んー、なんか変な感覚
「いや~、チェルシーさんってセシリアが言ってたとおり、美人だったなー」
お前よく言えるね。セシリア自身美人って言ってたけど。
四人で学園の食堂に隣接してるカフェに流されて入ってきた。
「確かに美人だったけどね」
美人は正直いくらでもいます。この学園のせいで感覚がくるってる。シャルがちょっと目を細めて
「僕は?」
「意地悪言うね。えっと、その、美人っていうか……可愛い?」
「あっ、ありがとう……」
顔を真っ赤にしてるところとかね!でもその一方、セシリアは不機嫌顔。周りから一夏に関してのひそひそ話が飛んでるのも追撃か?さっき一夏とチェルシーさんは仲良く会話してたし。あ、俺も普通に混ざってたか。俺はいつも通りやったのでシャルから厳しい視線は飛んでこなかったけど。
ちなみに、先月流れてた一夏の年上好きの噂を思い返してるのだろうか。四人が噂好きの女子から仲良く聞いてるの見てたし。
「はぁ……」
「あのな?セシリア。どうしてそんな機嫌が悪いんだ?……も、もしかして、俺のせいか?」
「そうですわ」
「即答かよ……ん?」
見ると、山田先生がかけてきて一部が激しく揺れて……視線が凄まじく厳しい。目を逸らした。
「お、織斑くん!すいません!実は今日、白式の元々の開発室から研究員が来ることを書類の見落としで忘れてました!それを伝えようと思って。先月になった第二形態のデータを取りたいそうで……本当にごめんなさい!」
「いえ、そんな。誰だってミスぐらいしますし。今日は何も用事が無いので」
「はい、どうもありがとうございます!じゃあ付いてきてください」
そして、席を立とうとしたとき。
「待ってください、一夏さん。今日は?」
あっ、やばい。そう思った時には遅かった。
「ん?ああ、明日希と鈴の三人でウォータープールに行くんだ」
「へぇ、そうですか。ご一緒させてもらってもよろしいでしょうか?」
「ごめんな。そこチケットが無いと入れないんだ」
よし、その通りだ!と思った時だった。一夏は手をパンッと打って
「そうだ!希、さっき転売だとか人との繋がりだとかのために二枚持ってるだろ?一枚はお前が使うけど」
そう言うなり、セシリアとシャルが立ち上がった。……どうしてシャルも?俺もつられて立ち上がった。
「希!どうして誘ってくれないの!?」
「希さん!どうか!」
「待て、落ち着こう。実はほかに誘う場所を……あっ」
「そっ!それなら仕方ないね!!」
すぐにシュタッと座り込んだ。嬉しそうに。やばい、ハードル上がった。っていうか出来たらいいなて思ってたのがしなきゃダメになった。背水の陣だ
「ではわたくしに!」
い、命には代えられないからなぁ。鈴ごめんと思いながら
「さ、三千__」
「待て」
「待つのだ」
現れた面子を見て、俺はなんでこんなのを買ってしまったんだ。素直に最初から企業理由を作ればよかったと後悔した。そうすれば今頃は鈴とコイツらで争いになってたはずなんだ。
えっ、さっきまで鈴を全面応援してた俺はどこ行っただって?命には代えられないんだな、それが。
「お、おお、良く来たな。ラウラ、箒」
「ああ、少し冷たいものが欲しくてな」
「ところで兄よ、そこに二枚あるのだな?」
「そ、そうだね」
一枚は俺のと言うことになってるはずだけど。
そう言いながらシャルの肩をたたいて、手をシュッシュッと振る。巻き込ませるわけにはいかない。でも、僕もここに残るっ、一人にはしておけないっていうような表情__戦争映画じゃないから!そんなべたなことしたら俺に死亡フラグ立っちゃうから素直に逃げて!?
「そ、それじゃあ何で決める?一人あふれちゃうなぁ、あはは」
凄まじくやばい。こいつらは個人で戦争出来て、火種もある。
そこで問題だ!この足りないチケットでどうやってコイツラを鎮めるか?
3択 ひとつだけ選びなさい
答え①ハンサムの希、鎮めるアイデアがひらめく!
答え②仲間(一夏、鈴)が__現実逃避してる間にひらめいた!
チケットがあるからいけないんだ!こんなの全部燃やせば……俺も燃やしたチケットと同じ末路をたどるな。ひらめいてない。
ならチケット二枚をこの場に落いて立ち去る……鎮める係が必要なんだって!
いっそもう俺とシャルが使うことにすれば……さっき違うって言っちゃったし!
どうする?大富豪の手札は多ければ有利ってわけじゃない。強くて切れるカードじゃないと駄目なんだ。役に立たない選択肢なんてあるだけ無駄みたいなもんだ。枯れ木も山の賑わいだけど枯れ木ばかりじゃ山は崩れる。どうする……どうする?
そうだ!金はたんまりある、伝手をたどるなりなんなりしてウォーターランドチケットをゲットだ!一夏と鈴のラブラブデート?だから命に代えられないしラブラブでもないし!ISを使ってメール打ち、伝手を辿った。が、
「ここはもちろん」
「私たちらしく」
「手っ取り早い方法で」
「「「決闘だ!!」」」
……一瞬呆然とした。こいつらが暴れださないって事に。いきなり争奪戦するかと思ったけど、そんなことしないようだ。ま、まあ確かに、普段通りならすごく話が通じる相手だけど。
「何だ?その心底驚いた顔は?」
「いつまでも兄に迷惑かけれないからな」
「私たちだって成長しますわ」
なるほどなぁ、なるほど。なら問題ない。俺たちは立ち上がって適当なアリーナにまで向かった。
アリーナ内部、既に彼女らは全員ISを展開済みにしていた。
「じゃあ、後腐れないようにルールを説明する。三名の内、一番最初にエネルギーが0になった者が敗者。とまぁ、とってもシンプルなルールが一つだけ。何か質問は?追加したいルールは?」
全員がそれに首を振る。と同時に
(問題はラウラだな。この中で一番強い)
(ですが、私と箒さんが組めば勝てないわけではないですわね。最初こそ鈴さんと二対一でも負けたとは言え、今は癖もかなり知っていますし、組めば95%以上の確率で勝てますわ)
(だが、セシリアと同盟するなどより)
(もっと手早い方法としては)
二人は同時にラウラに秘密の通信回線を開いた。
『ラウラ!私と組むべきだ!』
『ラウラさん!私と組みましょう!!』
(ふむ、確かにそれが一番最適か。現状私が一番強い。私と同盟を組むのが最も最適。では私はどちらの味方をするべきか?……兄は言ってた。箒が今の所一夏に近い気がすると。となると、さらに接近はさせれない)
『セシリア、取りに行くぞ』
『ありがとうございますわ』
(これで勝ちですわね!)
ラウラとセシリアがニヤッと箒を見た。その瞬間、箒はすべてを悟った。
(くっ!先を越された?今から戦闘ルールの変更……出来るか!先ほどルールの確認をしたのだ。私の誇りに反する!となると……仕方ない!)
『ラウラ、私と組めば和食料理を教えよう。知っての通り、私の和食の腕は私たちの中で一番だぞ?一番頼りになるシャルロットだって和食は試行錯誤の最中だ。どうだ?品目は味ご飯、味噌汁の二品だ!』
『むむっ……乗った!』
『ではラウラさん!頑張りましょう!』
『いや、すまない。事情が変わった』
『なっ、何ですって!?……なるほど』
(箒さんが交渉をした、それ以外考えられませんわ)
「お前ら何してる?……まぁ、三人でバトロワだもんな。色々やってるのは分かるけど。そら、そろそろ上空に上がれ。場所もあまり余ってないんだから」
(どうします、どうします。落ち着きなさい……何か送り物では駄目、ラウラさんにはお金に余裕はありますし。次に何かあった時は協力することを約束する……?不確定要素が多くて乗ってはくれないでしょうし。スキルの伝授?淑女の作法?興味があまりあるとは思えません……料理?まだ付け焼きの刃。教えれるほどのスキルは無い……このままでは……このままでは!)
「それじゃ、始めるぞ。3、2、1」
(私はこんな所では負けない!立派な両親の元に生まれた、誇り高きセシリア・オルコット!負けては、負けてはいられないのです!……そ、そうですわ。淑女の作法、昔からお母様に教えてもらった振る舞い。これに賭けますわ!)
セシリアはラウラの眼を見て
『ラウラさん、淑女の作法に興味はありませんか?』
『無い。私は軍人だ』
予想通り、セシリアはそう思ってから。
『一夏さんは、落ち着いている人を好む傾向がありますわ。どうです?』
ゆっくりと手を差し伸べて、絶妙な角度で首を傾け
『私と、一緒に学びませんか?淑女、いえ、乙女の作法を』
にっこりを微笑んだ。ラウラは微笑みに見惚れて口をポカンと開けた。箒も同様であった。
「0、試合開始!」
一瞬だが、確実に何かに圧倒された己を奮い立たせるように箒は自分に声をぶつける。
「い、行くぞラウラ!……ラウラ?」
「そ、その……うーん……」
「ラウラ!何なら焼き魚も__」
「軍人としての立派な振る舞いも良いと思います。ですが、女性としての柔らかい仕草、落ち着いたたたずまい、それらを学ぶ機会は中々あるとは思えません。いつものラウラさんと違う一面を見せればあるいは」
「そ、そうか?」
「悪魔のささやきだ!だまされるな!!更に肉じゃがも加えていい!」
「さあ、私の手をお取りください。武芸だけで無い、他の世界、他の視点もいいものですわ。優雅で、華やかに」
「そ、そうだな!箒!すまない!」
「そ、そんな……ま__」
「お前ら本当にゲスいな」
「でも、気持ちは分かるよ。僕は。僕だって同じ状況ならこれぐらいすると思う」
「シャルならもっとゲスいこ__」
「怒るよ?」
「ごめんなさい」
そしてラウラとセシリアは箒にライフルとグレネードを向ける。二体一と圧倒的不利な状況。それでも、箒は二振りの刀を構える。
「たとえ不利だとしても!私は引かない!」
「その心意気、買いましたわ!」
「遠慮はしないが!」
およそ六分後、箒は墜落した。この中で一番IS登場歴が短い割には頑張ったと言える。
「やりましたわ!」
「無論だ!」
「くっ!無念だ……」
箒は座り込みながら顔を俯けていた。対照的にラウラとセシリアは握手をして万歳した。
「まっ、どんまい」
自販機から買ったラムネ(缶)を投げて箒にパスをした。いつもの訓練時間に比べればとても短いけど、でも何かを賭けた試合ってのは精神力を削る。俺はあまり賭け試合は好きじゃない。
「ああ、ありがとう。希」
さらにシャルが三人分のタオルをそれぞれに渡す。相変わらずである。それぞれ感謝しながらタオルで体を拭いていく。正直ラウラ以外目に毒なので彼女らの反対側を向いて座り込んだ。
「勝つ日もあれば負ける日もあるさ。それと、セシリア。やっぱり変わったな」
「何がでしょう?」
「笑みがさらに柔らかくなった気がするぞ」
何と言うか、シャルに近づいた気がしたような。でも何か違うような。それに対してセシリアは
「多分、それは希さんのおかげです。父上が立派だったとかそうではなく、父上は私の事を立派に育てようとしてくれたのです。だから、立派に育とうとより思ったのですわ」
「なるほどな。頑張れ」
「はい」
落ち着いた笑みだった。そう、これこそ淑女?というべきなのだろうか。っと、忘れてた。
「そうだ、箒。忘れてた」
「何だ?」
平気そうな顔の箒。もう切り替えた、そんな顔をしてるけど実際には違うだろう。
「ほらよ」
ピシッと紙切れを一枚投げた。慌てて箒が取ると
「こっ、これは……ウォーターランドの!?」
「「なっ!?」」
先ほどメールをした所、用事が出来ていらなくなった人がいるらしい。二枚のうち一枚を購入した。
「この際だからさ。日ごろにお前らには世話になってるから。セシリアには狙撃、箒は剣術、ラウラには実戦の戦闘方法とか。三人とも金は要らん。奢りだ。せいぜい楽しんで来い」
「確かに希さんにレクチャーをしてはいますが、お互い様です。先ほどチェルシーとそういったではありませんか」
「私も料理を教えてくれたりしている」
「私たちの方が受けているものが大きいぞ」
まあ大好きな相手についての恋愛相談してるわけだしね。比重は大きいか。
「まっ、そうかもしれないけど。それならお前たちが俺に返そうとしてくれればいいさ。これは親切の押し売りみたいなもんだから。いつか勝手に取り立てさせてもらうから。ほら、さっさと明日の準備をして来い」
それに、今の俺にとっては訓練……強くなるってのは大きな比重を占めている。だから、これでいい。三人はありがとうと礼を言ってからロッカールームへ駆けて行った。それを見送ってから、シャルがはぁっとため息をついて
「希は、本当に……」
「良い人に見えるでしょ?」
「ううん、良い人、だよ」
「善人ってわけじゃないんだよなぁ」
善人ってわけじゃないんだよな。一夏みたいな。でもシャルは笑って
「希はね、確かに一夏みたいに下心なく動ける善人・聖人じゃないかもしれない。でも、そうしたことに悩みながら、でも結局みんなを手助けしちゃう人間味あふれる所が希のいいところだから」
「……ありがとな。本当に。よし、訓練するか」
「うんっ」
そうだよな、うん。俺は悪い奴じゃないし、一夏と比較なんかしちゃいかん。
さて、そう一件落着と思ったら__
ダンッ!!
ロッカールームの扉が開いてきて制服姿の鈴が飛び込んできた。訓練するつもりじゃないってことだ。まあ扉をダンッて開けてきた時点でそりゃ訓練する気じゃないってのはねぇ。
「希!!どういうことよ!!今日はあたしの味方なんでしょうが!!」
「すまんが命には代えられんのだな」
「アンタだってわかってるでしょうが!!アタシがあいつらとプール行くと不利って!!不利って!不利って……」
おお、現実をちゃんと語った。でもだんだんとしぼんでいくと申し訳なさが出てくる。まあ、全部がとは言わないけど8割俺が悪いし。
「あーもう、俺の事情も分かってくれ。その代わり今度何かボーナスチャンスやるから」
「……別にいいわよ。アンタにはもうあんまり迷惑かけれないから。アンタにはアンタのやることがある。そうでしょ?」
そう言って鈴はシャルをチラリと見た。ああ、こいつの成長ぶりに涙が出てくる。
「鈴……本当に立派になって……俺は__」
嬉しいとか続けようとしたが、さらに踏み込んできて威圧してくる。
「でもね、それとこれとは別よ!鬱憤がたまってるの。ストレスが溜まってるとも言うわね。今から吹っ飛ばしてやるわ!そこで待ってなさい!!」
バタリと扉が閉じられた。一分二分もすれば着替えて出てくるだろう。
「はぁ、全く。厄日だなぁ」
「大変そうだけど、頑張ってね!」
「はいはい」
まあ、そんな日もあるだろう。
P.S. 体が色々痛かったけど終わった直後にシャルのマッサージで癒されましたまる
鈴が余計怒った気がするけど
さらにP.S. 蘭の分もチケット取ってやればよかったと後から後悔した
セシリアが段々と成長してます。
さて、どんなふうになっていきますか