Skull   作:つな*

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俺は恐ろしかった。


skullの対峙

「久しぶりにてめぇの顔が見れて嬉しいぜ…狂人野郎」

 

出会い頭にいきなりディスられたとショックを受ける前に耳が破裂しそうな音がその場に響いた。

幸い俺はヘルメットでいくらか防音していたから大丈夫だったが、俺はそれが発砲音だと直ぐに分かった。

隣にいるパンツ一丁の男の子が顔を青くしながらリボーンを見ている。

っていうか発砲音なのは分かったけど、着弾音が聞こえない。

もしやその銃は玩具なのでは…?

そうだよな、だってリボーン今赤ちゃんだし、銃を扱うには無理だよな。

あー、ビックリした。

 

「てめーに聞きてーことがある」

 

俺はお前に用はないんだけど帰っていいかな、っていうか切実に帰りたい。

 

「ルーチェが死ぬ直前に、てめーあいつに何をした」

 

すごく、低い声で怒ってるように質問してくるリボーンに漏らしそうになった。

頑張れ俺の尿道括約筋。

っていうかそれよりも今何て?

ルーチェ先生死んじゃったの?マジで?

いや看護師が彼女はもう長くはないっていってたけど…リボーンの言葉からして俺と会った後に直ぐ死んだように聞こえる。

生きてるとは思っていなかったけど、いざ死んだと聞くと悲しいなぁ。

 

「答えろ!」

 

何だかリボーンが怖いんだけど。

いや最初からこいつは怖かったけど、何で俺に対してコイツはこんなに塩対応なんですかね。

俺何もしてない善良な市民なのに…

 

………花を、送った…

「っ、てめぇ‼」

 

リボーンが怖くて素直に答えたら、めっちゃ怒って来た。

何で。

病人に花送って何で怒られてるのだろうか…

リボーンが威嚇でか分からないが数発撃ってくる。

それ玩具なの知ってるから、もう驚かせねーから。

俺がビビらないと分かったのか舌打ちして睨みつけてくるリボーン。

赤ちゃんが強がったって、こ、ここ、怖くないんだぞ!

リボーンをヘルメット越しに睨み返していると、ポルポが前に出る。

 

「下がれ主、今すぐこ奴等を(なぶ)り殺してくれようぞ」

 

ヒエッ、ポルポが怖い。

嬲るって一体どこで知ったの君…

いやそれよりもリボーンはともかく、少年に危害をくわえちゃアカンって。

 

「リ…リボーン……もしかしてこの赤ちゃん……」

「…ああ、コイツがスカルだ」

「そんなっ」

 

おいおい少年、何で俺を見て怯えてるの。

俺何も害のない善良な市民よ?

リボーンになんて言われたか知らないけど、そいつ殺し屋だからな。

ていうか少年は今すぐ病院言った方がいいのでは。

さっき頭燃えてたじゃん…どんな原理で収まったか知らないけどあれ絶対頭火傷してるよ。

じーっと少年の方を見ているとリボーンが少年を庇うように少年の前に立つ。

さも俺が悪役みたいな演出してんじゃねーよ。

 

「もうすぐボンゴレの増援が来る、いくらお前でも生きて帰れねーぞ」

 

……ん?

やっぱりボンゴレってマフィアと繋がってたのか。

リボーンみたいな殺し屋雇ってるような企業だからマフィアと繋がっててもおかしくない、か。

っていうか俺殺す気満々じゃないですかヤダー。

やべぇ本格的に漏らす。

そんな腹黒い企業とか何それ絶対働きたくねー…

だから部下にクーデター企てられるんだよお前んとこの企業。

あれ?そういえばパイナップル閣下はクーデター出来たのか?

あれから音沙汰ないから多分失敗してると思うけど。

パイナップル閣下も犯罪者だから失敗してくれて安心したけど、あのまま出来てたら俺ボンゴレ企業に引き抜かれてたかもしれないんだろ、おっそろしい。

内部抗争激しかったら経営もまともに拡大出来ないの知らないの?馬鹿なの死ぬの?

こんなんで何故大企業になれたのか。

これじゃカルカッサが特許を取って独占企業にならずとも、あっちが自滅しそう。

クーデターが起こる時点で経営方針と汚職を見直せよ、お前ら。

 

身内のクーデターでは足りない……のか…

 

もういっそのこと警察にチクってやろうか…?

呆れて声に出てしまった言葉をリボーンの地獄耳が拾ってしまった。

 

「!、何でそれを知ってやがる!?」

 

あ、待って、ごめん、今の無し、だから俺をそれ以上睨まないで。

今にも殺さんばかりに睨みつけてくるリボーンがめちゃくちゃ怖い。

これ以上ここにいても俺殺されるだけだしここら辺で逃げよう。

なんだかマフィアにまで目を付けられてしまったが、一体何でそうなったんだろう。

俺何も悪いことしてないのに…

ポルポの足を軽く叩いて帰ろうと指示したつもりだが、何をとち狂ったのかポルポがリボーンに攻撃した。

ポルポぉぉぉぉおおおおおおお

お前何やってんの?

マジで何やってんの?

リボーンも玩具の銃で相手したって全然格好よくないからな、むしろお前の精神年齢考えると恥ずかしいわ。

ポルポに数十m投げ飛ばされたリボーンを見て、いい気味だと思いながらもこれ以上はポルポが犯罪生物になるので止めようと思う。

何よりもリボーンの報復が怖い。

 

「ポルポ」

 

名前を呼べば大人しく戻ってきて、俺を掴みながら壁を軽々と乗り越えた。

ちゃんと高圧電流が解除されていてよかった。

視界の端で少年が呆然と俺の方を見ていて、俺は直ぐに視線を逸らした。

ヘルメットを被っているから視線が合うことはないと分かっているけど恥ずかしいものは恥ずかしい。

ポルポと逃げ始めて直ぐに海岸に出る。

俺は持っていたバックからボンベを取り出した。

俺が酸素ボンベを装着したのを確認したポルポが海に足を入れて泳ぎ出す。

陸上でも速いポルポだが水中ではその何倍も速くなるので一瞬にして島が遠くに見えるほど距離が離れる。

一時間の末、漸くイタリアに帰ってくることが出来た俺は、家へと足を向ける。

やっとの思いで家に帰ると直ぐにシャワーを浴び、ベッドにダイブする。

 

散々な目にあった……

もう二度とマフィアランドにはいかない、絶対にだ

リボーンのクソ野郎、人殺し、外道……

本当に今日は厄日だ

 

 

「もう………嫌だ……」

 

 

毛布を被り、眠気に瞼が閉じかかりつつも天井を見上げた。

 

 

『ルーチェが死ぬ直前に、てめーあいつに何をした』

 

 

『最後に、いいものが見れたわ…ありがとうスカル』

 

 

リボーンの言葉と、別れ際のルーチェ先生の表情が脳裏を反芻(はんすう)する。

 

 

 

生きてて……欲しかったんだけどなぁ……

 

 

 

今度こそ俺は瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

リボーンside

 

 

 

目を覚ますとハルの腕の中にいた。

電車の中で眠ってしまった俺を、ハルに預けたのかと直ぐに現状を把握する。

 

「水色のおしゃぶりの子は先に起きてどこかに行ってしまいましたよ?」

 

コロネロは既にここにはいないと分かると、俺はすぐさまツナ達を探し出した。

直ぐに見つけたあいつらは、焦った様子である方向を見ていた。

俺は直ぐにその視線を移すと、そこにはゆっくりと上へ登っていくジェットコースターとその先にある壊れたレーンが視界に映った。

 

「な、何で!?さっきまで止まってたのに!」

「くそ!そのままいけば乗っている奴等全員脱線して落ちちまう!」

 

既に考える時間は残されていないと瞬時に判断した俺はレオンを銃へと変化させる。

 

 

「なら、死ぬ気で助けてこい」

 

銃口をツナの額へと焦点を定め、ツナの脳天目掛けて死ぬ気弾を撃ち込んだ。

するとツナは衝撃でその場に倒れ、次の瞬間物凄い勢いで起き上がる。

その額には死ぬ気の炎が大量に溢れ出し、ツナの表情は勇ましいものへと変わっていた。

 

 

「死ぬ気で、助ける‼」

 

 

 

腹に力を入れたようなツナの言葉と共に、あいつはジェットコースターのレーンを登り始める。

そしてレーンを走りジェットコースターの先端へ追いつくと、力技でジェットコースターの勢いを失くした。

ジェットコースターを止めようとする最中、ツナの雄叫びが響き渡る。

数十秒の格闘の末、ジェットコースターは止まり、その間に操縦室へと移動した獄寺達の手によって乗客は全て無事避難させることが出来た。

そろそろ5分か…と思っていると、地面に降り立ったツナの額の炎が(しぼ)み消えていく。

そして思考が正常になったのか俺の方を見て睨んで来やがった。

 

「リボーン!お前撃つなら先にそう言えよ!」

「だって時間がなかったんだもん」

「っていうかお前何であのタイミングで寝るんだよ!」

「仕方ねーだろ、睡魔はいつもいきなりやってくるんだ」

 

俺に不満をまき散らすツナを一蹴して辺りを見渡していると、携帯が鳴る。

電話に出てみれば相手はコロネロで、どうやらボンゴレに増援を頼んだらしい。

 

「既にコロネロが増援を呼んでいる、増援が来るまで俺達でなんとか被害を食い止めるぞ」

「食い止めるったって……」

「見ろ、色んな場所で爆発されている上に出入り口は使えねー…その上壁には高圧電流が流れている」

「何で電流なんか流すんだよ!」

「侵入者防止だぞ、それよりもやべー状況だな」

「そうだ、これも全部カルカッサファミリーって奴等がやったことなの!?」

「そうだろうな…一般人もマフィアも関係なく巻き込むのはあいつらのやり方だ、反吐が出るぜ」

「そ、そんな…」

「それに奴等は思慮深い、全ては余め念入りに計画しているハズだ、既にマフィアランドに奴等はいないと考えた方がいい」

 

そう、あいつは関係のない者達さえ地獄に堕とすクソ野郎…

どれだけボンゴレが被害を被り、どれだけ罪のない人々が葬られた来たことか。

獄寺が他のファミリーからの報告をツナに伝える。

ほぼ全員が避難したと思うが、まだ気を抜いてもらっちゃ困る。

未だ取り残されている奴がいるかもしれない上に、死者を出すとボンゴレの沽券に関わるからと、まだツナには動いてもらおうと考えた俺は銃をツナに向ける。

 

「んじゃ、あとは避難し切れていない客を探すだけだな」

「おいリボーン、何でそれを俺に向けて…」

「ちっと園内回って逃げ遅れた奴を探してこい」

「ちょ、待っ」

 

ツナが最後まで言い終える前に俺は引き金を引き、ツナの額に向け死ぬ気弾を撃つ。

死ぬ気弾は本来立て続けに使うもんじゃねぇが、今は時間がねぇからな。

 

「死ぬ気で探して助ける‼」

 

死ぬ気弾を撃たれたツナは素早く起き上がり、園内を走り回り始めた。

数名の逃げ遅れを助けたツナはある一点へと走りだした。

俺もその様子を眺めようとして、目を見開いた。

 

「あいつは……!」

 

 

ツナの向かう先には、忘れもしないあの黒いヘルメットとレーシングスーツを着た赤ん坊、そして隣にそびえ立つ巨大なタコ。

俺はすぐさまツナの下へと走りだした。

 

何故あいつがここにっ!

 

爆弾は既に設置されて、爆発させたにも関わらず何故まだこの場にいるのかが分からず警戒する。

考えられる理由があるとすれば、逃げ惑う人々を間近で見たいかったから……か?

ダメだ、十数年もあいつとは対峙していなかったせいかあいつの思考が完全に読めねー!

いや、最初からあいつの思考が読めたことなんてなかった…

あいつは最初から狂っていた。

あの残虐な男はまだツナには早すぎると分かり切っていて、俺は焦り出す。

 

「くそっ、間に合えよ…」

 

 

 

息を乱しながら駆け付けたそこには、ツナがタコを相手取っていた。

予想通り死ぬ気モードのツナでさえ奴のタコには手も足も出ない有り様だった。

間に割って入ろうと体を動かそうとした瞬間、ツナが一際重い攻撃を喰らい数m吹き飛ばされる。

俺はすぐさまタコと、あのクソ野郎に殺気を放つ。

 

「下がってろ…ツナ、お前にはまだ無理な相手だ」

 

死ぬ気モードが解け、倒れて動けなくなっていたツナにそう告げ俺は奴を見据える。

そして銃を構え、奴の脳天へと焦点を定める。

 

 

ああ、ずっとてめぇに会いたかったさ…

 

 

今までボンゴレにしてきた数々の虐殺

 

一般人さえも巻き込んだ大惨事

 

ルーチェへの死の花

 

全てが気に食わなかった

全てが憎たらしかった

全てが忌々しかった

 

 

全てが 嫌いだった

 

 

「久しぶりにてめぇの顔が見れて嬉しいぜ…狂人野郎」

 

 

お前の脳天目掛けて引き金を引く瞬間を俺は何年も待ちわびていたんだからよ

 

 

 

 

俺は迷いなく引き金を引いた。

弾丸が奴のヘルメットを突き抜け、脳を貫き、死ぬ至らせるビジョンが脳内で再生される。

 

一瞬の間、発砲音だけが虚しくその場に響いた。

 

 

流される鮮血はなく、聞こえるであろう悲痛な声はなく

あるのはこちらを睨みつける大きな、大きな、二つの目。

俺は瞬時に理解した。

あのタコが己の銃弾を全て弾いたのだと。

そんなことがあってたまるかと、怒り出そうとする感情を抑え、冷静になろうと努める。

一息、たった一息深く深呼吸し、俺は目の前の狂人へと何年も疑問だった問いを投げかけた。

 

「てめーに聞きてことがある…」

 

未だ銃口は奴の頭へと固定されている。

 

 

「ルーチェが死ぬ直前に、てめーあいつに何をした」

 

無言。

ただ沈黙がその場を支配する。

俺は腹の底から沸々と怒りが沸き上がるのを必死で抑え、地を這うような声を張り上げる。

 

「答えろ!」

 

奴はゆっくりと視線を上げ、ヘルメットが俺の目線と一直線上となる。

その動作に初めて目が合ったと理解する。

そして奴は、一言、呟いた。

 

花を送った

 

 

『あなたの死を望みます』

 

やはりあの花はお前が!

 

「てめぇ‼」

 

目の前が赤くなり、銃の引き金を引く。

だがそれもスカルに届くというところでタコが阻んだ。

どういう動体視力してやがる…このタコ野郎……

俺はあまりにも分が悪い今の状況に舌打ちせざるを得なかった。

タコはスカルの前に出て、俺とツナを睨みつける。

 

「下がれ主、今すぐこ奴等を(なぶ)り殺してくれようぞ」

 

俺とタコの殺気のぶつかり合いとなり、一歩も下がれない状況になった時、足元で倒れているツナが浅い呼吸を繰り返しながら声を絞り出す。

 

「リ…リボーン……もしかしてこの赤ちゃん……」

「…ああ、コイツがスカルだ」

「そんなっ」

 

ツナの声は震え、目の前のスカルに対して明確な恐怖を表していた。

いくら現状を嘆いたところで既に手遅れであることは分かっているが、そう思わずにはいられなかった。

元の姿の俺ならまだしも、今の俺ではあのタコは手こずる……しかも今は動けねーツナまでいる…

現状を打破出来る可能性はゼロに近く、俺はどうにかしてこいつらがこの場を去る状況を作り出そうとした。

 

「もうすぐボンゴレの増援が来る、いくらお前でも生きて帰れねーぞ」

 

そんな脅しが死に急ぐコイツに効くわけもないとは思っているが、これが今できる最大限の威嚇だった。

分が…悪すぎる………

背中に嫌な汗が伝うと共に、奴がぼそりと聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で呟いた。

 

 

身内のクーデターでは足りない……か…

 

 

身内………クーデター……

俺の脳裏には8年前の過去最悪のクーデターが過ぎる。

コイツ、ゆりかごを知っている!?

 

「!、何でそれを知ってやがる!?」

 

俺の問いに奴は何も答えない。

沈黙を破ったのは奴だった。

奴はタコの足を軽く叩くと、タコは俺の方にその巨大な足を振り下ろしてきた。

俺はすかさずそれを避けるが、タコは二本目、三本目と複数の足を振り回し始める。

銃でなんとか応戦しようとするが、如何せん数の多さ、速さを考えればジリ貧だ。

タコの足の一つがツナに向かって振るわれるのを視界に捉え、俺はツナを庇おうと駆け寄ろうとした。

劣勢な上教え子を庇いながらというハンデを強いられた俺は柄にもなく焦っていた。

だから、それが奴の罠であることに気付くのに遅れたのだ。

ツナに向かって振るわれる直前のタコの足は、俺の方へいきなり方向を変える。

俺は足を止めるが時既に遅く、自身の腕がタコに捕まりその場で勢いよく投げ飛ばされる。

そして数十m遠くの壁に背中から強打し、その場に(うずくま)る。

くそ…元の身体ならこのくらいわけないのに……

痛みの走る赤ん坊の身体を無視し、直ぐに立ち上がり奴のいる方向へと走りだす。

遠くに見えるスカルはツナに視線を移し、再び俺を見ればタコを呼び寄せた。

タコはスカルを抱え壁を登り始め、高圧電流が流れているであろう柵すらも悠々と越えていった。

スカルは一度も俺を見向きもせずその場から姿を消す。

ただ炎が燃え上がる音と、色々なものが焼け焦げた匂いがその場に立ち込め、俺は呆然と自身の荒い息を聞いていた。

 

 

 

 

 

大勢の足音と声で我に返り、俺はツナの下へと向かおうとすると、後ろから名を呼ばれた。

 

「リボーン!」

「……コロネロか」

「増援が今しがた到着したぜコラ!」

「そうか、あとは消火活動だけだがな」

「後のことは雇われてる俺らの領分だ、お前は手を出すなよ」

「………把握している被害状況はどうなってる?監視カメラはどうした」

「電気設備室には毒ガスが撒かれていて、監視カメラでは数時間の録画が消去されていた」

「中にいた警備員は…」

「手遅れだった…苦しまずにって点では不幸中の幸いだったのかもな」

「そうか…」

「ふん、お前がここまでボロボロになるなんて明日には槍が降るかもな」

「さっきから回りくどいんだよ、言いたいことがあるなら言え」

「………あいつが現れたって聞いたが、本当か?」

「ああ、相変わらず気に食わねー野郎だった」

「あいつの仕業であることは間違いないが、何故まだ園内にいたんだ?」

 

コロネロの疑問に、俺は思い当たる節があった。

 

「あいつ、俺とツナを殺さなかった……殺せる状況だったにも関わらずだ」

「何だと?」

「あいつの目的は殺害や虐殺じゃねぇ……あくまでそれらは過程だ」

「過程…?なら本当の目的は…」

「眺めてんだよ……人が怯えて逃げ惑う姿を…痛がり苦しむ姿を……」

 

沸々と腹の底から言い知れぬ感情が沸き上がるのが自分でも感じられた。

俺と奴はまさにボンゴレとカルカッサの敵対関係の縮図じゃないかとすら思う。

秩序を守るボンゴレと、それを崩すカルカッサ…

 

「救助班が来たぜ、治療受けてこいよ」

「これくらいただの掠り傷だ」

 

駆け付けた救助班を手で制止し、ツナの倒れている場所まで歩き出す。

獄寺と山本に支えられながら立ち上がるツナを視界に入れた俺は走りだした。

そして助走をつけた蹴りをツナの頭に食わらせ、体勢を整えて着地する。

 

「いってー!あ、リボーン!お前何でいきなり蹴るんだよ!」

 

頭を押さえたツナは俺の姿を見ては怒りながら立ち上がる。

 

「っていうか身体は大丈夫なの?」

 

いきなり不安そうな顔を出したツナに俺はいつものように余裕のある声を出す。

 

「もう大丈夫だぞ、ただの掠り傷だしな」

「ええええええ!あれで掠り傷!?お前の身体どうなってんの!?」

「リボーンさん被害はどうなってるんですか?」

「死傷者は出てねーぞ、まあテーマパークは多大な損害を(こうむ)ったがな」

「死んだ人でなくて良かったー…」

 

俺は嘘をついた。

数名、警備員が亡くなっている。

だがまだ未熟過ぎるこいつに教えるには早いと判断し、敢えて教えなかった。

そのままママンやハル達と合流する。

そんなとき、ふとママンが不安そうに周りを見渡しているのが気になり声を掛けた。

 

「どうしたんだママン、何か落とし物でもしたか?」

「リボーン君、無事だったのね、良かったわ………さっき園内で一緒にいた赤ちゃんが見当たらなくて…ちゃんと親御さんの下に帰れたかな、って」

「赤ん坊?」

「可愛らしいペットを連れたヘルメットをしてる赤ちゃんよ、スカル君って言うんだけど」

「「「!?」」」

 

獄寺、ツナ、俺は目を見開いて驚愕する。

 

「観覧車を降りた後いきなりどこかに消えちゃって…探したんだけど見つからなかったの」

 

ママンは頬に手を当て不安そうにあたりを見渡している。

 

「安心しろママン、そいつなら親の所にちゃんと帰れたぞ」

「本当?良かったわ」

 

俺の嘘に安心したママンを他所にツナが俺の所へ近寄り耳打ちした。

 

「おいリボーン、スカルってさっきの…」

「ああ、ママンは何もされてねーみたいだ、気にするな」

 

観覧車ってことは…やはり爆発を間近で見るために態々(わざわざ)潜んでいたのか。

やっぱあいつはクソ野郎だな。

にしても何であいつがゆりかごのことを知っていたんだ?

これも九代目に報告しなくちゃな。

 

「リボーン何立ち止まってんだよ…やっぱり身体痛いのか?」

 

ツナの声で我に返った俺は、ツナの肩に乗る。

 

「お前のこれからの修行内容を考えてたんだぞ」

「ええ!?俺は絶対に修行なんかしないからな!」

「今日は他のファミリーもいる中お前が指揮を取ったそうじゃねぇか」

「ち、ちが…あれは無理やり!」

「この調子でボスに相応しいスキルを身に付けろよ」

「だから俺は絶対にマフィアになんてならないからな‼」

「決定事項だ」

「人の話を聞けぇぇぇえええええ‼」

 

 

 




スカル:善良な一般市民()、ボンゴレが裏でマフィアと繋がっていると思っている、
「身内(古参幹部)のクーデターでは(反省が)足りない……のか…」、ルーチェの死を知ってセンチメンタル。

ポルポ:そろそろ成体、主の敵は殺す!、スカルが殺生を好まないと知ってからはスカルの前では殺すのを極端に抑えている、赤ん坊リボーンなら圧勝。

リボーン:ポルポに敗北、ツナがいなけりゃ互角かもしれない、元の姿なら優勢かもしれない、スカル絶許、負けた屈辱でスカルへの憎悪↑↑。


犬猿の仲な二人だけど、これ虹の代理戦争ヤベーなおい…
とことんスカルにはヘイト高めていって欲しいですね。


ストック切れたので次の投稿までまたちょいと空きます(笑)

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