とある提督の追憶   作:Red October

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宣言通り、今回は現代に戻ってきます。

場面としては、前回(010.5)の続き、という形になりますので、先にそちらをお読みになることを推奨します。でないと、話がわからない可能性もございますので。


020.5 閑話休題2

「あ号艦隊決戦、アレは本当にキツかった…」

 

 堺修一は、キリのいいところで話を切ると、紅茶を一口飲んだ。

 因みにだが、堺本人の好みは、紅茶にブランデーを垂らすことである。もっとも、今日は「貴方のそれは、紅茶にブランデーを入れるのじゃなくて、ブランデーに紅茶が入っているのでしょう。まだ若いとはいえ貴方も年なんですから、お酒のやりすぎはいけません」という堺の妻の主張のため、ブランデーは入れていない。ストレートティーである。

 

「俺も、南西諸島で深海棲艦の大規模反攻があったってのは聞いてたよ。ただ、十一号作戦の準備をしなきゃならなかったから、出兵が認められなかったんだ。俺は救援に行きたいって先輩に言ったんだけどな」

「そういや、藤原はあの時点ではまだ提督見習いだったよな、たしか。大規模作戦直前まで、若葉マークすらつかない状態だったのか?」

「ああ。んで、若葉マーク付きでもいいから、正式に提督として着任していないと、作戦参加は認めない、って先輩に明言されてな」

 

「藤原さんも、苦労したのですね…」

「大変なのは提督も艦娘も変わらないのです」

 

 堺と藤原、両者の妻が反応する。

 

「提督見習いから始めた場合、試験…演習という名の実技と、ペーパーテスト…に受からないと、提督任命されないんだっけか?」

 

 堺の疑問に、堺の妻が用意した茶菓子…メープルシロップを垂らしたスコーン…をかじりながら、藤原海斗が応じる。

 

「そう。だから、こんちきしょう、って気になって、猛勉強したよ。お前が必死で沖ノ島へ行ってた間にな」

「お前、たしか勉強嫌いなんじゃなかったか?」

「そうだけど、あの規模の作戦なら、多分、後方支援とかの名目で貴様も動く可能性があるな、と思ったんだ。それで、堺のやつが参加できそうなのに、前線に立つべき俺が出られない、なんて恥ずかしい話があるか、と思ってさ。あと、単純に、久々に貴様の面を拝みたかった」(十一号作戦は、リンガ泊地の艦隊が主力だったが、佐世保鎮守府の艦娘部隊が本土からの応援として参加していた)

「単純だなァ…。お前らしいけどな。聞いた話じゃ、同期の中では、見習い卒業はお前が最初だったらしいぜ。あの勉強嫌いがどうしたんだ、って噂になってたぞ」

「やれやれ、噂になったか。そりゃそうだよな」

「教育隊じゃお前のペーパーテストの点の悪さは有名だったもんな。いっつも赤点スレスレでさ」

「当時を掘り返さんでくれよ。受かったんだし、結果オーライじゃねえか」

 

 スコーンを飲み込んだ後、続いてマカロンに手を伸ばしながら、藤原は話を続ける。

 

「受かった、って言われて提督帽を支給された時は、ほんとに嬉しかったぜ。そしたらその日にタウイの若造が深海棲艦を撃退した、って聞いてさ。あの日は笑いが止まらなかったぜ」

「らしいな。こないだ、同期の奴から電話があって、お前の話になったんだが、お前の頭がおかしくなったんじゃないかと思った、などと言ってたぜ」

「失礼なやつだな、誰だそりゃ」

「唐澤の奴だよ。あいつは佐伯湾だったかな、確か」

「唐澤か、あいつなら言いそうだな」

「違いない」

 

 元提督は、2人してハハハと笑い合う。

 

「そういや、お前の奥さんは初期艦なのか?電って初期艦にもいたな、と思って」

「ああ、そうだぜ。初期からの付き合いさ」

「やっぱりかこのロリコンめ」

「貴方、ロリコンはないでしょう」

「事実だろうが」

 

 妻がたしなめるも、さらりとかわす堺。

 

「十一号作戦じゃ、お前は何してたんだ?」

「ああ、それはな…」

 

 そして、次第に陽が傾きつつある中、回想は続いていく。




短かったので、一気に書ききってしまいました。なので、連続投稿させていただきます。


他の人どうやって出して行こうかな…。うp主≒主人公 のスタイルの作品だから、他の人を(特に名前付きで)出すのが難しい…。まあ、試行錯誤しながらも、頑張って書いて行きたいと思います。

次回から、また過去編です。
時期的には、15年5月あたり、「発令!第十一号作戦」があった頃です。

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