリナがおずおずと、ジーナと話し始めるのを見ていたところ、非常に聞き覚えのある、しかしうざったい声が響きわたった。黙るフォイ!
「久しぶりだな…。友よ!
今ここに!君の盟友!エミール・フォン・シュトラスブルク、華麗に見参!」
声がした方を見ると、無駄に洗練された無駄のない無駄な動きでこちらに近付く
うわぁ…。正直、あんなのと同類に見られたくない…。きめえ…。なんだそのぬるぬるした動き。
「…というかエミール。何故君がここに…?」
まだお前、ゴッドイーターちゃうやろ。見た限り腕輪もないし。そもそも貴様の登場はあと三年後だ。僕とジーナが結婚してから出直してこい。
「友よ…。君は、自らが言ったことをもう忘れてしまったというのか…。
あれほど熱心に僕に頼んでおきながら、記憶にないというのかあ!?」
うぜえ。あと暑苦しい。
そもそも、エミールに頼んだ記憶とか俺にもないしエリックにもあまりない。なんのこっちゃ?
あと周りからの視線がすごくツラい。やめて、そんな目で僕を見ないで!僕はこんなのと同じ扱いされたくないです!ン拒否するぅ…。
「…君は、エリナのことをよろしく頼むと僕に言ってきただろう?しかもその後すぐに極東に行くわ神機使いとして活躍し出すわ…。少しくらい、連絡をくれても良かっただろうに」
眉を八の字にしながらそう言うエミールだが。エリックの記憶と若干の齟齬がありますねぇ…。
「…エリナのことをよろしく頼むと言ったのは、『僕に何かあった時は』と言ったはずだが?」
「…。そ、そうだったかな?」
分かりやすく狼狽えだしたエミール。だが、ここで追撃の手を緩めるつもりはない。
まだ俺のバトルフェイズは終了してないZE!
「それに、連絡なら既に何度かメールを送ったはずだ。それも確認してないのかい?」
「メ、メール…?
あ、ああ!いや、もちろん確認しているとも!
ほら、僕が言いたかったのは、そうではなくてね!」
「そうではなくて?」
「……………………………………………………………………………………………………。
そ、それよりも!何やら雰囲気が暗い気がするが、何かあったのかい?なんだかこう、待っている間にエリナ君も怖がってしまうような暗さがだね…」
あ、露骨に話題そらしおったこいつ。
まあ、相変わらず暑苦しいうえに鬱陶しいことこの上ないが、こいつの善意は100%本物だということもまた知っている。ここは付き合ってあげるか。
仕方ないなぁのび太くんは。
「…少し前に、ここの大黒柱のような先輩が消息不明になった。まあ、生きてはいると思うが…」
「その割りには、何だか暗い表情の人が多くないか…?」
さすがに気になったのだろう、声量を落として聞いてくる。まあ、これでも多少良くなった方というのだからな…。
「…少なくとも、僕以外にも生きていると信じる人は多いんだ。ただ、異例の捜索の打ちきり、不自然な任務の地域の重複…。やけに早い期間でMIAとなったこともそうだが、おかしな部分が多くてね」
「…消された可能性がある、か」
そう言うエミールは険しい顔をしていた。
そう言えば、エミールもエリックも故郷のドイツでは貴族階級高等学校に通ってたんだよな。
策略、権謀、利権、裏切り…。そういったものは、ある意味隣人でもある訳か。すっとそう思い当たるというのはまあ、そういうことなんだろう。
やれやれ、人類は未来永劫そういう宿命なのかね…。
「…あまり大きな声では言えないが、エイジス計画についても、どうやらキナ臭いものがありそうでね。はてさて、どうなっているのやら、だ」
俺がそう呟くように言うと、エミールはやけに良い姿勢で顎に手を当てて考えだした。…多分これ、本人はただの考え事してるだけのつもりなんだろうなぁ…。
「…エイジス計画か。それについてだが、友よ」
「なんだい?」
「フェンリル本部からも、資材の供給が行われているのは知っているか?」
「ああ」
この前博士にも聞きました。なに?それそんな大事なことなん?
ここ、テストに出ます。的な。
「フェンリル本部も、この極東支部と同じく、内部居住区の周りにアラガミ装甲壁を張り巡らせている。そして、外部居住区にもアラガミ装甲壁を張り巡らせようとはしているが…いかんせん、資材が足りておらず、神機使いがせいぜい見回りに来る程度だそうだ」
「だろうね」
それについては、エリックも記憶の中で驚いていた。
故郷ドイツにいた頃、自分やエミールが内部居住区の一等地で当たり前のように享受していた安全。それが、ただ単に運が良かっただけであったという事実。そして、いつ襲われるとも分からない、外部居住区で逞しく生きる人々。
…そういった経験があるからこそ、エリックは神機使いとしてこれまで二年間、どれだけ大変であっても頑張ってこれたのだろう。
戦う力の無い人々を守ること。それは、まさに
…そう考えると、現場の事については今はエミールよりもエリックの方が詳しいのか。その代わり、フェンリル本部の内部の話となると一気に不透明になるけど。
ま、こればっかりはしゃーない。
「…それで、外部居住区の人々が中心となって、最近デモが発生してきている。
エイジス計画に資材を回すよりも先に、するべき事があるはずだ、と」
「…治安はどうなんだ?」
「正直、あまり良くはない。
フェンリル本部も、内部では相変わらずの権力闘争ばかりだ。特に、エイジス計画にはやけに食い付きが良い。恐らく、利権以上の何かが絡んでいる、と僕は睨んでいるんだが…」
「…そうか」
エミール、大正解である。
エイジス計画は隠れ蓑であり、実際には限られた人々を宇宙に避難させ、人為的に終末捕食を発生させることで、一度リセットするーーーーー。
それが、支部長の思い描いているシナリオであり、アーク計画だ。
…とはいえこれはあくまでも、ゲーム通りなら、という話だが…。恐らく支部長はあくまでも、アーク計画を成就させるつもりだろう。
というか、正直現状を見ている限りでは、どうあがいても詰んでいる。僕の記憶には三年後には人類側もパワーインフレを起こし、なんとかなる兆しがありそうだと分かるゴッドイーター2の経験があるが、支部長にはそんなものないだろうし。
ぶっちゃけ、自分も三年後を知らなければ支部長の考えが間違っているとは思えないだろう。
それくらい、人類は追い詰められながら消耗戦をしている。まさに崖っぷち。極東は特にひどいけどね…。
「君も気を付けてくれ、友よ。君に何かあれば、エリナ君が悲しむからね」
「気を付けているのはいつもそうさ。
それでもまあ、いつ死ぬかわからない以上はなんともね…」
そう言って肩をすくめる。やれやれ、極東は地獄だぜ。
そういえば、いつくらいからフライアの計画は出てくるんだろう?血の雨のこともあるし、一応気を付けておくか…。
「おおエリック。久しぶりだな」
「父さん」
エレベーターから出てくる人影が見えたと思ったら父さんだった。ところで父さんの名前って…?裕福そうな紳士?
それにしても、険しい顔をしている。ハゲるよ?
また髪の話してる…(´・ω・`)
「…調子はどうだ?」
「いつも死にかけてるよ」
いや、マジで。
そう言うと、さっきまでの険しいそうな表情はどこに行ったのか。突然慌てたようにガッと肩を掴んできた。
「何!?この間まで、『華麗に戦う僕の姿、いつか父さんにも見せてあげたいものだよ…!』などと手紙に書いていたではないか!
エリック、一体何があったんだ!?
…いや、いい。何も言うな…」
そう言って父さんは、肩を掴んでいた手を放した。
…そういえばそうだった。すっかりエリックになってから馴染んでいたから忘れてたけど、エリックってそういうやつだったわ。ナルシスト的な。
…妹の気持ちは手紙越しに気づくのに、自分は虚飾にまみれた手紙を書くのってどうなん?ねえエリック?
エリックは俺に、何も言ってはくれない。ゼロかよ。
そういえば五飛のこと、ウーフェイじゃなくてごとびとかごひって呼んでたなぁ…。ごとびのが分かりやすくていいじゃんね。
AK47をエーカーじゃなくてエーケーって読むのと一緒。
100エーカー…プニキ…うっ、ロビカス。
「…リンドウ君が居なくなったことは、先ほどこちらの支部長…シックザール支部長からも聞いている。
エリック、あまりにも大変なようなら、いつでも帰ってきて良いんだ…!」
そういう父さんは深刻な表情だが、ぶっちゃけ罪悪感しかない。すまない父さん、そういうつもりで言った訳じゃないんだ…。すまない、本当にすまない…。などというつもりはない!
まあ、それに。
「…ありがとう、父さん。
でも、僕はここで戦うつもりだよ。
『妹が『寂しい、独りぼっちは怖い』と手紙に書いているのに、のうのうと財閥の御曹司やってるわけにもいかんだろう?』」
そう言って、ニヤリと笑う。そう。
これはエリックが、周囲の反対を全て押しきって極東に来ることを決めた時の言葉。
妹が、エリナが、この極東に居る間くらいは、ずっと側に居てやらなきゃな。
それが、兄ってものだろう?
いやー、エリックは本当に死んだ後に味が出てくるキャラだよね。スルメかな?
そう言うと、父さんはふっ…と表情を和らげた。
「そうか…。そうだな。お前は、エリナのために、ここへ来たのだったな…」
「ええ。
それに、ここでも僕には信頼できる仲間が出来ました。僕の居場所はもう、ここにある。
心遣いはありがたいですが…」
「いや、なに。構わんよ。
ただ、これだけは覚えておいてくれ。エリナも、お前も、二人とも…。私にとっては、かけがえのない子ども達なのだと…」
「…」
それを言われるとキツい。
そもそも、エリックは本当ならもう既に一度『死んでいる』。既に中身もエリックではなく、今いるのは俺な訳で。
なんとなく父さん達を騙しているような感じがして、いたたまれなくなった俺は、周囲を見渡した。
すると、エリナとジーナがちょうどこちらへ向かってきているのが見えた。二人には悪いが、だしにさせて貰おう。
「お兄ちゃん!」
相変わらず、輝くような笑顔でこちらへ向かってくるエリナ。実に可愛らしい。そこ、シスコンとか言わない。
「どうだいエリナ。ジーナとは、仲良くなれたかな?」
「うん!あのねあのね、ジーナさんってすっごいの!えっとね…!」
エリナが元気に話し出したので、しゃがんでエリナに目線を合わせながら、頷きながら話を聞く。
一通り話すと満足したのか、自分の脚に思いっ切り抱きついてきた。こうなると、エリナが満足するまで放っておくしかないみたいだ。仕方ないか…。
「エリック」
「ああ、ジーナ。ありがとう、この子の相手をしてくれて」
「ええ。彼女、とっても良い子よ。…愛されてるわね、エリック」
どうやらジーナはエリナから、僕の話ばかり聞いていたらしい。まあ、二人が仲良くなってくれたようで何よりだ。
「ところでエリック。そちらのお嬢さんは…」
すっかり父さん達のことを忘れてた。…エミールはあちこちに歩き回ってほうほう言っているようだし、放置でいいかな。
「紹介するよ。彼女は僕のパートナーのジーナ。頼りにさせてもらってる。最高に魅力的な女性だよ。
ジーナ、僕の父さんだ。最近、髪の生え際が気になってきたお年頃」
「エリック、初対面のお嬢さんに私の気になっていることをあっさりばらすのはやめなさい」
「…初めまして、ミドル。ジーナ・ディキンソンです」
「ああ、初めまして。いつもうちの『バカ』息子がご迷惑をおかけしています…。何か失礼なことをした時は、遠慮なくひっぱたいてやってください…」
失礼な。
そう思っていると、ジーナたんがこっちに顔を近付けてこっそりと言ってきた。
「…あんた、父親にまでバカって言われてるわよ?何かしたの?」
「いや?いつも通りさ」
「…だから、ね」
なんやとこらぁ!今のニュアンスだと、いつもの僕がまるでバカみたいだと言う感じじゃないか!訂正を求めるぞ!
「…エリックは確かにバカですが、頼りになるときもありますから」
「いやはやお恥ずかしい…。やはり息子は、相変わらずこちらでも皆さんにご迷惑をおかけしていますか…」
「よくトイレを詰まらせてはいます」
「ああ…。頑張って教育したんですけど、まだやりますか…」
あれは俺のせいではない。
ちゃんと拭けたか不安になるあまり、ついつい五回も六回もふきふきするエリックが悪い。俺はこれまで生きてきた中で、エリックみたいに詰まらせたことなんて一度もないんやぞ!
んふー…♪と、僕の脚に頬を押し付けてご満悦なエリナの頭をなでなでしながら、僕はジーナと父さんが何やら僕のことで盛り上がっているのを複雑な心境で眺めていた…。
最近なんだかつまらない…。
新しい刺激が欲しい。
何か面白いことないかなぁ…。
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