堺修一は新人ながら提督に任命され、タウイタウイ泊地へ送られた。このド田舎泊地を徐々に発展させていた堺だったが、深海棲艦機動部隊の空襲を受けてしまう。堺は、空母の必要性を痛感するのだった。
「また失敗だぁっ!」
タウイタウイ泊地工厰、建造部門。残り時間「01:20:00」を示したタイマーを見上げ、堺は叫んだ。
「くそぅ…なんで、2時間以上の建造が発注されないんだよ
!なけなしのボーキサイト突っ込んでるってのに!」
堺は耳に挟んでいたボールペンを床に叩きつけ、咆哮する。
「ちくしょうめぇーー!!!」
あの空襲以来、堺は、なんとかして空母を手に入れようとしていた。だが、上手くいかない日々が続いている。もう、これで7回しくじっていて、空母が来る気配は一向にないという状態に陥っていた。
堺が「2時間以上」と言っていたのは何のことだろうか。それは、こういうことである。
当たり前のことだが、艦娘を建造するには、結構な時間がかかる。だが、艦種によって建造にかかる時間はある程度決まっており、慣れてくると建造時間を見ただけで、だいたいどんな艦が建造されるか、検討がついてしまうのである。
堺は空母建造にあたって、教育隊時代の友人にして現佐世保鎮守府提督見習い、藤原海斗から情報を得ていた。
藤原曰く、「2時間ジャストで鳳翔が建造できたから、そのくらいはかかるんじゃねえの?」とのことである。また、ボーキサイトを多く入れると、空母を建造しやすいとも教えられた。
そこで、2時間以上かかる建造を狙っている…のだが、今のところ1時間半より長くかかる建造にお目にかかったことがない。欲しい時に限って出ないというやつである。
不幸中の幸い、愛宕や最上、妙高といった強力な巡洋艦がぞろぞろ着任したため、資源は必ずしも無駄になってはいない。
………
「よ、よし…今度こそ…!」
「提督、本当に大丈夫?」
半ばハイライトを失った目をしている堺に、本日の秘書艦・白露型駆逐艦「村雨」が心配して話しかける。
「ああ、きっと大丈夫だ…!」
村雨は(どう見ても大丈夫に見えないんですけど…)と思ったが、突っ込まずにおいた。
村雨が見守る横で、堺は建造指示パネルを操作して、投入する資源の量を設定し…
「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!」
数学オリンピック日本代表になり損ねた某高校生を彷彿とさせる台詞と共に、「建造開始」をタップした。
建造ドックの観音扉が閉じ、表示されたのは……
「残り時間 02:39:55」
「……え…?」
堺は一瞬呆け、そして…
「や…やったぁぁ!村雨ありがとう!」
「う、うん…新しい艦ゲッツ!だね!」
村雨とハイタッチするのであった。
………
所定の時間が経過した後、工厰にやってきた堺。
2時間と40分に及ぶ建造の末、できた艦娘は…
「瑞鳳です。軽空母ですが、練度が上がれば正規空母並みの活躍をお見せできます。」
一部提督が「卵焼き空母」だの「食べりゅううう!」だの呼称し、あわよくば格納庫をまさぐろうとする小型空母・瑞鳳だった。
堺はまだ知らない。この瑞鳳という空母、なかなか当たらないレア艦だということを…
如何でしたでしょうか?
主人公≒うp主 の通り、私の鎮守府のづほは、赤城よりも前からいた、最古参の空母です。
当時の私はそんなレア物とは知らずに手に入れていた…無知って怖いですね…。
それではまた次回!