エリックが帰ってきた。
いえ、実際には帰ってきた、というよりは、居ることが実感できた、という方が近いのでしょう。アナグラに居ることは分かっていたけれど、ここのところ、顔を会わせることがなかったから、久しぶりにエリックが帰ってきたような感じ、というだけね。本当に、久しぶり。
だからなのか、エリックは少し疲れたような顔をしていた。…ちょっと痩せたかしら。
まあ、それでも私の顔を見た途端、今まで通りの表情になったから、私の気のせいかもしれないわね。
…今まで通りじゃないのは、むしろ、私の方。
エリックに顔を見ているだけで落ち着かない。何となく、心がざわざわするような、そんな気がする。
この感じは、何なのかしら…。
今日の標的は、エリックの神機の強化のため、シユウ堕天、コンゴウ堕天、グボロ・グボロ堕天。…グボロは氷が効くからエリックの28型ガットでも大丈夫だとして、コンゴウは私がメインに動いた方が良さそうね。
まあ、そうは言っても。結局は。
ゆっくりとまぶたを開く。広がる視界。いつものように雨の降る平原に、常に消えない竜巻。
「ーーーーーふふっ」
いつも通り。命の奪い合い。その瞬間、刹那がいとおしい。
さあ、狩りの時間ね。
あ、言っておくけど、私の胸を嘆きの平原とか言った奴はコロス。
雷撃。雷撃。雷撃。
素早い動きで翻弄するように、流れるように空を翔ぶ。
そんなシユウの様子をスコープから覗く。さあ、あなたの命と私の命のやりとりをしましょう。
そう思いながら引き金を引く。
ああ、何度やっても、この瞬間が堪らなくゾクゾクする。
一瞬の後、弾丸がシユウの頭部を弾き飛ばす。運良く結合崩壊を起こしたみたいね。
シユウが頭を押さえているうちに、バコバコとシユウの全身を爆発系のバレットが撃ちすえてゆく。
…今日のエリックは、今までよりもやけに苛烈。正直、シユウに嫉妬してしまいそうなほどに。
全然効いてないみたいだけど。
ふふ、いつまでも恍惚としてないで、私も私の仕事をしましょうか。
ああ、願わくば。
いつまでも、こんな時間が続けばいいのに。
倒れたシユウから視線を離さず、じっと見つめているエリックに歩み寄る。既に帰投のヘリはこちらに向かっているらしいから、しばらくの待ち。
「…どうしたの」
エリックの横顔は、いつもよりなんだか精悍で。それでいて、張り詰めているみたいだった。
「…いや」
そう言って、エリックは神機を肩に担いで空を見上げた。雨の降る、暗い空を。
「なんでもないさ。なんでも」
そう言って彼は私に背を向けて歩き出した。
その背中が、いつか消えそうな気がして。
私はたまらず、駆け足でその背中を追った。
お久しぶりです。
続きが思い浮かんだので久しぶりの投稿です。
ああー、小説を書くのが仕事ならいいのになー、とか考えつつ。
いずれそうなりたいですね。