とある提督の追憶   作:Red October

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お久しぶりでございます。

ようやくできた…お待たせしてすみません!


ここまでのあらすじ…

自分が少女たちから提督やら司令やら呼ばれる、妙な夢を見た堺修一は、新人にも関わらず提督に任命され、タウイタウイ泊地に送られる。そこの田舎っぶりに絶望しながらも、提督としての仕事に励んでいくのだった。


005 提督と、はじめての海域攻略と、その他の仕事

 あの初出撃の日から、2日経った。

 初出撃の後、「補給」ということについても学んだ堺は、建造によって新たなる仲間を1人増やした。

 

 そして今。堺は、配下の艦娘たちを前に、艦隊司令部(相変わらずのプレハブ小屋である)で叫んでいた。

 

「今日こそ、泊地正面海域に出撃し、敵主力艦隊を撃破するぞ!」

「「「「はい!」」」」

 

 堺の前に並ぶ艦娘は4人。そのいずれもが駆逐艦である。

 

旗艦 吹雪 Lv2

子日 Lv2

敷波 Lv1

如月 Lv1

 

 ここに、堺の艦隊は、再び出撃した。

 

 ………

 

 抜錨してから30分。

 艦隊は、泊地のやや沖合いを1隻でうろうろしていた深海棲艦の駆逐艦…吹雪の観測長妖精曰く、駆逐ロ級…を撃沈したところだった。

 

(流石に4vs1だと楽になるな…)

 

 吹雪の艦橋内で、堺(妖精化中)がそう思っていた時、吹雪の艦長を務める妖精が言った。

 

「司令官殿、羅針盤を」

 

 前回(004の時)は特に何も感じなかった堺だが、今回は何故か、「羅針盤を回したい!」という思いがやたら強かった。そのため、

 

「うおぉぉぉ!」

 

堺の気合いと共に、羅針盤は猛回転。しばらく回った後、針は南東を指して止まった。

 

「面舵40!」

「ヨーソロー!」

 

 艦長の号令。航海長がそれに応え、操舵輪を回す。

 

「減速!両舷前進原速!」

「アイアイサー!」

 

 続いて、艦長は減速を命じた。

 艦隊は、吹雪を先頭に、右へと回頭していく。

 そして、前進し始めた。

 

「全艦複縦陣をとれ!」

「「「「了解!」」」」

 

 堺の命令により、艦隊は航行と同時に、陣形を単縦陣から複縦陣へと変更した。…のだが、傍目に見ても分かる、動きがぎこちない。

 

(これは…演習で鍛える必要があるかな)

 

 堺がそう思っていた時だった。

 

 

「前方、12時方向に艦影!2つ、いや3つ!距離およそ1500…!!先頭の艦、発砲!」

 

 観測長の叫びが飛び込んできた。

 直ちに艦橋は、慌ただしい雰囲気に包まれる。

 

「戦闘配置につけ!回避、面舵10!」

「総員、戦闘配置!急げ!」

「ヨーソロー!」

 

 飛び交う号令の中、観測長の報告がきた。

 

「敵弾来ます!」

「衝撃に備え!」

 

 以前に聞いた、駆逐艦の砲撃よりも大きい、ヒュルルル…という音が響く。

 次の瞬間、ズドォォン!と音を立て、水柱が1本、天に突き上がった。

 

「弾着!本艦右舷、遠弾1!口径は6インチと思われます!」

「軽巡か!うちの艦隊駆逐艦しかいないってのに…」

 

 見張り台の報告に、艦長が舌打ちをする。

 この時、堺は作戦を考えた。相手は単縦陣、対してこちらは複縦陣。もう陣形を変更している暇はないだろう。だったら…

 

「これより、敵を迎撃する!吹雪・敷波を第1小隊、子日・如月を第2小隊として、敵艦隊に接近、挟撃するぞ!」

「「「「了解!」」」」

 

 堺は、陣形を利用した挟撃作戦を発令した。

 そして、距離1300まで近づいたところで、

 

「艦隊分離!」

 

 堺の号令一下、艦隊は2手に分かれた。

 その直後、再び敵の先頭艦から砲火が閃く。が、敵の6インチ砲は、派手な水柱を立てるだけに終わった。

 

「距離1100!艦種識別…軽巡ホ級1、駆逐ロ級2!」

 

 観測長の報告を受け、堺も双眼鏡で確認する。

 

(あれが、軽巡ホ級…)

 

 格好だけで言うと、下顎より上を失った人間の体が、胡座をかいているような感じだ。後ろに、墓石のような形の艤装が付随している。あちこちから6インチ砲の砲身が突き出ていた。

 そのホ級の後ろには、鯨か何かのように見える、黒い動くものが2つ。緑の目が、こちらを見据えている。

 

「砲雷撃戦、用意よし!」

「撃ち方用意!」

 

 応戦の準備が整った。

 

「右反航戦!」

「距離1000!」

「撃ち方始め!」

 

 艦長からの、砲撃命令。

 

「てー!!」

 

 戦術長の号令とともに、12.7㎝連装砲がドォン!と火を吹いた。

 

「お願い、当たって下さい!」

 

 祈るような、吹雪の声。その祈りは聞き届けられるのか…

 

ヒュルル…ドカァン!!

 

「初弾命中!敵駆逐艦1隻炎上!」

「やったぜ!」

 

 祈りは通じたようだ。ようやく、吹雪は敵に主砲でダメージを与えたのだ。

 

「吹雪・敷波、砲撃を継続!第2小隊と挟み撃ちだ!」

「了解!」

『子日アターック!』

 

 通信機から、子日の声がする。直後、砲声が通信に入った。

 

ドォン!

ヒュルル…ズシーン!

 

『初弾夾叉!次は当てるよー』

 

 子日がそう言った時だった。

 

「敵軽巡発砲…如月に直撃弾!」

 

 観測長からの報告が、絶叫となって飛び込んだ。

 

「何ィ!?」

 

 とっさに外を見た堺の目に、海上にたなびく黒煙が見える。

 

『私を…どうする気!?』

 

 中破と判定される損害を受けてしまった如月から、通信が入る。それを聞いて、堺は考えた。

 

(…なんか、セリフがやたらエr……いやっ!何でもない!というか、戦闘中だぞ今!)

 

 そこに、水雷長が話しかける。

 

「そろそろですぜ、司令官殿!」

「ようし、魚雷戦用意!敵の残りは?」

「駆逐艦は沈みました、あとは敵軽巡だけです!」

「味方の被害は?」

「如月が中破、敷波と子日は小破未満(カスダメ)です」

 

 妖精たちから報告を受け、堺は決断した。

 

「オッケー、行くぞ!」

「距離400!」

「全艦魚雷発射!」

「「「てぇー!!」」」

 

 各艦の水雷長が叫ぶ。

 吹雪の膝につけられた、三連装の魚雷発射管が回転し、バシュ!という圧搾空気の噴出音といっしょに、魚雷を射出した。

海面に飛び込んだ魚雷の、シュルルルルル…というスクリュー音が遠ざかっていく。

 

「敵軽巡も魚雷発射!数2、目標は本艦!」

「第1小隊は、各艦回避せよ!」

「回避!取り舵30!」

「ヨーソロー!」

 

 報告を受け、堺は直ちに回避を命じる。

 ホ級の魚雷は、吹雪の両脇を掠めて抜けて行った。一方のホ級はというと…

 

ドガァァァァン!

 

 大爆発を起こしていた。

 

「本艦と子日、敷波の魚雷が命中!撃沈です!」

「よっしゃあ!」

 

 見張り台からの報告に、ガッツポーズする堺。

 こうして、泊地正面海域は、平定された。

 

 ………

 

 タウイタウイ泊地、艦隊司令部にて。

 大淀の「流石です」というコメントと共に、作戦成功が伝えられた。それと同時に、新たな任務を出される。

 

『はじめての「入渠」!』

『はじめての「補給」!』

 

「…入渠?」

 

 堺には、聞き慣れない言葉だった。

 

「ドック入りのことですよ」

「あー、わかった。ドックか」

 

 大淀に言われて、堺は理解した。

 

「あ、それと、新しい子が3人来ていますよ。」

「お、そうか!案内してくれ」

 

 大淀の「どうぞ」という声を受けて、3人の艦娘が入室してきた。

 1人は…見て驚いた、何故って吹雪と全く同じ艤装&服装だったのだ。外見上違う所といったら、顔立ちやヘアスタイルくらいのものだろう。同型艦か。

 1人は…服装や艤装が敷波とそっくりである。こちらも同型艦、かつ駆逐艦なのだろう。

 最後の1人は…誰とも違う服装だった。ただ、髪の部分に紙垂を装着し、主砲やその他の艤装が何もないのに空中に浮いている。一体どうなってるんだ?

 困惑する俺をよそに、3人は自己紹介をしていく。

 

「白雪です。よろしくお願いします」

「特型駆逐艦、綾波型の潮です。もう、下がってよろしいでしょうか…」

「わらわが初春じゃ。よろしく頼みますぞ。」

 

「お疲れさん。俺がここの提督だ。以後よろしく頼む!」

 

 堺の言葉に、3人揃って「よろしくお願いします!」と頭を下げた。

 

 ………

 

「…ふぅ」

 

 艦隊司令部に堺のついた息が響く。

 

「お疲れ様です、提督」

「おお、お茶か、ありがとう」

 

 大淀から茶を渡される。ちょうど雑務も終わった所なので、一息いれることにする。

 茶を啜っているとき、ふと考え付いた。はじめての海域攻略達成、これを祝して、新たな艦を建造しようか。ちょうど戦力増強にもなるし。

 

「なあ大淀、今資源ってどのくらいあったっけ」

「340/336/348/322ですよ」

「…なら、1回くらい建造しても大丈夫そうだな」

「ほどほどになさって下さいよ」

「おぅ、わかってるよ」

 

茶を飲み干した後、堺は吹雪を連れて工厰へ向かった。

 

 ………

 

「さて、どのくらい資源使おう…」

「司令官、使いすぎはダメですよ」

「わかってるって…うん?」

 

 その時堺は、建造指示を出すパネルの下に、何か本のようなものが挟まっているのに気付いた。

 取ってみると…「建造記録」と題してある。ページをめくると、日付や使った資源の量を示す数字と共に、何が建造されたかが書いてあった。かつてここにいた提督の残した記録だろう。

 よく見ると、250/30/200/30 という数字ばっかりが並んでいた。何を建造しようとしたのか分からないが、何か意味があるのだろう。

 

「よし、この量でいくか!」

「ええっ!?」

 

 吹雪に構わず、素早く資源の投入量を指定して、建造指示を飛ばす。表示された時間は…

 

00:59:59

 

「1時間…」

 

 記録を見ると、巡洋艦ばかりが建造されているようだ。

 

「そうだ、折角だから高速建造材も試してみよう」

 

 建造材を投入した途端、残り時間はあっという間に0になり、パネルには「建造完了!」の文字が輝いた。

 

 鉄製の観音扉の取っ手を握って、押し開ける。またもや、もうもうとした白煙に包まれてしまった。

 煙が晴れると…そこには1人の艦娘。セーラー服に青いスカートという、特型駆逐艦に似たスタイルだが、服の丈が短く、へそがむき出しになっている。黒い髪はボサボサで、右腕の艤装に駆逐艦のそれより大きな連装主砲が2つ。左腕の艤装にも主砲が1つ付いていた。

 そして、よく締まった健康的な太ももには、4連装の魚雷発射管がある。

 彼女は、俺と部分のほうをまっすぐ見据えて、自己紹介をした。

 

「古鷹型重巡の2番艦、加古ってんだ、よっろしくぅー!」

 

 こうして、堺にとっての初めての巡洋艦は、加古となったのだった。




如何でしたでしょうか?

タグの 主人公≒うp主 の通り、私の初めての重巡は加古でした。
自分にとって縁のある地名を名に持つ艦が手に入り、少しうれしかったのを覚えています。
皆様は、最初の重巡が誰だったか、覚えていますか?

それではまた次回!

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