リリカルでマジカルな世界に憑依転生した正義の味方(StrikerS編制作検討中) 作:四条小鳩
それからたっぷり三十分ほど玄関先で叱られた後、タイミングを見計らって夕飯を温め直してくれた姉の美由希に「今日は災難だったね、なのは。私も昔、遅くなって母さんにひどく叱られたことあったな〜」などと言われながらやっと遅い夕食を済まし、お風呂にも入って今日の出来事を確認しようと、定位置となった自室にある籠のベッドにいるユーノと作戦会議をする。
「まずはあのジュエルシードの回収を邪魔しようとした金髪の女の子についてなんだけど」
ベッドに寝転がってユーノを見ながら喋る。
「───彼女についてはおそらく間違いなくジュエルシードを狙っているだろうね。魔導師からすれば生き物の願望を叶えられる可能性があるジュエルシードは喉から手が出るほど欲しい物だろうし」
万能の願望器や根源に至る術を求める魔術師のように、そこら辺の思考は魔導師も同じようだ。
───となるとまずは、ジュエルシードと呼ばれるロストロギアの重要性について十分に知る必要があるという結論に至った。少なくてもこちらも含めて三勢力がいるようなので、情報の整理をする意味も込めて。
「ユーノ君、ジュエルシードについてもう少し詳しく教えてもらえないかな?」
「えっと僕達の世界には古代に高度な魔法文明があったと考えられていて、その時代に作られたと考えられる遺物───それがロストロギア、君達の世界の言葉でいうオーパーツというものがあるんだ。そしてジュエルシードはその中でも最も危険な部類に入る遺物だよ。僕が遺跡で発掘した時は一個だったんだけど、巻き込まれた輸送船の事故でこの世界の各地、特に海鳴を中心に散らばったんだ。散らばった一個一個が純粋な魔力を内包した結晶体で、使用した生き物の願望を叶えてくれるんだよ。作られた本来の目的とか使い道とかは結局調査する前にバラバラになっちゃったからよくわからない」
───使用した生き物の願望を叶える、か。
転生した先でもそのような物のことで奔走することになろうとは…。
「まるで聖杯…」
いろいろと考えていたら思わず言葉にしてしまった。
「聖杯…?」
「ああ、前に私が聖杯戦争という戦いに巻き込まれたっていうことを話したでしょ?それはなんでも願いを叶えるって物だったの。それこそ、ちゃんとしていてそれなりの状態の物なら世界平和とかとてつもないものでも」
「なるほど。聞けば聞くほど、魔術というのは奥深いんだね」
「でも、その肝心の聖杯が使い物にならなかったんだけどね…」
「そうなんだ」
言葉を濁した自分にあえて深入りはしないユーノの絶妙な気遣いがありがたかった。
そもそも、聖杯を得るために七組の魔術師とサーヴァント同士で血で血を洗う抗争を経なければならない点や、そして残ったマスターが最後のサーヴァントを殺すことで魔術師にとって悲願である第三魔法という根源に至る道を作るという時点でそんなものは使いたくないし、大聖杯の中身がこの世全ての悪、アンリ・マユで汚染されていて、どんな願いでも厄災という形でしかしか実現できないのであれば尚更だ。
昔の気持ちを切り替えて懸案事項を整理していく。
「それとあの仮面の二人組はなんだったんだろ…。ユーノ君の見立ては?」
もう一つの懸念は怒られる原因となったあの二人組だ。
あの少女のようにジュエルシードを狙っているのだろうか。となると少女よりどちらかというとあの二人組のほうが厄介だ。あちらは本職なようだから、こちらもそれなりの覚悟や対応策を練ってから対応しなければならない。
「強固な結界が使えるかなり訓練された魔導師、もしくは変身魔法を使ったりできる人の形を取れる高度なレベルの使い魔、というのはなんとなくわかったけど…それ以上は。ジュエルシードを狙っている可能性は否定出来ないね」
戦いにおいて情報は勝敗を左右するが、まだ情報が断片的なのは仕方ない。
だがどういう目的なのかが不明な以上、推測を重ねすぎるのも意味はないし無駄なのでとりあえず彼らについて考えることはやめることにした。
「そっかあ。見た感じ体術は普通だったから体をバリバリ動かすタイプではなさそうだね。でもなーんか嫌な予感がするんだよね…。あの人達とはどこかでまた会いそう」
子供としては化け物じみた体術を使いこなしたり、戦闘技術があるなのは基準で考えればトップクラスの魔導師であれど体術は普通なのだが、ユーノはよく空気が読めるのであえて何も言わない。
「ともかく、今は一個一個ジュエルシードを回収していくしかないよ」
「だよねえ…」
布団の上で悩み事がたくさんありぐでーっとしながら、またあの女の子に会えないかなあとぼんやりと思いを馳せる。
目的が曖昧な仮面の連中はともかく、彼女は目的は今の所はっきりしている。ちゃんと普通にお話をして集める間だけでも協定を結べればジュエルシード集めはすぐに終わるだろうし、協力すれば同時に見つかったりした時にお互いの負担が減らせるし、無駄な争いも避けられる。
「とはいえ、数日後から家にいないのがなあ」
ゴロンと寝返りをうって部屋にあるカレンダーを見つめてため息をつく。
聖杯戦争のようにジュエルシード集めは命を狙われたり参加することに強制力がないとはいえ、
「たしか家族旅行だっけ?」
そうユーノに言われて、またため息をつく。
「うん」
数日後の連休には、すずかやアリサ、はやてを誘ってこの時期の高町家の恒例行事である温泉街へ行くことになっている。ジュエルシード集めで忙しいタイミングで家族旅行とは本当についてないなあと思いつつ、でも女子小学生一人で留守番なんか許してもらえるわけはないし…と思い仕方なくついていくことにした。
───だがその先でまたもジュエルシードにまつわる事件に巻き込まれるとは、この時の私は思いもしなかった。
───数日後。
私達は車で毎年恒例の家族旅行のために温泉街へ向かっている。ちなみに今年はメンバーがいつもよりも賑やかだったりする。
「ユーノ・スクライア君だっけ、今日、明日とよろしく頼むよ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。一緒に連れて行ってもらってありがとうございます」
「最近日本へ帰ってきた帰国子女なんだってね。せっかくの機会だから日本文化を楽しんでもらえると嬉しいよ」
ユーノがハンドルを握る父、士郎と話している。
フェレットから人間の姿に戻れるまで回復した彼は今回の旅行には少年の姿でアリサの親戚として同行してもらうことにした。ちなみにフェレットとしての彼はアリサと口裏を合わせて彼女の両親に面倒を見てもらっているという設定にした。彼が動物と人間のどちらの姿も取れることができたからこその隠匿だ。
聖杯戦争中にセイバーを居候させる時よりもあっさり話ができてよかった。いつもはポケットに入れているレイジングハートはいつでも使えるようにネックレス状の入れ物を投影で作ってそこに入れておくことにした。
───流石に風呂場で変身することはないと思うけど、いつどこでジュエルシードが出るかわからないしね。
「いや〜、うちまでご相伴になってしまってありがとうございます」
私の隣りに座るはやてが礼を言う。
「なんのなんの。なのはから話は聞いてるし、せっかくなら大勢のほうが楽しいからね」
「うち、なかなか遠出なんかできへんので嬉しいです」
「二日間よろしく頼むよ」
助手席に座る兄も挨拶する。
「こちらこそよろしくお願いしますわ、恭也兄ちゃん」
「よろしくね、はやてちゃん」
「こちらこそです、桃子お母さん」
ちなみに後ろを走る車にはファリンが運転する車がすずか達をのせている。
一同が今日の宿に到着して、一休みしてから向かった温泉でおっぱい馬鹿魔神ことはやてが大暴れしたのをなんとか沈めて、湯上がりに一休みでもしようかと考えていたら事態は急変した。
「ちょっと、そこのお嬢さん達」
「ん?」
浴衣を着た女性が話しかけてきた。
しかし、なんだか雰囲気が穏やかではない。風呂場で騒いでしまったので一言言いに来たのだろうか。
「あの、どちら様でしょうか…?」
すずかがおどおどしながら場を代表して目の前の女性に問いかけた。
「そこの栗色のガキ、この前はうちの子が世話になったみたいだね」
───え、私?
いきなり名指しである。
あの騒動で知らない子を巻き込んでしまったのかな。
「あの、お風呂で騒いじゃったのはごめんなさい」
とりあえず謝っておこう。騒いだ責任はこちらにあるし、一応私が火の粉をかぶれば他の子達の気が楽になるだろうし。
「なんか勘違いしてないかい?アタシはフェイトの話をしてるんだよ」
「…?」
フェイトなんていう人の名前を私は知らない。生前の方も記憶がないし誰だろう?名前からして外国の人のようだけど。
そう考えていたら女性が私の頬に触ってきた。その瞬間、体に魔力の流れる感じがした。
───まさか念話!?ということは魔導師ッ!
瞬時に緩んでいた意識を切り替えて、とりあえずすずか、アリサやはやてに悟られないようにしながら話す。
(それでこんなところで何の用かな。私はともかく、他の子に手を出したらただじゃすまないの)
(おお、こりゃまたガキのくせにずいぶん威勢のいいこったな。でも子供はいい子にしてないとガブッといっちゃうぞ)
(なるほど…あの子って言い方から考えると、あなたはこの前の金髪の子の関係者さんなんだね。でもね、日本のことわざには窮鼠猫を噛むっていうのもあるんだよ。気をつけないと噛みつき返されちゃうよ?)
(けっ、言ってろ。ジュエルシードはアタシ達がいただくからな)
(それはどうかな…?)
と相手の意図を探るために真面目な話をしていたら、空気が急変した───主にあの少女のせいで。
「な、なにするんだい!」
いつの間にか女性の背後に回り込んでいたはやてがふくよかな胸を揉みしだいていた。
「ぐへへ、こりゃまたずいぶんといいおっぱいをお持ちなようで」
シリアスな空気をぶち壊さないでほしいの。
「や、やめてくれ!?」
「はやてちゃん!?」
「なにしてんのよ!?」
すずかやアリサがまたもはやての奇行に驚いていた。
「な、やめ…なにする!?ちょっと!」
「よいではないかよいではないか。そこにおっぱいがあれば揉まずにいられないのがおっぱい星人の宿命───いたぁ!?」
とりあえず一発グーパ───お話した。
「はやてちゃん───少し、頭冷やそうか?」
絶対零度の目ではやてを睨みつける。
なんでこう人が大事な話をしている時に腰をおるのだろうか。
「酷いわなのははん〜。うちはそこにおっぱいがあったから───」
「言い訳無用なの!」
───そこに山があるからみたいなノリで人様の胸を揉むな!!
「いったあ!?うち、これでも体悪いんよ?」
もう一発げんこ───お話をする。
暴走する彼女に対しては冬木の虎相手のように遠慮はいらない、問答無用の方がいいというこことがよーくわかったよ。
「今思ったよ。暴走しているはやてちゃんには一切遠慮はいらないってわかったの」
「なのははんの愛が重いわ〜。でもそれも嬉しい!」
「なんでなの!」
───と意味の分からない漫才をしていたらあの女性はいつの間にかいなくなっていた。
しまった!
もう少し彼女に関する情報を引き出そうと思ったのに余計なことに気を取られてしまった。うっかりしていた…。
何かしらの因縁を感じる女性との接触後はつつがなく予定が進み、寝ていた時にジュエルシードの反応が近くであった。
街中でなくてよかった。
ともかく気持ちを切り替えて、士郎達と寝ていたユーノとうまく合流して現場へ急行した。夜中ということもあって特に誰かを巻き込んでいることはなかったが、いつものように漏れ出した魔力によって暴走していた。
今回は邪魔も入ることなく、結界を貼る手間もなかったためつつがなく封印することができた。
「終わったね、なのは。お疲れ様だよ」
「よし、封印完了なの。あとは───」
「あとは?」
彼が疑問符を浮かべたと同時に、来ると思っていた人物の気配がした。
「ジュエルシードには手を出さないで───そう前にあなたへ言ったはず」
「えへ、あの人がいたということはジュエルシードが出たら来るかなあって思ってたけど、やっぱり来たね」
周囲に目をやるとユーノの目の前に先程の女性が来ていた。見た目が先ほどと違って獣っぽいのは使い魔だからか?
どうやら二対二の状況になってしまった。
───まぁいいや。それも想定の範囲内だ。
「アンタの相手はアタシだよ!」
彼女としては一気にケリをつけたかったようだ。
ユーノへと一気に飛びかかる。
───慢心していたのはどちらだろうか。
「デバイスを持っていない僕が何もできないと思ったのかい?
彼に飛びかかってきたアルフにあらかじめ自身が渡しておいた宝具に触った瞬間、盛大にすっ転んだ。そんな隙だらけの彼女を彼がすかさずバインドで捕縛する。
魔法ではなく急に物理的な兵器が出てくることは予想していなかったようで、あっさりと引っかかった。
───ここだけの話だが、わりと思考が単純そうなのも原因かもしれない。
「ちくしょう、なんで急に転んだんだい!?」
「やったよ!」
種を明かせば簡単だ。
フランスのシャルルマーニュ十二勇士の一人、誰もが見とれる美貌?を持つ美少女のような英雄アストルフォの持つ馬上槍の宝具、触れれば転倒!の真名開放をユーノがしたのだ。
時計塔在籍時代、魔術協会が裏で手を回していたフランスの発掘現場で偶然バイトをしていた時に見つけ、真名と効果を知ったはいいが逃げる時にしかも初見で格下相手に使うぐらいしか使い道がなかったので結界内に登録してあってもほとんど忘れかけていたものをたまたま思い出し、こんなこともあろうかと自衛用に彼へ渡しておいたのだ。
それ以外にもバインド対策などに使えそうな
「ユーノ君、ありがと!」
「お膳立てしてくれたのはなのはのおかげさ、こっちこそありがと」
彼女は体を動かしながら吠えていたが、バインドは強固なもののようなので放置していてもとりあえず大丈夫だろう。
そう思って目の前の少女に改めて目を向ける。ジュエルシードの封印に気を取られていた前と違って落ち着いて彼女を見ると、美しい流れるような金髪を高校時代の遠坂のようにツインテールにした赤い目の可愛い女の子だと思った。
だからか、こんなに幼い子がなぜここまで必死にジュエルシードを集めているのだろうか知りたかった。そこでここは一つ賭けをしてみることにした。
「これで一対二だね。どうしてもこのジュエルシードが欲しいならこうしないかな?私に勝ったら手持ちのジュエルシードを全部あげるし、今後ジュエルシード集めから完全に手を引く。でも代わりに私が勝ったら今日一日あなた達がなのはに付き合ってもらう、どうかな…?」
「ちょっとなのは勝手に───」
勝手に約束を決めたのでユーノが口を挟む。
だが、彼女と協定を結ぶチャンスはここだという確信があった。
「大丈夫だから、安心して」
「───わかった。その条件なら」
空中に漂う私達は戦闘の条件を確認しあった。
「さて、どう戦おうかな〜」
「…」
あえて何も考えていないような子供っぽく振る舞いながらも、どう出るか様子見する。
対するフェイトは得意とするミドルレンジで射撃魔法を防いだ盾を警戒し、肉薄しての接近戦を考えていた。
だがその時、相対するなのはは全てのリーチにおいて数十手先まで考えていた。
「ッ───バルディッシュ、サイズ・スラッシュ!!」
「Blitz action. Scythe slash.」
先に動いたのはフェイトだった。急加速した彼女がデバイスに展開させた魔力を鎌状にしたことは、おそらく接近戦に持ち込もうとしたことを瞬時に理解した。
彼女としては最速で動いたつもりだろうが、セイバーやランサーの速度に比べればあくまで人間レベル───悪く言えばそう速くはないので普通にどう動くべきか五感で感じ取れた。
「プロテクション!」
「Yes, mom. Protection set up.」
彼女の魔力の鎌がプロテクションを貫通してくる。ちなみに私はプロテクションを自動展開に設定していない。それは相手の間合いや能力を測るためや、魔法陣によって見通しが少し悪くなりカウンター時の邪魔になると考えているので、必要に応じて展開している。
最悪、いつもの切り札である
「なるほど…強いんだね、すごいの」
攻撃をかわしながら後ろに飛んで間合いを取ってから告げる。先日の射撃魔法や近接戦闘など対人相手はまだまだだが、この子はかなり伸び代がありそうな子だと思った。
「…」
両者がまたタイミングを伺う。
容易にプロテクションを貫通したということはそこそこの火力があり、あの少女は先日のようにミドルレンジからの射撃だけではなく、魔法で瞬間的に加速することで相手を撹乱しながらの近距離戦もできるようだと判断した。
───ならインファイトが苦手なように見せかけて、体術で彼女を取り押さえればいいだろうと一瞬で決断、実行する。
「───
空いている手を後ろに回し、こっそりと黒鍵を投影し隙をみて彼女の脇に投擲した。
「───刃物!?」
予想通り驚きはしたが、近づきたくないというブラフにかかった彼女は再度急加速して背後に回り込み接近戦を仕掛けてきたので、今度はレイジングハートの防御ではなく
子供の頃、切嗣に教えられたが、女の子には優しくするべきであり乱暴はしたくはないが、状況が状況なので仕方ない。
「えへ、やっと捕まえたよ。一応加減したつもりだけど大丈夫かな…痛くない?手荒なことしてごめんね。でもこれで私の勝ち───いいかな?」
私の問いに彼女は無言でコクリと頷いた。抵抗をしないところが素直でありがたい。
これでゆっくりとお話ができる。
相変わらず関節を極めたままだけど、反撃されたらたまらないからね。
「なのはね、あなたとゆっくりお話したくて。これ以上傷つけたくないからバリアジャケットを脱いで力も抜いてもらえないかな?」
今のフェイトには格闘技の心得はそこまでないし、がっしり関節を極められているのでそうするしかないと思った。彼女の使い魔はユーノにバインドで捕らえられているので戦力としては期待できないと思い、言われたとおりにした。
バリアジャケットを解除し私服に戻った彼女の体をレイジングハート片手にお姫様抱っこをする。怪我をした人を抱えたり、介護をしたりするとわかるが、人を支えるのはこれが一番楽な体勢なのだ。
「あ、あの…」
「落ちないようにしっかりつかまってて」
なぜか腕の中にいる少女の顔がうっすら赤いのが気になるが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
「ついでにあの女性にも投降してって言ってもらえるかな?そうしたらバインドを解いてもらうから」
「アルフ───ひとまずここは彼女に従って」
「フェイト!」
「いいから」
「わ、わかったよ」
もがもがとうごいていた彼女が力を抜いたのを見て、よし、これでやっと落ち着いて彼女と話せる!と思った。
ともかくまずは場所を移動しなければ。
いつ誰に見られるかわからないので、そのまま地面にフェイトをお姫様抱っこしたままゆっくりと着地した。
「はい、もう大丈夫だよ」
そういって彼女を怪我をしないように細心の注意を払って優しく地面に下ろす。
「あ、ありがとう」
なぜか彼女は赤くなって縮こまっていた。あんなバリアジャケットだし夜風にあたって寒かったのかな?
「じゃあ、行こっか。ユーノ君、この人のバインドを解いてあげて」
そう告げるとユーノはバインドを解除した。
「わかった。君の戦闘の才能は十分に信頼してるけど、まったく一時はどうなることかと思ったよ。あんまり僕の心臓に悪いことしないでよ?」
「はーい」
───気づいたらカポーンと心地よい音がしそうな温泉にいた。
連れてこられた少女は後にそう述懐していた。
「あの…これは?」
てっきりジュエルシードや母がそれを何かの目的のために集めていること、彼女達の住居や本拠地の情報などを言わされるために拷問か何かでも受けるのかと思ったら、連れて来られたのは街中のどこにでもありそうな公衆温泉浴場だった。だからフェイトは大いに困惑していた。
ちなみに入浴代は私のお小遣いから全員分を出した。男の子なので女性陣に混じれないユーノは、念のため彼女達が逃げ出さないようにと彼女のインテリジェントデバイスらしいバルディッシュを預かってもらい、外にあるベンチで待機してもらうことにした。ついでにと見張りのお駄賃にと温泉にあった自販機でフルーツ牛乳を買ってあげた。
「のんびりと話すのはここが一番かなって思って。ここの温泉、さっき入ってみたけどお湯の温度もそんなに高くないから長湯できるし、せっかくさっきお風呂に入ったのに汗で汚れちゃったから…ええっと使い魔のアルフさんも?」
流石に宿で話すわけにもいかず、24時間で使えるこの公衆浴場でお話をすることにしたのだ。
「私ゃ別にいいよ!フェイト、こんな奴は放って今すぐに帰ろう!」
「でも…」
クールだがわりと律儀らしい彼女が戸惑っている。
ここで帰らせるわけにはいかないので、とりあえず止める。
「ええー。でも、せっかくなんだから入ろうよ〜。そこのお姉さんはさっきはあんまりのんびり温泉に入ってなかったんじゃ?気持ちいいんだよ、温泉って。それにきれいな髪も耳も尻尾も泥だらけだし私が綺麗にするよ?」
「そうしたのはどこのどいつだっけな!」
正確にはやったのはユーノだが、そう仕向けた責任は自分にあるのでちゃんと取るつもりだ。
「それは謝るから、ね?」
なぜか無言のプレッシャーを感じたような彼女は黙って従った。
「おっとその前に」
「?」
「───
監視用の使い魔らしい気配を感じて暗殺教団の長山の翁ことハサン・ザッハーハの武器であるダークを投影し、壁に投げつけた。
「ふえッ!?」
「なんだい!?」
フェイトとアルフがなのはの奇行に驚いた。
「ゆっくりお話したいのに邪魔するちょっと無粋な覗き魔さんにはご退場願っただけなの。さ、お風呂に入ろう?」
「??」
また壁をもう一度見ると刺さっていたはずのダークは消えていたので、二人は余計に首を傾げていた。
「ささ、遠慮しないで〜」
アルフとフェイトをぐいぐいと風呂場の方に押していく。
「わかったから!わかったからちょっと待って!」
「その前に服、服を脱がせてくれよ!!」
たしかに服のままではお風呂には入れない。いくらなんでも無茶ぶりだったか。
二人は揃って大きなため息をついて、大人しく服を脱ぎ畳んでから籠に入れてくれた。
「じゃあ入ろっか」
「うん…」
「わかったよ…たくっ」
二人はどうにでもなれといった感じで私の後についてきた。
「ん〜!!気持ちいいね、フェイトちゃん」
名前を聞いて、体を洗いながらお互いに簡単に自己紹介をしてから温泉に浸かった二人に語りかける。源泉かけ流しではないが、ぬるめのお湯が汗をかいた肌に心地良い。
「そ、そうだね」
自分は母の言いつけ通りジュエルシードの回収をしに来て、彼女とは20分ほど前まで敵対関係にあったはずだ。なのになぜ仲良くお風呂に入っているのだろうかとフェイトは混乱していた。
少女が難しい顔をしているようだがなにかあったのだろうかと思い尋ねる。
「大丈夫?のぼせちゃった?」
「あの…一応私達はジュエルシード集めてるのに、のんびり温泉に入ってていいのかなって」
「にゃはは、確かにそうだね。でも、今日は平気そうだし大丈夫だよ。そんなに何度も出るものじゃないと思うんだ」
戦闘技術だけじゃなく、なかなかに肝が座っているなあと彼女は思った。
それはそうだ、彼女の外見はどこにでもいそうな小学三年生の少女だが、中身は青年の衛宮士郎であるから生前も含めて合計すれば三十五年以上生き、あの地獄のような二週間の聖杯戦争を何度も死にかけながらも生き残った魔術使いなのだ。
優れた才能を持つフェイトと比べて人生経験や戦闘経験の差は雲泥だ。
「そ、そう───」
「それで、なのははね…まずフェイトちゃんとお友達になろうと思ってるの」
「友達…?」
彼女は突然の言葉にポカンとしていた。
「へっ、こんなやつの言うこと、聞くんじゃないよ」
全裸で凄まれてもなあ…と思いつつも面倒なので放置する。
「私はフェイトちゃんと仲良くして、あなたのこと沢山知りたい。それにジュエルシード集めで今日みたいにいちいち喧嘩とかしたくないし、一緒にならすぐに集まるよ?今すぐじゃなくてもいいから協力するの、考えてもらえないかなあ?」
「───協力するのは少しだけなら考えてもいい」
一瞬考えた彼女はうつむきがちに答えた。
「フェイト!?」
やった。これで余計な争いを避けることが出来る。
彼女はいけないことをしているわけではないし、切った張ったの争いを毎度繰り返すより、目的が同じであれば共同でやった方がいいに決っている。
「やったー!フェイトちゃん、よろしくね」
「う、うん」
自分の差し出した手を戸惑いながら握る彼女を見て、やっとちゃんとした友達になれた気がする。
「お風呂から出たら連絡先、交換しようね。協力したいって思ったらいつでもなのはに連絡してね」
「わかった…」
───そうして、ジュエルシード回収の仲間にフェイト・テスタロッサという謎の少女が加わることとなったのである。
ということで、ジュエルシード回収協定にフェイトちゃんが加わりました。ここから本格的に回収を…といきたい高町なのはちゃんでしたが、フェイト・テスタロッサちゃんを追うあの組織が現れてどったんばったん大騒ぎで大変なことになっちゃいます。