とある提督の追憶   作:Red October

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…ここまでのあらすじ…

日本国海上護衛軍・艦娘部隊に配属された新人士官、堺修一。彼は、艦娘部隊司令部から沖ノ島方面に来襲した深海棲艦の撃滅を命じられたものの、悪戦苦闘していた。

18年1月9日、本文中の「大本営」表記を改めました。


019 提督と、あ号艦隊決戦!(3)

 5回目の出撃に失敗した、その2日後。

 にして、艦娘部隊司令部の定めた期限まで、あと8日。

 

「本日こそ、沖ノ島沖の敵艦隊を撃滅する!艦隊、抜錨せよ!」

「「「はい!」」」

 

 

♪いーわきの けむりは わーだつーみのー

♪たーつかと ばーかり なーびくーなりー

♪たーまうつ ひびきは いーかずちのー

♪こーえかと ばーかり どよむなり

♪ばーんりーのー はーとうーをー のーりこーえーーてー

♪みーくにーのーひーかりーー かーがーやーかせー

 

石炭(いわき)の 煙は 大洋(わだつみ)

龍かと ばかり なびくなり

弾撃つ 響きは 雷の

声かと ばかり どよむなり

万里の波濤を 乗り越えて

御国の光 輝かせ)

 

 

 堺艦隊は、昔から途切れることなく歌われ続けている軍歌「軍艦行進曲」の演奏に見送られて、出撃した。

 

 

 

 

3時間後……

 

「ふむ…」

「ここは突破できるようになりましたね…」

 

 伊勢の艦長妖精が、あっさりした口調で言った。

 はじめてここに出撃した際に、堺艦隊を圧倒的大敗北に追い込んだ敵精鋭水雷戦隊。それを、チャフなど使わず、正攻法のみで撃破できたのである。

 

 チャフは確かに便利なものだ。それは認めるが、毎度ほいほい使えるような代物ではない。なんせ貴重なアルミニウムだのプラスチックだのを使わされるのである。

 

「ここまで来れるようになったか…。そんじゃ、敵中核艦隊の撃滅も目の前かな」

 

 そう呟いた堺だったが、

 

「提督、慢心は駄目ですよ」

 

 即座に艦長にツッコまれる。

 

「ああ…そうだな。各艦、損害を知らせ」

 

 

 因みに、現在の堺艦隊の編成は以下の通りである。

 

 

旗艦 日向改 Lv15

山城 Lv18

金剛改 Lv25

伊勢改 Lv31

赤城 Lv24

瑞鳳 Lv24

 

 摩耶に変わって日向を投入しての出撃であった。

 

 

5分後。

 

「山城と瑞鳳が小破、その他は大きな損傷はなし!」

「よし!進撃だぁっ!」カリカリカリカリ(羅針盤回す音)

 

「む…むむむ…!!」

 

 堺は、食い入るように羅針盤を睨み付ける。

 

「提督、一世一代の賭けじゃあるまいし、羅針盤を食い入るように睨まないでください…」

 

 艦長の苦言は、全く堺の耳に入っていない。

 

「やった!全艦、取り舵30!北東方向へ前進!」

「「「は!」」」

 

 嬉々として号令を下す堺。それに応じる艦娘たち。

 その中で、伊勢の艦長は、ため息をついた。

 

(話聞いてくださいよ…(´・ω・`))

 

 艦隊は、日向を先頭に、単縦陣のまま回頭していった。

 

 

 

 進路を変更してから、30分程経過。そろそろ日も暮れようかという時刻になってきた、その時。

 

「提督!偵察機から、敵中核艦隊と覚しき艦隊を発見したと報告が入りました!まだ詳細はわかりませんが、距離2200、11時の方向に展開しているとのことです!」

 

 伊勢の瑞雲隊指揮官が、緊急報告を入れた。

 

「わかった!赤城、瑞鳳に連絡!第一次攻撃隊発進準備せよ、と!」

「はい!」

 

 素早く、堺は命令を出す。そこへ、瑞雲航空隊指揮官が、さらなる報告を行った。

 

「続報入りました。敵艦隊は、単縦陣にて西進中とのこ…ッ!?そんな!」

「どうした?世の中うろたえることなんか、そんなにないよ」

 

「敵艦隊の詳細判明。先頭は、黄色いオーラを放つ戦艦ル級!ル級flagshipのようです!後続は、戦艦ル級eliteが2隻、戦艦ル級が1隻、駆逐ニ級eliteが2隻。戦艦が、4隻もいます!」

 

「ごめん、前言撤回」

 

 あっという間に手のひらを返した堺に、

 

「なんという朝令暮改」

 

 伊勢の艦長が、的確にツッコむ。

 

「などとふざけてる場合じゃない!全艦、戦闘配置につけ!対水上戦闘用意!」

「対水上戦闘、用意!」

 

 ラッパの音が響き渡る。

 一気に騒がしくなった中で、堺は拳を叩きつけたい気分だった。

 

(くそ、ここまで強力だとは思わなかった…戦艦が、4隻もいるなんて!)

 

 

 

 接近する両艦隊。

 その時、瑞雲航空隊指揮官の妖精が叫んだ。

 

「て、提督!これを!」

「!?」

 

 差し出されたのは、1枚の写真。

 

「敵の旗艦を捉えたらしい写真です」

 

 そこに写る、ル級flagship。その船体には、傷痕があった。

 小口径の徹甲弾があたったかのような、小さな丸い傷痕。それが複数。

 堺は、それに見覚えがあった。

 

「こいつは…あの時の…!」

 

 あの時、とは、泊地南方の製油所地帯で作戦を行った時である(「提督、ある思想に目覚める」参照)。その時に仕留めなかった戦艦ル級が、今、強化されて目の前にいるのだ。

 

「ここで会ったが100年目、にしないといけなさそうだな、これは…。放っとくと、さらに強化されそうな気がする」

「それフラグです提督」

「不吉なこと言うなよ、艦長…やるぞ」

 

 

堺艦隊 陣形:単縦陣

 

vs

 

深海中核艦隊 陣形:単縦陣

 

 

反航戦

 

 

「撃ち方はじめ!」

 

 堺の号令一下、

 

「航空戦艦の真の力、思い知れ!」

「主砲、4基8門、一斉射!」

 

 伊勢型航空戦艦2人が砲撃を開始する。だが。

 

「くっ!?」

「固い…!」

 

 ル級eliteやflagshipの強化された装甲は、思った以上に固かった。それに加えて、伊勢たちは航空戦艦改装の代償として、主砲を2基失っている。固くなった相手に、弱くなった火力では、ダメージを与えるのは難しかった。

 その直後、ル級flagshipが発砲し…

 

ドカァァァァン!

 

 大きな爆発音が響き、

 

「一航戦の誇り、こんなところで失うわけには…!」

 

 一撃で赤城が大破に追い込まれた。

 

 

「なっ!?」

 

(これは、倒すのは難しいかもしれない…)

 

 堺は一瞬そう思い、しかしその直後に。

 

「強い…それが、どうしたぁぁ!!」

 

 反撃の砲を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時間も経った後、堺艦隊は泊地に帰投した。

 

 敵中核艦隊に挑んだ結果は、…惨敗だった。

 

 旗艦である日向以外の、全艦が大破。敵艦隊は、ル級1隻と駆逐艦隊は沈めたものの、ル級elite以上の艦は全て健在だったのだ。

 

「く…さらなる強化がいるのか…?しかし、これ以上何をどう強化しろと…」

 

 困り果てた堺は、ふと山城に目を止めた。

 

(火力低下が怖いが…山城も改にするか…。んで、他には…何とかして火力を…。とにかく、相手に撃たれる前に少しでも相手にダメージを与えないとな…)

 

 この時、堺の心を何かがよぎった。

 

(撃たれる前に撃つ…撃たれる前に…?そうか、相手が砲撃するより先に、先制攻撃すればいい。では、どうやってやる?強力だと聞く雷巡を配備している暇はないし、育てる暇もない。…ならば、飛行機だ!航空母艦だ!)

 

 そして、以前に読んだ資料(南雲機動部隊のもの)が蘇った。

  堺は、赤城のほうを見る。

 

「赤城さん、一航戦の編成メンバーは確か…」

「私と、加賀さんです」

「その加賀さんなんだが…どれだけ飛行機を積める!?」

「私より多いですね…確か、今の私が73機、それに対して加賀さんは90機くらい運用できたと思います。空母の中では最も多くの機体を飛ばせますよ」

「それだ!ようし赤城さん、バケツ(高速修復材)浴びたらすぐ工厰に来て!加賀さんを召喚しよう!」

「は、はい!」

 

 赤城にてきぱきと指示を出し、堺は今度は瑞鳳を見た。

 

「それと瑞鳳、君もたしか、改装まであと1歩だったよな?演習して、練度を上げておいてくれ。もしかしたら、改装時に持ってきた装備を使うことになるかもしれん!」

「わかりました!」

 

 赤城を伴い、堺はあわただしく、工厰へと走っていった。

 

 

 

 …が、思い立ったが吉日とはいうものの、事は上手くはいかないことが多いものである。

 

「これで…7回目…」

「提督、資材を使うのは程々にしろと、大淀さんも…」

 

 ハイライトの消えた目をしている堺に、赤城が心配そうに意見を述べる。

 

「そうだけど!これに失敗したら多分私は解任だ!そうなれば、ここの艦隊も解散となる!資源なんぞあったって意味がない!だったら!ここで加賀さんを召喚するのに使うほうがまだ有意義じゃないか!?」

「提督がそこまで仰るのなら…」

 

 しかし結局、赤城が押し切られてしまった。

 堺は、パネルを操作してボーキサイト多めの投入を指示し…

 

「いっけぇぇぇぇ!」

 

 「建造開始」をタップした。

 

 

 

 工厰の鉄扉が閉まり、表示された時間は…

 

04:19:58

 

「高速建造材、投入っ!」

 

 そして、現れたのは…青い袴に身を包み、長弓を持って、矢筒を背中に背負った艦娘だった。左側だけ髪をまとめて、サイドテールにしているのが印象的である。飛行甲板には、「カ」という文字があった。

 クールな雰囲気をまとうその艦娘が、自己紹介を行う。

 

 

「航空母艦、加賀です。貴方が私の提督なの?それなりに期待はしているわ。」

 

 

「……よっしゃぁっ!」

「流石です、提督」

 

「あ…赤城さん。お久しぶりです」

「久しぶりね、加賀さん」

 

 かつての一航戦の空母同士、挨拶を交わしたところで、堺は加賀に、頭を下げて頼みこんだ。

 

「提督の堺だ、よろしく頼む。早速で悪いが、演習に入ってくれ!現在敵の迎撃作戦中で、一刻も早く戦力が欲しいんだ!加賀さん、頼む、一航戦の力、どうか貸してくださいお願いします!」

「せっかちな提督ね…わかったわ。敵の攻勢とあれば、食い止めないといけないわね。一航戦加賀、(演習に)出撃します。」

 

 かくして、堺は念願通り加賀を艦隊に迎えた。

 

 

 

 瑞鳳の改装も終了し、装備の換装も完了して…

 

「只今より、沖ノ島海域に出撃し、敵中核艦隊を撃退、あわよくばこれを壊滅する!艦隊、出撃せよ!」

「「「はい!」」」

 

 堺艦隊は、沖ノ島へ出撃した。今回が、7回目の出撃となる。

 

(何だろう、ラッキー7なせいだろうか?何か、いいことがありそうな気がする…)

 

 堺は、無性にそのように感じた。

 

 

 期限まで、あと3日。

 敵艦隊撃破は、間に合うのか!?

 

 

 すべては、神のみぞ知る。




今年の投稿はこれが最後になります!
といっても、本作が終わるわけではありませんので、ご安心下さいませ!

迫る期限、なくなる資源…果たして攻略は間に合うか!?




加賀「ところで…なんでこんな急に連続投稿してるのかしら」

うp主「いや、忙しくて投稿してる暇なくて…それで、暇ができたので投稿できてなかった分を取り返そうと」

加賀「…言い訳の匂いがするのだけれど」

うp主「ナンノコトデショウカー」

デデーン!(年末の某番組で尻を叩かれる時の効果音)

伊勢「提督、out」

日向「嫁に焼き印入れてもらってこい」

嫁(未来)「第一、第二主砲、斉射、はじめ!」

うp主≒堺「あぁ嫌イヤいやイヤ嫌ぁ!!!」


うp主は三式弾の砲撃により、焼き印を入れられました。ついでに執務室も黒焦げになりました……


それでは皆様、よいお年をお迎えください!
来年も、拙作をよろしくお願いいたします!!

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