インフィニット・ストラトス~深緑の狂犬~ 作:疾風海軍陸戦隊
学園長の話が終わり私は部屋を出て、ある所に向かった。その場所は保健室。一夏が寝ている場所だ。本当はすぐに部屋に戻りシャワーとか浴びたかったのだが、さすがに見舞いもしないのはどうかと思い部屋へ帰る前に一夏の様子を見ようと思ったのだ。
すると、
「あれ?清美じゃない」
「ああ、鈴音。どうも」
と、そこへ偶然、鈴音に会うのだった
「一夏のお見舞い?」
「まあね。鈴音は行って来たの?」
「うん。さっきね。一夏の奴、起きているわよ」
「そう・・・・・・・で、どう、一夏とは?」
「うん。一応は仲直りできたけど、でもあいつ最後の最後まで私の気持ちに気が付かなかったわ・・・・」
「そうか・・・・」
「でも、私は後悔してないわ。だって全力であいつに自分の想いをぶつけたんだから、今はそれでいいわ」
「そう・・・・・今はね。いつか気付いてくれるといいな鈴音」
「ええ、絶対にあいつに私の本当の気持ちを気付かせるんだから」
「そう、応援するわ」
と、そう言い清美と鈴音は笑いあう。
「それじゃあ、私はそろそろ行くからね」
「ええ、じゃあね鈴音」
と、私は鈴音と別れて、一夏のいる保健室へと向かうのであった。
一方、一夏は・・・・・
「あれ?ここはどこだ?」
俺は今。ISを着けずにに空に浮いている。下を見るとそこは南国らしき島の風景が見える。確か俺は保健室にいたはずだ。そして見舞いに来てくれた鈴音とセシリアと一緒に話し、そして二人が部屋から出た後、また眠気が襲って寝たんだっけな・・・・・ということはこれは夢なのか?そう俺が思っていると、
「ん?なんの音だ?」
遠くから何かの音が近づいてくる。そして俺の頭上を何かが通り過ぎた。それは深い緑色のした戦闘機だった。しかもその戦闘機は今の時代にあるジョット機ではなく、プロペラ、そうレシプロ機であった。しかもそのレシプロ機は一夏でも知っている戦闘機であった
「あれって・・・・・・零戦か?」
そう、一夏の目に写ったのは日本の代表的な戦闘機である零式艦上戦闘機。通称零戦であった。だが、そこにいたのは零戦だけではなく無数の戦闘機や爆撃機がいて、激しい空中戦を繰り広げていた
「もしかしてこれ・・・・・太平洋戦争か?」
最初、一夏は今見ている夢が大昔に起きた太平洋戦争の出来事かと思っていたが、一夏はすぐに違うとわかった。なぜならゼロ戦が戦っている相手はアメリカの戦闘機ではなくドイツの戦闘機bf109であった。もし太平洋戦争であったなら当時同盟国であったドイツと日本が戦わないはず。だとするとこれは・・・・
「これって・・・・・第三次世界大戦か?」
一夏はふっと昔、面倒を見てくれたおばさんの話を思い出す。第三次世界大戦。今では教科書でも乗るほどの大きな戦争の一つで、その戦争は奇妙な戦争規定があった。それは『第二次世界大戦で使用された平気で戦うこと』。だからあの戦争で使用されていたのは昔に使われていた兵器だけであった。そしてそのおばさんも昔はその戦争に戦闘機のパイロットとして従軍していたらしい。
「なんでこんな夢を見ているんだ?」
激しい空中戦の中無数の飛行機が火に包まれ堕ちていくのを見て、一夏は顔を青ざめる。戦争については教科書やドキュメンタリー番組では見たことがある。だが目の前に見えるのは映像では見られない本物の戦争。悲痛な声がいびき渡り堕ちる飛行機から火に包まれるパイロットの姿が見えた。その光景に一夏は目をそらしたくなる。すると・・・・
『疾風一番!疾風一番!ワレ敵戦闘機隊を発見す!501部隊続け!』
と、少し幼げな声が響くと上空から帯に白い稲妻模様で胴体に赤い二本のストライプ模様のが特徴の零戦がつっこんで、戦闘機を撃ち落とす。そしてそれに続き他の零戦も急降下して次々と敵戦闘機を落としていく。そして一夏は先ほど先頭にいた零戦は相手の弾丸をひらりひらりと華憐に躱しそしてその戦闘機の背後を取りのコックピットを覗くとそこには中学生くらいの黒髪の少年が乗っていた。
「なんで中学生が戦闘機に?」
一夏が驚いていると、今度は別の零戦が現れた。その零戦は先ほどの冷戦のように胴体に一本の赤いストライプがあった。そしてその零戦は先ほど華憐に飛んでいた零戦と違い荒々しい動きだが、それでもどこか奇麗な飛び方をし敵機を撃墜するのが見えた。そして
「戦果!敵戦闘機、一機撃墜!!」
「この声は・・・・」
何処か聞いたことのある声に一夏は先ほど荒々しい動きをするゼロ戦を見る。そして再びその零戦から
「ワレ、突撃す!目標敵戦闘機!我、疾風二番!!」
と声がした瞬間一夏はその零戦を操縦する人の顔を見るのであった
「あれは、杉田!?」
そう、そのコックピットにいたのは自分のクラスメイトである杉田の姿であった。そして次の瞬間一夏の視界が真っ白に輝くのであった
「うっ・・・・・ここは」
一夏が目を覚ますと、そこは先ほど自分がいた保健室であった。外を見るともう日は落ちて暗くなっていた。
「そうか・・・・俺は確か寝ていたんだっけな・・・・・」
と、一夏は今の状況を整理してるとふっと先ほどの夢を思い出す
「なんであんな夢を見たんだ?」
ト一夏は考える。ただの夢にしては現実味がありすぎる。そして先ほど零戦に乗っていたクラスメイトのことを思い出した。
「・・・・・何で杉田が、零戦に乗っていたんだ?」
と、そう疑問に思っていると
「失礼するぞ」
とドアが開き、そこから杉田が入ってくる
「体の具合はどうだ一夏?」
「あ、ああ・・・・この通りどこも問題ねえよ。それよりも杉田その腕・・・・」
と、一夏はギプスをはめている清美の腕を指さすと
「ああ、これか。何ちょっと派手にやりすぎてヒビが入った」
苦笑してそう答える。そして清美は
「それよりもすまなかったな一夏。腹を殴ってよ。だけどあの時なぜ私がお前の腹を殴ったかわかるか?」
「座るぞ」という言葉とともに杉田は椅子に座りそう言うと
「いいや。全然わからないよ。なぜ殴ったんだ?」
とそう訊くと杉田がはぁ~とため息をつき
「お前、そんなこともわからないであの無人機に突撃したのか・・・・あ、例の無人機についてはもう知っているな?」
「ああ、俺が気絶している間のことは鈴音から聞いたよ。で、さっきの言葉なんだけど?」
「ああ、そうだったな。お前を気絶させたのはお前があのままこの場に残ってあいつと戦っていたら完全に命を落としていたということだ」
「え?」
「え?っじゃないだろう。あの時のお前は鈴音の試合でスタミナ切れを起こしていたし。ただでさえ接近戦用の武器しか持っていないうえ経験不足のお前が重火器を装備するISと戦えばどうなるか目に見えている。万が一勝てたとしてもその時は相打ちか、良くて大怪我をする。だから私はあんたを殴って気絶させたんだ。その意味は分かるだろ?」
「あ・・・ああ」
「一夏。お前は確か誰かを守りたいんだよな?」
「ああ」
「そこでお前が大怪我をし、最悪の場合死んだらお前の護る人たちがどんな思いをするのか考えたのか?」
「っ!?」
一夏は清美の言葉に驚く。そんなこと考えてもいなかったからだ
「一夏。誰かを守りたいのならお前自身も含めなきゃだめだ。勇気と無謀っというのは全然違うものだ。ヒーロー気取りでやりたいのなら。それは誰かを守る資格はない。そのことを心の隅に入れておけ」
「すまない・・・・」
と、一夏は申し訳なさそうに言う
「謝るんなら俺じゃなくお前のクラスメイトに言いな。それよりも一夏。話しは変わるが、鈴とはどうなった?」
「え? ああ、一応仲直り(?)は出来たと思う。でもいまだに『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』にタダメシ以外の意味があるような気がしてさ」
まあ、確かに味噌汁の酢豚版じゃあ、わからんよね。ほんと
「なあ、杉田。鈴は何を言いたかったんだ?」
「それは私に聞くことじゃない。直接本人に聞くか、自分で解決するしかない」
「うー。女子の考えってまったく理解できねえ!」
織斑がそんなふうに頭を抱える様は少しだけ面白かった。その姿を見て私は笑みをこぼし
「ふふ・・・お前は少し女心を勉強することだな。じゃあ、一夏。私はこれで」
と、そう言い清美は立ち上がり部屋を出ようとすると
「なあ、杉田」
「ん?何だ一夏?」
一夏が清美を呼び止めると清美が振り返る。
「あ、あのさ……変な事を訊くんだけどさ」
「なに?」
一夏の言葉に清美が首をかしげると一夏が
「あのさ。杉田てさ、戦争に参加したことがあるのか?」
一夏は先ほど夢で見たあの光景を思い出し杉田が戦争に参加していたかどうか訊く
「・・・・・・」
一夏の言葉に清美は目を見開き驚いたような顔をするが、すぐにふっと笑い
「そんなわけないでしょ?なんでそんなこと訊くんだ?」
「あ、いや。違うなら違うでいいんだ。ごめんな。そうだよな。変なこと聞いて悪い」
「そう。じゃあ、またね」
と、そう言い杉田は部屋を出るのであった
「はぁ~びっくりした・・・・」
部屋を出た私は胸を押さえてそう言う。あの時、一夏に『戦争に参加したことがあるのか?』と訊かれたときは心臓が飛び出るかと思った。私は基本的に一夏に自分がタイムスリップした人間だとは一言も言っていない。一夏にそんな疑問を抱かれるほど、私は挙動不審であっただろうか。過去を振り返ってみても、思い当たる節がない。だったらなんで一夏はあんなことを言ったのであろうか?
「・・・・・まあ、わからないことを考えてもしょうがないな・・・・」
と、頭を掻きながら私は自室へ戻る。
「ただいま~」
部屋を開けてそう言った瞬間
「清美さん!大丈夫!?」
と、簪が俺に駆け寄ってそう言う
「え?え?簪?」
俺はいきなりのことに戸惑うと簪は
「清美さん。あの無人機と戦って怪我したって聞いたから・・・・・」
「え?ああ。まあちょっと腕をやったぐらいだけど別に命にかかわるような怪我はしてないよ。ほら、この通り元気だし」
とニコッと笑ってそう言うと簪は
「よかった・・・・・もしかしたら死んじゃうんじゃないかと心配していたんですよ」
「そうか・・・・ごめんね簪。心配かけて」
と、私はルームメイトである簪にそう言うのであった。
「いてて・・・・・あの女。思いっきり殴るなんて・・・・」
一方、箒は自分の部屋で、清美に殴られた頬を抑えてそう言う。だが、箒は清美に殴られ叱られたことを思い出す。そして・・・・
「そう言えば、誰かに殴られて叱られるんなんて、お祖母ちゃん以来だな・・・・・」
と、箒はぽつりとつぶやき祖母である篠ノ之道子のことを思い出す。
自分の祖母は神社の経営者で、私や一夏が遊びに来た時は一緒に遊んでくれたりと本当に優しい人であった。だが私はそんな優しい祖母に思いっきり叱られたことがあった。
あれはまだ私が幼い時、学校で誤って先生の花瓶を割ってしまった時、私は誰かに怒られるのが怖くて他の生徒に擦り付けたことがあった。だが、花瓶を割った人物が私だとバレた時、私は必死に言い訳をして逃れようとした。そして他の大人たちは私が篠ノ之束の妹だからっということで怒ろうとはせず、むしろ私の言い分を通そうとした時、ちょうどそこにいたおばあちゃんに思いっきりビンタされたのを覚えている。周りの大人たちは慌てたがおばあちゃんは
『たとえ有名人の身内だとしても。悪いことをして叱らないのは愚の骨頂。叱るべき時に叱らないと。子供は人として間違った道を歩んでしまう』
と厳しくそう言っていた。今思えば祖母に叱られたのはあの時だけであった。あの時私は祖母のこと嫌いになりそうだったが、今思えば祖母は私の為に怒ってくれたんだと改めて思ったのだ。その祖母も数年前に亡くなった。それ以来私を叱ってくれる人は一人もいなくなり、次第に私は『自分のすることはなんでも正しい』と思いこむようになってしまった。杉田が私を殴るまで・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・」
頬をさすりながら私は一人廊下を歩くのだった。
因みに清美が言っていた『疾風二番』とは疾風機二番機という意味です