転生したらエリックだった件   作:逸般ピーポー

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強いモノ、弱い者

「クソッ…!」

 

迫りくるヴァジュラの剛爪を必死に転がって避ける。既にこちらはボルグ・カムラン、シユウを倒した代わりに満身創痍だ。今なおソーマが必死に巨大なバスターブレードを振りかぶって戦っている後ろ姿を視界の端に捉えつつ、こちらを執拗に狙ってくる猫公(ヴァジュラ)から全力で身を捻って回避する。

 

僕とソーマがこの、(かく)とした灼熱の戦場、煉獄の地下街に入ってから、既にかなりの時間が経過している。

初めのうちはグボログボロ一匹とかくらいの簡単さだった特務だが、シユウとコンゴウ、グボロとクアドリガ、ウロヴォロスと、ジョジョに強くなってきて、今ではもはや三体同時が当然のようになってしまった。

28型ガットになり、ようやく危険度5、つまりゲーム的には難易度5に耐えられる程度(余裕になる訳ではない)になったと思ったのも束の間。最近ではジーナたんとの戦場デートも出来なくなり、ソーマに何度も何度もリンクエイドしてもらうような始末。

あまりにもキツい任務ばかりが休みなく来るようになり、最近ではもはや自分がソーマの足を引っ張っているだけのように感じ始めている。

端的に言えば、余裕がない。それも、まったく。

 

息をきらせながら無様に走り回り、それでも避けきれずにアラガミに囲まれて地面に這いつくばったことはもう数えきれないほど。

 

そうして逃げ回っていると、不意にグオォォォォ…!

という叫び声が聞こえてくる。そして慎重に周りを見渡すと、服のあちこちに汚れと破れのあるソーマがゆっくりとこちらへ向かってきていた。

ああ、まただ。

 

「終わりだ。帰るぞ」

 

そう一言だけ告げて、こちらに背を向けるソーマ。

初めのうちは、死にすぎだとか、周りを見ろと言ってくれていたソーマも、最近はめっきり話をしなくなっていた。

 

無力。

 

そう。僕は無力なのだと、やはり彼ら(第一部隊)と僕は違うのだと。

そう、実感させられる。

 

ソーマが僕に何も言わなくなったのは、僕が死ななくなったからじゃない。

ソーマが僕に何も言わなくなったのはきっと、僕が居ても居なくても同じような状態だからだろう。

 

暗い色のフードをソーマと同じように被りながら、僕は彼の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スコープを覗く。

スコープの向こう側にいるアラガミの顔がこちらを向き、目が合ったその一瞬。

私の指が寸分違わぬタイミングでトリガーを引き、アラガミに全て命中する。その瞬間、横から来たタツミがショートブレードで斬りかかり、アラガミは鳴き声をあげながら地に倒れた。

 

今日は第一七外周部の哨戒任務中に、はぐれのヴァジュラと遭遇。

最も近くの戦闘可能地域である、贖罪の街にヴァジュラを誘導し、タツミ、ブレンダン、私の三人のチームで討伐した。

 

ヴァジュラが完全に動かなくなったことを確認して、ふぅ…と息をつく。

ダメね…。以前であれば、こういった一瞬の命のやり取りには興奮を覚えたものだけど。

最近…というか今は、なんだか心から感じることが出来ない。

なんとなく胸の奥がモヤモヤとするというか、ほんのわずかにチクチクとする不快感。

考えてみてもその原因が分からず、モヤモヤとする悪循環。

 

ハァ…。と、ため息をついていると、今回のリーダーのタツミがヴァジュラのコアを抜き取ったのか、こちらへやって来た。

 

「ジーナ、お疲れ。今日も良い狙撃だったぜ」

 

片手を挙げながらニッと笑いながらこちらへ近付いてくる彼には、私を励ますような感じはなかった。ただ純粋に、今日の援護も良かったと言いたいのだろう。

タツミやブレンには分からない程度のものなのだろう。

 

 

ふと、最近エリックと話をしていないことに気付いた。

彼と話をしなくなってから、世界の色が抜け落ちている気がした。

何気なく空を見上げても、常と変わらない蒼穹があるだけだった。

 

以前と同じはずの世界は、以前よりも色褪せて見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナグラに戻り、自室のベッドにドサリと倒れ込む。

なんとなく無気力だった。

神機の整備はリッカに任せてきた。彼女なら間違いなくちゃんと戦えるようにしてくれるだろう。そういう信頼があった。

 

ふと、腰に付けていたポーチを探る。

忙くなってきていたエリックが、以前くれた配給チケットがあったはずだ。

何とはなしに探してみるも、なかなか目当ての感触がしない。

ごそごそと探していると、コロッとバレットが出てきた。

 

何気なく手に取って、部屋の照明にかざしてみる。

以前、カノンと共に作ってみた、カスタムバレットだった。

…本当は、(エリック)に使ってみせてから、せいぜい勿体ぶって渡すつもりで作ったものだ。

どんな反応をするだろう、なんて。そんなことを考えていた。

ブラスト用の、特別製。

エリックの神機はリッカいわく、ブラストになっているけどショットガンでもある、良く分からないものらしいので、オラクルリザーブというのが出来ないみたい。

なので、何とかエリックでもちゃんと撃てて、かつ破砕属性の大きい組み合わせを工夫して作ってみたのだけれど…。

 

腕が怠くなってきたので、腕の力を抜く。ドサリとベッドに乱暴に落下して、だけど私の手はカスタムバレットを握り締めていた。




いやー、やることが多いとなかなかインスピレーションが(言い訳)

あ、4月から働くのでさらに更新速度遅くなります。
でも感想でまだかなー、みたいなのが来ると今回みたいにきっかけになったりならなかったり。

感想は作者の励みになるってはっきりわか(ry

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