転生したらエリックだった件   作:逸般ピーポー

27 / 29
生きてます




エリックが帰ってきた。

 

いえ、実際には帰ってきた、というよりは、居ることが実感できた、という方が近いのでしょう。アナグラに居ることは分かっていたけれど、ここのところ、顔を会わせることがなかったから、久しぶりにエリックが帰ってきたような感じ、というだけね。本当に、久しぶり。

 

だからなのか、エリックは少し疲れたような顔をしていた。…ちょっと痩せたかしら。

まあ、それでも私の顔を見た途端、今まで通りの表情になったから、私の気のせいかもしれないわね。

…今まで通りじゃないのは、むしろ、私の方。

エリックに顔を見ているだけで落ち着かない。何となく、心がざわざわするような、そんな気がする。

この感じは、何なのかしら…。

 

 

 

 

今日の標的は、エリックの神機の強化のため、シユウ堕天、コンゴウ堕天、グボロ・グボロ堕天。…グボロは氷が効くからエリックの28型ガットでも大丈夫だとして、コンゴウは私がメインに動いた方が良さそうね。

まあ、そうは言っても。結局は。

 

 

ゆっくりとまぶたを開く。広がる視界。いつものように雨の降る平原に、常に消えない竜巻。

 

 

「ーーーーーふふっ」

 

 

いつも通り。命の奪い合い。その瞬間、刹那がいとおしい。

さあ、狩りの時間ね。

 

 

 

 

 

 

あ、言っておくけど、私の胸を嘆きの平原とか言った奴はコロス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷撃。雷撃。雷撃。

素早い動きで翻弄するように、流れるように空を翔ぶ。

そんなシユウの様子をスコープから覗く。さあ、あなたの命と私の命のやりとりをしましょう。

そう思いながら引き金を引く。

ああ、何度やっても、この瞬間が堪らなくゾクゾクする。

一瞬の後、弾丸がシユウの頭部を弾き飛ばす。運良く結合崩壊を起こしたみたいね。

シユウが頭を押さえているうちに、バコバコとシユウの全身を爆発系のバレットが撃ちすえてゆく。

…今日のエリックは、今までよりもやけに苛烈。正直、シユウに嫉妬してしまいそうなほどに。

全然効いてないみたいだけど。

 

ふふ、いつまでも恍惚としてないで、私も私の仕事をしましょうか。

ああ、願わくば。

いつまでも、こんな時間が続けばいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れたシユウから視線を離さず、じっと見つめているエリックに歩み寄る。既に帰投のヘリはこちらに向かっているらしいから、しばらくの待ち。

 

「…どうしたの」

 

エリックの横顔は、いつもよりなんだか精悍で。それでいて、張り詰めているみたいだった。

 

「…いや」

 

そう言って、エリックは神機を肩に担いで空を見上げた。雨の降る、暗い空を。

 

「なんでもないさ。なんでも」

 

 

そう言って彼は私に背を向けて歩き出した。

その背中が、いつか消えそうな気がして。

 

私はたまらず、駆け足でその背中を追った。




お久しぶりです。
続きが思い浮かんだので久しぶりの投稿です。

ああー、小説を書くのが仕事ならいいのになー、とか考えつつ。
いずれそうなりたいですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。