やはり俺の『主人公』ストーリーがまちがっている。 作:こよね
俺の名前は高校二年生、
幼馴染で同級生の毛利蘭と遊園地に行った帰りに黒ずくめの男に襲われねえよ。
幼馴染もいなければ、空手で全国行くような強者の知り合いもいないわ。
そもそも女子と二人っきりでデートっていうことがあり得ない。
友達とは自分の時間を費やしてでも楽しい時間をすごす関係であり、恋人とは自身が損をしてでも守りたくなるものである。よく言われる、恋人の条件はどれだけ愛せるか、でなくどれだけ許せるか、なんて考えはとても妥当なものだろう。
しかし、人間関係とはそんなに簡単にボーダーをひけるものなのか。
人間はすぐに定義を明確にし確実性を求める。その結果が国境紛争だったり社会的地位の差だったりとあるわけだが、客観的なボーダーラインよりも主観的な曖昧さのほうが時には必要なのではないか。
俺は自分の身を削ってでも友達に気を使いたいと思うし、恋人との基準が曖昧になってしまう。
だから今まで恋したことがない。
俺は一般的には馬鹿で運動音痴でセコいし自分の利益も求める。
だがしかし、友達と思えるようになった人にはとことん感情移入してしまうのもまたあるのである。
他人の感情は読めない。読めているようでも完全に読めていないのが『人』なのである。
自分を中心とした「主人公」の意識のなかであってもあくまでも自分なのであるからどうしようもない。
そんな哲学モードのわたくしこと
しかし今日はめんどくささを感じられなくなるような異様な教室の雰囲気を味わっていた。
「お前らどうしたの」
「別に」
「なんでもないわ」
質問において、無であるという答えが一番ありえないのであって、それは隠したいことがあるときに使うものだと証明問題ぐらいつくれるんじゃないだろうか。外国人さん誰かつくってくださいよ、オバマ―の定理みたいなの。おっとノーベル平和賞でももらっちゃいそうだわ。
「由比ヶ浜は?」
「今ちょうど、彼女がこない理由をこの人に問いただしたのだけど」
「だからしらーねって」
あの能天気・由比ヶ浜となんかあったなんて珍しい。今日は雪でも降るんじゃないか。梅雨入りだけど。
「喧嘩でもしたの?」
「いや、してないと思うが」
なんだか妙に胸を張って
「そもそも人と喧嘩するほど深く関わってきていない」
「そこは威張ることが出来るところではないのだけれど」
「はあ…まあ、ともかくあさってまでにはどうにかしろよ」
深く溜息をつく俺の横で、ぴょこんと背を伸ばす
「やっぱり6月18日なのね」
「ん?何が?」
「由比ヶ浜の誕生日な」
「彼女のメールアドレスに0618とあったわ」
メールアドレス、それは考えるのに悩み、結果として名前と誕生日を組み合わせる最もオーソドックスな形になることが多い。最近はSNSでアドレス?なにそれおいしいの?みたいになってるけど、いや逆にLIMEで交換する以外に連絡先を交換できる相手とはそれだけ仲良くなれたっていう基準がさらにわかりやすくなっていいか。
「私、由比ヶ浜さんに誕生日のお祝いをしてあげたいわ。たとえ、奉仕部に来なくなったとしても、これまでの感謝はきちんと伝えたいから」
「そう思って、プレゼントを考えていたのですよ」
といっても他人にプレゼントを送ったことなんて一度もないんですけどね。年賀状くらいですよ。あれは挨拶だわ。
「ねぇ…二人とも、日曜日、付き合ってほしいところがあるのだけれど」
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日曜日、快晴 清々しいね!こんな天気のいい休日に外に出るなんて…何か月ぶりだろ。
こんな日は自分の部屋でぬくぬくするのが一番。いっそ心地よすぎて起きるのが夕方になったりする。
「どもどもーお待たせしちゃいましたー?」
元気のいい中学生くらいの女の子がぴょこんとでてきた。
「ん、今きたとこ…おお妹さん?」
「はい、
「ええ、こんにちわ」
顔見知りのようで。
しかしまあこの兄にしてこの妹とは似ても似つかないように見え、ると一般的にいうだろうけど、俺はそうは思えなかった。初対面でこの印象。探偵かな?ホームズも驚きの情報のなさだけど、この娘はなにか裏がある、そう感じた。
人間の感情でさえ読めない「人」が他人の性格ましてや『本物』がわかるわけがない。
「じゃあ俺はこっちのエリア―を探すからお前らはあっちを…」
「おにーちゃん♪」
にこにこしながら妹は兄の人差し指を握った
「ストップ…です♪」
そういうと妹ちゃんは躊躇いなく兄の指を折る。あー痛そ。指が90°曲がるかの勢いでひねる妹、おそロシア。
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「結衣さんはこの辺りが…」
そんなこんな妹ちゃんの圧力(物理)によって団体行動をすることになったわけだが、
まあ俺と雪ノ下が知る由もないってことはあの二人で何かあったのは明白で、これは俺が介入しようにもどうしようもないので、アレデスケド。
しかし、なんだか悲しい感じがする。建前を気にせず本音を言い合う三人。そんななか俺は建前・本音以前に、自分の意志があるのだろうか。自分の主張、つまりなにがしたいなにがほしい、そういったことが思いつかない。ただ、これからの自分に損が来ないよう、自分を調整しているだけでないのか。
それは本当に自分自身なのか。
「…おーい、先輩?」
小町ちゃんが声をかけていた。危ない危ない、哲学モードにはいっていたみたいで。四人はさっき話していたであろうフロアに向けて歩いている途中、小町ちゃんがこっそり手招きをしていた。
「どうし…」
「しー!こっちこっち」
小声呼ばれたので、忍び足で小町ちゃんについていく。あの二人と別れる我ら。団体行動とはなんだったのか。
階段を使って下に降りながら小町ちゃんが悠々としゃべっていた。
「いやー小町的にあのお二人には仲良くなってほしいのですよー」
「ほー最初からそのつもりで?」
「いやー先輩にはわるいことしちゃいましたねー。でも、先輩は
小町ちゃんが笑いながら顔を覗き込んでくる。
「…小町ちゃんもそうなの」
「ふふ…兄は小町の性格を、『次世代型ハイブリッドぼっち』と呼んでいるのですよ」
そういいながら小町ちゃんはあざとく前かがみ・上目遣いで見てきた。なにこの娘かわいい。
「先輩は自分自身は何だと思います?」
「突然すごいアバウトな質問だな」
「小町はですね、将来の夢っていうものが考えられないんですよ。お嫁さん?キャリアウーマン?なるかもしれませんね。でも、それって小町の夢なんですかね。dreamとfactは必ずしも一致するとは限らないですよ」
「なにそれ、ルー語?35億とか稼いでそう。まあそもそも夢はかなわないのが普通であって、それを踏まえたうえで目指していく希望をたてるんだろ」
「その希望、たて
「…」
痛いところをつかれた。
「わからなくなるんですよ。なんで生きているのか。どうして生きていけばいいのか。自分自身がなにかわからないのに、なんで他人に自分自身を関わらせることができるのか。それって小町が小町じゃなくなるみたいじゃないですか。先輩、この質問、ヒントでもいいんでわかるようになったら教えて欲しいのでありますっ」
敬礼しながらにこっとしている彼女を見ると俺は、心が苦しかった。
なぜ自分に近い特性の人を見ると、話すと、こんなにも理解しようとしてしまうのだろう。悟ってしまうのだろう。そして、なぜ彼女は突然語って、俺はそれを真剣に聞いているんだろう。たった
しかし、彼女の言うこともわかる。自分自身の存在価値とはなんだろう。
永遠の、ソクラテスでもわかんなかったこの疑問は、彼女の意識を固定化させている。
まるで、石膏像の賢者のように。
彼女はこの会ってからの数十分で、自身の特性に似通った、いや、何かを悟ったように突然哲学を出してきた。甘い青春、まだ春の青臭い時期というなかで、自分について深く考えられる時期はここぐらいしかないのかもしれない。
もし、恋や遊び、はたまた勉強を一生懸命するような裏表のない人間のおくる青春が重要であるとすれば、
裏と表のある人間は重要ではない青春をおくっているのかもしれない。しかしそれは、おくりたくておくっているのだろうか。
「そういえば、先輩のお名前聞いてなかったですけど」
「そうだっけ、小和、
馬鹿と平凡は言葉として並ぶのかってまじめに考えるくらいのバカだけど、
学問を身に着けるだけじゃなく、人間の倫理について深く考える哲学者もまた、頭がいいとは言えないだろうか。
いえねえよ、バカ