IS学園で非日常   作:和希

12 / 50
十話 転校生、またもや襲来

 六月頭の日曜日

「女の園の話だよ」

「すごいよ。え?あんたたちモデルじゃないの?って人しかいない。何枚か写真あるけどあとから見る?」

「マジか!さすが希!」

「でも正直いい思いはしてねえぞ」

「嘘をつくな嘘を。お前たちのメール見ただけでも楽園じゃねえか。招待券ねえの?」

「いつか文化祭があるからそのときの招待券やるよ」

「ひゃっふうっ!!お前とダチでよかったぜ!」

「あ、それと俺からも言うけど楽園と地獄両合わせって感じ」

「お前までもか……なんかよっぽどの理由でもあんのか?」

「まず皆がモデル並に美人ばかり。写真集作れば売り上げが聖書を追い越すぐらい。だから練習中はあんな競泳水着で動かれたらどうしても視線動いちゃうよね。このごろなれて大丈夫……じゃないけど。しかも俺たちのISスーツも水着みたいなもんだし。一夏ならきゃぁえっちで済むけど、俺はおまわりさんコイツですに下手したらなるし」

「いやいや、どうしてそうなるんだよ。俺がきゃぁえっちっでお前はおまわりさんなんだ?」

「あとコイツがフラグを集めるから。俺に出会いが無い」

「つまりコイツが原因だな」

「しかも、コイツが視線を女子から逸らそうとして俺に眼をあてまくるから、一部の腐海はますます加速する。俺も危なくなったら一夏に眼を逸らすけどな」

「つまり全部コイツが悪いわけだ」

「その通り!食らえ!!」

「うわっ!?二人がかりはずるいだろ!?」

「あ、あと授業内容は楽しい」

「へぇ、どんなことやるんだ?」

「爆弾解体技術ははらはらしたね。効率的な爆薬の仕掛け方とか戦術論とか。仮にも兵器を扱わせる学校だからね」

「……楽しいのか?」

「うん、ぶっちゃけ女子がどうとかより正直そっちのが今は楽しい。だってさ、空を縦横無尽に飛び回って撃ち合いやるんだぜ。一斉射撃の爽快さや、近接戦闘のときに冴え渡っていく頭。とにかく最高」

「お前はそういう奴だったな、そうだよな」

「あ。どっちにしろ俺一人だったとしてもモテないのは同じだったろうけど。一人ぐらいは出会いがあったかなぁ」

「お前はいい奴なんだけどな、付き合ってみればかなりいい奴だけど、近寄りがたいしなぁ」

「うっせ。ああ、そういや鈴が来たって言っただろ?それで四人でどっか行こうぜてメールで連絡したろ?予定どっかあいてる?」

「本当に鈴が来てくれて助かった。話し相手が少なかったし」

「「もげろ」」

「なんでだよ!?」

その後、弾の妹の蘭が現れ、IS学園に、入学する!とか言ったりしてた。あとエアホッケーで弾が惨敗した。

蘭を基準にするならそりゃ眼が肥えるわな。

 

 

 

 

 弾の家から帰ってきた日の夕食時、ゲームとかやってたときの癖+IS乗れると分かってから起こったある出来事の癖で周りに全力で気を配る癖があるが、不穏な言葉が溢れかえっていた。

「織斑君の話よ」

「いい話?悪い話?」

「最上級にいい話!」

ちょっと被害が出そうなので、一瞬ISの機能を発動。五秒後、全てを把握した。

素早く小声で一夏に

「このごろ、何か一人で呼び出されて言われた事は?」

「んー、そうだな……箒に買い物に付き合ってて言われたけど、それがどうかしたか」

小声である。周りには聞こえていない。さて、どうしようか。今すぐ噂好きの女子に回して誤解とするか、このままほっとくか……まあいっか、そこまで気を回さないでも。箒に対しては正直同情するが、いい加減それじゃあ気付かないと理解するべきだね。ともかく、眼と耳を瞑ってれば俺に被害は無い。一夏にも致命的な被害は無い。せいぜいISや真剣で襲われるだけだ。よって無視。

注意すべきは眼と耳を瞑っては流れ弾をかわせないということだけだ。俺を狙ってきた弾もかわせなくなる。チラ見ぐらいはしないと。

「希、あんたは色々考えてるわね。悪い事と良い事と」

「ん?まあ大体そんな感じ。んー、茶、持ってくるか」

「私が持ってくるわよ。一夏は?」

「俺も頼む」

鈴はお茶を取りに離れていった。そのときだ、

「あーーーっ!織斑君だ!」

色々巻き込まれたが、巻き込まれただけだった。女子が台風のごとくやってきて消えていって

「なに?またなんかやらかしたの?」

「何で俺が問題児扱いなんだよ。希だっているだろ」

「仮に間違っても希のが問題児ってことはないわ」

一夏に対しての認識は散々である。

「いつも変だけど」

俺への認識は素晴らしい。

「ああ、お茶がうまい」

「逃げたわね」

「あ、ちなみに、一夏と箒がやらかしたっぽい」

「どういうこと」

ズッと迫力よく詰めてくる。まあまあとやりながら

「別に。すぐ分かると思うよ」

「……まあいいわ」

それから蘭についての話題を出し、鈴が対抗心を燃やす事になって、責任も取れないのに約束するな馬鹿とかののしられている。

「いや、その、だな?すまん」

「謝るくらいなら約束を__」

「あ」

「い」

「う……情けない、希につられてしまうとは……不覚」

お茶目でしょ俺。でもそこまで言う事無いよね。そこで現れた箒は一夏に対して気まずそうに。

「よ、よお、箒」

「な、なんだ一夏か」

様子を見て鈴は俺に

「何があったの?」

「さっき言った事。一夏が乙女の純情を踏みにじっただけ」

「……相変わらずね」

「あれ?詳しく聞いてこないの?」

にやにやと聞く。鈴は肩をすくめて

「詳しく聞いたら一夏をぶん殴っちゃうかもしれないから」

それこそが鈴が詳しく聞いてこない理由。それと、やはり俺を信用しているってことだろうとは思う。何だかんだで公平の立場をとっちゃいるが、正直鈴50%、残り二人に25%ぐらいで肩入れしている気分だ。そりゃ、付き合い長いダチのがどうしても優先させちゃうよね。俺は一夏みたいな聖人ではないから、ダチでも順位付けみたいなのが出来ちゃう。

「じゃ、私は部屋に戻るわ」

「あいよー、じゃあ、俺も」

何か良く分からない二人を尻目に部屋に帰っていった。

 

 

 

 

 「あっ、待っていたんですよ!織斑くん、清水くん」

「あっ、珍しいですね。面倒ごとでもあるんですか」

そう言うと山田先生はアハハと顔を逸らして笑った。無人機が襲撃してきたとかより面倒な事は無いだろうから安心だ。

「それがですね、お二人には特別にお伝えしますが、転校生が来る事になったんです」

一夏とは部屋に帰る途中友達と雑談していたときに合流した。それで今ちょうど部屋の前にいる山田先生と合流したわけだ。で、それより聞き捨てなら無い。

「そりゃ、転校生が来たら部屋割を考えないといけないのは分かりますけど、一人消したら一人は女子と同居する事になるんですよ?もしかして二人?レディーファーストで?」

前のシャワーが無い部屋からもう移って、普通の部屋になってる。となるとまた改装した物置小屋に戻る事になるのだろうか。

「いえ、それがですね……男の子なんです」

「「な、なんだってー!?」」

いやいや、ニュースとか2chとかまとめちゃんねるとかISを使って大量に見てるけど、そんな記事全く無かったんだが。もしかして見つけてた男性IS保有者を自国だけで秘匿していたのだろうか。可能性としてはありえなくない、むしろ十分ありえる。俺みたいなのが動かせてるんだ。他にもいる可能性は十分ある。でもいきなり男がISを動かしたら、その事を秘匿できるならしようとするはずだ。でも、こうも時期良く現れてくるともしかしたらISの進化で男が乗れるようになってきてるのか?だとしたら男の後輩が現れてくる事もありえなくはない。男の未来が開けてくるな。

「あ、女の子もいるんですけどね」

「そっちはあまり興味ないです」

既に美少女のバーゲンセールだぜ。これ以上美少女が増えてもどうしろってんだ。スーパーサイヤ人が十人から十一人になってもインパクトは薄い。あー、またかで終わりだ。

「で、部屋割でどちらかが出て行け、それを二人で決めろってことですか?」

「それなら俺が出てくよ。世話になってるしな」

当然である、言っちゃ悪いが迷惑かけられた度では俺のほうが高い。とはいえ、一夏のことをとても尊敬できる奴だと思ってることにかわりは無いが。むちゃくちゃイラッと来る事(女性関連)もあるけど。女性関連さえ抜けばここまですごくいい奴もいないのに。

「いえ、それがですね……また新しく部屋を用意できるまで、織斑先生と織斑くんが同室です」

「えーっ!?」

一夏が驚いているけど正直喜んでる感が強い。えー、でもとか否定しながら強くでは無い。そりゃそうだ、憧れのお姉さんとまた同居できるなら喜ばしい事だろう。千冬さんも一生懸命使い慣れない頭を使って大義名分を主張したに違いない。

「というわけで、今日は荷物を持って織斑先生の所へ行ってください。すいません」

「いえ、しょうがないですし」

「楽しそうだな」

「べ、べつに!」

んー、同姓とは言え同居か、色々面倒が出てくるかもな。色々考えないといけないかも。互いの習慣とかルールとか決めた方がいいかな。相手の性格が穏やかだったらいいな、やっぱり。

 

 

 

 「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

こいつは一体何を言っているんだ……じゃなくて……え?本当に男?あきらかにおかしいと思いますが……。さっと腰をかがめて相手ののどを見る。よくのど仏が男女でどうとか言うが、やはり素人では判別が難しい。が、どう考えてもおかしいと思うが……千冬さんに眼をあわす。じっと見つめるとなんと眼を逸らした。あの千冬さんが。

「べ、べつになにもないぞ」

とか言い出した。この人、気付いてるんじゃないか……?と言うか気付いているよな。弟と同居する為にここまでするか?……するな、ブラコンだし。

「お、男……?」

いや、まだ俺が先走ってるだけに過ぎないかもしれない。いや、そのはずだ、うん。千冬さんはほかの事で勘違いしているだけだ。これから同居するわけだし、見極める機会はいくらでもある、うん。

「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を__」

そこから女子の声がやかましいったらありゃしない。これだから女子は……じゃなくて

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

さすがである。三国風に例えるなら統率力、武力は共に125はある。道具を持たせなくてだ。最強の武将として大人気。武力最強のゴキブリ兜も瞬殺だ。って言うか、あのデザイン天才的だよね(ある意味)、分かる人は分かると思うけど。

「み、みなさんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」

隣の女子も個性的。輝くような銀髪が腰辺りまで、左目に眼帯、しかも黒。右目は赤目、体はちっこい。とにかくちっこい。ただ雰囲気がずっと体を大きく見せてる。ちなみに、シャルルは男としては小柄……女としては大柄?いや、だから女か決まってない、はずだ。

「……」

いや、まだ自己紹介しないの?

「……挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

素直だね、千冬さんに対しては。

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私の事は織斑先生と呼べ」

「了解しました」

そうして直立不動の姿勢をとる。……軍関係者か、ちっこいからってなめてかかったら俺なら瞬殺されるな、こりゃ。千冬さんを教官と呼んだから、ドイツか。一年間教官として行って来てたらしいし。でもその時この子は十二ぐらいになるのか?恐ろしいな。

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

その後、クラスメイトの沈黙。続く言葉は、出てこない。

「あ、あの、以上ですか?」

「以上だ」

「好きな食べ物は何ですか?」

ひとまず空気を和らげる為に定番ネタを言う。高校生になっても痛々しいとか言ったら泣いちゃうよ。だが普通に無視された。しかもそのまま歩いて一夏の所に。

「貴様が__」

『バシンッ!』

 

 

 

 一夏は放心状態。そりゃいきなり殴られたらそうなるか。

「……」

「う?」

無駄の無い平手打ちとか思ってるんだろう。だが俺はそんなことかまわず立ち上がって、一夏に向かって

「一夏!お前はどうしてトラブルの種をまくんだ!?こんないたいけな銀髪美少女をたぶらかしたのか!?いい加減にしろよ!眼を放した隙にどんどん雪達磨式に増やしやがって!!」

殴りはしてない。一応。

「え?え?え?」

こいつは自覚が無いから、何で俺がいきなり切れたか驚いているのだろう。だが、いい加減にこいつは自覚が無くても許されるレベルではない。

「いや、そのだな……希、お前の思っているようなことじゃない、だろう」

千冬さんにちょっと弱弱しく言われた。え?違うの?

「何の事だ……ともかく、私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

「え?一夏が無自覚になんかやったとかじゃなくて?」

「何を言っているんだ?私はコイツは初対面だ」

「え、あ、その……なんだ、一夏、誤解だったようだ。すまん。今度なんかおごる。本当にすまん」

「え、ああ、別に気にしてない……じゃねえ!いきなり何しやがる!」

「ふん……」

さすがに意味無くぶん殴られたら切れるよね。でも無視して席に戻ったけどね。どこまでもクール。

「あー……ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人すぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組とで合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

ぱんぱんと手を叩く音がした。

「一夏、こんがらかっているのは分かるけど、あとから原因究明だ。今は千冬さんに殴られないようにしよう」

「ああ、そうだな」

「おい織斑、清水。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

「君が織斑くん?そして君が清水くん?初めまして__」

「あとからでね」

そんなのはあとでいい。

「移動しないと。女子が着替え始める」

「だからと言ってすぐに人の手を取る癖は直そうな」

「ああ、そうだった」

「それと、シャルルも美男子のようだし。もう情報漏れてるだろ。走るぞ、野次馬が集まる」

え?え?と混乱しているがさすがIS乗り、間違えなく付いてくる。

「とりあえず男子はあいているアリーナで着替え。これから実習のたびだ。早めに慣れてくれ」

「うん」

さて、そろそろ接敵か……

「ああっ!転校生発見!」

「しかも織斑くんと一緒!」

「あとでね!」

持ってきた一夏の写真を投げつける。一応それなりの枚数は確保している。このごろ通貨代わりになっているというが、恐ろしい世界である。ちなみに外れもあり子犬とかの写真もある。当たり1に対し外れは5の割合である。子犬の写真じゃなくて俺の写真だったら俺は殺されているところだ。と言うか子犬の写真で釣れるってちょろい。やっぱり女子だね。ちなみに、激レアで千冬さんのも入ってることがある。危険と楽しみは紙一重。

「そろそろ他の手段を考えてくれ!」

「これが一番早い!」

そうしてどんどん人が沸いてくるため弾も切れた。それなりにあるとは言え、オリジナルは一夏のアルバムとかから確保しても50枚程度しかない。それを印刷して増やしたが、そんな一気に使うわけにはいかない。弾は温存するべきだ。血より弾って言うし。

「今年は河原の花以外のをあげるね!」

ひどいね君。

「な、なに?何でみんな騒いでるの?」

「そりゃ、男子が俺たち三人だけだからだ」

「……?」

いやいや、まだ女と決まったわけじゃ……。

「普通に珍しいだろ?ISを操縦できる男は俺たちだけなんだから」

「あっ!ああ、うん。そうだね」

いやいや、軽く性同一障害なだけだろう、仕方ない仕方ない。確率的には十分ありえる。珍しいけど稀にあることだ。

「あと、この学園の女子は男と接点少ないからね。珍しい物見たさって感じ」

でも去年までは男子と一緒ってのも多いんだけどね。やっぱIS乗れる男、ってのが付加価値か。一夏はそれ+だけど。

「へぇー、大変だね」

「これから君もさ」

アハハハと笑う。シャルルも一夏もあははと。

「じゃ、これからよろしく。俺は清水希。清い水に希望の希。希でどうぞ」

「俺は織斑一夏。一番の夏だ。一夏って呼んでくれ」

「うん。よろしく。一夏、希。僕の事もシャルルって呼んで」

「あいさー」

「わかった、シャルル」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。