IS学園で非日常   作:和希

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二十四話 嵐の前触れ

 砂浜に向かおうとすると目の前に突然ラウラが現れた。走って来ながらね。そして付け加えるなら顔を真っ赤にしながら。更に付け加えるとロリ黒ビキニ装着ですっごく可愛らしく。浜辺にいたら男が一分で五人ぐらい釣れるぐらいの可愛さね。つまりラウラはロリにて最強。

「ラウ__」

「兄よ!この姿はどうだ!?かわいいか!?かわいいと言われたのだ!!」

すごい取り乱しながら現れた。当然答えは決まってる。

「うん可愛いよ。よしよし」

頭を撫でてやると少しは落ち着いたようだ。それでもまだまだ興奮しているようで、足をモジモジさせながら腕をぎゅっとして

「よ、よし……」

「ひとまず、今からいけるか?お前の祖国は電撃戦で勝利を多く収めた。最終的には負けたけどね。ともかく、それでも電撃戦が有効だったのは事実。だから、ひたすら攻めるんだ」

「む、むりだぁ……恥ずかしい」

アレ何この可愛いの?顔真っ赤にしてヒャッフゥ!俺の目にくるいは無かった!

「はいはい、じゃあ別館で少し落ち着いてきなさい。それでも無理そうなら攻めなくていいから。今日一日は確かに大きなポイントになるけど、勝負が完璧に決まるわけじゃない。電撃戦も重要だけど、長期にわたって作戦を練った方が有効でもある。可愛いと言われる事に少しずつ慣れていこう。体勢を整え、戦力を整えるんだ」

「わ、分かった、兄よ。さすが兄は説明が上手い。助かった。兄も楽しんできてくれ」

「はいはい」

ラウラに対しては軍事用語を混ぜるとかなり伝わりやすい。まあぶっちゃけ、焦って可愛い姿を見せ付けるのが有効だろうけど。今は無理そうだ。裸で人の寝込みにやって来るのに、何というか基準はどうなってるんだろうか。今度尋ねてみるか。さて、まだ一度も泳いでない。またもや歩いていくと……そろそろ足の裏が熱いんだけど。冷ませれない。

「おーい、希!ラウラが抜けて困ってるんだ」

見るとセシリアと一夏がのほほんさんたち相手に勝負をしていた……のほほんさんは勝負をしてるのか?突っ立ってるだけじゃないのか?まるで置物。

「へいへい。よろしく、二人。やるからにはあまり負けたくないな」

「あまりをつけないほうがよろしいですわ。その方が殿方らしいですわよ?」

ですよね、知ってる。でも付けるのが俺。俺にとってスポーツは勝ち負けよりもどれくらい楽しめるかの方が重要。負けても楽しめたならそれでいい。だからと言って、試合で負けて泣く人を馬鹿にしているわけじゃない。それだけ熱中できる物があるってのは、すごく羨ましいと同時に尊敬できる。

「さ、行くよ」

パーンと打たれるボールを

「へい」

受け止め一夏に渡して

「さっ」

上にパンッとしてセシリアが

「とどめっ!」

スパイク上手いね。さすがスナイパー狙った所に一直線。ですが一夏の視線は敵よりセシリアに釘付けですな。俺?こんな時は救いの女神なんだよ、のほほんさんが。男のケツの穴追っかけるよりいいよね。第一、セシリアの凶器は後ろからはあまり見えない。横にチラチラ跳ねてくるのが攻撃力高いんだけどね。尻自体も攻撃力高いけどね、何でこう攻撃力高いのが多いのか。

「どうしたのですか、一夏さん?」

「なっ、なんでもないぞ!なんでもない」

多分、昼間のバスでの俺はこんな感じだったんだろうな。何も無い訳無い感じ。何も無いわけないですと書いたのぼりを背負って歩き回ってるような。ツンデレがツンデレしてるぐらいに分かりやすかっただろう。

「変な一夏さんですわ」

「ま、まあ、夏だからな。熱も入ろうってものだ」

「サマーとサーマルをかけたいのですわね」

あいかわらずくだらないギャグを……俺も考えたのがね。人のこと言えない。

「あ、そういえばセシリア、日焼け止めどうなった」

「そっ、それはその」

一夏も顔を赤くした。あれ?やばいこれ。地雷踏んだと分かったら落ち着いて対処しよう。無闇に足を上げるんじゃなくて、落ち着いて行こう。地雷は踏んでも足を上げなければ爆発しないらしい。最近のは知らないけど。

「希、駄目だよ!」

「わっ!?シャルッ!?」

後ろから気配もなく現れないで!……そして、シャルか。会いたいと同時に会いたくない相手。

「そ、そんなに驚かれてもこっちが驚いちゃうよ」

水着が、正直直視できない。いい意味でも、悪い意味でも、本当に悪い意味でも。

「ねえ、何でのほほんさんを向いてるの?」

俺の避難場所だからに決まってる。視線の避難場所ね。周りの女子は露出高い上に美人ばっかだし。スタイルいいのばっかだし。のほほんさんならその点ブレてないから安心。このごろ一夏を見てて俺ホモ説が伸びだしてるからのほほんさんに向けないと。

「いろいろあってね。さー、泳ぎに行こー」

「ちょっと希!……何も、無いの?」

若干顔を赤くして、モジモジしながら言われると困る。今は、この事が負い目になってくるのだから。でも、面に出してはいけない……だからといって、単純に褒めていいのか?駄目だ、全く訳が分からなくなってきた。考えがまとまらない。何をしたい?何をすべき?あいつらはいつもこんな風に考えがまとまらなかったのか?でも、気が付くと

「可愛いよ、とっても」

ついつい口を滑らせてしまった。これは、駄目だ。シャルは顔を染めながらも、にっこりと笑ってくれた。

「あ、ありがとう……その、一緒に遊ばない?」

「あ、うん……遊ぼう。やっぱり泳ぎ?」

「うん、そうしようかな」

そう言って、自然と手を差し出して来る。それを、流されるように自然に手にとってしまった。このままじゃ駄目だろ、俺。いつまで流されてるんだ。流されていいときもあるけど、これは違うだろ。

「じゃあ、行こ」

「あ、ああ」

その笑顔は照りつける夏の太陽にも負けないぐらい輝いていた。

 

 

 

 「疲れたね」

「水の中はやっぱり疲れるな……と、一夏たちも終わったところか」

シャルと一緒に泳いだりしながら午前の時間を潰した。疲れたところで陸に上がると、一夏たちが続けてたビーチバレーも終わっていたところだ。

「お、お前たちもか?」

「ああ、一夏も来るか?」

「分かった。午後どうするつもりだ?」

「食後はあまり動きたくないから、午後は海岸を散歩しようかなって思ってる」

「私もだよ」

「へぇ、じゃあ俺も希たちと__」

「はいはいはい、馬鹿言わないでね」

そう言いながら俺とシャルに目配せをした。……空気読んでます、頑張ってね!みたいな目されてもね。正直困るんだよね。

「鈴、大丈夫なのか?」

「もちろんよ、二人がすぐに助けてくれたし。それで、あんた希と一緒の部屋なの?」

「いや、織斑先生の部屋だ」

周り一面凍りついた。シャルは除く。シャルには関係ない話題だ。

「俺の部屋にでも来るか?皆で遊べるだろ。夜はトランプだな」

「それいいな!さすが希!」

「だ、だよね。鬼の寝床に入らなくてもいいし」

「誰が鬼だ、誰が」

「織斑先生は鬼じゃないって。それ以上の……ジョークでーす」

一瞬厳しい眼を向けられたのでジョークと答えた。一夏に選んでもらった黒の水着を着ている。正直、とても似合っていて大人らしいと思うが、今の精神ではそこまで気にはならない。動いて跳ねてれば別かもしれないけど。それに午前中に大体慣れた。だってさ、シャル抱きついて来るんだもん。途中から感覚が世界を超越した気がする。あの時ならISで世界を狙えた。この世のすべてを理解できた気がする。気がするだけだけどね!!

「相変わらず綺麗ですね」

ひとまず心の底から思った事を伝えとく。

「その棒読みの声をどうにかしてから言うんだな、女を褒める時は」

ありゃ、そんなに棒読み?心の底から思ってるんだけどな。でもシャルに眼をやるとジト眼で見ていた。

「どうした?」

「私の時はすぐ言ってくれなかったのに……」

シャルはいつも攻撃力高いね。必死に話題を逸らす為に

「えっと、ごめん?それと一夏、鼻の下伸ばしてる」

「なっ!?の、希?何を言ってるんだよ」

「冗談だっつうの。下手に慌てると疑惑が振りまかれてくぞ、常に堂々としてろ。織斑先生の貴重な自由時間のようだし、さっさと昼食にでも行こう」

「ふん、相変わらずの察しの良さだな」

まあね、これはかなり得意だ。何となくでだけど。でもシャルは軽くジッとこちらを見ていた。

「では、また後で」

「集合時間には遅れるなよ」

「はい」

他にもぞろぞろ生徒が戻ってくるのが見えた。だが、箒は見かけなかったな。無駄に大きい胸見せ付ければ一夏に対して攻撃に__

「希、他の女の子のことを考えるのは無粋じゃないかな?」

「ごめんなさい」

相変わらず、手は繋がれたままだった。

更衣室の前では別れたけどね。

 

 

 

 

 楽しい時間は過ぎるものだ。早くね。午後七時半、おなかがすく時間帯に大広間三つを繋げた大宴会場で、夕食をとっていた。

「うん、うまい!昼も夜も刺身が出るなんて豪勢だなぁ」

お前相変わらず飯ばっかだな。そんなにグルメ目指すのなら、学園で和食ばっかじゃなくて他のも食えばいいのに。

「IS学園って羽振りがいいよね」

「国営だしな。美味いもの食べれりゃあまり文句は言わないけど」

日本の国防を担うエリートを育てる機関だし。野郎ばっかなら文句が来るかもだが、所属してるのは美少女ばっかだし。男女差別甚だしい。

「そうよねー。やっぱり美味しいわ」

「私はどうも苦手で……」

ちなみに、シャル・俺・鈴・一夏・セシリアの順で並んでる。正面にはのほほんさんや如月がいる。

「あー、うまい。しかもこのわさび、本わさじゃないか。すげえな、おい。高校生のメシじゃねえぞ」

「本わさ?」

日本語はぺらぺらでもその文化や食事まで良く知ってる外国人生徒は少ない。シャルもその一人。日本語を日本人と同様レベルで高めるのは各国の才女でもかなり難しいからだ。英語とかと全く違うしね。どうしても文化面は大雑把になる。俺たちだって中学時代英語はよく勉強はしてたけど、文化面とかは全く教えられなかったのと同じ。イギリスフランスドイツとかそこら辺の文化の違いが分からないとの同じだ。料理出されてどこの国の?ってやられてもわからないでしょ?

「今は普通の店屋だと練りわさびってのを使うんだ。ワサビダイコンやセイヨウダイコンとかだっけな。着色したり味付けたり色々して本わさびに似せた物。でも、本わさびは山奥とかの清流で育てた植物の地下茎を擦って使うんだ。擦るのも鉄とかで擦るのもあるけど、最高級は鮫の皮膚を使う。確か、同重量なら十倍以上の値段差があったはず」

「希は本当に博識だね。じゃあ、これが本当のわさびなんだ」

博識ってほどではない。テレビを見てたりすれば一度ぐらい見かけるだろう。わさびは毎年一回ぐらい料理番組で見る食材だし。

「だね。山奥で取れる高級食材と新鮮な海産物とが食べれるって贅沢だよな。あ、でも技術も進歩してて練りわさびでも美味しいのが多いらしいな」

「そうなんだ。はむ」

……なぜわさびの山を食った?……そうだ、良く考えたら美味いとかいっただけで味について何も言ってない!滅茶苦茶辛い事とか!!

「シャル!大丈夫か?ほら、水」

水を差し出しながら背中をさする。ごほごほしながらも水を流し込んだ。

「だ、大丈夫……かな」

次は水でなく、冷えた緑茶を手渡す。一気に飲んだ後、

「ふ、風味があっていいね。お、おいしい……」

「涙眼で言われてもね。大丈夫?」

この健気さには参るよ。

「うん。ありがとう。こうやっていつもさりげなく助けてくれて、嬉しいよ。本当に」

涙目になりながら、ニコッと笑ってくれた。……助けてくれて、か。助けちゃいない。むしろ追い討ちをかけたんだ。

「希?どうしたの」

「あ、なんでもない。昔を思い出しただけさ。わさびの本当の食べ方は刺身と一緒に食べるんだ。ただ、醤油とわさびを混ぜると醤油とわさびを作ってくれた人に対して無礼になるらしい」

「それは漫画だろ」

一夏がつっこんでくる。知ってたか。漫画で獲得した知識で覚えてたのはとことん記憶に残るよね。

「そういうこと。だから醤油を半分、その上にわさびをのせて食べるんだ」

「わ、分かった。落ち着いたら、試してみる」

だよね。今は余裕無さそうだし。

「もう、シャルロットったら。しっかり学んでおきなさいよ。そうしないと後に響いてくるでしょ?日本食材について知ってるのと知らないのじゃ」

「だ、だよね」

「料理研究部に入るんだっけ?」

「うん。自分だけじゃ限界が来るから」

「日本食の基本を学ぶか……学生にはきついよな」

そう言うとシャルと鈴は顔を合わせて

「まあ、ちょっと難しいわよね」

「かな」

刺身とかその他は学生で学べるだろうか。難しい。

「あっ、そうだ。一夏……その、昼間はありがと。希もありがとうね」

「別にいいって」

「むしろミスしたかなって思ったぐらいだ」

あのまま二人泳がせた方が鈴的には良かったかな?ついつい飛び出したけど失敗したと後から思った。でも鈴は微笑んで否定する。

「馬鹿ね。すごく嬉しかったわよ。と言うわけで、一夏、口開けなさい。刺身、食べさせてあげる」

「えっ、いいのか?」

「鈴さん、ずるいですわ!」

「私には頭脳が付いてるのよ!負けはしないわ!」

ドヤ顔で胸を張った。胸張ってないセシリアのが高いが。この世の中は不公平。

「抗議しますわ!希さん!」

飛び火させないで欲しいな、あまり。

「分かった分かった。お前たち、あまり頼りすぎるなよ?今日は特別だけど」

ひたすら別のことで気を紛らわせたい。

「でも助けてくれるくせに。……はい、一夏、あーん」

「あーん……美味い美味い」

「良かったな、一夏」

鈴もここまで攻めるようになったとは。だが、予想外ッ!

「ほら、希。あんたも開けなさい」

「えっ?」

「そこまで意外に思わなくても……シャルロット、ちょっとごめんね」

「いいよ、中学生からの親友だもんね」

「じゃあその拳は……?はい、あーんしなさい」

全く、これだから。こいつらは。

「あーん……美味い美味い。でも、セシリアには助言するぞ」

「分かってるわよ」

良く分かってる事で。ま、長い付き合いだし。

「おい、一夏。せっかくの料理だ、鮮度が落ちたらもったいない。セシリアに食べさせてあげろよ。日本の文化を知ってもらうのにいい機会だろ」

「確かに刺身は日本の文化だな。セシリアがいいのなら」

「も、もちろんですわ!料理が痛んではシェフに申し訳ありませんものね!」

それに対して鈴が鳩が豆鉄砲食らったような表情をした。

「……えっと、そりゃ手助けするとは思ったけど、食べさせてあげた後、直後に?」

「それが嫌なら自分で俺を上回れ。っつーか昼間どれぐらい助言したかと……」

「そりゃそうよね……ともかく、卓球する約束はつけたわ!」

「だからそれ俺の案……まあいいや」

一夏に対して攻勢を強めた二人を横目に見ながら食事を再開する、が。

「ねえねえ、希……あーん」

「あ、ありがとう。あーん……美味いです」

「良かった。じゃあ、今度は僕にお願い」

無理です、とか言わせてくれないな。相変わらず。シャルは相手が否定できない空間を作れる力を持っている。そして、それに流されたがっている自分。

「了解。あーん」

「あーん……自分で食べるより、美味しく感じるよ」

その言葉を聞いてセシリアが真似をしだしたのが聞こえた。その後、千冬さんが登場し、静かにしろと触れを出した。が、シャルは「静かにするなら問題ないよ!」と言って何回か食べさせあっこをした。正直、周りの視線がちょっとアレでした。




追記。話数が心もとない上に作る時間も減ってきてるので十日で一回更新程度になります。二月を過ぎたら早まるかも?

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