やはり俺の『主人公』ストーリーがまちがっている。   作:こよね

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そして、ストーリは進んでいく。

 世の中には、いろいろな「主人公」がいる。

仕事、勉強、それぞれの分野に適したプロフェッショナルなんていうのも主人公の一部であるだろう。

その技術や実績が評価されて表彰されることやテレビに出演するなんてよくある話の一つだ。

 当然、「主人公」という言葉を聞いた最初のイメージででてくる、バトルものや学園ものといったアニメや漫画、小説の一番メインの人も含まれるだろう。

異様に恋愛感性に鈍感な奴もいれば、主人公補正といった物理法則?ナニソレイミワカンナイといって謎な能力を使ってしまう作品内で一番最強な奴もいる。

どちらにせよ、「主人公」としてポジションが決まった奴はそれぞれの話において確実にメインとなり進んでいく。

大抵は主人公視点で進んでいくのである。だが話を進ませるにはそれ相応のなにかのイベントがなければいけないものであるが…

 

 例えば、頭の悪い主人公がいたとしよう。

彼はテストで5点や10点を取るような学力ではとても頭が残念な子で、どっかの、え!?私60点!?恥ずかしくて親にみせられない!!とかいってイケメンの先輩から通信講座を勧められるような女の子とはレベルをかくしているわけだが、そういう奴に限っては平凡な人とは違う特別な何かを持っているものだ。

もし、私が物語をかくとしたら、心に秘めているものをもった平凡な「主人公」をメインに話を広めていきたいものである。

 

「…で、自分自身を『主人公』にしてどんな作品をつくりたいんだ?」

 

 黒髪ロングで美人な、一般的には大当たりの教師がやっと読み終えたのか、口を開いた。

 

「自分を主人公としてかきたいなんて一言も記してないんですけどねぇ」

「ほう…数学のテストで5点をとった生徒が私の前にいる気がするんだが」

 

 全く誰が100点満点のテストで5点なんて点数とるんですかねぇ…俺はちゃんと3点だったよ。

 

「じゃあ提出しましたし、自分は失礼します」

「待て」

 

 威圧感が半端ない鋭い声が響く。こういう人が声優とかやるとギャップ萌えとかになるんですかね。でも怖いのでおとなしく従っておこう。

 

「…えっと、なにか?」

「なにか、じゃないだろう。藤川(ふじかわ)、私が課題で出したテーマはなんだった?」

「はぁ…『高校生活を振り返って』でしたよね」

「で、この文章のどこが、君の高校生活を振り返っているのかね」

 

 平塚静(ひらつかしずか)、国語担当の女教師。学内ではいろいろ話題にはなるものの、なぜか独身らしい。

見た目も悪くないはずだが、それ以上に強烈というかそれをも上回る男勝りな性格の持ち主という噂が流れているのは聞いたことはある。

いや、そりゃね?圧力かけてきたらね?ちょっと裏付けちゃって誰も近寄らなくなっちゃうじゃないですか~やだも~。

 

「まあこの1、2年振り返って、将来、こんな物語でもかければいいですねっていう未来の願望を」

「読解力ぐらいはあると思ってたんだがなぁ」

 

 女史は困った顔をしているが、実際俺は模試の中では国語は偏差値高いほうではある。こめじるし、ただし自社製品比較である。

 

「書き直しだ。来週までにきちんと書いてこい」

「えっ。これを書き直すんですか!?」

「当然だろう。こんな文章ろくに評定もつけられん」

「文章自体はきちんと書いているんですけどねぇ」

「内容が問題だと言っているんだ。普通、こういう時は自分の生活を省みるものだろう」

「あ、そこ聞きたかったんですか。てっきり何を学んで過ごしてきたかを」

「そう聞いてたとしても私は同じことを指示をしたがな」

 

 国語の文章は採点する人によって意図が変わるから本当に難しいものであると思う。答えが無限にあるものってどうすればいいんですかね。

いかに出題傾向を予測し、採点者の満足いくような文章を書けるスキルを学んでいくしかないな。

たとえ、筆者が執筆中にゆるふわアウトドアアニメでこころぴょんぴょんしていたとしても、

意見を答えなさいと言われたらおとなしく、彼女に思いをはせてどんどん道を外れていく若者の将来への不安とか書かなきゃいけない。

かわいそうだなこの男。いや、彼女いる時点で同情の余地なかったわ。

 

「はぁ…」

 

 溜息をつくほど呆れられるとこっちもくるものがある。

平塚先生は一度なにかを考える仕草をし、顔をすぐに俺に向き直した。

 

「確か君は塾も部活もなにもしていなかったな」

「まあそうですけど。てかなんか嫌な予感がするんですけど」

「ははは。なにをいってるかちょっとよくわからないな。とりあえず、ついてきたまえ!」

 

 なんでこういきいきとしてるんですかね、この先生は。昔のM-1グランプリ優勝コンビ張りのわかりやすいボケにつっこめずも反論の余地なくついていくことになった。

早々と歩く女史。学校内でのなにか…まさか補習!?死んじゃうしんじゃう。

 

 特別棟に入るも、まだ平然と歩いている。ここ総武高は自称進学校で無駄に金があるから広い。最近では大学のように近未来のシステムだか電子なんたらを無駄に使いたがるところも多い。

うちの高校はどちらかというと施設の規模に投資をしている感がある。その前に購買のラインラップをどうにかしてくれよ…。

 

「着いたぞ」

 

 なんも変哲もない教室だった。なにもかいていない、中も片付けられていた、いたって普通の空き教室だった。そこに二人の人影がなかったのならば。

 

「平塚先生、入るときにはノックを…」

「あースマンスマン」

「驚くほどなおす気のない返事だな」

 

 平塚女史並み、いやそれ以上の美人な少女、そして天と地ほどの差がある、ぬぼーっとした少年がお互い席に座りながら本を読んでいた。

まるで二人の間は時が止まっているかのような錯覚を感じた。なぜだろうか。普段の日常の中に非日常的なものが入り込んでいるような、とても不思議な感覚だった。

 

「で、そちらの方は…?」

「あ、2年E組の藤川小和(ふじかわこより)です」

「君たちに依頼を持ってきた」

「ご用件はなんですか」

 

 特に驚くでもなく淡々と続く会話。むしろ俺のほうが驚いてるからね。しょうがないね。

正確に自分が客観的な分析ができているんだろうかなんてことを主観的に考えつつ、言葉の節からこの『部屋』を読み解いていく。

依頼…なんだ探偵か?それともなんでも屋とか、ん?今なんでもって。

 

「こいつを3年までに学年5位以内に入れるレベルの学力にあげてほしい」

 

 あーそうだよねーやっぱ勉強の話になりますよねー。5位ねー5位…5位!?

 

「ちょっと先生何を」

 

 冷静な彼女は特に訝しげな顔をするでもなく、また淡々と会話を続けた。平塚先生の依頼に疑問を持つでもなく、受けることが当然なように。

 

「彼の今の成績は?」

「これだ」

 

一枚の紙を手渡す。おい、それ俺の去年の学期末考査の成績じゃねぇか、特定機密保護法違反で訴えちゃうぞ☆

 

「これは…こんな人初めて見たわ」

「おーすげ、ノー勉でもこれは無理だな」

 

 なんかすげぇ悲しいんですけど。

 片方は知っている。女子のほうは雪ノ下雪乃(ゆきのしたゆきの)だ。成績優秀、才色兼備、どこをとっても恥ずかしくないいわゆる秀才ってやつである。

実際のところは噂程度でしか知らなかったが、この言い方といいそれほど差異がないようだ。

秀才は天性の他にも努力の類のあるが、俺はすべてを捨てて努力をするという考え方がどうも気に食わない。

 

「やっはろー…あれ、依頼!?私にも聞かせて!!」

 

 テンション高い系女子が入ってきた。見た目からでもわかる、きゃるーん☆系女子のテンプレだろう。服装のおしゃれさから二人とはまた違ったタイプだと雰囲気が語っている。

雪ノ下さんをジョコビッチに例えるならば、この子はドラクロビッチとでも呼ぼう。

 

「ごめんなさい、由比ヶ浜さん、今回はあなたはお役に立てなさそうよ」

「えーっ!?どうしてゆきのん!?これでも私、なんでもそつなくこなせるほうなんだよ!」

「もしかして 料理」

「うっ…あれは…アレだし」

 

 苦虫を噛み潰したような顔をしながら横を向いている。へえ、料理が苦手な人って実在するんだな。

あなたの舌もとろけちゃう(物理)とろとろ肉じゃがなんていって、たまに化学薬品入れちゃう娘は苦手以前に病院に行くことをお勧めしたい。

 

「お前、3学期期末の数学、何点だった?」

「えーと…5点?」

 

 呆れる生徒二人プラス教師。マジか2点も負けてたか。どんぐりの背比べ?きのこたけのこ戦争ぐらい重要ですよ!

 

「わかりました、平塚先生。藤川君とついでに由比ヶ浜さんの勉強も見ます」

「うむ。頼んだぞ」

「えーちょっとゆきのん!?」

 

 女子二人が言い合いという名のいちゃいちゃしている中、先生は俺の肩に手をかけていった。

 

「…君ならできるさ。心になにか秘めているんだろ?」

 

 HA☆HA☆HA それがわかったら苦労してないってーの。

 実際自身の強味や利点といった部分を理解し、それをフル活用して生きている人間はたくさんいる。だが、まだ発現していないものに期待をかけられても困るんですよねぇ。

先ほどから言葉も出ずに成り行きを見守っていた俺だが、反論しようとしたときに限って言葉がかぶさる。

 

「そうね、まずは藤川君、あなたのプランからたてようかしら」

「ヒッキーって逆に国語以外で出来るものあるの?」

「失礼な。最低でも平均ぐらいはいく」

 

 こいつの目は秀逸だ。腐ったようなゾンビのような目をしている。

よくコミュ障でキョドる気持ち悪いやつがいるとはいるが、ただこいつは何かが違う…そんな気がした。

 

「ごめんなさい。一日待っててくれるかしら。計画表をつくってくるわ」

「お、おう。よろしくお願いします」

 

 なんですかね、高貴に見える人って無意識に敬語を使いたくなっちゃいますよね。

 

 成績不振とはきっかけに過ぎないものであり、平塚先生の策略が読めるのも後のことであるが。

 

 例えばこの出会いの物語は序章というものというより単なる設定であって、物語を書き始める枕詞にしかすぎなかったとき

 比企谷八幡(ひきがやはちまん)藤川小和(ふじかわこより)。二人の物語はどうして交わらないであろうか。

 

 いや交わらないはずがない。

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