Skull   作:つな*

49 / 58
skull 番外編3 part2

綱吉(原作)side

 

あれからスカルのことについて話し合いが始まった。

まずどうして元の世界に戻れないのか、これに関しては専門分野である正一君に聞いてみたところ、これから調査してみるとだけ返事をもらったので待つしかない。

次に別世界からきたスカルは、俺達の世界のスカルとは結構違っていることだ。

決定的な所は、態度だ。

全くもって喋らない。

こちらが会話を振っても首を縦に振るか横に振るか、漸く喋ったと思っても一言二言呟いて直ぐに口を(つぐ)む。

その上異常なほど周りを気にしているし、目線も伏せがちだ。

いつもうるさい印象しかないスカルに反してこうも大人しくされると何だか調子が狂うような気さえする。

こちらの世界のスカルとの共通点というかなんというか、彼はリボーンが苦手なようだ。

ソファに座る時もそうだったが、俺と炎真君を挟んでリボーンと一番遠くになる位置を選ぶし、リボーンの問いかけに対して小さな声が一段と小さくなる。

ああ、リボーンが苦手なんだなと決定的に分かったのはリボーンが近づくと明らかに怯える様子を見せた時だった。

こっちのスカルもリボーンが苦手だけど、リボーンに対して虚勢を張ってる時点で一応まだ心の余裕はあるって分かる。

でも彼は明らかにリボーンを怖がっている節があるし、リボーンだけじゃなく周りに対して少し距離を置きたがっているように見えた。

どうしてこうも違うんだろう……

今も目の前で顔を伏せて無言を貫く姿は孤独を彷彿(ほうふつ)させ、か弱く見えた。

 

 

「スカルは……リボーンのこと嫌いなの?」

 

必要最低限の質疑が一通り終わったところで疲れを見せていたスカルを一休みさせるため、俺の部屋の隣の空き部屋へと案内した時にふと気になって聞いてみる。

今この場にはスカルと俺しかいないからか、少しだけ緊張を緩めた様子のスカルが俺を見ては眉に皺を作りながら再び顔を伏せた。

無言の頷きに俺は次の言葉を探そうとして、辛うじて出た言葉を告げる。

 

「えっと、二人の間で何かあったのかなーって……あはは……」

 

多分俺は今タブーな領域に足を踏み入れてしまったような気がする。

やらかした…と思っても出た言葉が戻るわけでもないので、頬を掻きながらスカルをじっと見つめた。

スカルは周りを一度見渡して誰もいないことを確認すると、小さな口を僅かに開きぽつりと呟く。

 

 

「あいつ………俺を殺そうとするから…」

 

 

だから嫌いだ、そう付け加えるともう話すことはないという様子で空き部屋に置かれたベッドに潜り、布団で全身を覆ってはまるで外界を拒絶するように塞ぎこんだ。

俺はスカルの口から放たれた言葉があまりにも衝撃的で、言葉を失っては呆然と布団を見つめていることしか出来なかった。

 

殺そうと…するから……?

リボーンがスカルを殺そうと?

 

何度もスカルの言葉が脳裏を反芻するがかける言葉が見つからず、俺はそのまま開ききった扉から一歩二歩と足を引き摺るように後ろへ下げた。

ゆっくりとドアを閉じ、そこで俺は手を口へと当てては先ほどの言葉をぽつりとつぶやく。

 

「リボーンがスカルを……殺す…?」

「どうやらあっちの俺らは殺伐としてるみたいだな」

「っ、リボーン…!」

 

直ぐ側から聞こえた声に振り返ると、そこにはハットで表情の見えないリボーンが壁に背中を預けて佇んでいた。

恐らく中での会話は全部聞かれているなと思った俺は、はぐらかすことを諦めて溜息を吐く。

部屋の中にいるスカルに聞こえない距離を取ろうと少しだけ歩き出した俺はリボーンに声を掛ける。

 

「少し、混乱してる」

「調子狂うぜ」

 

恐らくリボーンは俺よりも困惑してるんだろうなってポーカーフェイスを覗き込みながらふと思った。

こっちのスカルはうるさくて、馬鹿で、頑丈で、アルコバレーノのくせに弱いけど……それでもあんなに辛そうな、苦しそうな顔はしてなかった。

なのに、何があったらあんなに人に対して拒絶するようなことになるんだろう……

目の前を歩くリボーンから視線を外し、ズボンのポケットに入れている携帯を取り出してディスプレイを確認してみたけれど、入江君の名前が映ってはいなかった。

 

 

 

リボーンside

 

 

「お前どこにいた」

…イタリア

「イタリアのどこだっつってんだよ」

………ローマ、詳しくは知らない

 

か細い声がその喉を通って呟かれたと思えば思うほど、俺の眉間に皺が増えていくのが分かった。

小さな声を聞き取るのが億劫で舌打ちしようものなら、またスカルの態度が振り出しに戻り喋らなくなるのは目に見えている俺は舌打ちを飲み込み、次の質問へと移る。

質疑応答を始めてかれこれ30分経っているが、これといって関連性のある情報は得られていない。

今俺達がこのスカルに対して分かっているのは、奴は今死んでいることになっていること、カルカッサに所属していない、アルコバレーノであったこと、こちら同様虹の代理戦争に参加したこと。

一番衝撃的だったことは、常識を知らないことだった。

年月日を答える時もそうだったが、今日がいつで何曜日かすら直ぐに思い出せない、最近起きた出来事もあやふやでこちらの世界との相違点を出すのが思っていたよりも難航している。

今も自分の家の場所すら正確に把握していないという奴の瞳に嘘はなく、浮世離れが激しいことが見て取れる。

こいつ一体どうやって今まで生きてきたんだ?と思わなくもないが、それよりもコイツの常識の無さにあちらの世界に対してますます不気味さを感じた。

疲れた様子のスカルは眠たいのか瞼が少しずつおりかけていて、一旦休ませるために空き部屋があったはずだというツナに案内を任せる。

階段を上り辛そうにしていたスカルをツナが抱えて登る様子は本当の子供のようで、俺は少しだけ先ほどから感じていた違和感に漸く気付く。

そうだ、子供だ。

あいつの態度は一々子供の仕草を彷彿させる。

中身は俺らとそう変わらないだろうが、浮世離れが後押しして精神年齢が成人に至っていないのではと思わされるほど、成熟した大人とはかけ離れていた。

視界から消えたツナを追おうと階段に足を掛けた時、僅かだが確かにツナの声が耳に届く。

 

「スカルは……リボーンのこと嫌いなの?」

 

いらんことを…と思いながらも、階段を上っていけばまだツナの声がした。

 

「えっと、二人の間で何かあったのかなーって……あはは……」

 

あいつが俺を嫌っている…というよりも怯えていることに周りはなんとなく気が付いている。

俺と目線を合わせないし、声を掛けるたびにビクつくし、どこぞのスカルのように怯えながら泣きべそ掛かれた方が何十倍もマシだと何度思ったことか。

恐らくあっちの俺と相当邪険な関係…いや、一方的な蹂躙(じゅうりん)すらも垣間見える程度にはスカルの態度は異常だった。

流石に並行世界の自分のやらかした行いまで責任もてねー俺は調子が狂うばかりで、スカルが元に戻った暁には気が済むまで殴り倒してやると決意した。

そんなこと思っていると既に俺の目の前少し先には開けたままのドアがあり、すぐドアの裏側にはツナがいるであろう距離まで詰めている、そんな時だった。

 

薄いドアから 掠れて 今にも潰れてしまいそうな震えた声が 届いた

 

 

あいつ………俺を殺そうとするから…

 

だから 嫌いだ

 

たったそれだけ、どれだけの言葉が酷く重たげに俺の胸元に落ちてきた。

一体あちらの俺は何をしてるんだ…?

あらゆる可能性を持った並行世界という分岐世界で、俺は一体何をした?

俺が殺し屋で、アルコバレーノで、虹の代理戦争を経験したという過程は一緒であり、奴の今までの反応を見るからに、あまり俺に関して差異は見当たらないと思うが、何故あちらの俺がこいつを殺そうとしているのだろうか。

ただの子供にしか見えない、あちらのスカルを。

僅かな痛みを訴える淡い何かはすぐさま消えていき、俺は重たい胸を撫で下ろす。

 

「リボーンがスカルを……殺す…?」

「どうやらあっちの俺らは殺伐としてるみたいだな」

「っ、リボーン…!」

 

少し間を置いてからツナが出てきて外にいた俺に気付いては数歩部屋から遠ざかり声を掛けてきた。

 

「少し、混乱してる」

「調子狂うぜ」

 

思っていたよりも低い声が出たことにツナが心配するような顔をこちらに向けてきて、機嫌はさらに急降下していく。

並行世界でのことまで俺に関係ないと何度も言い聞かせているのに、アルコバレーノの呪いがまだ掛けられていなかったあの頃に見たアイツの馬鹿面を思い出しては一抹の不安が胸を過ぎった。

ああ、死んだ顔した奴の面なんぞいくら殴ったって、気が晴れやしねぇってんだ…

俺とツナは下の階に降りては今後のことを少しだけ話していた。

まだ帰っていない獄寺や山本もスカルのことが少なからず気になっていたようで、どこか空気が重くなっていた。

入江正一にランボのバズーカーを渡して見てもらっている間、俺達はあのスカルに対して関心をなくすことはない。

 

「リボーン」

「何だ…」

「俺、スカルのこと気になるんだ……」

 

ふいに言葉を発したツナの顔は真剣で、大方先ほどのスカルの言葉がツナの何かに触れたのだろうと思っていた俺はツナの言葉に驚くことは無かった。

 

「だってさ……あんなに周りを気にして、ずっと怯えてるような奴を見過ごせないし見過ごしたくない」

「お前なら言うと思ったがな」

「…正直リボーンにとって不快になるような案件だと思う……けど、何もせずに元の世界に戻しちゃうのはダメのような気がする」

「俺がやるなっつってやめる玉かよてめーは」

 

俺の言葉に軽く口角を上げるツナの表情は決意が決まったようで、周りの獄寺や山本、炎真もそれに気付いたのか降って湧いた問題と真摯に向き合い始めた。

当面はあちらの世界がどのようになっているかについて探ってみるという内容に落ち着いたが、それに対して適役としか言いようがない人物を思い浮かべてはツナが苦笑いしながら遠い目をしている。

ま、関わりたくねー相手であることは確かだが、今回の騒動に関してはアイツ以上の適役なんぞいねーだろうな。

平穏らしい平穏が訪れてから舞い降りた今回の騒動で、またツナの成長が見られるならそれも良いが……それだけじゃねーような気がしてならねぇ。

これからのことを一々考えるのも面倒になった俺は他のアルコバレーノに連絡を取ろうとその場を離れた。

携帯を取り出した時、ふと思い出す。

 

一つだけ、気になることをアイツは言っていた。

 

『何でお前は死んでることになってんだ?』

 

何気ない一言だった。

ただその一言は、内心困惑していた俺をさらに困惑させることとなったのだ。

 

 

『………狂人スカルが死んだから』

 

 

   狂人

 

 

何故か分からないが その言葉が 途轍もなく重く感じた

 

 

 

 

 

 

スカルside

 

 

「取り合えず、ここに飛ばされる前の状況を教えてくれないか?」

 

そう話しかけてきた綱吉君の質問に、俺は考え込んだ。

いきなり不法侵入されて振り返ったらここにいた…なんて意味が分からないにも程がある。

取り合えずその場の状況的に日本にいることは分かったけれど、何で瞬間移動しちゃったのが全くわからない…

まぁ瞬間移動っぽいことできる奴知ってるから不可能な現象とは言えないし、多分そこらへんが関与してるんじゃなかろうか。

綱吉君の質問には、気付けばいたとだけ伝えて次の質問に移ることにした。

 

「スカルはえっと……今でもカルカッサにいるの?呪解されてるみたいだけど赤ん坊の姿ってことは一応アルコバレーノだったんだよね?」

 

次々と質問してくる綱吉君の言葉に、ソファに座りながら両手で持ったコップの中の水を眺めながら口を開く。

 

カルカッサは……やめた………呪いは、昔貰った

「やめた…?じゃあ今何してるんだ?」

 

綱吉君の質問にあれ?と首を傾げつつ、何で俺の現状を知らないのだろう…と思いながらも、そういえば綱吉君事体は俺の所に来る回数は片手で数えられる程度だったから分からないのか、と自己完結する。

この時、一年前の病院で俺が死亡扱いにされたことを告げた時その場に綱吉君もいたことなど、俺はすっかり忘れてたりする。

 

俺は死んだことになってるから、何もしてない

 

リボーンも隣にいるなら詳細教えてやれよ、俺の口からニートしてますなんて言えねーだろ。

その後もリボーンからの訳の分からない質問があったけどほぼ答えられなかった。

ほら、俺ゲームに勤しんでたから最近起きた出来事や自分の住所は愚か、正確な日付すら知らないんだよ。

曜日感覚狂うし、終いには昼夜逆転ならぬ昼夜スクランブル状態だった。

流石にヤバイと思ったのはポルポから「スカルと喋ったの三日ぶりー」と言われた時だった。

あ、そういえばここ日本だから俺ゲーム出来ないじゃん…死んだ。

これは死ねる。

ポルポもそのままイタリアに置いてきたし、本格的にヤバイな。

イタリアに帰りたいって言ってもパスポートないから無理だし…うわぁ……うわぁ……

一人で落ち込んでいたら綱吉君に心配されたけど正直返事する気力もない。

質問タイムが続いた後うんざりしながら眠気を感じていると、一旦休むかと言われ二階の空き部屋を案内された。

ベッド使ってもいいよと言われたのでそのまま一人でベッドの上に登っていると、綱吉君がふと質問してくる。

 

「スカルは……リボーンのこと嫌いなの?」

 

眉間に皺を寄せながら首を縦に振れば綱吉君は一拍置いて、少し遠慮したような口調で言い放つ。

 

「えっと、二人の間で何かあったのかなーって……あはは……」

 

何かあったのかって……あれ?綱吉君は俺が何度も殺され掛けてんの見てた気がするけどな。

あいつも俺もお互い嫌ってるし、多分死ねこの野郎くらいには思ってるだろう。

今更感が拭えないが簡素に述べた。

 

あいつ………俺を殺そうとするから…

 

いや正確に言えば、殺そうとしてた…だろうか。

もう勘違いも解けたし、本人から一応表面上の謝罪は貰った。

あれで許したかといわれれば全然許してないし、正直関わりたくないと思っている。

つーかストレス的に俺の胃を殺しにかかっている今の状況の方が質悪いよなぁ…

 

 

やっぱあいつは今も昔も俺を殺しにかかってる野郎だ、絶許。

 

 

俺は部屋を出て行った綱吉君の足音から意識を逸らし、布団の中で惰眠を貪った。

 




スカル:未だ並行世界であることに気付いていない、ニート出来る環境下ではないことに次第に憔悴していく予定のSAN値チェックマン。
原作リボーン:色々並行世界の自分がやらかしていて内心ヤバイ。
原作ツナ:色々自分から足突っ込んでいっていつかセルフSAN値チェックするかもしれない。
白いヤングな人<呼んだ?

今回は原作sideです。
次回辺りにSkullの方の視点入れようと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。