とある提督の追憶   作:Red October

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Red Octoberです、お久しぶりです。

やっとできた…書き溜めとかしてないので、どうしても更新が遅くなる…。


駄文ではありますが、どうかご容赦くださいませ。


001 男、提督となる

 ある夜。

 海上自衛隊…もとい、日本国海上護衛軍・呉教育隊。その新人寮の内、男性棟のとある1室にて。

 

 ドサリ、と音を立て、段ボール箱が積み上げられた。

 

「えーと、これで全部かな」

 

 そう呟いているのは、堺 修一。年齢は25歳。

 

 大学卒業後、職に就いていたのだが、会社が倒産してしまい、食うに困って海自の一般兵公募に志願、合格してここにいるのである。

 1年間の教育課程を終了し、明日には卒業して各部署に配置される、という状態であった。因みに彼の志望は護衛艦勤務である。

 本土近海であっても深海棲艦が跳梁跋扈するこのご時世、安全とは程遠い職で、当然戦死ということも多いのだが、その分収入は大きい。

 彼の家は裕福とは言えないので、どうしても金が必要なのであった。

 

「海斗、そっちは終わったか?」

「おう、ばっちりだぜ」

 

 彼が声をかけたのは、ルームメイトの藤原 海斗(フジワラ カイト)。

 1年間の付き合いだったが、今日でお別れである。彼は地上勤務…正確には通信士勤務…を志望しているため、どうしても会う機会はありそうにない。

 せっかくの仲だったというのに、残念な話である。

 

「明日にはお別れだな」

「だな。って、そんな死地にでも行くわけじゃなし…」

 

 明日は早朝から式なので、少しの間世間話をした後、早めに消灯した。

 藤原はすぐ寝てしまったーもともとこの男は寝つきがいいーが、堺はしばらくの間、眠ることができず、ぼんやり天井を見上げていた。

 

 …だが結局、いつしか寝てしまっていた。

 

 

 ………

 

 

「……し…、…え…」

 

 …なんだ?

 

「…れえ、しれぇ!起きてくださいよ!」

 

 舌っ足らずな声とともに、体を揺さぶられる。

 こうまでされれば、起きねばならない。

 …ちょっと待て?俺は今、なんと呼ばれた?しれぇ、だと?

 

 しれぇって…一番あり得るのは「司令」だよな?

 おいおい、俺は護衛艦勤務であって、艦隊指揮なんてやってないぞ?

 

 考えながら目を開ける。そして驚いた。

 

 俺は…桜の舞う、海辺の緑の丘の上で寝ていたのだ。しかも、天気はやや曇っている。

 ちょい待ち!?寝てたのベッドの上のはずだろ!?

 …それとも、ただの夢か?

 

「しれぇ、起きました?」

 

 再びあの舌っ足らずな声に呼ばれる。そちらを見ると、3人の少女がいた。

 

 1人は、セーラー服…のような感じのワンピースを着た茶髪子で、背丈から考えて女子中学生くらいか。首に、大きな双眼鏡をかけていた。

 

 残る2人は、セーラー服にスカートという、典型的な女子中学生を連想させる格好である。ただ、片割れは黒髪のロングヘア、もう片割れは銀色のショートヘアだ。

 

「こらこら、いきなり司令を起こしちゃダメじゃないか」

「えー…」

 

 黒ロング髪の少女が、ワンピースの少女をたしなめる。

 その時。

 

「おーい!」

 

 声がして、別の少女がやってきた。えんじ色のジャンパースカートに、青緑色のスカーフタイを付けた、白銀色の髪の少女である。

 

「…さんがみんなを呼んでたぜ。出撃だってさ」

 

 …出撃?おいおいちょっと待て、そりゃどういうことだ!?君ら女の子だよな?それがなんで、船か何かみたいに「出撃」するんだ?

 

「…わかりました、行きましょう」

「ああ、行こう」

「艦隊をお守りします!」

 

 3者3様の返事をする少女たち。そして、白銀の髪の子について、歩いてどこかへ行ってしまう。

 それを見ながら、ふと疑問を抱いた。

 

 さっきのワンピースの子…艦隊を守るって、どういうことだ?

 まさか、彼女たちは…「艦娘」なのか!?

 

 艦娘とは、数十年前から人類が運用し始めた、深海棲艦と互角以上に戦える唯一の存在である。

 見た目は人間に似ている、というか人間の女性そのものだが、強力な力を秘めている。遠い昔の戦争の頃のように、駆逐艦や巡洋艦、戦艦、空母等の多彩な艦種があり、「提督」の指揮の元で運用される、と座学で習ったが…もしや彼女たちが?

 いや、それにしては年端がいかなさすぎる…

 

「提督?」

 

 考え事をしていて急に呼ばれた。驚いて振り向くと、1人の女性が近づいてくるところだった。

 それを見て思ったことを一言で表すと、「美しい…」だった。何がって、その女性がである。

 

 かなり身長の高い人だった。俺は、仲間内では背の高い方だと自覚している(190cmちょっとある)が、その俺と同じくらいの身長がありそうだ。

 赤い襟の白い服に赤いスカートを着用している。その服は袖が分離しており、脇が露出していた。どこぞの巫女服を彷彿とさせる格好である。

 左腕の、肩関節のすぐ下には、4色のみで塗り分けられた腕章をしている。なんだか見たことのあるデザインだ、と思いかけて、すぐに気づいた。これZ旗じゃないか。

 赤い和風の傘をさし、茶色の髪をポニーテールにしている。髪飾りは、桜を意匠としていた。それに混じって、頭の左右から奇妙な金具のようなものが伸び、これまた奇妙な金網のようなものが付いている。

 黒い靴下を履いているが、その長さが左右で異なっている。なんとも不思議なファッションである。

 

「提督、出撃の時間ですよ」

 

 て、提督!?やっば、完全に艦隊司令じゃねえか!

 てか、なんで俺?

 

「私たちが最後…どうしても、行かないと…」

 

 戸惑っている俺には構わず、ひとりごちた彼女は、先ほど少女たちが行ってしまったのと同じ方向に歩いていく。

 桜吹雪の下、和傘を持って歩く姿は、もはや女神が降臨したとしか俺には思えなかった。

 

「ま、待った!」

 

 反射的に呼びとめてしまう。

 

「提督、なんでしょう?」

「…君の、名は?」

 

 問われた彼女は、微笑んだ。

 

「私、ですか?私の名は、や…」

 

 だが、答えを半ば聞きかけたところで、景色がふいに崩れ落ち、暗転した。

 

「はっ!?」

 

 目を開ける。視界に入ったのは、先ほどまでの曇り空の桜吹雪…ではなく、古ぼけた木造の天井だった。

 隣に置いている時計を見る。表示は、0530。起床時刻には、あと30分ある。

 

「…夢、か」

 

 寝息が聞こえるのを見るに、藤原はまだ寝ているようだ。

 それを確認して、目を閉じる。あの人が…夢に出てきた美人がもう一度出てこないかと願ったのである。名前も聞きそびれてしまったし。

 

 …しかし現実とは非情なもので、結局あの人が出てくることはないまま、起床時刻を迎えたのだった。

 

 ………

 

 卒業式終了後。俺は上官の部屋に呼び出され、辞令を受けることとなった。

 上官から渡された紙には、味も素っ気もない文章がただ一行、書いてあった。

 

 しかし、それは堺を驚かすには十分すぎる効果があった。

 

『堺 修一  本日付ケデ少佐ニ昇進、海上護衛軍艦娘部隊ヘノ配属ヲ命ズ』

 

「……ええええええ!?」

 

 見事に艦隊司令…提督と呼ばれる者となってしまったのであった。




如何でしたでしょうか?

うp主、学生である上に、前述の通り書き溜めとかしていませんので、今後亀更新ぶりに拍車がかかる可能性が大です。

それでもよろしいと仰るのであれば、今後とも拙作をよろしくお願いします!

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