とある提督の追憶   作:Red October

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…ここまでのあらすじ…

日本国海上護衛軍・艦娘部隊に配属された新人士官・堺修一。彼は、艦娘部隊司令部から「あ号艦隊決戦」を発令されるも苦戦していた。タイムリミットが迫る中、彼は新編成した大規模艦隊を以て、成功を期して沖ノ島へ出撃をかける…。

18年1月9日、本文中の「大本営」表記を改めました。


020 提督と、あ号艦隊決戦!(4)

「只今を以て、第七次沖ノ島方面平定作戦を開始する!艦隊抜錨!出撃せよ!」

「「「はい!」」」

 

 

♪守るも 攻むるも 黒鐵(くろがね)

♪浮かべる 城ぞ 頼みなる

♪浮かべる その城 日の本の

皇國(みくに)四方(よも)を 守るべし

眞鐵(まがね)の その艦 日の本に

♪仇なす 國を 攻めよかし

 

石炭(いわき)の 煙は 大洋(わだつみ)

♪龍かと ばかり 靡くなり

♪彈撃つ 響きは 雷の

♪聲かと ばかり (どよ)むなり

萬里(ばんり)の 波濤(はとう)を 乗り越えて

♪皇國の 光 輝かせ

 

♪海行かば 水漬く屍

♪山ゆかば 草生す屍 大君の

()にこそ死なめ 長閑(のど)には死なじ

 

 

 毎度おなじみの軍艦行進曲の演奏の下、泊地に残る艦娘たちに見送られて、堺艦隊は出撃していった。

 

 

 今回の堺艦隊、編成は以下の通りである。

 

旗艦 加賀 Lv19

赤城 Lv25

日向改 Lv16

伊勢改 Lv31

山城改 Lv21

金剛改 Lv26

 

 

(うーむ、やっぱり空母の艦橋は狭い…!…あと、赤城さんの時より艦橋内の気温が高い!何故だ…!?)

 

 沖ノ島海域へ向かう道すがら、堺は、旗艦加賀の艦橋の中で、そんなことを考えていた。

 

 もともと空母は、航空戦隊の旗艦を勤めることはあっても、艦隊の旗艦となることは少ない。このため、旗艦となった時に提督を座乗させるスペースなんてものはないに等しく、とにかく狭い状態なのだ。

 

 更にいうと、艦橋には、艦長や航海長などはもちろん、水雷長がいない代わりに航空隊長が詰めている。ただでさえ空母の艦橋は狭いのに、人口(?)密度が高い。

 

 とどめに、加賀の史実がある。加賀はかつて三段空母だった頃、誘導煙突を使っていた。これのせいで、特に煙路周辺の部屋は気温が常に40℃を超え、とてもじゃないが人の過ごせる環境ではなかったのだ。それを反映してか、艦娘となった加賀は、他の艦娘と比較して体温が高い。その体温が、艤装にも伝わっているのである。

 

 まとめると、加賀の体温 ≒艤装艦橋内部の気温 が通常より高く、そこに、人口(妖精?)密度の増加が合わさり、余計暑苦しくなっている、というのが真相なのである。

 

 

 …堺はまだ気付いていないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、なんとかここまでは来れたな!」

 

 出撃して4時間が経過しようとする頃。

 堺艦隊は、敵精鋭水雷戦隊を撃滅したところだった。そう、はじめてこの海に来た時に、ボコボコにされた、あの水雷戦隊である。

 

「各艦、損害状況知らせ」

「は!各艦損害状況知らせ、と」トトトツートトトツートトトツー…

 

 堺の号令に応え、通信長妖精がモールス信号を送る。

 

「本艦の損害状況は?」

「は。本艦船体に、ダメージはありません」

 

 「安全第一」のヘルメットをかぶり、角材を持った応急長の妖精が、堺の質問に答える。

 続いて、第1から第4までの各航空隊の指揮官妖精が、損害状況をまとめて報告してきた。

 

「本部隊、零戦52型航空隊に損耗なしです」

 

 まずは第1航空隊、損耗なし。

 

「九九艦爆隊、当初18機いましたが、現在残存機数12機。うち3機は応急修理を要しますので、今すぐ飛べるのは9機となります。搭乗員未帰還10名」

 

 続いて第2航空隊。こちらは艦上爆撃機の飛行隊である。やはりと言うべきか、損害が出てしまっていた。

 

「天山隊、残存機体数38。今のところ未帰還7機です。搭乗員未帰還は12名。それと、5機が修理が必要なので、今すぐ飛ばせるのは33機です」

 

 さらに、第3航空隊。こちらは、新型の艦上攻撃機である、天山を装備していた。損害は出ているものの、比率としては、第2航空隊よりはるかにマシである。

 

「九七艦攻隊、残存5機。出撃可能機は5機です」

 

 最後に、第4航空隊。使っているのが旧式機であり、もともと数が少ないのもあって、半ば壊滅していた。

 

「九九艦爆の損害が思ったよりひどいな…。第二次攻撃隊編成できそうか?」

「第一次攻撃隊の損耗次第ですが、まあ、なんとかできると思います」

「了解。第一次攻撃でどれだけ潰せるかが勝負だ、頼むぞ!」

「お任せを!」

 

 堺と「加賀」の第2航空隊指揮官が会話していた時、各艦からの損害報告が入ってきた。

 

「戦艦伊勢、敵砲弾2発被弾、副砲群に少量の損害あるも、戦闘行動に支障なし。戦艦金剛、第1主砲ターレットリング損傷、第1主砲旋回不能。なれどそれ以上の被害なし。戦艦山城、戦艦日向は現時点で損害なし。空母赤城、無傷なるも航空隊、特に艦攻隊の被害が大きく、編成可能な艦攻は、全部で12機、とのことです」

「27機あったはずなのに12!?えらく減らされたもんだな、艦爆隊は?」

「はっ、赤城に艦載された彗星については、17機残存、全機出撃可能、とのことです」

「やっぱり新鋭機のほうが生存率が高いな」

 

 今回、瑞鳳の改造と共に、出撃艦隊の装備が一部見直された。

 具体的には、赤城にこれまでの九九式艦上爆撃機に代わって、新型艦上爆撃機「彗星」が配備され、加賀も、零戦を52型に更新、さらに九七艦攻2個飛行隊のうち1個を、新型機「天山」に換装したのである。ちなみに零戦52型、天山、彗星いずれも瑞鳳が持ってきたものだった。

 

「赤城艦攻隊の損害と、金剛の1番主砲が気になるが…まあ、なってしまったものはしょうがない。大破した艦はないな?」

「ありません。全艦意気軒昂、いつでもいけます」

「よし!全艦進撃、加賀に続け!…羅針盤よ、どうかお願いします!」

 

カリカリカリカリカリ……(羅針盤を回す音)

 

「………!! やった、北東と出たぞ!」

「おめでとうございます、提督」

 

 堺に、伊勢の艦長がおめでとうを述べた。

 

「ありがとう、艦長。さあ、あとは人事を尽くすのみだ!金剛に連絡、索敵機を出せと」

「はっ!」

 

 通信が発信されてしばらくすると、金剛艦上から索敵機…零式水上偵察機が飛び立った。半分オレンジ色に染まりかけた空に、フロートを付けた機体の影が消えていく。

 それを見ながら、堺は通信回路を開いた。宛先は、全艦娘たちに通信を送る。

 

『こちら提督だ、全艦に告ぐ。只今より戦闘海域に突入する。全艦、戦闘配置につけ。対水上戦闘用意。繰り返す、全艦対水上戦闘用意。赤城、加賀、伊勢、日向、山城の各航空隊は出撃準備。天山及び九七艦攻は、全て魚雷を装備せよ。航空攻撃の最初の一撃が、本海戦の結果を左右する。総員心して事に当たれ。以上』

 

 通信を切り、堺は掌帆長を振り向く。

 

「マストにZ旗を掲揚せよ」

「仰せのままに」

 

 各航空隊の出撃準備が整った頃、加賀のマストにZ旗が掲げられた。その旗の意味は、読者諸兄のご存じの通りである。

 

『皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ』

 

 旗をちらりと見つつ、堺は改めて決意する。

 

(Z旗…大事な意味を持つ旗だけど、同時に最悪の死亡フラグでもある。フラグは回収せずに、ぶち壊さないと…!)

 

 史実において、実はZ旗を掲げた軍艦は全て沈没している。あの三笠でさえそうなのだ。一度弾薬庫爆発事故を起こして沈み、その後引き上げられた後で、退役して横須賀に展示されているのである。その他、Z旗を掲げた艦…赤城、大鳳、大和…彼女らのたどった運命は、読者諸兄なら深くご存じであろう。

 堺の言う「最悪の死亡フラグ」とは、そういう意味である。

 と、この時。

 

「金剛索敵2号機より入電。『我、敵中核艦隊ヲ発見セリ。戦艦ル級flagship、戦艦ル級elite、戦艦ル級elite、軽巡ト級、駆逐二級elite、駆逐二級elite。単縦陣ニテ北西ヘ進撃中、速度20ノット、10時の方向、距離28000』」

 

 伊勢の通信長が、通信を伝えてきた。

 

「見つけたか!加賀の九七艦攻5機を第二次索敵として出そうかと思ってたが…不要になったな。赤城へ打電せよ、『第一次攻撃隊発進セヨ』と!」

「はっ!」

「加賀航空隊、第一次攻撃隊、発進せよ!」

「「「第一次攻撃隊、発艦せよ!」」」

 

 加賀の艦橋が騒がしくなるのを感じつつ、堺は敵の戦力について考えていた。

 

(戦艦が3隻に減って、代わりに軽巡がいる…つまり、戦力の補充が間に合わなかった…?だとしたら、これはチャンスだ!)

 

 精鋭の加賀航空隊、一航戦の名は伊達ではない。すぐさま、発艦準備が整った。

 

「ここは、譲れません」

「「「第一次攻撃隊、発艦はじめ!」」」

 

 いよいよ、攻撃開始だ。

 

「「「帽ふれー!!!」」」

 

 妖精たちに見送られ、第一次攻撃隊が次々と飛び立つ。零戦52型12機の護衛のもと、九九艦爆3機、天山27機、九七艦攻5機が順次発進、空中集合して編隊を組むと、敵艦隊に向けて前進していった。赤城でも、同様の光景が展開している。

 攻撃隊発艦終了後、堺は攻撃隊の編成を尋ねた。

 

「第一次攻撃隊の編成は?」

「はっ、本艦からは、九七艦攻が5機、天山が27機、九九艦爆が3機、零戦52型が12機、飛び立ちました」

「赤城からは、零戦21型18機の援護のもと、九七艦攻12機、彗星9機が発進しました」

 

 加賀の艦長妖精と通信長妖精が、応答する。

 

「合わせると…対艦攻撃ができるのは九七が17、天山が27、九九が3、彗星が9で、合わせて56機。そこに戦闘機を30機つけて、合わせて86か。結構な規模だな…」

 

 そこに、通信長が新たな報告を伝えた。

 

「提督。全艦、戦闘配置完了しています」

「よし。前進第1戦速。左60度転進、砲雷撃戦用意!」

 

 

 堺の命令を受け、艦隊は単縦陣を取って、左は回頭していく。

 

 

 

 前進すること25分、第一次攻撃隊から通信が入る。

 

「第一次攻撃隊より入電!『トツレ』の連送です!」(トツレは、「突撃陣形作れ」の略。敵のすぐそばまで来たことを意味する)

「来たか、頼むぞ…!」

 

さらに5分後。

 

トトツートト、トトツートト、トトツートト…

「第一次攻撃隊より、ト連送です!」(ト連送は、「全軍突撃せよ」の意味)

「うむ、了解」

 

 

 

30分後。

 

「第一次攻撃隊より入電。『攻撃完了。敵軽巡1、駆逐艦1撃沈、戦艦ル級elite1隻中破、敵駆逐艦1隻大破。コレヨリ帰投スル』です」

「できれば戦艦の1隻も沈めたかったが…やむを得ん、右舷砲戦用意!」

「右舷、砲戦用意!」

 

 やがて、攻撃隊が戻ってきた。防空砲火が激しかったらしく、損傷した機体も多い。

 しばらく進むと、水平線上に敵艦隊が見えてきた。

 

 

 

堺艦隊 vs 深海中核艦隊

 

単縦陣 vs 単縦陣

 

同航戦

 

 

「砲撃開始!てー!」

 

 堺の命を受け、真っ先に火蓋を切ったのは、伊勢だった。瑞雲に観測役を頼みつつ、砲撃に入る。

 

「主砲、4基8門、一斉射!」

 

 それと同時に、無傷のル級eliteが発砲。初弾は両艦とも外れた。しかし…

 

「瑞雲より、誤差報告来ました!」

「よし!次弾、てーっ!」

 

「瑞雲とかって、どうかな?いける?」

 

ズドォン!

ヒュルルル…ドカァン!

 

 次弾が見事に命中。ただ、あまり大きな損害は与えられなかったようだ。

 続いて、戦艦ル級flagshipの16インチ三連装砲が火を吹く。その砲弾は、山城に向かって飛び…

 

ドガァァァァァァァンッ!!

 

「やだ…被弾…?」

 

 山城に命中、一撃で大破させた。

 

「な!?山城!大丈夫か!?」

『山城は大丈夫…夜じゃない…。姉様は母港で待ってるし、沈みません!』

 

 実は堺は先日、2回目の大型艦建造で扶桑を入手している。

 こんな時に何やってんだ、と思うかもしれないが、正規空母を手に入れようとした時の副産物である、ご理解ください。

 

 山城の「各艦は我を省みず前進し、敵を撃滅してくださーい!」というセリフを通信機越しに聞き、堺艦隊は敵との距離をつめていく。生き残っていた駆逐二級が、金剛の35.6㎝砲弾をくらって消し飛んだ。

 

「まあ、後部甲板は盾ではないのだが」

 

 日向がル級flagshipを撃つ。命中するも、残念ながら装甲貫徹には至らない。

 

「五航戦の子なんかと一緒にしないで」

「第二次攻撃隊、全機発艦!」

 

 一航戦ペアの第二次攻撃も、ほぼ不発に終わる。しかし、ル級eliteを中破から大破に追い込んだ。

 

 …と思ったとたん、3隻のル級が同時に発砲。狙われたのは、日向、伊勢、金剛。日向が回避し、金剛が避け、伊勢は…

 

ドゴァァァン!

 

「がーん 折角の飛行甲板が…」

 

 被弾、中破した。

 主砲砲身がねじ曲げられ、飛行甲板には穴が開いて、火災が発生している。発進するはずだった瑞雲航空隊の妖精たちは大慌てだ。逃げ出すもの、消火器を担いで応急妖精に協力しようとするもの、機体を爆弾ごと海中投棄するもの…

 

「撃ちます!Fire〜!」

 

 お返しとばかりに金剛が発砲。

 

「うちの姉になんてことを…」

 

 日向も撃ち返した。

 しかし、どれも決定打にならない。相手の装甲が固く、うまくダメージが入らないのだ。戦艦ル級eliteが小破したが。

 

 結局、一航戦の第三次攻撃も刺さらず、いよいよ日は水平線に沈んだ。

 堺は、決断を下す。

 

「敵艦隊は、これまでの戦闘記録だと、過半数を撃滅しなければ撤退しない…やむを得ん!全艦追撃!我、夜戦に突入す!」

「「「了解!」」」

 

 夜戦に突入すると同時に、戦艦ル級flagshipがいきなり、闇を突いて突撃してきた。

 堺の座乗する加賀は咄嗟にこれをかわしたものの、伊勢が炎上して目立っていた上に損傷のせいで回避が遅れ、至近距離から砲撃をくらってしまった。当然、大破である。

 

 その直後、仕返しとばかりに日向が突貫する。目標は、戦艦ル級flagship。

 

「航空戦艦の真の力…思い知れ!」

 

 静かな怒りをこめ、全砲門一斉射。

発射された砲弾は、全てがル級flagshipに殺到し…装甲を突き破って命中した。

 

 凄まじい爆発。

 

 艤装が壊れる音。

 

 夜闇と煙をついて見えたのは。

 

 

 

 …もののみごとに大破したル級flagshipだった。

 

 右側の艤装は右腕ごと失われ、左側の艤装も、三連装砲が1基、完全に吹き飛んでいる。一瞬で失われたため、弾薬庫への誘爆はしなかったようだ。

 

 そして、顔は…あの恐ろしくも、どこか美しさすらあった顔は、見るかげもない。

 右側が黒く焼け焦げ、白い肌は完全に真っ黒。人間でいうなら、第3度火傷か、それ以上だ。ついでに、右頬が削り落とされ、右目のあった場所には、虚ろな眼孔があるのみである。

 

「この機を逃すな!」

「Yes!全砲門、」

 

 日向の声に、唯一砲弾が残っていた金剛が動いた。

 回避もままならぬル級flagshipに、照準を合わせる。

 

「Fire!」

 

 発射。撃ち出された砲弾は、ル級flagshipに到達……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 する直前で、横合いから飛び出してきた、小破したル級eliteに食い込んだ。

 

 

 

 弾薬庫に引火し、大爆発を起こすル級elite。旗艦の危機を悟り、捨て身の戦法で旗艦を守ろうとしたのだ。

 

 炎の中で、艤装を構えた人影が、暗い海面に消えていく。

 

 

 

 そして残ったのは、大破したル級flagshipと、同じく大破したル級eliteだった。

 

 

 

 しばし、にらみ合う両者。

 

 

 深海棲艦側は、全艦が大破し、もうまともな戦闘は無理だった。

 

 対する堺艦隊は、無事な艦こそいるものの、砲弾が尽きており、撃てない。

 赤城と加賀も消耗しており、20㎝砲を使う余裕はなかった。

 

 

 

 

 …やがて、深海棲艦中核艦隊は反転、夜の闇の中へ姿を消していった。向かう方向は、南東…南太平洋のほうである。

 

「追撃しますか、提督?」

 

 加賀に聞かれ、堺は…

 

「いや、やめておこう。弾はないし、疲労が濃い。今追撃しても、敵に増援を呼ばれて返り討ちに遭うのが関の山だろう。こちらも撤退する」

 

 苦渋の覚悟で、決断を下した。

 

『これより我が艦隊は、当海域を離脱、タウイタウイ泊地へ帰還します。私と赤城さんに続きなさい』

『『『了解!』』』

 

 加賀から通信が飛び、他の艦娘が応じる。

 

 

 

 

 

 

 こうして、堺艦隊は、沖ノ島へ侵攻した深海棲艦艦隊の撃退に成功した。

 

 

 だが、因縁の相手である戦艦ル級を、あと一歩及ばず、撃ち漏らした。

 

(どうも嫌な予感がする。まるで、次に会ったら更に強化されてました、なんてことになりそうだ。次こそ、次こそ終わりにしなければ)

 

 加賀艦橋内で、決意を新たにする堺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 タウイタウイ泊地に帰還した堺は、勝利の歓呼の中、司令部に向かう。

 約3日ぶりに司令部に入ると、大淀が声をかけてきた。

 

「提督、お疲れ様でした。『あ号艦隊決戦』作戦成功です」

「ああ、ありがとう」

 

 堺の声は、半ば疲れが感じ取れる。

 

「お疲れのところすみません、お眠りになる前に、新しく来た子が挨拶をしたいと」

「わかった、入れてくれ」

 

 大淀が「入ってください」と部屋の戸のほうに声をかける。すると、戸が開いて、1人の艦娘が入ってきた。

 

 

 その子を見た瞬間、堺は、あまりの驚きで疲れも何もぶっ飛んでしまった。

 

 

 

 セーラー服調のワンピースを着て、首から大きな双眼鏡を下げた、茶髪の艦娘。背格好からして駆逐艦らしい。そして堺は、その子に見覚えがあった。

 忘れるはずもない、提督任命される前の日の夜の夢(001参照)に出てきた…!

 

 その子は、びしっと敬礼し、自己紹介する。

 

「陽炎型駆逐艦、8番艦の雪風です。しれぇ、どうぞよろしくお願いしますっ!」

 

 声まで、あの夢の記憶と寸分違わなかった。

 

 堺の頭の中を、目まぐるしく感情と疑問が飛び交う。

 

(ほ、本当にいたのか、しれぇ呼ばわりのあの子!ということは、周りにいた他の子もいるのだろうな。しかし、どの型なんだろう?いや、そんなことはどうでもいい。あの和傘の美人、あの人も艦娘として存在するはずだ!しかし、どの艦種の艦娘なんだろう、この子たちとは佇まいがまるで違ったし…)

 

「なんでしょう?司令官」

 

 無意識のうちに見つめすぎたらしい。雪風は、頭に疑問符を浮かべたような顔で、堺をみていた。

 

「ゴホン、いや、なんでもない。改めて、俺がここの提督だ。雪風、今後ともよろしく頼む!」

「はいっ、がんばります!」

 

 これが、堺の見た妙な夢の中に出てきた、不思議な女性たちとの第一の出会いだった。

 

 

 

 

〈戦闘結果〉

 

堺艦隊の損害

 

航空戦艦山城、及び伊勢 大破

戦艦金剛 小破未満(カスダメ)

 

 

 

深海棲艦中核艦隊の損害

 

戦艦ル級flagship、戦艦ル級elite 各1隻大破

戦艦ル級elite 1隻轟沈

軽巡ト級 1隻轟沈

駆逐ニ級elite 1隻撃沈、1隻轟沈

 

 

 

堺艦隊A勝利

 

MVP:日向




本年も拙作をよろしくお願いいたします!

エタらないよう、頑張って書いていきます。

ついに沖ノ島を突破した堺提督、お疲れ様でした…と言いたいです。
ちなみに、うp主は十一号作戦の始まる前は、まだ2-4は突破できていませんでした。ここは、主人公≠うp主 ですね。ただし、ボスドロップが雪風だったのはホントです。

001で堺が見た、妙な夢…あれに出てきた子を、やっと1人出せました。この調子で、何話かかるかわかりませんが、全員出していって、現代までこぎつけたい…不肖ながら、頑張りますっ!

次回は、閑話休題と称して、現代に話の時間軸を戻します。ここは、いつもより文字数少なめになるかと思います。

それでは、また次回。

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