Skull   作:つな*

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俺はどうして嫌われているのか分からなかった。


skullの難儀

「そういえばこの観覧車、所要時間が45分なんですって、一杯景色が見えるわね」

 

長い待ち時間の末(ようや)く観覧車に乗ることが出来た俺は、奈々さんの一言で絶句した。

45分も何を見ろとおっしゃるんだこのお方は。

景色なんて普通5分かそこらで飽きるだろう。

ポルポは俺の隣でまったりと窓の外を覗いてるけど、正直俺は全然楽しくない。

……でもまぁポルポが楽しんでいるならそれでいいんだけど。

俺的にはパレードとかが見たかったなぁ…

 

「主…何やら人が動いているぞ」

 

ん?…本当だ、皆城の方に向かってる。

下の方でイベントでもあるのかな?

 

「イベントかしら?観覧車降りたらお城の方に行ってみましょう」

 

奈々さんもイベントだと思っているから、俺はあまり気にせず別の方へと視線を移す。

すると視線の移した方角に見覚えのあるバルーンが浮かべられていた。

黒いハット、渦巻く揉み上げ、そして俺と同じ赤ん坊の風貌……そう、俺の大嫌いなリボーンの顔のバルーンが数個ほど浮かんでいたのだ。

俺は十数年ぶりに見る懐かしいソレに苦々しい顔をしながら何であいつの顔があるのか思考を巡らす。

ここあいつの所有地なのか?

いやここは確かボンゴレの……もしやあいつはボンゴレの関係者?

あいつ確か殺し屋だったよな………ボンゴレってそういう危ない奴ともつるんでるのか。

リボーンが殺し屋とは気付かずにだなんて可能性はかなり低い。

なんせこのリゾート地の名前はマフィアランドだ。

これはボンゴレが汚職している事実に繋がる。

ふむ、でも決定的証拠がないから警察に突き出すわけにもいかんか。

帰ったらボンゴレをもう一回調べてみよう。

そんな時だった。

ガコン、と観覧者がいきなり停止する。

いきなりのことで上体がぐらついたがポルポがすかさず支えてくれたお陰で転ばずに済む。

何故いきなり停止したのかが分からず園内を見渡していると、どこも明かりが消えていて、一目でそれが停電だと分かった。

地震…?ただの配線の故障?ブレーカーが落ちたとか…?

 

「あら、何か故障したのかしら…」

 

奈々さんも不安そうに外を眺めていると、いきなり視界の端で火柱が上がる。

俺は目を見開いて、火柱の上がった場所に視線を固定した。

確かあそこは入場ゲート……

 

「パレードかしら、ほら、人が沢山お城に集まってたみたいだったし、きっとそうね」

 

奈々さんの言葉に、俺は少しだけ違和感を持つ。

確かにリボーンのような殺し屋がこのマフィアランドの重役なら、こんな過激なイベントもありえるかと思うも、火柱が上がる場所から必死で逃げている人達は必死の形相をしていた。

演出なのか事故なのか分からず戸惑っていると、再び観覧車が揺れる。

俺はここで漸く演出ではないと思い、どうやって出ようと思っているとポルポが言い放つ。

 

「主!落ちる、ここから出るぞ」

 

え。

ポルポの声に反応する暇もなく、いきなり腰に足を巻きつけられ、ポルポは観覧車の窓を割る。

 

「ポルポちゃん、危ないからやめなさ——」

 

奈々さんの言葉を無視して窓を全て割り切ったポルポは、俺ごと観覧者の外に脱出しようとするが、俺は我に返って口を開く。

 

「ポルポ、奈々さんも…っ」

「捨て置け」

「っ……ポルポ!」

「そこな女が死したところでそなたに関わりはあるまい……何故生かす」

 

俺はショックで言葉が出なかった。

ここ数年道徳の授業として、親子愛や命を大切にすることを教える為の映画を見せてたけどコイツ全く倫理観持ってない。

むしろ冷酷になっているような……

やっぱり人じゃないからかな、種族が違うとここまで無関心になれるものか…?

数秒の沈黙の後ポルポは表情を顰め、奈々さんも捕まえ外に出る。

 

「主は……愚かだ」

 

ついには俺を歯に衣着せずディスり始めたポルポ君、俺の心にクリティカルヒット。

奈々さんもビックリしながら何か言ってるけど、正直今聞いてる余裕はない。

色々な場所から火柱が立ち上がり始めている。

さっき見た感じじゃゲートが塞がれてるから正規ルートから脱出出来ないのか。

思考中にポルポが観覧車の骨組みを伝って、地面まで降りると俺達を下ろした。

 

「もう、ビックリしたじゃない」

 

ビックリだけで済ませる奈々さんェ……

この人の家族は苦労人だと思う。

 

「あら?ポルポ君さっきより大きくなってる気が……気のせいかしら」

 

気のせいじゃないよ、どう見ても大きくなってるでしょ。

本来の大きさとまではいかずとも、常識はずれの大きさだと思う。

まぁ奈々さんは頭のネジがいくつか外れてるからこれを異常だと気付いていないんだろうなぁ…

 

「主、ここも危うい」

「え、あ…ああ」

「スカル君、ポルポちゃん!」

 

ポルポが帰ろうと海の方に進みだすのを慌てて追いかけ、後ろで奈々さんが引き留めようとついてくる。

これ以上奈々さんといても帰り辛くなるだけだと思い、そのまま撒きながらポルポの上に乗りテーマパークを囲む壁へと向かいだす。

テーマパークを囲む壁には(くさび)と高圧電流が仕掛けられているのに気付き、登ろうとしていたポルポを止める。

…め、めっちゃバチバチいってるんですけど。

停電状態に陥っている園内のブレーカーとは別なのか、電流が流れているから容易に脱出出来ないと分かると、俺は辺りを見渡す。

すると視界の端に関係者立ち入り禁止というプレートが嵌められているドアを見つけ、ポルポに壊してもらい中に入る。

中には掃除用があり、園内の業務員用の地図が壁に貼られていた。

思った通り電気設備室は二つあり、俺は一番近い場所をポルポに指差すとポルポも位置を把握したようでその場所へと向かいだす。

数分も掛からず到着した場所にはまだ火の手が迫っていなくて、俺は室内に侵入する。

すると中には複数倒れている人たちがいた。

何があったし……

全員目立った傷はないから放置してもいいかなぁ。

それよりもあの高圧電流をどうにかしたいんだよ、うん。

画面を見て外壁の電流を切ろうと奮闘していると、画面の真ん中に緊急用発電システムと表示された。

緊急用発電システム………これ絶対に今やるべきものだよな。

ジェットコースターとか観覧車に至っては途中で止まってるから降りられないだろうし。

ていうか発電システムって普通自動切換えするもんじゃないの?

まさかの手動ってか。

まぁいいや、取り合えずシステムを作動しておいて…っと。

OKを押して、俺は再び高圧電流を解除しようとシステムを探る。

 

「あった…これか」

 

なるほど、区間で電力源を分けてたのか。

俺は外壁の電流を解除するとポルポと共にその場を出る。

数十分ぶりに見た園内は火の手が広範囲に広がっていて、被害は大きい。

絶対に負傷者たくさん出るわコレ……ボンゴレもこの一件で負債抱えまくって倒産するかもな。

それよりも早く脱出しようと、ポルポに声を掛けようとしたら遠くの方から雄叫びが聞こえた。

ん…?聞き間違いかな………

どこからだろうかと周りを見渡した瞬間、大きな轟音と共に観覧車が崩壊した。

うえええええ!?あれ乗客大丈夫か!?

あまりの光景に驚いて食い入るように観覧車が崩壊していく様を眺めていると、ゴンドラの中には誰もいないことに気付く。

あ、皆救出されたのかな?良かった…

っていうかよく見るとジェットコースターもレーンが壊れとる。

あぶねー……こりゃ早く帰ろう。

 

「ポルポ、」

 

行こう、と言おうとする前に雄叫びが段々こちらに近付いてくることに気が付く。

 

「うおおおおおおおお!死ぬ気で助けるっ!」

 

ええぇぇぇぇえええええええええ!?

髪を盛大に炎上させながらパンツ一丁で俺の方まで全力疾走している男子を視界の中に入れた俺の思考は固まった。

待って髪が燃えてる、っていうか何でパンツ一丁!?っていうか何で俺の方に走ってくるんだよぉおおお!

少年のあまりの剣幕に逃げ腰になっていた俺に近付く少年をポルポが(はば)む。

 

「主に害なす者は、(ほふ)る」

 

8本の足をくねらせ少年へと攻撃し始めるポルポ、それを避けようとする少年。

この時俺はポルポを止めるべきなんだろうけど、少年の髪が炎上していることに意識が行き過ぎてポルポの行動が全く頭に入ってこなかった。

少年がポルポによって吹き飛ばされたところで我に返り、ポルポを止めようとした時聞き覚えのある声が耳に入る。

 

 

「下がってろ…ツナ、お前にはまだ無理な相手だ」

 

 

その懐かしい声に顔から嫌な汗が吹き出し、全身に鳥肌が立った。

パンツ一丁の男の子の髪が鎮火したのを眺めながら現実逃避を図るが、努力は虚しくそいつを見ざるを得なかった。

 

「久しぶりにてめぇの顔が見れて嬉しいぜ…狂人野郎」

 

銃口をこちらに向けながら真顔で言い放つソイツがあまりにも見覚えがあって、俺はもう死んだ気分になった。

いや実際死を覚悟した。

 

 

 

何でリボーンがここにいるんだよ……

 

 

 

お巡りさん、こっちです。

 

 

 

 

 

 

沢田綱吉side

 

 

「うわぁ!?」

「十代目!」

「うわ、何だ!?」

 

電車がいきなり揺れ始め、俺が頭を抱えると獄寺君が庇うように俺の頭に腕を回す。

視界の中では眠っていたリボーンとコロネロが電車の席から床へと落ちるが、二人が起きた様子はない。

揺れが段々と収まると、電車は完全に止まっていた。

 

「俺が様子を見てくるので、十代目はここで待っていて下さい」

 

そう言った獄寺君は電車の外に出て、辺りを見渡しては帰って来た。

未だ眠っているリボーンとコロネロを抱えている俺に獄寺君が声を掛けてくる。

 

「どうやら線路が爆破されたみたいですね…破壊されていました」

「そ、そんなっ」

「なら線路を歩けば辿り着けるんじゃねぇか?」

 

山本の言葉に賛成して、俺達はリボーンとコロネロを抱えながら電車から降りて線路の上を歩くことにした。

線路を歩くこと数分で出口が見えた。

 

「あ、ここに繋がってたんだ!」

 

トンネルを出ると、そこはテーマパークの城の手前だった。

 

「あ!ツナさん!」

「ハル!ランボにイーピン、フゥ太!」

「ツナ~!お前どこいってたんだよ~」

「色々あったんだよ!それよりも何でここに?」

「さっき園内放送で、トラブルがあったからここに避難するよう指示があったんです」

「そうなんだ…」

 

爆発物がある限り、早くこのテーマパークから出した方がいいと思うけど、何て説明しようかな。

四人の無事な姿を見て俺はふともう一人いないことに気付く。

 

「母さんは?」

「それがゲートに入る途中から逸れてしまって、今もどこにいるか分からないんです」

 

ハルが困ったようにそう言った。

母さんも避難してるなら近くにいるかもしれないけど、如何せん人が多すぎる。

 

「ハル、俺は母さんを探してくるから従業員の指示に従って先に避難してて!」

「あ、ツナさん!」

 

ハルに寝ているリボーンとコロネロを任せて、獄寺君と山本と一緒に俺は母さんを探し始める。

すると山本が何かに気付いたようで足を止めた。

 

「おい、ツナ!あれ!」

「え?あ!」

 

山本の指さした方を見ると、観覧車やジェットコースターのアトラクションが全て止まっていた。

昼だったから直ぐに気付かなかったけど、よく見れば園内は停電していた。

 

「電気設備室をやられましたね……」

「ど、どうするのぉおおお!?ジェットコースターなんて逆さまのまま止まってるよ!」

「なぁ、あっちで何か言い合いしてるぞ」

「え!?」

 

山本の言葉で再び別の場所を見れば、大人数名が険しい顔をしながら言い合いをしていた。

 

「今回の事態、アジアを率いるリーフォンファミリーが指揮を執るぜ!」

「待ちたまえ、伝統と格式あるこのベッチオファミリーこそ相応しい」

「おいおい冗談じゃねぇぞ俺達ヌーボファミリーを差し置いて何を言ってやがる」

「「「やんのかオラァ!」」」

 

えええええ!やっぱりマフィア怖ぇぇええええ!

怖い集団を通り越して母さんを探そうとしたら獄寺君が声を張って言い放つ。

 

「おい!指揮なら十代目が相応しいに決まってんだろ!」

「「「あ"ぁ!?」」」

「ひぃっ」

「てめぇどこのファミリーだぁ!?あ"あ!?」

「ボンゴレで文句あっか!?」

 

啖呵を切る獄寺君、驚愕する周り、未だ状況を把握していない山本、青褪める俺。

何故か周囲のファミリーの人達から頭を下げられた上に指揮を任され涙目の俺は早く母さんを探し出したかった。

 

「と、取り合えず…爆弾を探すにも全員をテーマパークから出すべきだと……思い……ま、す………

 

最後に至っては弱弱しい口調で聞こえるか聞こえないかくらい小声になっていた。

 

「流石十代目!賢明なご判断ですね!」

「おいおめぇら!ボンゴレ十代目がそう言っているんだ!早急に園内にいる全員避難させるぞ!」

 

なんとか皆動いてくれて、俺は今にも寿命が縮まりそうだった。

俺はマフィアになんてなりたくないのに……

ハッ、じゃない、母さんを探さなきゃ————―

 

その時だった。

 

 

盛大な爆発音と共に入場ゲートに火柱が立つ。

熱風で瞼を閉じ、腕で顔を庇う。

薄く開けると少し遠くにある入場ゲートが燃えていた。

 

「入場ゲートが!」

「くそ!そういうことか!」

「え、ご、獄寺君どういうこと!?」

「入場ゲートは出口でもあります、だから誰も逃がさないために最初に爆破したんですよ!」

「ええ!?」

「この調子だと人が集まっている場所に爆弾を仕掛けてる可能性がっ」

 

獄寺君が全部言い終わる前に別の場所からも爆発音が立て続けに聞こえた。

 

「爆弾の処理は無理です、避難優先に動くほかありません十代目!」

「お、俺…母さん探さなきゃ!」

 

所々に立っている火柱を見て、俺は焦りながらその場を走りだす。

ただ闇雲に探していると、また爆発が近くでありそちらに視線を移す。

するとそこにはジャットコースターのレーンが途中で崩れていたのだ。

 

「ジェットコースターのレーンが爆発で!」

「ジェットコースター自体止まってるから今のうちに助けようぜ」

 

そう言ってジェットコースターまで走りだす山本を追う瞬間だった。

ガコン、という嫌な音が聞こえ、何かが鉄の上を滑る音が耳に入る。

ジェットコースターがいきなり動き出したのだ。

 

「な、何で!?さっきまで止まってたのに!」

「そのままいけば乗っている奴等全員脱線して落ちちまう!」

 

獄寺君の言葉に俺は焦り過ぎて思考回路がパンクしそうだった。

そんな時に、いつもの凛とした声がその場に響いた。

 

 

「なら、死ぬ気で助けてこい」

 

 

次に頭への衝撃。

そして体の底から溢れ出る力にさっきまでの焦りは全て消え去っていた。

頭にあるのはただ一つだけ。

 

 

「死ぬ気で、助ける‼」

 

 

体中に(みなぎ)るエネルギーでジェットコースターのレーンを支える柱に登り、レーンの上を走りだす。

ジェットコースターは頂上へ上る途中で緩やかに動いていて、レーンが壊れているのは急降下する直ぐ先だ。

俺はレーンを走り上昇するジェットコースターの先端に追いつくと、車輪を乗せるレーンに両足を開くように乗せ、ジェットコースターの先端に両手を付け、雄叫びを上げながら足に力を入れる。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

ギギギギと金属の擦れる歪な音が響き渡る。

死ぬ気で、死ぬ気で、死ぬ気で助けるんだ!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」

 

数m押し負けながらも、段々と速度を落とすジェットコースターにもうひと踏ん張りだと、死ぬ気で押し返す。

レーンと車輪の擦れる音が止む。

 

「十代目!お見事です!」

「ツナお前すげーのな!」

 

下の方で山本と獄寺君の声が聞こえて、ジェットコースターが逆方向へと移動し始める。

最初は逆方向に動き始めたジェットコースターに驚いたが、どうやら電気が通った操縦室から乗り降り場までジェットコースターを移動させているだけだと山本が大声で説明してくれた。

俺はレーンから降りて地面に足を着けると、先ほどまで(みなぎ)っていた力が段々と抜けていく感覚に襲われた。

そして我に返ったように思考がクリアになり、体に疲労感が襲う。

その場にへたり込むと同時に目の前にいるお昼寝から目を覚ました赤ん坊を睨む。

 

「リボーン!お前撃つなら先にそう言えよ!」

「だって時間がなかったんだもん」

「っていうかお前何であのタイミングで寝るんだよ!」

「仕方ねーだろ、睡魔はいつもいきなりやってくるんだ」

 

俺の不満を全く意にも介さないリボーンを睨みながらも、リボーンは辺りを見渡す。

するとリボーンの携帯が鳴り、電話に出るとリボーンは誰かと話し数秒で通話は切れる。

 

「既にコロネロが増援を呼んでいる、増援が来るまで俺達でなんとか被害を食い止めるぞ」

「食い止めるったって……」

「見ろ、色んな場所で爆発されている上に出入り口は使えねー…その上壁には高圧電流が流れている」

「何で電流なんか流すんだよ!」

「侵入者防止だぞ、それよりもやべー状況だな」

「そうだ、これも全部カルカッサファミリーって奴等がやったことなの!?」

「そうだろうな…一般人もマフィアも関係なく巻き込むのはあいつらのやり方だ、胸糞悪ぃーぜ」

「そ、そんな…」

「それに奴等は思慮深い、全ては予め念入りに計画しているハズだ、既にマフィアランドに奴等はいないと思え」

 

俺は死ぬ気モードだったさっきとは違い、恐怖のあまり身震いする。

リボーンがいつものように笑ってなくて、ただ真剣に、忌々しそうに言葉を吐くから、それほどボンゴレと因縁の深いファミリーだと思った。

 

「十代目!他のファミリーがアトラクションに乗っている客を避難させました!」

「本当!?良かった!……じゃない、母さん探さなきゃ!」

「十代目のお母様なら先ほど別のファミリーが保護したそうですよ!」

「よ、よかった!」

 

母さんの無事が分かって肩の力を抜いた矢先のリボーンが銃口を俺に向けてきた。

 

「んじゃ、あとは避難し切れていない客を探すだけだな」

「おいリボーン、何でそれを俺に向けて…」

「ちっと園内回って逃げ遅れた奴を死ぬ気で探してこい」

「ちょ、待っ」

 

俺が最後まで言い終えることはなくリボーンは引き金を引き、俺の頭部に再び衝撃が走る。

 

 

「死ぬ気で探して助ける‼」

 

 

また体の底から湧き上がるパワーに身を任せながら園内をくまなく探し始める。

数人の逃げ遅れを避難させながら園内を走り回っていると、ヘルメットを被っている赤ちゃんが視界に入った。

 

 

「うおおおおおおおお!死ぬ気で助けるっ!」

 

 

赤ちゃんに向かって走り出し、そのまま抱きかかえようとした時だった。

何かが物凄い速さで横から現れ、俺に向かって振り下ろされる。

俺はそれを躱す為に後ろへ下がった。

そして俺は阻んだ謎の正体を目にして驚愕した。

それは大きな、大きなタコだった。

足が何mあるか分からない程大きいタコが赤ちゃんの前に立ち(はばか)っていた。

俺はそのタコが赤ちゃんを食べてしまうと思い、赤ちゃんを助けるためにタコを死ぬ気で倒すという目的に変わった。

 

「死ぬ気でタコを倒す!」

 

何度かタコに突撃するが、タコは足を高速で動かせ回避しては反撃してくる。

重い一撃を何度も喰らうが死ぬ気モードである今の俺には痛覚が若干麻痺していて、そのまま突撃するのを止めない。

一際重い一撃をお腹に喰らうと、そのまま数m吹き飛ばされた。

流石に体が負荷に耐えられなくなったのか、身体から力が抜けていき起き上がることが出来なくなる。

すると耳にいつもとは違う、凛としていながらも一段と低い声が響いた。

 

 

「下がってろ…ツナ、お前にはまだ無理な相手だ」

 

 

俺の家庭教師であるリボーンの姿を視界に捉えると、死ぬ気モードが解除され、思考がクリアになっていく。

それと同時に体中に激痛が走り、悲鳴を上げそうになったが声を出す体力さえ残っていなかったことに気付く。

そんな……死ぬ気モードでも勝てないなんて……

内心焦りながら首を動かしてタコを見る。

するとリボーンが一歩、二歩と歩き出す。

 

 

銃口を、ヘルメットを被っている赤子に向けたリボーンの表情は、真顔だった。

 

だけど、リボーンの纏う雰囲気が何よりもあいつの感情を物語っているようで刺々しくて、俺の肌に突き刺さる。

 

 

 

「久しぶりにてめぇの顔が見れて嬉しいぜ…狂人野郎」

 

 

 

 

そして銃声がその場に響いた。

 

 

 




スカル:遊園地行ったら最悪の奴に出くわしたと思っている、リボーンは自分を何故か毛嫌いしているから苦手で怖くて嫌い、こいつが緊急用発電システムをONにしたばかりに止まっていたジェットコースターが動いたのはいうまでもない、無自覚加害者、お巡りさんを呼べば捕まるのはコイツ。

ポルポ:主絶対主義のセコム、初期死ぬ気モードのツナなんて足元にも及ばない。

沢田綱吉:遊園地に来てもマフィアの揉め事に巻き込まれる被害者、死ぬ気でもポルポに勝てなかったことでスカルに対して今まで以上に恐怖を抱く。

リボーン:やっと会えたなこのクソ野郎状態、ルーチェのことと今までボンゴレにやってきたこと、あとは元々馬が合わないこともありスカルを憎いレベルで嫌っている、好感度零地点突破とかそんなレベルじゃなかった、スカル絶対殺すマン一歩手前。

マフィアランドの襲撃ってアニメでおちゃらけた様子で流されてるけど、あれ結構被害尋常じゃないですよね。
なのでもっとえげつなくしてみました。



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