IS学園で非日常   作:和希

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十八話 真相

 「ひ、ひどい目にあった……」

午前中にガミガミ千冬さんにしごかれた後、心と体を癒す為に食堂に向かった。ちょうどそこで

「む、兄か」

お兄ちゃんとか兄上でなく、兄と呼ぶようにさせた。いや、ちょっと皆の視線が痛くてね?ギャグっぽくなく、真面目に言ってたら通報されてただろうけど。視線が痛いだけならまだしも、シャルロットから実弾とかが来るとね?さすがにね?

「ああ、今朝はお疲れ。それで、今からご飯だけど食べる?一夏も来ると思うよ」

「分かった」

二人で食堂に行き、それぞれがそれぞれの食べ物を貰う。ラウラが右の席についた。そこで早速気になった事を尋ねてみた。

「ラウラ、いったい一夏のどこに惚れたんだい?」

「む、それは、そのだな……言われたのだ」

モジモジしながら言う姿はもはや乙女のそれ。昨日までお前を殺すが似合う軍人だったのに。相変わらず一夏ってすげー。

「なんて?」

「守ってやると、な」

そういって頬を染めるラウラ。可愛いけど、何が起きたんだ本当に。一夏の周りじゃわりと日常だけどね。さらに色々と一夏のここがいいだの色々教えてくれる。

「だから、私は一夏を嫁にすると誓ったのだ」

そんな力説されてもね、かわいいからいいけど。

「なるほど。でもライバルは多い。だがしかし、嫁にする、と言ったから嫁になってくれるわけではない。一夏は確かにラウラを好いているだろうけど、異性としてではない!」

「な、なんだと!?そんな……」

ガックリと膝を付くラウラ。

「だがしかし!それは今の話だ。将来的なビジョンは違ってくる!それ即ち積極的な攻撃あるのみ」

「そ、そうなのか!」

「ああ、ひたすら防御をしたところで勝てるのは援軍が来る場合のみだ。だが、積極的に攻めれば違ってくる。そこで__」

 

 

 

 「もう、希の馬鹿。……希お兄ちゃん……いや、駄目だよこれは!」

少しプンスカしながらもシャルルはご機嫌そうだった。それも全て昨日のことのおかげである。

(少しは意識してくれたのかな?それにしても、一日だけ正体をばらすのを待って欲しいってどうしてなんだろう)

そう思いながら食堂に向かう。千冬に実行犯だったためきつめのお叱りを受けており、食堂には遅れていく羽目になった。そうして食堂に向かうと、鈴とセシリアと遭遇した。先に説教が終わっていたからである。

「あら、シャルルさん。お疲れさまでした」

「今朝は大変だったわね」

「いや、ちょっとね。アハハハハ」

乾いた笑いを漏らす。だがそれを気にせず鈴は近づいて

「ねえ、ちょっと失礼な話になるんだけど……まさか、希の事好き?」

「なっ、何を言ってるのかな鈴は!そりゃ友達としては好きだけど!同姓なんだから!違うに決まってるって!!」

だが次にはセシリアが追撃をかけてきた。

「ですが、今朝のあの反応は少し疑ってしまいますわ」

「そ、それはね、同居人の僕が希の非常識を治さないといけないなと思ったんだよ。うん。同級生の女の子にお兄ちゃんとか呼ばせるなんて非常識だよ!」

「確かに非常識だけど。それにしちゃ、ねぇ。あの反応は」

「異性に対してみたいな……」

「違うんだって!希は異性として見てないってば!」

顔を真っ赤にしながら否定するがますます説得力が下がっているように感じられた。

「……まあ、どっちにしろ希の事よろしくね。あいつ、何でも出来るようで、意外と忘れやすぽかったり、抜けてたりすんのよ」

「私も希さんにはお世話になってますから、よろしくお願いしますわ」

「も、もう!」

そう会話しながら食堂に近づくと、希を見つけた。その隣にはラウラもいる。二人は昨日まであんなり険悪そうだったのに(ラウラから希にたいして)今はとても仲良く食事をしていた。

「昨日の今日で仲良くなってるわね……それにしてもアイツ、朝よくも……」

「この前のリベンジをしてみせますわ」

二人は決意を固めたように拳を握った。

「たった一週間でそこまで差は詰めれないんじゃ……」

全くもって聞いていなかった。三人はそれぞれの食事を取ってきた後に二人の会話が聞き取れるぐらいの距離に座る。

「一夏の馬鹿はあそこまで言ってもラウラは何か勘違いしてるんじゃないか?とか思っている可能性がある。だから、攻めるなら直接的にだ」

「な、なるほど」

三人が顔を近づけて

「あそこまでして誤解するとか、正直頭が腐ってるんじゃない?」

「もしくは心でしょうか?」

「体の方が腐ってるんじゃ?」

ひどい言われようだがあながち間違いではない。あそこまでされて好意に気付かないなんて火炙りにされても文句は言えない。

「阿呆みたいに間接的なアプローチかけてる三人を出し抜きたいならそこしかない」

ガタッと二人が席を立つがシャルロットがまぁまぁとたしなめる。ゆっくりと腰を落ち着けた。

「確かにそれは積み重ねとして有効だ。告白されるなら親切にされたり、料理が上手だったり、掃除が得意だったりというのをアピールしておくとそりゃ受け入れてもらいやすい。料理も家事も気配りも何も出来ない人が告白しても駄目ってことだ。でも、正直一夏は心意気というか精神重視な奴だし。これから攻めてもどうなるか分からん状況だ。他の三人に遅れを取っちゃ駄目だぞ」

「なるほど。出来る奴というのを見せつけ、それでいて堂々とすればいいのだな」

「その通り。負けるな」

腰を落ち着けていたがまた飛び出した。シャルロットはたしなめる暇が無かった。

「「待ちなさい(ってください)!!」」

「うおっ、ビックリするな。どうした?」

「あんたは中立じゃないの!?」

鈴がくってかかるが希は手をひらひらさせながら、

「ウソ。一昨日ぐらいまでは鈴60%、箒、セシリア各20%ぐらいだったけど、今はラウラ50%、鈴25%、残りぐらい。まあね、鈴が苦労してたの見てきたしね。あれを見てると応援しないとなって」

「なら私を応援するべきじゃない?」

直前に鈴が苦労してきたのを見てきたと宣言しているのだ。それに対してラウラは昨日今日である。

「ラウラはね、妹なんだ」

キリッと決め顔で言うが、全く持ってかっこいいことは言っていない。ただの変態だ。周りの女子からの視線が厳しいものになる。ここに来て急激に評価が下がっている希である。

「そ、そうだよね。妹なんだから仲良くするのは仕方ないよね。あははは」

シャルロットからもである。評価が下がるだけですみそうに無いところが違うが。

「ねえ、ちょっと怖いよ?……一緒に食べようぜ」

 

ちなみに、その日一日シャルル×希の話がおおいに溢れた。

 

 

 

 「それで、どうして一日待って欲しかったの?」

夜、一夏が遊びに来て帰った後、俺たちだけとなった。特製コルセットは着用しておらず、外見は100%女の子である。男装してても女に十分見えるけどね!

「うーん、正直、とても博打なんだけど……ひとまず言っておく、ごめん」

「え?いきなりどうしたの?」

俺の突然の謝罪にキョトンとするシャルロット。

「あのね。シャルロットがこっちにやって来た理由、どうしても不自然だと思っててさ、昨日までやっぱり少し疑ってた」

「それは……しょうがないよ……」

すごく辛そうな顔をする。が、もちろんもう疑ってはいない。

「今は問題ないけどね。で、その理由だけどまずシャルロットは整形手術とかをして男に全く似せてない。さらに、髪の毛だって切ってない。昨日言ってくれたけど、髪は長いのが好きなんだよね?」

「う、うん」

少し恥ずかしそうに頬を染めた。俺もかな。風呂場でだし。

「普通スパイさせるなら髪を短くさせるはず。影響が無いレベルで整形もするはずだ。さらに二年前から日本語を習ってたって事は最初からこっちに来る予定だったって可能性もある。僕って言わせた理由は分からないな。当時はISに乗れる男が現れるなんて思ってなかっただろうし。それと、もし本当にデュノア社長にとってシャルロットがどうでもいいのなら、そのまま見捨てたはずだと思う。だってごたごた相続問題が起きてくるし。本妻とも仲悪くなるはずだ。これらの不都合な点を、昨日までシャルロットがウソとかをついてたって疑ってたんだ。でも、違うって思った。だから話す。博打になるかもしれない。でも、乗ってみる?俺の提案に」

ここまで言えば脳筋ではない彼女には分かっただろう。考え込んだような顔をしている。

「もちろんアフターケアもする。いくら立場が悪くなっても学園のルールで外から一切手を出させないし、装備が送られてこないならうちの会社から出させてみせる。全力で俺も助ける。でも一切強制は出来ない。俺が責任を取りたくないって思ってるのも、確かにあると思う。でも、これは他人がどうこう口を出せはしないから」

「……そこまで希が言ってくれるなら、賭けれる。僕……ううん、私は」

「穴だらけだよ?けっこう」

実際に、穴はかなりある。それでも、このシャルロットの親父さんがそうそう悪い人であるだろうか。こんな立派なシャルロットを育てた母親が好きになったのがそんな人間だろうか。

「でも希はいつだってどうにかしてきた。短い間だけど色んな人の相談に乗ってたし、昨日だってトーナメントを優勝した。私のことだって親身になってくれた。だから、信じる」

……はー、何でこう信じてくれるんだろう。自分は強い人間じゃない。誰かに支えてもらわないと立てない人だ。自分で正しいと思っても、周りが正しくないと言えば正しくないと思ってしまう人間だ。一夏とかと違って。

でも、ここまで信用されたんだ。だから、

「分かった。じゃあ__」

 

 

 

 「経営状態は苦しいか」

「はい、やはり第三世代に乗り遅れたのが痛手でした」

「そうか、下がっていいぞ」

フランス時刻にして約十四時。ちょうどデュノア社長は悩んでいた。

「苦しいか……」

ちょうどその時、携帯電話が鳴り響いた。見ると

(シャルロットからだと)

連絡用として登録はしておいたものの、一度としてかかってきたことのない相手。緊張をしながら出た。

『やあ、こんにちは』

「シャルル・デュノアだ」

シャルロットの声で無い事に心が跳ねたが声には出さなかった。

『へぇ、あんたがこの女の父親か。偽名が同じって事を考えると予想が当たってそうだ』

聞こえてきたのは日本語。それに対して、シャルル・デュノアも日本語で返した。一応日本がISの本場となったので、ある程度ISに関わる人間はしゃべれるるし、彼自身も優秀な事が理由だ。

「なっ、なんだね君は?」

『へぇ、日本語知ってるのか。ならこのままでいいな。このシャルロットって女の同居人でね。こんな極上の女がいるとは。今まで気付かなかったぜ』

「一体何のつもりだ?」

『いやね?さっき問い詰めたら流されてきたって聞いたんだけどな。父親から愛情も受けず。でもその慌て振りからすると違うのか』

それに対して迂闊に答える事は出来なかった。

『っち、黙ったままか。まあいいや、ちょうど脅迫したところでな。お前の事をばらされたくなかったら俺の女になれって。ま、コイツもう死んでるような人生だし?別に構わねえだろ?』

「それでどうして電話をかけてきたんだ?」

そう言いながらすぐに部下を呼び出させようとする。

『っと、変な気を起こすなよ。誰か呼び出して学園に通報しようってなら、それなりにひどい目に合わすぜ?』

「そうしたら貴様が捕まるだけだ」

『でも、コイツがどう言うかな』

「お、おいお__」

『社長!……バレてしまいました。すいません』

「……いや、それよりそいつを口封じするのは無理か?」

『正直、難しいです……。でもいいんです。そうしないと会社がつぶれるんでしょ?なら、いいです。もう死んだような人生だから』

乾いたような、でもところどころつっかえていて、抑揚の無い声。

『通報とかはしなくていいです。ではま__』

「いい!正体がばれてもいいからそいつを殴り飛ばせ!!」

『しゃ、社長?』

「お前だって女だ。もっと体を大事にしろ!事実がバラされても最悪私の首が飛ぶぐらいだ!」

『で、でもそれじゃあ!』

「いいんだ。……何もしてやれなかったな」

『しゃ、しゃ__』

『っと、おいおい……他にも娘がいたぶられる様を父親に実況しようとする悪どいセリフとかも用意したのに……せっかく一日潰してひたすら会話を練ったのに。一時間考えた分すら使ってないんだけど』

「……え?」

突然の事に口がポカンと開いた。

『名演技でしょ?俺顔さえよければハリウッドだって行けるかもって自画自賛!……さて、シャルロット。後はどうぞ』

『ご、ごめんなさい、社長……騙して』

声に抑揚が無いのはウソをつくのが苦手だったから、そう気付いたのは既に遅かった。

 

 

 

 『すまない……今更父親面は出来なかった。13年間もほったらかしていて。家の問題もあって、お前に優しくすると本妻とかの家が会社の出資者でさらにこじれることになるから、冷たくするしかなかった。だから、優秀なIS操縦者にし、学園に送り込ませた。途中から他のIS操縦者を送り込む話も出たが、男がISに乗れるというニュースとともにお前を男装させて送り込ませた。お前の方が年齢と容姿で男装で押し通せると主張した。口調も元々僕で言わせてたからな』

「そ、そうだったの……」

今までの話を盗み聞きしたところ、デュノア社の会社の経営状態は悪く、社長がひきずり下ろされそうという話。しかも、国防を一国二十程度だったりで担っているISである。利権は大きく、社長やIS操縦者は誘拐監禁暗殺などをけっこうな数行われる。だから、社長である自分から身を離させ、自分と関係ないようにした。それでいてIS学園に3年間送り込ませれば第二形態移行も高確率で行えるだろうし、そうすれば利用価値が出て、自分がもし殺されても悪いようには扱われずに済むと考えたらしい。

男装させたのは無理やりねじ込むため。さらに娘の事をどうでもいいように扱ってひらすた自分と離したほうがいいと考えたから。そしてちょうど最後である。

『本当に今まで悪かった、すまない。……だが、そちらではもう問題がないようだな。いい友達が出来たようだ』

「社長……」

『多分、会う事は難しいだろうが、お前の人生に幸福があることを願う。お前の母のことは今でも愛してる。アイツと愛しあった証だ。だから、気にせずにやればいい』

「社……お父さん!……最初からそう言ってくれれば良かったのに!!何で、何で今まで……」

『さっき言ったとおりだ。今更父親面など出来ない。明日に響く。もう寝ろ』

「……今度会いに行くよ。お母さんの話、聞かせてあげる」

『おい、シャルロット。何を言って……』

「仲直りしよう。まだ15歳だから、やり直せるよ」

『だから、私と近づくと危険に__』

「関係ないよ!危険は振り払ってみせる。だから、ね。もう一度やり直そう?絶対に、出来るから。だって、僕はまだ15歳だよ?お父さんの半分も生きてないんだよ?」

『……そういった、優しいところはアイツそっくりだ、本当に。……話すのは、少しだけだぞ』

「うん!お父さん!またね」

そう言ってシャルロットは電話を切った。それにしても、15年間理由があったとはいえ冷たく扱ってきた父親を許すとは、女神か天使か。シャルロットの優しさは。底が知れない。

ちなみに、どうして僕って教え込ませたのかは語られていない。あれ?どうして?まあ細かい事は気にしないでおこう。

さて、どうやって声をかければいい?俺はどうすればいい?……勇気を出すか。どうやって出すの?教えてバーニィ。

「あの、おめでとう?シャルロット。居場所は作ることができる」

「……うん、希のおかげだよ。希のお陰で居場所が出来たんだ」

振り向いたシャルロットの目尻には涙がたまってた。今にも溢れ出しそうだった。少し、嗚咽も混じっていた。

「ハンカチ、いる?」

「ううん……でも、少しだけいいかな?」

そう言うと返事も待たず、俺に抱き付いてきた。そしてくぐもった声で泣き出した。俺は両手をオロオロさせた後、右手で頭を撫で、左手を腰に回した。

何分、何十分したのか分からないけど、そのまま眠ってしまったようだ。しかも困った。

「剥がれない……」

しっかり抱きつかれていた。正直、とっても柔らかごほん。昨日に比べれば弾力はごほん。しょうがなく、そのままベッドに倒れこんだ。こっちも正直眠いし。まっ、こんな日もあっていいだろう。

 

 

 

 「ん……昨日は……そうだ」

「お目覚め?お姫様」

そうやって呼びかけると、シャルロットは一瞬固まった。ギギギとゆっくり俺のほうを向いた。

「いやぁ、抱きつかれててね?はがせなかった。ごめんね、アハハハハ」

「あ……あ……」

「うん、それじゃあ起きて欲しいな、なんて」

そう言うとシャルロットはがばっと跳ね起き……ようとしたら、もっと強く抱きしめてきた。

「もう少し、このままじゃ駄目かな?」

「あー、うん。いいよ」

そう言うと、顔を見上げて笑ってきた。涙の跡が少しついてた。そして顔をうずめてくるとさらに連続攻撃で

「駄目……少しじゃなくて、ずっとこうしていたくなっちゃう」

どうして俺をここまで殺しにかかるの?死んじゃうよ?オーバーキルだよ?レベル10村人に魔王の一撃必殺レベル。オーバーキルしてきるよ。

「そっ、それは。光栄だなぁ、なんて」

「……迷惑?」

「そんなわけない!……こっちもあったかいな」

それより、生理現象をどうにかしないと。少し腰を引かせてるが……死ぬ!

「もっと、抱きしめて欲しい」

だからどうして殺しに来る!?まじで精神的に死ぬ!一年分どころか十年分ぐらいの動揺をここ数十秒で叩き込まれた感じ!!昨日も大体そんな感じね!!

「こ、こう?」

腕を少し強めに回す。気付いた時には下の方も接近。

「足も……きゃっ!かたく__」

「ちょっとトイレ行って来る!!!」

そう叫んで飛び出した。でもドアの隙間から、安心したような、困ったような、嬉しいような、色々な思いが混ざった笑顔を浮かべているのが見えた。でも、憂いは無くなって、心の底からのような。それが、とてつもなく心地よかった。

 

 

 

 その後、とくに会話もせず一緒に食堂に行き、そこで別れた。多分、本当のことを言いに行くのだろう。教室でしゃべりながら山田先生を待っていると

「み、みなさん、おはようございます……」

休養が必要だねこの人。千冬さんに言っとこうかな。

「今日は、ですね……みなさんに転校生を紹介します。転校生と言いますか、すでに紹介は済んでいると言いますか、ええと……もういいです!入ってきてください!!どうして二日続けてなんですか!?」

とうとう逆ギレ。昨日今日だし仕方ないよね。

「失礼します」

「えっ?」

隣で一夏が声を上げた。そして教室が一瞬ざわつく。

「シャルロット・デュノアです。みなさん、改めてよろしくお願いします」

「よろしく。シャルロット。今までと同じように、ね」

最前列で真っ先に、俺は言った。

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。ということです。はぁぁ……また寮の部屋割りを組み立て直す作業がはじまります……」

「おかしいと思った!美少年でなくて美少女だったわけね」

むしろ何で気付かない。

「って、清水君、同室だから知らないって事は__」

知らないってことにして欲しいな。俺が実は一夏並に超絶鈍感だったってことにしよう。俺の演技力ならどうにかいける!

「いや、ちょっと待ってくれ。……昨日二人大浴場使ってなかったか」

コイツ黙れよ。

「全く一夏くんは変なこと言うな。全く。地面とキスしたいならそう言ってくれればいいのに。今ならマグマ風呂もおまけしてあげるのに!」

「あ、ああすまん」

でももう遅い。女子たちの目が変わった。

 

午前中、質問攻めをひたすら笑顔でかわした。シャルロットはどうだったか知らない。




他のSSでシャルロットとシャル父和解するお話ってあります?
僕の説明はいつか。どうしようもないオチになる予定ですが

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