とある提督の追憶   作:Red October

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…ここまでのあらすじ…

日本国海上護衛軍・艦娘部隊に配属された、新人の士官、堺修一中佐。彼は、夢の中に出てきた、艦娘と思われる和傘の美人を気にしている。あ号艦隊決戦を成功させた彼は、十一号作戦への参加を命じられ、説明会に出席した。


024 提督と、十一号作戦(〇)

「戻ってきたな…」

 

 青い海の上を飛行する、緑色に塗装された1機の飛行艇。4つの三菱火星22型レシプロエンジンが、軽快な音を立てる。

 堺の搭乗する二式大艇は今、タウイタウイ泊地を眼下に見下ろしていた。本土での作戦説明会が終わり、帰ってきたのだ。

 

「タウイタウイの海よ!私は帰ってきた!」

「…何やってるんですか、提督」

 

 叫んだ堺だったが、直後に二式大艇のパイロット妖精にツッコまれる。

 ツッコミを入れながらも妖精の手は止まることを知らず、機械の上で別の生き物のように動いている。

 

『こちら赤城戦闘機隊、護衛任務を終了します。お疲れ様でした、どうぞ』

「こちら二式大艇、護衛感謝します。提督は責任持って最後までお送りしますので、お任せくださいませ、どうぞ」

 

 通信妖精が護衛の戦闘機隊と連絡を取り合う。

 

『間も無く、本機はタウイタウイ泊地に着水します。シートベルト締め!総員対ショック体勢!』

 

 機内放送が響いた。

 

 その1分後、二式大艇は、青く澄みわたるタウイタウイの海へ着水した。

 

 

「うへー、どうにも着水には慣れないな…」

 

 着水のショックで、半分酔い気味の堺であった。

 

 

 

………

 

 

「ただいま帰ったよ」

「お帰りなさいませ、提督」

「あら提督、お疲れ様」

 

 タウイ泊地司令部に戻った堺(だいぶ酔いから回復したが、まだ顔がやや青い)は、軽巡洋艦娘「大淀」と、航空戦艦娘「伊勢」に出迎えられた。

 

「留守の間、ありがとう。早速だが、大淀、泊地のほうはどうなった?」

「今のところ、防空陣地の建設は進んでいます。ですが、予定分の6割ほどしかできていません。理由としては、資源の不足、そしてそもそも備える砲がないことです」

「だいぶ昔の骨董品を引っ張り出して、それ主力としてるような状態だしなぁ…」

 

 堺のいう「だいぶ昔の骨董品」とは、八八式75㎜野戦高射砲のことである。

 史実においては、皇紀2588年…つまり西暦1928年に日本陸軍に採用された砲で、ぶっちゃけ第一次世界大戦の頃の砲に毛が生えた程度の性能しかなかった。だが、軽量ゆえに持ち運びが容易だったため、第二次大戦でも、日本軍によってあちこちに持ち込まれた。そして、連合軍相手に、戦車はぶっ壊すわ飛行機は撃墜するわ大暴れ。連合軍から嫌われる装備となった。

 その砲が、この世界にも登場している…のだが、やはりというべきか、性能は高くない。さらに、数も多くないのである。これに頼らざるを得ないのが、本土の砲兵工厰から遠く離れたド田舎の悲しさである(それを言い出すと、堺が泊地防空の主力にしようとしている八九式12.7㎝連装高角砲も、相当の骨董品なのだが)。

 

「だが、今回本土に行ったついでに、最新式の九八式10㎝連装高角砲を注文してきたよ。数的に工厰と出撃ドック周辺にしか配置できないけど、実戦データなら取れるはずだ。あとは、データを見て決めていくことにしよう」

「ありがとうございます。それと、空母寮の建設は順調で、現在のところ半分ほど完成しています」

「お、そうか!よかった」

「私からは以上です。次に、伊勢さんから、艦隊の変化についての説明です」

「えーと、まず、以下のメンバーが改になったんだよ。戦艦扶桑、重巡摩耶、それと駆逐艦から3人。吹雪、子日、敷波」

「おお、一気に戦力が増えたな」

「あと、何人か新しいメンバーが加わったわよ。水上機母艦の千代田に、重巡の鳥海。あと軽空母のジュンヨウとかいう大酒飲みと、建造で着任した駆逐艦の…」

 

ガラッ!!

 

「おっそーい!」

 

 

「のわっ!?」

 

 伊勢が話している途中で、勢いよく司令部の扉が開いた。

 飛び込んできたのは、駆逐艦と覚しき艦娘。黒いリボンがウサミミみたいに揺れ、ヘソ出し、ミニスカ、黒Tバックとかなりエr…もとい、過激な服装だ。周囲に、主砲に顔がついて手足と胴体が生えたような、妙な生物っぽいのを3体、展開している。

 

「えっと…」

「この子が、今言おうとした駆逐艦の…」

「駆逐艦島風です。スピードなら誰にも負けません。疾きこと、島風のごとし、です!」

「お、おう、よろしくな!」

 

(なんか、強烈な個性のある子が来たな…)

 

 こうして、あ号艦隊決戦の報酬も兼ねて、タウイタウイ艦隊には、新たに4人の仲間が加わった。

 そして、複数の艦娘が強化(扶桑の火力は弱化だが)された。

 

「艦隊の変化はこのくらいかな。あ、あと開発を少しやったら、41㎝連装砲っていう装備ができたんだ。多分、戦艦用の大口径主砲だよ」

「マジか!戦艦の火力強化はありがたい!」

「提督、軽巡や駆逐艦も強化してくださいよ」

 

 相変わらずの大艦火力主義である。

 

「提督、本土のほうはどうでした?」

「うーん、俺がここに来た時と大して変わった様子はなかったかな。ただ、軍食堂のメニューが若干豪華になってたよ。海を取り戻していけてる証かな」

「ふふ、それはそれは…」

「それと、大淀」

 

 ここで、堺はそれまでの緩んだ表情から、少し真面目な顔つきに変化した。声音も、真面目なものになる。

 

「艦娘全員を、講堂に集めてくれ。我がタウイタウイ艦隊も、次の大規模作戦への参加を命じられた。説明会をしなきゃならない」

「承知しました。近海警備に出ている艦もいるので、明日の朝一にしましょうか」

「ああ、そうしよう。それと、明日以降の艦隊行動は、最低限度にしなきゃならなくなった。今回の作戦はカレー洋方面での行動で、リンガ泊地が最前線になるんだが、リンガだけでは収用能力不足らしくてな。それで、リンガの他に、ブルネイとここも艦隊の行動拠点に指定されてな。他の拠点から来る増援艦隊の一時的な駐屯地にさせてくれって言われた」

「わかりました。戦艦寮、特務艦寮の起工は既に開始しているので、急ピッチで完成させます」

「うん、そうするしかないなと思ってたんだ。ここはまだ、来賓用の宿泊設備もないからな」

「それと、提督も格好つけなきゃならないので、空母寮に提督室を移しましょう」

「やれやれ、このプレハブともお別れか。なんだかんだ気に入ってたんだがな」

「艦娘たちがちゃんとした寮に入ってるのに、提督がプレハブではみっともありません」

「それもそうだな」

 

 大淀に正論を言われ、納得する堺。

 

「さあて、明日からは忙しくなるぞ!」

 

 

 

…………

 

 翌日、0800時。

 タウイタウイ泊地の講堂では、堺による説明会が開かれていた。

 

「我が艦隊に与えられた任務は、作戦期間中に当泊地に駐屯する艦隊への補給、周辺海域の警備、もし敵が現れればその殲滅、そして、本海域周辺を通過する油槽船団の護衛だ。また、場合によっては、支援艦隊として作戦海域へ出撃することを求められる。我が艦隊の行動に、作戦の成否がかかっている。心して任務にあたってくれ!」

 

 ザッ!と敬礼の音が響く。艦娘たち全員が、堺に敬礼していた。

 答礼をし、堺は口を開く。

 

「最後に、1つ残念なお知らせがある。先ほど、任務には当泊地に駐屯する艦隊への補給がある、と言ったが、…駐屯艦隊の待機場所として、当泊地の寮を提供することになる。しかし、今完成している空母寮、巡洋艦寮、駆逐艦寮を開放しても足りないかもしれない。ということで、急ピッチで戦艦寮、特務艦寮を建設するので、資源や資金はそっちに回さねばならない!当分の間、大型艦建造は禁止、遠征以外の出撃や演習、開発、建造に制限をかけることとする。…当然、補給もだ」

 

 言いたくはなかったが、しょうがなかった。なにしろ事実なのだから。

 

 

 この後、堺が一航戦ペアをはじめとする、一部の艦娘からブーイングを食らったが、別にどうということはないので割愛する。

 

 

 

………

 

 それから1週間が、あっという間に過ぎていった。

 タウイタウイ泊地では、いろいろなことがあった。

 

 

戦力集結開始6日前

 

「提督!鉄材が足りなくなりそうです!」

「くそっ!ブルネイから借りるしかねぇ!」

 

 

 

集結開始4日前

 

「戦艦寮、完成度8割に到達!しかし、最終点検まで含めると、あと5日かかります!」

「最初の艦隊の到着予定日まであと4日しかない、仕上がった階から最終点検しろ!そうしたら時間短縮できる!」

「外壁の塗装は!?」

「そんな暇あるか!」

 

 

 

集結開始3日前

 

「提督、泊地の資金がなくなりかけています!」

「ファッ!?」

 

 

 

集結開始2日前

 

「提督!一部の空母が飯をもっと出せと言って、ドックに立てこもりました!」

「畜生めーー!!!」

 

 

 

集結開始前日夜

 

「ふぅ…なんとかすべて準備できた…。さて、明日は早いから、さっさと寝よ…zzz」

 

 

10分後

 

ウーーーーーーーーー!(サイレン)

 

「?????!!!」

『空襲警報発令!空襲警報発令!深海棲艦機が泊地上空を飛行中!数3機!総員対空戦闘配置につけ!非番の者は、防空壕へ急げ!』

 

「深海棲艦め!大っ嫌いだ!前日くらい寝かせろ!ヴァァァカ!」

「提督、早く防空壕へ!」

「わかった!ああもう、くそ眠いってのに!ちくしょーめぇぇぇ!!」

 

 こんな調子で、さまざまな事件が発生したのである。

 

 

 

 そして、迎えた決戦直前期。

 

 

「提督、特別艦隊の第一陣が見えました!佐世保鎮守府からの応援部隊です」

「わかった、出迎えに行こう」

 

堺は、秘書艦の日向と共に、ふ頭へと足を運んだ。

 

 

 水平線の向こうから接近してくる、佐世保鎮守府艦隊。その姿が、徐々に大きくなってくる。

 10分ほどで、佐世保艦隊はタウイタウイに到着した。

 

(佐世保といえば、藤原がいたな。あいつは…来てるわけないよな、まだ若葉マークすら取れてないんだし)

 

 そんなことをふと考える堺。

 そして、艦隊の先頭にいる、金剛型と思わしき眼鏡の艦娘から飛び下りてきたのは…

 

 

「やっぱこっちは暑いな…。よう堺!南洋の暑さでバテてねえか?」

 

「何でお前がいるんだよ!?」

 

 

 まさかの元ルームメートにして親友、藤原海斗だった。




如何でしたでしょうか?
あと、仕込んだ2つのネタ…宇宙戦艦ヤマトと総統閣下シリーズ…を見つけられたでしょうか?
季節的には、堺の着任が4月の頭くらいで、今この話の時点では、夏に片足突っ込んだところです。

皆様は新春任務終えることができましたか?
うp主は、最終日の朝になんとか終わりました。レ級eliteと羅針盤なんて大っ嫌いだ!
そして戦艦の改二実装予告…大和型らしいので、姉妹どっちにくるか、わくわくしています。
頼むから、戦闘詳報要求してくんじゃねえぞ…

予定では、次は作戦発動直前段階~作戦発動、というところです。お楽しみに!

それでは、次回もよろしくお願いいたします!


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