インフィニット・ストラトス~深緑の狂犬~   作:疾風海軍陸戦隊

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義姉妹

「コーヒー上がったよ」

 

「すまないな。エルザ」

 

喫茶ラゴスの店内で清美はエルザにコーヒーをもらう因みに喫茶の入り口には『今日は閉店』と書かれていた。そしてエルザは椅子に座り

 

「生きて40年たつけど、まさか、こんなことって本当にあるのね・・・・」

 

「その割には驚かないんだな?」

 

「長生きもすればちょっとやそんなでは驚きはしないわ。例え義姉妹の契りを躱した友人がタイムスリップしてきてもね」

 

「私がタイムスリップしてきたことは疑わないのねエルザ。もしかしたらただのそっくりさんがいたずらでそう言っているだけかもしれないぞ?」

 

「それはないわね。あなたは私の知っている清美よ」

 

「・・・・・・その根拠は?」

 

「お前の瞳だ。お前の瞳には嘘をついている目じゃない。それ以前にその目はあの時の清美そのものだからな。まあ他に理由があるとすれば・・・・・・」

 

そう言いエルザは両方の手のひらを見せ

 

「初めて会った時あんたにつけられた刀傷がさっきから疼いていたからね」

 

「・・・・・悪かったよ。あの時は・・・・」

 

「わかってるわ。あの時は戦争中、しかも互いに敵同士だったしね。仕方のないことさ」

 

と、そう話し合いながらコーヒーを飲む二人。すると清美が

 

「それにしても喫茶『ラゴス』ね・・・・・この店の名前あの島からとったの?」

 

「ええ・・・・私と清美が初めて会ったあの島だからね」

 

「・・・・・で、あの島は?」

 

「まだ見つかっていないわ」

 

「そっか。それならそれでいい。あの島で見たことは私たちだけの胸の内にしまっておかないといけないからね」

 

「そうね・・・・あれだけは絶対に表に出してはいけないものよ・・・・・」

 

何やら意味深いことを話す二人。そしてエルザは

 

「・・・・で、ナカジマからお前が訪問することは聞いているが、訪問理由はなんだい?まさか私に会うだけ来たわけじゃないわよね?」

 

と、じっと見るエルザに清美はふふっと笑い

 

「ああ、お前に会うのもそうだが本命はそれだけじゃない。エルザ。中嶋さんから聞いたのなら話が早い。私がIS学園にいるのは知っておるわよね?」

 

「ええ、無論知っていますわ。学園生活は楽しんでいるのかい?」

 

「ええ、それなりにね・・・・・あ、それと。リネッチや蓮華、そして道子の孫もあの学園にいるわ」

 

「・・・・マジか」

 

「ええ、本気と書いてマジだ」

 

「なんという運命のいたずら」

 

「それは私も思ったよ。で、肝心な話なんだけど。私が一番訊きたいのはその学園にフランスのデュノア社からシャルル・デュノアと言う子が転校してきたんだけど・・・・あの子。あんたの孫でしょ?」

 

「っ!?」

 

そう言うと、エルザは目を丸くし思わず手に取っていたコーヒーカップを落としてしまう

 

「いま・・・なんて・・・・シャルロットがあの学園に?」

 

動揺して言うエルザに清美は

 

「やっぱり…シャルルの正体は女だったか・・・・・体系的にも骨格的にも…なりよりあの子は若き日のあんたにそっくりだったからね。そうだとは思ったが・・・・」

 

清美がコーヒーを飲んでそう言うとエルザは

 

「そうか・・・・あの女狐ね・・・・とうとうシャルロットにまで手を掛けたのか・・・・」

 

「どういうこと?」

 

首をかしげる清美にエルザは

 

「清美。確かにシャルロットは私の孫よ。でも・・・・・」

 

「何か深い訳がありそうね。いいわ話して」

 

そう言うとエルザは静かに語りだす。エルザの孫であるシャルロットはデュノア社の社長の本妻の子ではなく妾の子なのだという。

 

「私から見れば妾の方が本妻だと思っている・・・・・」

 

「どういうこと?」

 

「シャルロットの母。妾の人のことだが、あの子は私の息子が今の本妻と結婚する前から付き合っていた人で互いに愛し合い、結婚まで考えていた・・・・無論私も大賛成だった。しかし・・・・・」

 

とエルザは眉間にしわを寄せる

 

「当時、息子が経営をしていた会社は戦後の不景気で潰れかけていた。その時とある富豪が自分の娘と結婚する代わりに会社を立て直すだけの援助をしてやる。そう言って気負ったのだ。無論私も息子も最初は反対したが、私がナチスに寝返った裏切者だということで耳も貸してもらえず、すぐに息子に自身の娘と結婚するよう詰め寄て来た。息子は会社を捨てて、その妾と駆け落ちしようと計画を立てたが妾の子が『私のことはいいから、あなたは自分の会社と社員を助けてあげて。私は妾でも友人でも構わないから・・・・・』と、自身の幸せを捨てて息子を助け、息子は今の社長夫人と結婚し、その人は要という枠になった。そしてシャルロットが生まれた後はしばらく母のもとで暮らしていたが母が亡くなった後はデュノア社に連れて行かれたらしい」

 

「らしい・・・て、エルザはその子を引き取ろうと思わなかったのか?」

 

「しようとしたさ。しかしな。やはり第三次大戦の話を持ち出された挙句、あの子にはIS適性があるとかで連れて行かれてしまったよ。なんも力もない私は今、こうして日本で喫茶店をしている始末さ。まあ喫茶は昔からの夢だったから別にいいが」

 

悲しげに言うエルザ

 

「私はこれほど自分が情けないと思ったことはないよ。もし、BC部隊が壊滅せずナチスの捕虜となりナチスの兵として戦うことが無ければ、息子も…孫であるシャルロットも辛い思いをしなずに済んだかもしれないか・・・・・」

 

「そうか・・・・」

 

腕を組みそう呟く清美

 

「戦後から40年。確かに世界は平和になり心は豊かにはなったが・・・・・ISの登場によって少しだけゆがんだ平和になっちまったね・・・・清見。あんたから見てこの世界をどう思う?」

 

「そうだな・・・・確かに平和になり豊かになった・・・・・だが、人の心は貧しくなったように見えるね・・・・女尊男卑の世界。こんな世界。戦争で死んだ連中は果たして望んだのだろうか・・・・・・・」

 

と遠目で見る二人。激しい血みどろの戦争を経験した者たちがもし、今の時代を見たらどう思うのであろう。そんなことを二人は考えていた

 

「清美・・・・・」

 

「なんだエルザ」

 

「自分勝手な頼みだと思うが・・・・・・」

 

そう言うとエルザは頭をさげ

 

「私の孫・・・・シャルロットを守ってほしい・・・・今の私じゃあの子を助けることができない・・・だからお願いだ」

 

必死で頭を下げるエルザに清美はゆっくりと立ち上がり

 

「言われるまでもないよ・・・・・姉妹。シャルロットの件。私もできる限りのことはするわ。ただ最終的な決断をするのはあの子、本人だがね」

 

「・・・・・すまない清美」

 

そう言うと清美はコーヒーの代金を置きその店の玄関まで行き

 

「久しぶりに話せてよかったよエルザ・・・・コーヒー美味かったぞ。今度は友達やあんたの孫も連れてくるよ」

 

「・・・ええ、いつでも来てくれ。いつでも開いているから・・・・・清美」

 

エルザの言葉に清美はにこっと微笑店を出るのであった。そして帰るとき清美は近くにあった駄菓子屋でココアシガレットを買い、一本を箱から取り出し、口にくわえる。そしてIS学園につき、校内を歩いて自室の寮へと戻ろうとすると・・・・・

 

「(あれは・・・・・ラウラに織斑先生か?)」

 

向こう側でラウラが織斑先生に何かを訴えかけているのが見えた。清美は盗み聞きするつもりはなかったのだが気の影で二人の会話を聞いていた。話の内容はラウラが織斑先生にドイツに戻り教官職への復帰を希望。しかし、断られ、ラウラは織斑先生もとを去る。そして織斑先生は軽くため息をついた後

 

「門限以内に戻ってきたことは褒めるが、盗み聞きとは感心しないな杉田」

 

「別に盗み聞きするつもりはありませんよ。ただ聞こえただけです」

 

「そうか・・・・で、用事はすんだのか?」

 

「ああ、今のところはな・・・・・・で、織斑先生。一つ訊きたいことがある」

 

「なんだ?」

 

「おおよその話は先ほど聞いたが、なぜラウラはあんなに織斑先生に執着しているんだ?あれはさすがに行き過ぎだと思うんだが?」

 

「…………」

 

織斑先生はしばらく沈黙していたが、やがてラウラとの関係を説明した。それを聞いた清美は

 

「それは織斑先生に責任がある」

 

「なんだと?」

 

鋭い目で見る織斑先生に清美は

 

「あなた。ちゃんとラウラのことを見てやったのか?」

 

「ちゃんと見ていた」

 

「いや、訓練とかそういうのではなく。真っ正面から向き合って彼女のことを見てあげたのかと私は聞いているんだよ」

 

「・・・・・・」

 

「千冬さん。あなたも教師の端くれ、しかもISの教官なら覚えておいたほうがいい。指導する人間はただ指導するだけではなくその教え子にも正面から向き合い互いに理解し合わなければいけないと・・・・・・まあ、これは年寄りからの警告だとでも思ってくれ」

 

そう言うと清美は寮の方に帰って行った。織斑先生はしばらく放心状態であったのだった。

 

 

 

一方、杉田と簪の部屋では簪はネットで何かを調べていた

 

「やっぱり・・・・・・・・」

 

そのネット記事を見て簪は驚いた顔をする

 

「清美さん・・・・・あなたは一体・・・・」

 

簪の見ていた記事には

『第三次世界大戦の英雄たち』

と書かれていてそのうちの一枚の写真には、零戦を背に敬礼をする清美の姿が写っていたのであった

 

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