IS学園で非日常   作:和希

46 / 50
42話 閑話

「せいっ!」

 

 

 現在箒は一夏と組んで希、シャルロットペアと戦っていた。二人の連携と相性はいつものメンバーの中で最も手堅い。息の合いやすさなら希と一夏がこれを少し上回ってるか? というレベルだが、遠中近距離全て(そこそこ)こなせる希とは言え、相方が刀一本の脳筋機体もとい玄人機体ではどうしても厳しいものがある。

 希とシャルロットのペアの戦術は『相手に合わせて』である。総合力が高い二機だから出来る戦法で、二人で接近戦もいいし遠距離でちまちまもできる。こまめに前衛後衛に切り替えてもいい。これがたまらなく面倒な組み合わせである。セシリアは遠距離だけだし、ラウラのAICが一番効果を発揮するのは近距離。鈴の衝撃砲は中距離向きで、基本武装は近距離だか近中距離機体。箒は機体性能の高さでほぼ全部こなせると言えないこともないが、箒自身が近距離戦闘人間だ。いつものメンバーで総合力が高い二人が組むと本当に厄介なのだ。セシリアと鈴が組んだりする場合は、セシリア後衛、鈴前衛と戦法が固定化してきて対策が取られやすい。

 ちなみに今は希が前衛をしつつ、シャルロットが後衛をしている。普段この二人のコンビを相手にする場合は引き打ち上等だが、新装備のテストのために希は前衛をしていた。

 

 

「っく! これまた面倒な!」

「意外と難しいんだぞ!」

 

 

 バックパック、阿修羅。自由自在に動く四本のサブアームと、取ってつけた顔のような武装が二つ。希の頭を守るように配置されていて、顔の舌部分は鞭のようになっている。近距離手数戦に特化したタイプだ。ISのサポートがあるとはいえ、四本の腕が増え、顔が二つ? 追加されているので扱いは難しい面がある。

 

 

「これでっ!」

 

 

 箒の上からの振り下ろし二本を顔(のような武装)からの鞭二本で迎撃。さらに足蹴

りからの小型ビームサーベルをサブアームで弾く。そしてすぐさま自分の腕の突きとサイドーアムの同時攻撃。上体を逸らして回避するが、

 

 

「しまった!?」

 

 

 ワイヤーをやっとのタイミングでひっかける。

 ちなみに希はこれを使うのに神経を削っている。別に痛みがどうとかではない。相手に対する痛覚という面でみればアサルトライフルやらショットガンのがよっぽど痛みが上だ(それでも絶対防御によりかるく小突かれるレベルである)。だが以前に箒と戦った時、絶好の機会でワイヤーを乱射。その時にミスったからめ方をしていまい、胸を強調したりするあられもない姿にしてしまった事がある。すぐに立ち直って解除してごめんなさいすればよかったのに、彼はついつい注目してしまい、箒に「ば、馬鹿者! どこを見ている!」と涙目で言われた直後にチームを組んでいたシャルロットに追い回され、箒と同じチームだった一夏が「今のうちにほどくぞ!」

 後は惨劇だった。希がシャルロットに追い回されてる最中に一夏はワイヤーをほどこうとし、必然のようにラッキースケベを起こしたら怒ったセシリア、ラウラ、そして特に鈴(自分には出来ないからだろう)が乱入。そこからさらに運が悪く周りの訓練機も巻き込んだ大乱闘に発展。教師が出てきて全員でごめんなさいする羽目に陥った。さらに言えば希は土下座して箒にごめんなさいした上に高級菓子を奢ることになった。さらにアフターサービスで一夏に対する助言を与えたため十分に許された。今でもそのことはタブーだが。

 

 

「ほら! 一気に行くぞ!」

 

 

 箒は確かに強かったが、勝負は時の運でもある。今まで一撃離脱戦法を繰り返していたが捕まったことにより接近戦に突入。手数に押され箒は接近戦で初めて希に敗北した。

 

 

 

 

「っく! ふがいない!」

「仕方ないって。箒は確かに強いけど、今まで腕が六本の敵とは戦った事ないだろ?」

 

 

 顔も二つつけてあるし。箒の機体は至近距離だと射撃武器が無い。刀を振ったりしないと攻撃が発動しないからだ。鈴とかラウラは斬りあいしてる最中でも衝撃砲やらワイヤーやらに注意しないといけないけど(と言うかラウラはAICを)、箒に対してなら各所に仕込まれた小型ビームサーベルに注意するだけでいい。それでも砲撃を混ぜた接近戦で勝てたことは無かったけど。

 

 

「それでもふがいないと言うのだ。自分の長所で負けるとは」

 

 

 でもなぁ、あのパックは接近戦殺しのためのバックパックなんだけど。ここの所次々とバックパックがロールアウトされてるので色々と使っている所だ。研究所でもかなり盛んになってきていて、AIC、衝撃砲、ビットなどのパックも到着している。特にビットのパックは俺が大好きな機体を模しており、天帝パックと呼ばれてる。

 

 

「でも希、さっきのバックパック機動性とかが悪いね」

 

 

 シャルロットが欠点を指摘してくる。まあねと頷きながら

 

 

「サイドアームとか意外と重い上にブースターを追加してるわけじゃないし。銃とかも一応使えるけど、それぐらいならバックパック外して装甲とか武装ガン積みした方がいいしねぇ」

 

 

 サイドアームは蛇型のアームに六本の指を付けたもので、剣とかを振り回すのなら自在に動いて翻弄しやすいけど銃を撃つのには関節が多すぎて向いていないタイプだ。せっかくの豊富な武装も俺の両手にしか展開出来ないようなもんだし。体にくっつけるタイプの爆発装甲とか射出ワイヤーとかはいけるけど。

 

 

「次のテストはなんだ?」

 

 

 一夏がポカリを持って聞いてくる。

 

 

「あー、つぎは天帝パックだな」

「どうして英語じゃないんだ?」

「まだ微妙に揉めてるようで。名前かぶりまでさせたら訴えられるかもって開発者の人たちが言ってた」

「お前、フルブでもその機体使ってたよな」

「当然」

 

 

 フゥーッハッハハハハ!! などの高笑いや、正義と信じ、分からぬと(ry)から続く数々の名言を生み出した破滅主義者。そして最終話とその前の話だけでの圧倒的存在感。種死の時の救いとはなんだのセリフもまじカッコイイ。例え人と人が粒子を通じて対話出来そうな世界でも、彼は真っ直ぐ滅びの道へ突き進みそうな所がマジカッコイイ。

 あ、もし敵として会ったなら、お前の事はどうでもいいから素直に殺されろ! それが世界のためだ! って思うね。一緒に巻き込まれて死ぬ趣味はない。ブレないところがいいんであってね。

 

 

「フルブって何?」

 

 

 シャルが当然の疑問を持つ。フルブと言うのはガンナムエクストリームバーサスフルブーストと呼ばれるゲームの略称だ。ちなみに家庭用しかやった事はない。アーケードはなんか敷居が高そう。良くわからいけど一回戦うのに100円かかる(らしい)のも中学生には厳しいものに思えた。今? 金なら一日中アーケードやれるけど?

 

 

「日本で最も有名なロボアニメ、ガンナムの対戦ゲーム。結構面白いよ」

「へぇー」

 

 

 ちなみに、この操作方法でISのゲームを作ろうとしたらしいが、ISは基本的に飛んでるので違う操作方法になった。シャルは自身の情報端末を操作して

 

 

「へぇー、面白そうだね」

「うちにあるし、今度来るか?」

 

 

 少し緊張しながら言うと、ぱぁっと笑顔になって

 

 

「うん! 行く!」

「へぇー、じゃあ俺も……ジョークジョーク」

 

 

 無言で睨み付けると両手を上げた。こいつだって少しは空気が読める。

 

 

「にしても、しばらくさわってないなぁ、ゲーム」

「お前意外と戦闘狂だもんな。このごろISばっかだよな」

「以外とは思わないが」

 

 

 一夏の俺に対しての発言に箒が追い打ちをかける。

 

 

「の、希は体を動かすことが好きなだけだよ!」

 

 

 シャルがかばってくれ……かばってるのだろうか。

 

 

「自覚はある。何だかんだで命がけの時も楽しんでたし」

 

 

 死ぬ寸前になったら馬鹿な事するんじゃなかったって後悔するのかもしれないけど。今まで命がかかってた場面はそこそこあったけど、どれも確かな高揚感があった。

 

 

「と、ともかく!希は優しいからいいの!」

 

 

 何がいいのかよくわからないけどまあいいや。

 

 

「よし、じゃあ次の奴テストするか」

 

 

 アリーナで慣らしていたセシリアに通信をかける。

 

 

「おーい、行けるか?」

「ええ、行けますわ」

「うし」

 

 

 ISを展開。バックパックを天帝パック--11基のドラグーンもといビットを搭載したパック--に切り替える。小型ビームライフルと四発の小型ミサイルを搭載したビットが8、大型ビームライフルと8発の小型ミサイルを内蔵したビットが3。セシリアのよりビット自体の性能は上……だけどBT機能はついていない。と言うより、BT機能を削除したからこそセシリアのビットより性能は上と言える。BT兵器はもう作れてるけど、ビットに内蔵できるほど小型化はできていない。小型ミサイルとかはBT機能を付けるまでのありあわせらしい。と言うかテストか。

 

 

「うし、行くぞ」

「慣らしはしなくていいのですか?」

「向こうで散々練習した。もっとも好きなパックの一つ」

「思う存分戦えますわね」

「ああ、楽しくなりそうだ」

 

 

 

 

結果は俺の勝ちだった。それも僅差ではなく、10回やったら8、9回勝ちそうなぐらいの。

 

 

「箒さんの気持ちが分かりますわ……」

 

 

 何せIS学園で4か月……その前の期間も含めてブルーティアーズを7カ月操作してるのに、一カ月ばかりの俺に負けたからだろう。性能自体はこっちのが上とは言え。第三世代初期(しかも力を発揮しきれていない)と第四世代に片足突っ込めそうな機体(誰にでも扱いやすい機体)の差が出たと言える。

 

 

「うーん、すっげえ馴染む」

 

 

 さっきのサイドアームもそうだったけど、ビットの操作もすごく上達した。明らかに違うと分かったのは福音の前と後ろだ。福音の前の時もビットのみとかサイドアームのみで操作テストをしたことがある。それに比べ性能も上がってるのは分かる。でもそれを抜きにして自分のそれらを扱う力が強まっているのが分かる。

 

 

「ビットやサイドアームなどの人間にはない物を扱うのは難しいのですが……希さんはそうしたのが得意なようですね」

「うん……」

 

 

 でも、何か良くない気がする。……なんでだろうな、強くなってるのに。自分が何かに片足を踏み出してるような……。このごろよく思うようになってきた。

 

 

「ほら、セシリア。まあさっきのは仕方ないって」

「ありがとうございます」

 

 

 一夏からセシリアにスポドリの差し入れ。ちなみに、さっきの戦いの勝ち要因として。

 まずビットの性能差。俺のとセシリアのは小型のビットのビームの威力は同じ。ミサイルはこっちのが優位。しかも戻ってこれば補給できる。そして速度も機動性も飛んでいられる時間もこっちのが優位。大型ビットは言わずもがな有利。そして人工知能などのサポートのおかげで止まらずに射撃が可能。直接操作するビットを二、三個にしてそれ以外を機械に任せる方法だ。セシリアは善戦したと間違いなく言える。でも『モビルスーツの性能の差が決定的(ry』と言った人もNTとは言え初心者が乗ったばかりのガンナムに敗走してたし、現実でも一世代の戦闘機の差はかなりの溝がある。

 向こうのビットの二倍以上あり、足を止めずに撃て、得意の狙撃も半分封じられた状況は相性が悪すぎた。こっちは100%とは言えないでもビットの性能を60%~70%は引き出していた。逆に、こう言ってはなんだがセシリアはBT兵器を使えていない。全体の性能の10%~20%使えているかどうかなのだ。しょうがなかったのだ。

 狙撃をしようとしたらビームどころかミサイルまでも飛んでくるし、ビットで同時多数を迎撃しようにも足が止まる。足が止まったらこっちの攻撃が当たる。と言うかビットの性能が負けている。なら接近戦しようとしたら武装の面で論外だし(セシリアはナイフしか持ってない)逃げようとすれば動いて射撃する羽目になるのでビットの命中率が格段に落ちる。なら多数のビットを抱えている俺の機体にレーザーを乱射させて燃料切れを狙えるかと言えば、それを防ぐための小型ミサイルだ。レーザーに比べ威力が弱いけれど誘導するし、弾を補充する事も出来る。

 一番最初、セシリアと決闘した時。あれをさらに酷くしたような試合だった。俺一人からの重火力でなく、全方位からの火力投射。

 

 

「正直、今まで見た中で最も卑劣なバックパックだと思ったぞ」

「そう思う」

 

 

 こうした武器がロボット物のラスボスあたりに搭載されてる理由が良くわかった。相手に絶望感を与えるのに最適なのだ。その性能が。あと他の理由としてお約束の面があるだろうけど。さらに言えば見栄えもあるのかな。

 

 

「さて、ほかにもあるけど……さすがに疲れたな。休憩するか」

 

 

 同時に空中投影型ディスプレイを展開。さっきまで使ってた武装の感想を書いていく。うちの博士がマジ有能なのでレポート提出とかはほんとに少ない。反応速度がついてこれてるかとかそうした感覚を伝えればいいと言ってくれてる。

 

 

「適当に見えて意外とマメだよな、ほんと」

「きっちりやるべき事やっとくから意外な場所で適当にやれるんだよ」

 

 

 全部適当だったらただのダメ人間だろうが。やるべき事をやりつつ他の場所を適当にするから変人と呼ばれるのだ。

 

 

「はぁー、希の武装見てると本国との距離の問題が意外とあるって思うね。僕も色々と試したいなぁ」

「希さんは週一以上のペースで調整を施してますものね。武装も次々と更新されてますし……。私もこのごろ二丁拳銃なども考えていますが、まずBT兵器を出来るようにしないといけませんし」

「私のもだな。機体性能は凄いと思うが、武装がずっと同じだ。姉さんは極めろと言いたいのだろうが」

「楽しいけれどさすがに多すぎて困ってる。っていうかお前ら俺の事言えないだろ。お前らも戦うことを楽しんでるじゃん」

 

 

 当然と言えば当然か。国家代表を担おうとする(かもしれない)奴らが戦闘嫌いの訳ない。いくら絶対防御があるとはいえ実弾やらを雨あられのように降らしているのだ。結構怖いと思う。好きと思わなければ上達しないと思う。

「狙い撃つ瞬間、とても高揚しますわ」

 

 

 なるほどねぇ。

 

 

「この子、ラファールリヴァイヴがね、空を飛ぶのが好き……そんな風に感じるんだ。そして、僕自身もパイルバンカー当てる瞬間がとてもね」

 

 

 ニコッて微笑みながら言われても……前半だけならいい感じなのに。後半で前半部分が台無し……いや、そこもいい!

 

 

「私もそうだな。昔は違ったが、今はこうした武の道もいいものだと思う」

「俺はスポーツの感覚だな。楽しいと思うぞ」

 

 

 美少女に囲まれて年中いちゃついてりゃ楽しいだろうよ、クソが。嘘です、俺が一夏の立場なら胃潰瘍で倒れます。まあとにかく、このように戦闘を楽しむ心もとい向上心溢れる人が多い。国家代表の集まりなんてこんなもんだ。

 

 

 「とまあ確かに自分でも戦闘狂って思うけど、お前たちも似たようなもんだから。な?」

 

 

 いやーな視線を向けられた。うっは、ご褒美……Mじゃ無かったわ俺。ちなみにシャルもちょっとジト目ってのがねぇ。

 

 

 

「それで、いつ行ってもいいの?」

「あー……明日とか、どうかな?」

「あ、明日!? ……うん、大丈夫!」

 こうして日程が決まった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。