インフィニット・ストラトス~深緑の狂犬~ 作:疾風海軍陸戦隊
古い友人であり、シャルロットの祖母であるエルザと会った清美は学園に戻っていた。廊下を歩く。すると清美のポケットにしまってある携帯が鳴る。清美は携帯をとると
「もしもし?」
『ああ、曹長。私だよ』
「ああ、中嶋さん。なんか用ですか?」
『ああ、嬉しい知らせが二つある。まず第一に君の紫電改の修理が終わったよ』
「っ!?ほんとですか?」
『ああ、当時の部品集めてレストアするのは大変だったよ。まあでも新品同様に直ったわよ。近々IS学園の格納庫に送るから。後で乗った時の感想送ってね』
「ありがとうございます整備長」
『いいのよ。40年ぶりに楽しめたから』
「それはそれは‥‥で、二つ目は?」
『ああ、シャルロットの件。お膳立ての準備はできたよ』
「・・・・本当ですか?こんな短時間で?」
『結構大変だったけどね。けどデュノア社の社長とは旧友の仲だしね。彼も賛成していたよ。やっぱりここの本心では娘のことを心配してたみたいだよ。エルザの息子だけあって、心優しい、いい父親だ』
「それで、デュノア社長はなんて?」
『さっきもいったろ『賛成する』って。手続きなんかもすでに準備するそうだ。後はシャルロット次第だってさ。だから彼女との交渉は任せたよ先任曹長殿』
「そうか・・・わかった。任せてくれ。お膳立てすまないな」
『いいっていいって、昔のよしみよ。気にしないでね。それじゃあ学園生活楽しんでね』
そう言いうと電話が切れる。そして清美は自室の寮室につき部屋に入り椅子に座ると、ポケットから、ココアシガレット一本を取り出し口にくわえるだが、その表情はどこか寂しそうな表情であった。
「はは・・・・エルザに出会えたのはよかった・・・・だけど」
そう言い清美は鏡に映る自分を見る
「タイムスリップ・・・・・・まさに浦島効果ってやつね。私の知る友人たちは皆、戦死したか年老いたのに対し、私は一人あの頃のまま・・・・・寂しい話ね」
40年後のこの世界では自分の知る知人や友人たちは歳を取っているか、もうこの世にはいない。そう一番の親友であった道子もこの世にはいない
そう清美が思っていると
「清美さん・・・・・」
いつの間にいたのか簪が自分の後ろにいた。まあ、この部屋は簪の部屋でもあるのだからいるのは当然だ
「ん?なんだ簪か・・・・・どうしたんだ?また弐式のデータ調整についてか?」
「ううん。弐式は清美さんが手伝ってくれたおかげで後は組み立てるだけだから・・・・・」
「そうか。じゃあどうかしたのか?そんな真剣な顔をして?」
と、清美はひょうひょうと笑顔でそう言うが簪の表情は無表情だった。その表情を見た清美はいつもの簪とは違うことに気付いた
「・・・・・・どうした簪?」
「清美さん・・・・・・あなたは一体誰なの?」
「誰って・・・・・決まっているじゃないか。私は杉田清美。それ以上でもそれ以下でもないわ。なぜそんなこと訊くんだ?」
清美がそう訊くと簪が一枚のタブレットを取り出し、
「これ・・・・・清美さんだよね?」
「ん?」
清美は簪に渡されたタブレットを見る。そこにはゼロ戦と一緒に多くの搭乗員とともに敬礼した姿が写った清美の写真だった
「これ、40年前の・・・・・第三次世界大戦の頃の写真なんだけど。なんでそんな昔の頃の写真に清美さんが写っているの?それにその人の名前も杉田清美。清美さんと同じ名前だわ」
「他人の空似じゃないかな簪。名前も同姓同名てこともあるだろ?」
「いいえ、この写真に写っているのは間違いなく清美さんよ。それにネットの記録によれば第三次大戦で戦死したと言われる杉田清美曹長は実際は行方不明で、ヨーロッパの大地に彼女の乗った紫電改の残骸はおろか遺体も見つかっていないって記録されている。それに・・・・・」
そう言い簪はタブレットを動かし、一枚の新聞記事を出し
「この紫電改に乗っているの恐らく清美さんだよね?」
そのタブレットに書かれた記事は数か月前。しかも日付は私がタイムスリップした時刻であった。そして表面の記事には『突如現れた旧軍の紫電改!IS学園の孤島にて消える』と書かれており、写真には翼から煙を出す紫電改の写真があった
「この紫電改が現れた直後清美さんが転校してきた。偶然にしては不自然です。清美さん・・・・あなたは本当に何者なの?」
ジーと真剣に清美を見つめる彼女に清美は、少し苦笑した。もう隠し通すことはできない。そう思ったのだろう。そして清美はタブレットを持ち、最初の零戦を背に敬礼している搭乗員の写真に戻し
「・・・・・・ふっ・・・懐かしい。この写真はまだ元号が平成だったころ、訓練を終えて初めての戦場ラバウルに配属されたときの写真だったな・・・・・・疾風隊長とはこの写真を撮った2か月後に会ったんだよな・・・・・」
どこか懐かしむ表情を見た簪は
「じゃあ、杉田さん。やっぱりあなたは・・・・・」
「ああ。私は40年前の時代から来た時空の漂流者さ・・・・・・・びっくりしただろ?」
寂しさの入り混じった表情で言う清美に簪は首を横に振り
「ううん・・・・・たとえ過去から来た人間でも清美さんは清美さんだもの」
「ありがと簪」
「それで清美さん。なんで40年前の時代からこの時代に?」
「私にもわからないわ。仲間を庇って被弾して、自分の死を覚悟していたんだが、気付けばこの時代にいた。私が知っているのはそれだけさ・・・・・・・」
「そう・・・・・で、清美さんこの時代を見てどう思ったの?」
「そうね・・・・・強いて言えば・・・・」
「女尊男卑の時代にがっかりした?」
「・・・・・・・ま、それも一つかな。だけどそれだけじゃないわ。私が最初に思ったのは女尊男卑のことだけじゃないわ・・・・・・私の知人が・・・・・・私の家族がもうほとんど死んでいるという事よ」
清美はこの時代に来たばかりのこと、最初にした行動は知人や戦友がどうなったかの他に自分の家族のことを調べたのだ。前に住んでいた家に行けばもうどこが引っ越した後で、詳しく調べた結果、父も母もすでにこの世にはいなかった。エルザ、中嶋と数少ない知人がいるが清美は事実上一人ぼっちになってしまったのだ
「家族に会いたくても会えない・・・・・知っている友もいない・・・・私はこの時代で・・・・・・一人ぼっちよ」
清美は落ち込んだ表情でそういう。いつも元気な表情でふるまい。軍人でありあまたの激戦を潜り抜けてきた彼女だが心の奥底では寂しさと不安さが募っていた。すると簪は清美の手を握る
「清美さん・・・・そんな…そんな悲しいこと言わないでください!」
「・・・・・・簪?」
「清美さん。あなたは一人じゃない。いいえ決して清美さんを一人になんてさせはしないてさせない!」
力強く言う簪。
「清美さん。清美さんは一人じゃないわ。私がいる!私が友達になってあげる。だからそんな悲しいこと言わないで」
「簪・・・・・そっか・・・・そうだよな・・・お前はこの時代でできた初めての友達だったもんな・・・・ありがとう簪・・・・簪。これからも友達でいてくれるか?」
「うん。もちろんだよ清美さん。私たちは友達よ」
「時空を超えた友達だな・・・・・」
「そうね・・・・・そう思うと清美さんは私より年上になっちゃうわね」
「ふふ・・・そうだな。歳の差64歳だな。不思議な感じだ。だが友達に歳の差なんて関係ないな」
「うん。そうだね。・・・・あ、そろそろアニメが始まる時間だわ」
「おお、もうそんな時間か。今日はアニメスペシャルだったな」
そう言い清美と簪はその後仲良くテレビアニメを見るのであった。例え生きた時代が違っていても、二人の友情は壊れないだろう
そして簪自身もたとえ清美がタイムトラベラーだとしても友だという事には変わらない。そう思うのであった。