リリカルでマジカルな世界に憑依転生した正義の味方(StrikerS編制作検討中) 作:四条小鳩
───端的に今の私、高町なのはの状況を説明しよう。
ここは年末恒例のクリスマスパーティーを開いている両親が営んでいる喫茶店の翠屋で、私はその椅子の一つの上に正座をさせられ親友の一人であるアリサ・バニングスに睨まれていた。
何がどうしてこうなったと思うが、だいたいは私の責任なので甘んじて受け入れるしかない。
「私、前になのはに言ったわよね。一人で抱え込まないでって」
「うん、それはごめんなさい」
魔術も魔導の能力もない彼女を無意味に巻き込みたくなかったのだ。
とはいえ正座は生前も含めて何度もやっていることなので特にどうとも思わないが、やはりこう参加者の目につくところで反省をさせられたら私も精神的にくるものがある。
「じゃあなんでヴォルケンリッターさん達とかのこととか、私に内緒でやってたの?なのはから連絡はないし、急にはやての病室が壊れたって連絡があってすっごく心配してたんだから!!」
「はい、本当にごめんなさい」
セイバーに叱られた時よりも丁寧に土下座をした。
「ありゃまた見事な土下座やな。もしかしてなのははんって土下座に慣れてたり?」
八神はやては感心したように言った。
「ま、まあ」
全くもって不服だが、こういう時に正座するのは慣れている。
「マスターが男の人だった頃、セイバーさんとか凛お姉ちゃんとかによくさせられたよ」
───あ、余計な情報を。
いや確かに彼女たちにはよく叱られたけど、大抵は遠坂のうっかりだったり、事故が原因だったのだ。
「なーのーはー!」
アリサの声が厳しくなった。
「冤罪なのー!!」
私は無慈悲な怒りをぶつけられ思わず悲鳴をあげた。
ようやっと説───アリサのお話から開放されたので、私はいつものようにパーティーの給仕をしている。
事件があったためパーティー用の食事を予想よりもバタバタと用意をする感じになったが、元々
「美味しいな、これ!なのははすげえぞ」
ヴィータは私の用意したローストビーフをもぐもぐと美味しそうに食べていた。その姿はセイバーを彷彿とさせた。
急いだとはいえ手間隙かけて用意したので美味しく食べてくれているのなら何よりだ。
「料理はなのはの趣味だからね。これぐらいなら言ってくれればいつでも振る舞うよ」
「うん、また来るぞ!」
「料理は逃げないから落ち着け、ヴィータ」
シグナムが呆れながらに窘める。
「しかし、なのはは元は男だったのだろう?コックかなにかだったのか?」
といいつつ食事をしている彼女も疑問を投げてきた。
男がプロレベルの料理できるというとそう考えるのも無理はないだろう。
「にゃはは、色々バイトはしたけど残念ながらコックになったことはないよ。料理は勝手に身についたといえばいいかな。義理のお父さんは料理苦手だったし、死ぬ数年前は世界各地をウロウロしてたし、イギリスにいた頃は執事のバイトもしてたりしたからね」
「なるほど」
「そうなの?」
彼女は納得したが今度はフェイトが驚いていた。
「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトっていう北欧の魔術師のお嬢様だけど、紅茶の淹れ方をうるさく言われたよ」
空になった彼女のカップに新しい紅茶を注ぐ。
とまああのビルでの初戦の時からは想像できないほど平和的な光景が店内で繰り広げられている。
これこそが、本来のあるべき姿だったのだろう。
ちなみにようやく機嫌を直したアリサの席にはいつものお茶会のメンバーが、その隣には書の管理プログラムである女性と守護騎士であるヴォルケンリッター達が座っていた。ヴィータが想定以上に食べている気がするが、予め予想していたレベルなので問題はない。
蒐集の主犯格であった闇の書の管理プログラムとヴォルケンリッター達は、管理局側にも大きな落ち度があったために当局からは訴追されずプレシア・テスタロッサと同じように保護観察処分ということに落ち着いた。守護騎士であり続けている彼女たちは今は足が回復し魔導師となったはやてと共に野良魔導師に狙われないように管理者である私や管理局の庇護下の元、生活している。
そしてもうひとつの犯人グループであったグレアム提督はというと…管理局のメンツもあったようであの使い魔達と一緒に引退という名目で定年前に更迭され、地球の何処かで暮らしているらしい。はやての生活を影で支えていたらしく、今もそれは続いていて、定期的に彼女と文通をしているそうだ。
その後はやてによって名前を与えられた管理プログラムことリインフォースと、プレシアのようにアリシアやはやてに魔導師としての教官役をしていないフェイト・テスタロッサの使い魔で、現世で特にすることもなく暇をもてあましていたアルフはうちの店で働くこととなった。彼女たちは美しい女性なので、ただでさえ穴場である店を更に繁盛させるのに一役買っている。
聖杯戦争のように誰も欠けること無く事態を収束させることができ、ホールの騒動を見て私は一人微笑んだ。
「───なのは、幸せ?」
そんな私を見て、いつの間にか近くに来ていたフェイトが尋ねてきた。
「うん、幸せだよ」
私は満面の笑みでそう答えた。
───私はどうアーチャーと異なる『正義の味方』となるべきか、この世界でつかめた気がする。
───そして闇の書事件とクリスマスパーティーが終わり、年を越えてから数週後。
「それ」は突然宝石剣で私の部屋に空間を開けひょっこりと出てきた。
「なんか面白いことでもあった?」
とまたも大変な目にあったのを知っているのか知らないのか呑気に元師匠こと
「改めてこんにちは。なのはこと衛宮士郎の元師匠、遠坂凛。職業はここにはない魔力の使い方をする魔術師よ。彼女をこの世界に連れてきた張本人、と言えばいいかしら」
家族に遠坂が私をこの世界に連れてきてくれた人物として簡単に紹介してから、これからお茶会があるからと月村邸まで案内した。
またも私は不満顔で遠坂をもてなしながら、テラスでいつものメンツの前で自己紹介をする彼女を見る。
ちなみに、月村邸へ向かう途中で年末にあった闇の書事件とアーチャーとの共闘の概要を話すと彼女は…。
「そんなに面白そうなことがあったのになんで私を呼んでくれないのよ」
と愚痴っていたのはスルーした。
魔法使いになってからあかいあくまは頭のネジが一体何本外れてしまったのか。
───まったくもって嘆かわしい。
「はじめまして、八神はやてや。よろしゅうな。なんかお互い声が妙に似てる気がするんやけど、私達、姉妹やったけ?」
彼女たちのお供は、今日は主のお茶会ということで大人しく留守番をしているそうだ。
「はやてちゃん、それは色々な所から怒られるから駄目なの」
すずかやアリサのような電波を受信したはやてに突っ込む。
それは言ってはいけない。
「はやてちゃんね、よろしく。私のことは凛でいいわよ」
「お久しぶりです、凛お姉さん」
「同じくお久しぶりです、凛お姉ちゃん」
「お久しぶりです、凛お姉さん」
「凛お姉ちゃん〜!」
「お久しぶり、アリサちゃんにすずかちゃんにフェイトちゃんにアリシアちゃん。元気にしてた?」
「うん!」
「それは良かったわ」
凛は駆け寄ってきたアリシアを優しく撫でながらすずかやアリサに負けず劣らず優雅に紅茶に口をつけ、にっこりと笑いながら答えた。
「なんや、凛姉さんと皆は顔見知りやったんかい」
「うん、前にちょっと会ってね」
「そう…ね」
「なんや、何かあったのか」
「ううん、なんでもないよ」
PT事件の最後になのはを巡って一方的な痴話喧嘩をした仲ですとはフェイト達は流石に言えなかった。
そんな態度に首を傾げながら、はやてが続ける。
「それにしても凛姉さんはずいぶんスレンダーでかっこいいおばはんやなあ」
いきなりとんでもない地雷を踏み抜いた。
「ちょ!はやてちゃん!?言っていいことと悪いことがあるの!」
「え?」
言った本人はぽかんとしている。
はやては無数にそして闇雲にどこにあるか不明なあかいあくまの地雷原を考え無しにどんどん走り抜いていることに気がついていない。
本当にどういう神経をしているんだ。
「おば…さん……スレン…ダー、ね。はやては面白いこと言うのね」
彼女の前で年齢と体型の話題はまず禁句だ。
───あー…これはぷっちんいっちゃってると背に冷や汗が流れる。
この遠坂という女は『遠坂たるもの常に余裕を持って優雅たれ、敵は周回遅れにしつつ優雅で華麗にぶっ飛ばせ』という家訓を勝手に捻じ曲げた生き方を地で行く人間?なので地球上で怒らせるのが最も怖い一人だと考えている。
怒髪天を衝く怒りを催している遠坂に、彼女の本当の怖さを知らないはやて以外はどうしていいか全員おろおろしていた。
「やめてってば遠坂!はやてちゃんに悪気はないし、すずかちゃんの家を殺人現場にしないで!」
彼女の左腕に刻まれた遠坂の魔術刻印が光り、愛用している殺人兵器クラスの威力のガンドの構えを取ったので慌ててフォローに入る。
あの時の学校での決闘をここでされたらたまったもんじゃない。
「まったくどこの誰かみたいに口が悪い子ね。でもまあいいわ。なのはの紅茶に免じて許してあげる」
ガンドの雨あられで月村邸が悲惨な八神はやて猟奇バラバラ殺人事件現場にならずほっと一息ついた。
どこかの英雄王じゃないんだから、怒りの沸点をもう少し上げてほしい。
「すまんすまん、堪忍な〜」
目上でしかも魔術師としては最高峰である第二魔法の使い手の一人である彼女を前にしてもまったく臆することがないこの少女は、ある意味で大物かもしれない。
「それにしてもはやてちゃんに、この写真の子達、えっとリインフォースにヴォルケンリッターだっけ?しかしまた女の子が増えたわねえ。まーた誑かせたんでしょ。しかも小学生と幼女ばっかにモテてるじゃない。アンタいつからロリコンになったの。ああもしかしてイリヤスフィールの影響?なのはったらフケツ」
ケラケラと笑いながらモテていることを抜きにして有る事無い事を言いだした。
なんてこった。
「それは完全に冤罪なの!」
どこぞの似非神父や外道シスターのような愉悦顔をしながらロリコン疑惑をふっかけてきた遠坂に抗議する。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは私の大切な義理の姉であり、性欲の対象で見るなど以ての外だ。
でもある時、自分がわくわくざぶーんでイリヤに一番ドキドキしたと言っていたことをその時すっかり忘れていた。
「ねえマスター、ロリコンって何ですか?」
「だから、それは…あう」
とっさにアリシアの耳を塞ぎ忘れ、無垢な目で幼子にロリコンの意味を聞かれるなどどんな拷問だと私は思わず涙目になる。
彼が彼女に変わっても、心は硝子だ。
「あ、凛姉さん、やっぱりなのはって生前はハーレム作るタイプやったん?しかもロリコンとは聞き捨てなりませぬなあ」
「そりゃもう、泣かせた女は数知れず、挙げてったらきりがないわね。ちなみにイリヤスフィールってのはなのはの義理の姉で二十歳過ぎても二次性徴を迎えてないエターナルロリよ」
フェイトと同じくホムンクルスだから成長がないという事実をあえて伏せているあたり、なんとも腹黒い。
「ほほう、そりゃいいこと聞きやした」
はやてははやてでお主も悪よのう的な雰囲気を醸し出し、愉悦に浸る二人に居ても立ってもいられないので再度厳重に抗議する。
「だから違うの!というかアリシアちゃんの情操教育に悪い言葉は禁止なの!!」
なんなのだこのコンビは。
愉悦部海鳴支部はいらないので帰ってほしい。
「ああそういえばなのは、遊びに来てたので忘れてたけど明日からちょっと冬木に来ない?大聖杯を解体してそれについてまわったゴタゴタがようやっと終わって皆、待ってるわよ。セイバーとか桜がね」
「えっ?」
うっかりが特技のあかいあくまは、相変わらず唐突なことを言い出した。
ということでまたも駆け足でしたがA's編終了です。
次からは凛の言葉通りとなりますが、なのはこと士郎の生地、冬木にフェイト達と一緒に里帰りして五次鯖と交流するお話を三つほどに分割して投下します。
StrikerS編は反応などを見て書くつもりですが、ほとんど手を付けていないので上記の番外編を数話投降して、別の話を掲載して以降に投下していければと思います。