IS学園で非日常   作:和希

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二十二話 ショッピングの続き

 「これとかどうかな?」

何というか、シャルも女の子なんだって良く分かった。どこにでもいる、家の事で傷ついて、友達と楽しくおしゃべりして、ちょっとした事で照れたり慌てたりする、そんな普通の子なんだって。いつも戦闘の時、一瞬で状況判断をして最適な武器を高速切り替え(ラピッドスイッチ)していても、水着を一瞬で選ぶことはできないようだ。女性のみ試着OKで、試着したらクリーニングするらしい。それで、今五着目である。

「黒はシャルって感じじゃないな。多分、白か黄、オレンジあたりかな。やっぱり」

そこで全部いいと思う、とか返すのはどうかと思うので一生懸命考えてそれぞれの感想を伝える。五着それぞれ違う感想を出すのは難しい。あ、正直言うと全部いいね!もしくはとてもいいね!だけどね。黒も大人っぽくてOKだけど。それにしても全く、小論文とか書けと言われたらどんなものでも四百字なら十五分以下で書き切れる自信があるのに。正直、緊張感があってなかなかに難しい。ざっ、と水着を見て

「これとかどうかな?」

オレンジの水着で、セパレートとワンピースの中間みたいな水着だ。直感に近い。でもラファールから連想だと思う。

「うん、ちょっと待ってね」

水着なので比較的簡単に着替えれる。しかもシャルは着替えるのが早い。よって

「ど、どうかな……」

口をぽかんとあけてしまった。俺グッジョブと思った。それ以上にシャルグッジョブ。この世界は俺を待っていた。今世界は輝いている。

「あ、ああ、似合ってる。すっごく可愛いと思う。それでいいと思う」

気の利いた言葉はどこか飛んでいった。それしか言えない、と言うかそれだけ言えばいいんだと思うぐらいだ。

「そ、そうかな……じゃ、お願い」

「う、うん」

その後、水着を買うために移動しようとしたら

「そこのあなた……ってあなたよ!」

「ん?俺?」

振り向くと女性客が目に付いた。正直、超絶微妙に平均より可愛い方なんだろうけど、IS学園ではもっといっぱいいるしね。学校で一番の美少女レベルの人がゴロゴロいるんだから。ISは絶対顔面偏差値が高い奴をIS適正高くしている。実は前世が男な魂をISコアに入れてるのではないか?俺と一夏は女の魂という間違った仕様なだけで。前世がホモな魂を入れてるわけじゃないと信じたい。あー、でもそうとなるシャルには乗って欲しくないなー。っと逸れた。

「そうよ。そこの水着、片づけておいて」

ああ、なるほど。そういうことか。さて、

「じゃあ頑張ってね。シャル、行こうか」

「何言ってるの!?あなたに言ってるのよ。全く、これだから男は。第一、あなた見るからに品が無いし」

一夏に比べたらね。平均はあるはずだ。多分ね。俺は信じているけど。自分が信じたところで他人の判断には関係ないが。とは言え、コイツに品が劣ってるとは微塵も思わないが。

「はいはい、勝手にどうぞ」

「ふうん、そういうこと言うの。自分の立場が分かってないみたいね。そりゃ、あなたみたいな学がなくて駄目人間そうなの__」

「取り消してください」

スッといつの間にかシャルが移動していた。正直、怖いです。このごろ勝手に命名したけど、シャルフィールド、周りの空気の雰囲気が一瞬で変わる。ただし、鈍い奴は気付かない。目の前の奴とか。

「な、何を言うの?あなた?」

あっ、微妙に気付いてた。

「希は品もあるし、学もあります。駄目人間なんかでもない。私だって助けてくれた。誰よりも優しい人です。あなたみたいなのにどうこう言われたくないです。希の事を全く知らないあなたに」

シャルって怒ると怖いんだよね。美人だから更に。しかも笑顔で有無を言わさない。……ただ、あまり笑顔じゃなかった。知り合いかどうかで笑顔かどうか変わるのか?真剣な顔で怒ってた。

「っち、自分の男ぐらい躾ておきなさいよ」

そうやって捨て台詞を掃いて逃げて行った。三流以下にありがちなセリフである。一流の捨て台詞?今日はごれぐらいにしておこうとか?このごろ使い古されてるよねそれ。

「ごめん、シャル。変なことに巻き込んで」

「別にいいよ。自分が我慢できなかったんだから」

さっきとは違って、また笑っていた。

「それと、怒ってくれてうれしかった。ありがとう」

素直に伝えると、シャルは顔を赤くさせた。

「ほ、本当の事だから」

こっちも赤くなったのかな、顔。

そうして気まずげに沈黙を保ちながら、移動している最中。精々数十秒だったけどね。思わぬ人に出くわした。

「あっ、こんにちは千冬さん。山田先生」

「希か」

「清水くんですか」

と言ったと同時の事だ。試着室が開いた。

「え?」

「えっ?」

「ええっ?」

「えええっ?」

一夏が飛び出てきた。中には……ラウラがいた。

「ひとまず殴るわ」

「えっ、何それひでぶっ!?」

「何をしている、バカ者が……」

軽くしておいたから安心しろ。……直後に、山田先生の悲鳴がこだました。

 

 

 

 

 「え?ラウラを試着室に連れ込んだんじゃないの?知ってたけどね」

どうせハプニングだろう。でもこれは一夏が悪い(断定)。どこからどう見ても一夏が悪い(決定)。例え天や月が許しても俺は決して許さない。

「なら何で殴った!」

だから一夏が悪いと。それと、俺じゃなくて警官とか警備員に見つかった場合は牢屋って事を考えると素晴らしくマシな方だと思うけどな。

「それでも殴らないといけなかったからだ。それでラウラ。選んでもらえた?」

「恥ずかしいのだが、選んでもらえたぞ」

顔を赤くしながら軽く笑顔で。うんかわいい。いい子である。

「うん、よしよし」

頭をよしよしとなでてあげた。ただ、いつもと違いシャルは険しい目つきをしていない。

ちなみに、どうして二人で試着室にいたのか?ラウラが説明してくれた。あの二人がISを潜伏モードにしていたのだ。ISはそれぞれ登録しておくと細かい位置が分かるけど、無かったら大雑把な位置ぐらいしか分からない。学園を出てからISコアの気配が二つ消えて、それと軽く気配があったので尾行されてると気付き、とっさにこの中に……いやいやいや、何だそれ。攻めすぎだろう。

「それで、お二人さんは水着を選びに来たんですか?」

「そうです」

やっぱりね。けっこうな偶然だけど。さて、それより

「もうグダグダしてるしさ。二人とも出てきたら?」

擬音を付けるならギクッだろう。

「そ、そろそろ出てこようかと思ってたのよ」

「え、ええ。タイミングを計っていたのですわ」

出てくるタイミングを計れるって状況がもうアレだよね。一夏が何してたんだ?と聞いたら非難轟々された。理不尽には勝てないものである。無理を通せば道理が引っ込むとか何とか。さて、どうしようか。千冬さんは一夏と辛うじて二人暮らししてるし、あまりサービスしないでいいか。臨海学校終わったら元に戻るって予定らしいけど。千冬さんもそこで折れたらしい。全く、これだからブラコンは。

「希、あまり余計なことを考えるなよ?」

「すいません」

相変わらずである。さて、ともかくどうすればいいこの状況。ラウラを二人っきりにさせるべきか?千冬さんと一夏?大穴で山田先生と一夏……ねえわ。鈴とセシリアをラウラとセット?……どうするべきか。そうだな

「ラウラ、ちょっと」

「ん、なんだ?」

テクテクと寄ってくる。耳にこっそりと

「一夏と比較的近い位置にいる鈴とセシリア、仲直りしておくんだ。訓練に怪我は付き物だけど、わざとは良くない。それと、いい人たちだから。学べる所は学んで来い」

「むうっ……兄がそう言うなら」

その後、一夏に向かって少し真剣な顔をして

「ラウラと鈴とセシリアで仲直りしてほしいんだ。一夏、仲介してくれるか?」

「希がした方がいいんじゃないか?」

当然の判断だな。

「いつまでも兄頼りってのもどうかと思うし。だから、頼む。何なら千冬さんの水着を選んだあとでもいいぞ?」

「お前、全く……」

山田先生はどうするべきか?

「山田先生は千冬さんに選んで欲しいんですか?」

「清水君!」

軽くジョーク(半分本気だけどね)を混ぜた。これであの集団で行動するか?千冬さんもあいつらの邪魔をするつもりはないだろう。水着を選んだら別れると思うが。ま、あとは自分たちでどうぞってところか。ここまでだな、お膳立ては。

「じゃ、行こうか」

「……希はすごいね」

繋いでる手をぎゅっと握って、

「一体どうしたの?いきなり」

「あの一瞬でもっともらしい理由を並べて一夏を皆と一緒にさせて。それでいてラウラと鈴とセシリアの仲直りもさせようとするし。誰も損をしないようにしているから。皆の事を気にかけていて、凄いと思う」

「実際には人任せだよ。誇れるのは、あの中心にいる一夏だ」

皆が一夏といたがっているのだ。一夏を中心にして、皆が幸せになれる。俺も一夏といて楽しいと思える。幸せかは微妙だが。みんな押し付けるだけでいいのだから、正直すごいも何も無い。気配りがあるか、どうかだ。むしろ、そんな自分を嫌になる面もある。全部肝心なところはいつも一夏に投げてきた。そんな自分は立派とは言えない。

「もう、いつも自分は大したこと無いって思ってて。……希は、すごいよ。私は、そう思ってるから。いつだって」

「……うん、期待にに添えるように頑張るよ」

それは、本心からだった。変わらないとな

 

 

 

追記 ラウラたちは仲直りしました。

千冬さんは黒水着。一夏が選んだ

ラウラのパジャマも無事選んだようです

最終的な勝率ラウラ6、鈴2、セシリア2 という感じだったらしい。話を一夏から客観的に聞く限り

 

 

 

「ねえ、この後に予定はある?」

「ううん、無いよ」

ショッピングモールの外のレストランで食事を終えた後、外で軽く風に当たりながらどうしようかと頭を悩ませていた。本日の目的である水着選びも終わった。だがまだ午後がある。

「どうせなら、色々回らない?」

「希がいいなら、そうしたいな」

となると、決まりか。良かった良かった。

「分かった。……けどその前に、ちょっとお花摘みに行って来る」

「もう、男の子なんだから普通に言えばいいのに」

「ただのジョークだよ」

 

 

 

 

 「どうすればいい」

誰もいないトイレで鏡に向かってつぶやいた。あ、鏡に毎日お前は誰だって言うと狂うらしいね。……無駄な事考えて紛らわしたいよ。とっても紛らわしたい、けどそれは不誠実だ。

「本当に……」

もちろんシャルの事だ。一夏の様な脳内お花畑じゃないんだから、自惚れじゃなければ、予想は多分当たってる。それでいて、こうして一緒に午後行動しよ、とか期待を持たせて、最後に裏切れるわけが無い。それなら最初から拒絶する姿勢を見せるべきなんだ。

イヤだと思ってるわけじゃない。当たり前だ。理想な女性を浮かべたら?と言ったら九割ぐらいシャルの要素入るはずだ。

容姿端麗、学力優秀、家事万能。

いつも笑っていて華やかだけど、怒る時は怖い。

誰にだって気配りを見せるけど、自分にだけしか見せない面もある。

男を立てるけど強かで、追従するだけじゃなくて自分を持ってる。

シャルのいい所を言えと言われたら皆が十秒以下で複数答えれるだろうけど、欠点は?と聞かれたら五分考えて出てくるだろうか。俺は無理だった。七分後に自分で溜め込みすぎってのが出ただけ。盲目言うな。

文句をつける馬鹿はいないだろう。精々貧乳好きかどうか、黒髪がどうとかで意見が別れるだけだ。もしくは一部のMな人たちがもっとSっぽい子をってだけだ。かなりシャル怖いけどね。でも……中途半端な気持ちで答えてはいけないと思う。今まで彼女出来たことないし良く分からんけど。

ともかく、俺の気持ちも大体分かってる。無関心な相手には無関心だろう。自分を嫌う相手を嫌うようになるなら、その逆も然り。そうした受け身の想いでも確かにあるとは思うけど、一緒にいて一夏たちと違う、楽しいとかとは違う思い。幸せだとか、温かくなる気持ちは、シャルなのだ。

「ちゃんと、言わないとな」

頬をバシンと叩いた。気合を入れなおさないと。顔の表情が緩んできてる。シャルが凄いと思ってくれる自分でいないと、駄目だ。しっかりするんだ。

 

 

 

 

 「希、どう思ってるんだろう……」

シャルロットは悩んでいた。今日のラウラを見守る、そうした話は実は口実ではないかと推理した。もしそうだとしたら脈が無い、と言う事はないはずと。だが

(この服、可愛いとかって言ってくれなかったな)

いつも仲がいい女子には平然と言っている。だが、その言葉をシャルロットにまだ出していない。

(まさか、弁当とかのお礼気分なのかな)

貸しを作ったらきっちり返す人間だ、希は。だからそうなのではないかと。

(良く考えたら、希の内面、あまり知らないな。義理堅くて、優しくて、理想主義だけど現実も見ている。自分に自信を持ってるように見えるのに、結構卑下したり……)

これだけ知っていても良く知らないと言えるかは別として。こちらでもひたすら思考をめぐらせていた。だがそこに

「やあ、お嬢さん一人?」

「俺たちと遊ばない?」

チャラチャラとした二人組みが沸いてきていた。当然である。街中に一人金髪美少女がいれば馬鹿は沸く。

「すいません、今、人を待っているので」

当たり障りの無い返し文句。しかし二人はめげない負けない。

「えー?いいじゃん、いいじゃーん、遊びに行こうよ」

「外に車を駐めてるからさ。どこかパーッと遊びに行こうよ!フランス車のいいところいっぱい教えてあげるから!」

シャルロットにそれは自爆フラグ満載である。

「日本の公道で燃費の悪いフランス車ですか。ふうん」

二人組がたじろいだ。

(やんなっちゃうなぁ……)

正直、シャルロットにとってこの二人はどうでも良かった。考えるとかそういうことすらする必要が無い。希が帰ってくるまでドキドキしながら待つ方がよっぽど重要だった。それでも二人は、作り笑顔でも脈ありと見たのか、手を伸ばそうとするが

「ギャンッ!?」

同時にドゴッとした音が聞こえた。ハイキックが横腹に直撃していた。蹴りを食らわせた本人は全く罪悪感が無さそうだった。むしろ清々とした表情をしていた。

「全く、頭脳派とか言われてるけど、馬鹿か俺。シャルを残してたらこうなるわな」

(やっぱり希はすごい!王子様みたい!)

自分の方が蹴りが上手なのは棚に上げていた。いつでも乙女の思考回路は準備万端に都合がいい。

「相棒に何するんだ!」

一人が吹っ飛ばされた一人を抱え起こす。だが希は

「俺の彼女に何するんだ?殺されたいのか?」

事態は厄介事にシフトしつつあるが、シャルロットはそんなことお構い無しだった。正直二人はシャットアウトされていた。元々されてたが完璧に無視である。

(彼女!?やった彼女!!連れとか友達とかじゃなくて彼女だやった!)

考えるだけでなく、既に表情に嬉しさはあふれ出ていた。が、希は気付いていない。

「お前やるのか?」

吹っ飛ばされなかった男が希に近寄る。希は片手でシャルロットを下げ、対峙した。

(さりげなく僕を後ろに!やっぱりこうした気遣いがいいよね!)

「お前、けっこうチビだな」

「うっせ、気にしてるんだ」

希165cmに対し、男は185cm近くはあった。男は希とシャルロットを交互に見て、

「カーノジョ、何でこんなのと付き合ってるんだ?こんないかにも平凡みたいなのと。カーノジョならもっと上等な男を捕まえれるんじゃないか?」

「平凡上等だっつうの。御託はいい」

だが男はニヤニヤと言葉を続けた。

「こんなどこにでもいそうなボンクラとカーノジョが付き合ってるなんて。弱みでも握られてる?弱みに付け込まれてるとか?」

そう言った瞬間、希の表情が変わった。表情なんて全く変わらない、全く持って動じないような希が、確かに怯えを見せた。それだけの事が今の会話にあったのだ。

「おい、本当かよ。冗談だったのに……俺、もしかして王子様?」

調子のいい表情でニヤニヤとしだした。希の豹変振りにシャルロットは二人組を意識に入れた。敵意を抱いて。二人に対して

「そんな事無い!希は僕の居場所を作ってくれたし、助けてくれた!それ以上言うなら、僕があなたを倒す」

「おい、冗談はやめてくれよ」

それに対し、顔色が悪い希が平坦な声で、とてものっぺりした、シャルロットが切れている時に近い声で

「そうだよ、シャル。シャルがこんなのに触れたら汚れがうつるだろ?」

「おい、お__」

男が声をかけてきたが、希が上から被せた。

「いい加減にしろ。次の言葉を出したらぶん殴る。黙って立ち去るか、殴りかかって来い」

「上等」

男は殴りかかってきたが、希は腕を掴み、捻った。

「いででででっ!?」

さらに、背中側から膝打ちを食らわせ、怯んだ瞬間にとどめとばかりに蹴り飛ばした。そしていつの間にか復活した相方が後ろから飛び掛ろうとしていた。

「のぞ__」

が、振り向いたかと思うと顔面に拳を直撃させた。見えないはずの位置に。

「引っ込んでろ……ごめん、シャル。変な事巻き込んで」

「いや、元はと言えば僕が……」

「おい、テメェ!」

突き飛ばされた男が突っかかってくるが、

「次は、容赦しない」

その言葉で引っ込んだ。

 

 

 

 「ねぇ、希……大丈夫?さっきすごく体調悪そうだったけど」

「別に。ただ、食後に動いて調子が悪いってだけ」

いつものようになっていた。ひるんだあの顔は全く面に出てきていない。だが、何かが違っていた。

「ほら、この先にゲームセンターがあるんだ。射撃って得意だろ?やらない?」

「……うん、得意だよ。希よりね」

「言うな。絶対勝ってやる!」

無理に元気に見せようとしている、そんな感じがしていた。本当に些細な差、何もかも前と変わってないように見えていても。ただひとつ、とても大きく違っていた。

 

 

 

 

手を繋いでいなかったことが

 

 

 

 

 

 夕方五時ごろ。二人はモノレールに乗ってIS学園に戻ろうとしていた。人は少ない。

「シャル、楽しかった?」

「うん。とっても。……希こそ、私といて楽しかった?」

「もちろんだって」

「なら良かった」

そうやって二人は黙った。だがシャルロットは

(どうして、手を繋いでくれなかったのかな)

あの男に絡まれてから、希は手を繋ごうとしなかった。どことなく、距離が離れてしまったような気がした。

(今度見つけたらあの二人蜂の巣……じゃない、僕が悪いんだ。どうしたんだろ、嫌われる事しちゃったのかな)

だが、その原因は分からない。男が発言した時、弱みに付け込んだな、そう言っていた。その直後に表情が変わっていた。

(皆に相談してみようかな……)

「なあ、シャル」

「なっ、なに?」

一瞬声が上ずるが、元に戻る。

「その服……いや、何でもない」

(あれ、もしかして?)

「今の続きってなに?」

「ごめん、言えないな。あははは」

そうやって、希は誤魔化しながら駅につき、そこで世間話をしながら寮で別れた。

(成功、だよね?)

シャルロットはそう思っていた。


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