リリカルでマジカルな世界に憑依転生した正義の味方(StrikerS編制作検討中)   作:四条小鳩

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 闇の書の事件を捜査していた海鳴市の管理者兼魔導師の高町なのはちゃんは、ついに守護騎士と呼ばれる闇の書の防衛プログラムと接触することとなりました。
 彼女の切り札の世界で高町流お話をしたり、ちょっとイリーガルなことをしてようやっと事件の真相にたどり着くことができました。
 ですが、そんな彼女の前にあの二人組が現れ…またもとんでもない事態に巻き込まれてしまうのです。


第三話「使い魔、牙を剥く」

 さて、どうでる?と様子を見ていたら、たまたまとりこんだ猫の使い魔が彼女達を援護するためか高レベルの攻撃魔法を使ってきた。

 人が大事な話をしようとしている途中なのに話の腰を折らないでほしい。

 ───まぁいいや。

 この程度の攻撃魔法など柳洞寺でキャスターが私やアーチャーへ何発も惜しげもなくぶっ放してきた高威力魔力砲に比べれば蚊に刺される程度のものだ。

 私は勝利すべき黄金の剣(カリバーン)を捨て、ケルト神話、フィオナ騎士団の二槍を操る英雄ディルムッド・オディナの触れたものに限り、魔術的な物を一切キャンセルできる宝具、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を出して魔法を打ち消し、猫達の近くへ適当な剣を数本撃ち込んでからそちらを軽く一瞥して告げる。

「そこの猫さんのお話は後で聞くからちょっと黙っててもらえるかな」

 猫が怯むのを見て何か見覚えというより心当たりがあると思いつつ、今はこの四人のほうがもっと重要だと彼らをじっと見つめる。

「理由、教えてもらえないかな?だんまりじゃ困るの」

 私が展開した固有結界内であまりにでたらめなことばかり起こるのでついに観念したのか、リーダー格であろうシグナムと呼ばれる女性が集団を代表して詳細は伏せながらも口を開いた。

「───だから私達は主殿のために密かに魔物を狩り、蒐集していたのだが…なかなか進まず、その間にどんどん書の闇に飲まれている。だから魔導師からの蒐集を固く禁じた主殿には大変申し訳ないと思うが、ページを埋めるために魔導師のリンカーコアから魔力を奪うことに決めた」

 彼女の話を聞いたことで今回の騒動の大筋が見えてきた。彼女達がなぜ魔導師を狙いリンカーコアから魔法や魔力を強奪している理由をやっと理解した。

 闇の書というのは契約者の体内へ桜のように汚染された聖杯の欠片を埋め込むことのようなことで、それによりリンクの繋がった大聖杯のような闇の書に無理矢理オドを奪われ、最後には生命力が無くなり衰弱死する。

 それを解決するためには暴走が分かっていても書を完成させることしかないというこか。もしくはその主が惨たらしく死ぬなら、暴走し苦しまずに死ぬということを取ったのかもしれない。

「なるほど、それで…」

 ユーノ・スクライアがなるほどといった雰囲気で頷いた。

「ううーん…だいたいの事情は分かったの。主という人を守るために色々頑張って大変だったんだね。あと、必ずと保証はできないけどなんとかなるかもしれないよ」

「それは本当か!」

「なるんだ───なるの!?」

「ええっ!?」

 私の言葉にシグナム達だけではなく、フェイト・テスタロッサや月村すずか達も驚いていた。あの猫達もなぜか動揺していた。

「おい、なのは。どうにかできるものなんてあるのかい?」

 なんとか冷静な立場にいたフェイトの使い魔であるアルフが尋ねてきた。

「まあね」

 キャスター、ギリシャ神話の神代の魔術師…現代の魔術師の認識で言えば彼女は魔法使いのレベルだが───コルキスの王女メディアが使うもはや反則スレスレのあの宝具なら、投影品とはいえ闇の書とその主との契約、もしくは書の問題点…場合によってはそのものの消滅をも可能にするかもしれない。

 ───だがそうなると問題が一つあるのだ。

「闇の書ってのにちょっとした『反則』をすれば蝕んでいる人を今すぐにでも開放できると思う。でもそうすると闇の書という存在そのものが消えることもありえるかもしれないから、あなた達はそれに付随して消えちゃうかもしれないけど…いいかな?」

 その主殿という契約者と闇の書とのリンクだけを断ち切れればいいが、投影品とはいえ宝具なので魔術礼装である本体そのものまでも消してしまう可能性は否定できない。

「主殿が助かってさえくれれば私達などどうでもいい」

「私も構いません」

「あたしもだ」

「……私も構わぬ」

 この四人の忠誠心と、かつて共に祖国の救済のために聖杯を欲し戦っていた騎士王、そして過去の己の考えを過ちとし、それを正すために自分の抹殺を願った弓兵のあり方を重ね合わせていた…。

 ───そうか…全員、自分のことより他人が大切で、己についてそしてそう考える自分達を周囲がそれをどう思うか理解できていなかっただけだったんだ…。

 ならそんな不器用な彼女たちにも救いがあってもいいはずだ。

 だからそれに応えるために無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)を解除した。

「元の封鎖結界に…戻ってきた?」

 シャマルが再度驚く。

「別れの時間とかも欲しいかもしれないし、蒐集は途中でまだ完成してないし、まだその人の命は大丈夫なんだよね?これ以上しないってなら数日は待つよ。ただし、少しでも魔導師や魔物を襲う兆候があるなら次は容赦しないの」

 闇の書というロストロギアは本当ならその主とやらを蝕んでいるし、完成したらしたで暴走する危険物なのですぐ封印しなければならない物だ。

 我ながら甘いなあと思いつつも、彼女達だってどのような存在であろうと人であり心があるだろう。外道神父、英雄王や蟲の爺が完成させようとした厄災を振りまく泥を吐き出す汚れた聖杯のような一刻も早く処分しなければならない物でもなく、主へ別れの言葉を言ったり、気持ちの整理をつける時間ぐらいあげても損はないだろうと考えた。

 ───だが、その判断が本当に甘かったということを後に私は知ることになる。

「余計なことを…と言いたいが、気遣い、ありがたい。今日はひとまず行くぞ」

 やはり彼女は予想通り、高潔で冷静な人物なようで助かった。

 余計な戦いは意味がないことぐらいはわかるようだ。

「終わったら、またなのはのところに来てね。いつでも待ってるから」

「───わかった。敵である貴様を主君としてたてるつもりはないが恩に着る」

「いえいえ」

 そうして封鎖結界が解除され、彼女達はどこかへと消えていった。

「いいの、なのは?」

 闇の書の防衛プログラムであるヴォルケンリッター達を見逃すなど、当局側からすれば始末書なんて話ではないのはわかっている。

 下手すれば犯人隠避で拘束されるだろう。

 だが、高潔な彼女たちは必ず私達のもとに戻ってきてくれるという確信があった。

「大丈夫だよ。あの人達は真面目な人だから」

 その時、あの攻撃してきた猫達のことをすっかり失念していた事が私のうっかり(おおぽか)であった。

 

Interlude

 

「───報告は以上です」

 ヴォルケンリッターが封鎖結界を解いてから数分後、超特急でアジトに帰還した使い魔は現状を部屋の主である男性に概要を説明していた。

「なんだって!?」

 彼は使い魔からの報告に驚いていた。

 PT事件の報告については彼も目を通しており、解決者である少女が類稀なる才能を持つ魔導師であるということは知っていたが、あの闇の書をそんなに簡単にどうにかできる程のロストロギア…彼は誤解しているので正確には魔術師であるメディア持つの対結界宝具の投影品なのだが、を持っているということにあっけにとられていた。

「彼女の言葉が正しければとなりますが…闇の書の破壊も可能だそうですが───いかがしますか」

 冷静な姉が彼に意見を求める。

「お前たちが閉じ込められた謎の空間はともかく、そんなデタラメなことができるロストロギアの存在など信じられるか。もし───もしもだがそんな事が可能なら、なぜあの事件の報告でそのような魔法が存在するとあがってこなかったのだ」

 それはリンディが意図的に情報を記載しなかったためだ。

「それはわかりかねます。闇の書の破壊もしくは転生を経ない完全な機能停止が可能かどうか、あの少女は明言していませんでした。そして彼女が持つ魔法は我々にとっても脅威があるかと」

「わかった」

 闇の書を少女一人の命、一の犠牲で九を助けるというやり方で葬り去ろうともくろんでいる今、彼らの計画に無闇に割って入ってきた高町なのはという異端すぎる魔導師の存在は目の上のたんこぶに他ならない。

 そもそも、そんな闇の書をどうにかできるロストロギアの存在など信じられないという疑念が強かったからという点もあった。

 男は目標の阻害因子になるであろう少女の排除を決断した。

「仕方ない…。明確に破壊ができないという以上、私達の計画を進めるしかあるまい。その高町なのはという魔導師を排除し、ヴォルケンリッター達に蒐集を強要させるんだ。こちらはこちらで手を回しておく」

「…わかりました」

 その言葉とともに、彼女たちは守護騎士とその主の元へ転移魔法で消えていった。

 

 ───その判断こそが、彼ら最大の誤算であるということも知らずに。

 

Interlude end

 

 数時間後、私達は予想通りアースラにすぐに召喚されリンディとクロノに闇の書の重要参考人を取り逃がしたことでこっぴどく説───お話された。

 流石に管理局の執行官が中隊でやってこない限り捕縛できないであろう管理者(セカンドオーナー)を兼ねている私から闇の書事件についての捜査権を取り上げられることなどはなかったが、次に遭遇した際は必ず捕獲もしくは場合によっては破壊するように命じられた。

「けっ、取り逃がして叱られるなんて予想通りじゃないかい。なんであの場でひっ捕らえなかったんだい」

 アルフが怒りを込めて言ってきた。

「よく捕まらなかったと思うよ…」

 ユーノは呆れながら同意する。

「ま、取り逃がしたってことで怒られたぐらいで済むならいいと思うよ」

 怒られるぐらいで済むならそれは安い代償だ。

 彼女たちだっていきなり消滅させられたら主である人との別れを惜しむ間も与えないことになるし、一方的に捕まえたり破壊したりした場合、そもそも蝕まれているのを救い出すことが難しくなる可能性だってある。

 ───『正義の味方』というあり方だけで見逃しただけではなく、一応先のことを考えているのだ。

「そうだけど…」

 アースラの艦内で私達五人は食事をしながら今日の反省会をしていた。

 別にアースラから帰還して我が家で彼女たちと食事をしても良かったのだが、局員のエイミィにヴォルケンリッター達の能力の高さを鑑みて私とフェイトとアリシアの持つインテリジェントデバイスの改造───ベルカ式カートリッジシステムを組み込むことをお願いすることにしたためだ。

 彼女たちは防衛プログラムであり闇の書の支配下に置かれているため、万が一自律制御が不能になった場合の保険を兼ねてだが、不必要な心配になることを願う。

 それと私がここで食事をしているのはもう一つ理由がある。リンディから最後に一人残るように言われた際に、管理局内にいるかもしれない内通者を見つけろとの司令を受けたからだ。

 封鎖結界を彼女たちが解いた後に事態を感知した管理局員が尾行していたはずが、突如行方不明となり全力で探しているというという話を聞いたからだ。それだけでは管理局側のミスであり、単に主がこの時空にいないというだけで特に疑う点は無いように見えるが、彼女たちに仕込んだ発信機代わりの追跡魔法の信号がロストしてしまったのだ。管理局が普段使用する追跡魔法は空間跳躍程度では無効化できるものではないそうだ。

 ───すなわち管理局の誰かがアースラのシステムをクラッキングして魔法での追跡を妨害したと推測しているのだ。しかもセキュリティーを突破した痕跡が全く無いとなると、内部犯の可能性が疑わしくなるということだ。

 少しイレギュラーな事態が起こっているがこの点については既に手は打ってある。

 システムへのアクセス権があるという意味では疑わしいのはリンディも込みであるが、アースラのシステムは他の管理局のシステムともリンクしているので、レイジングハートがカードリッジシステムを装備するためにドック入りしている隙きにシステムにハッキングしアースラのシステム記録を調査することにしたのだ。

 また怒られる種が増えたがともかく疑わしい人物が見つかるといいのだけれど…。

 ともかく今は吉報と彼女たちの帰還を待つしか無い。

 

Interlude

 

 ───ヴォルケンリッター達がなのは達と分かれて二十分ほど…。

「主殿…どうか待っていてください……」

 封鎖結界を解いたあと、彼女たちはなのはとの約束を守るため最後の別れを告げるに主である少女、八神はやてが入院している病院へと向かっていた。

 シグナムは直感で高町なのはという少女がよくわからないがとてつもない力を秘めた魔導師であり、かつ嘘をついていないし、誇大妄想を言っている風でもなかったと感じ、彼女の言葉を愚直に守るために行動していた。

 彼女たちにとっては己など二の次である。彼女が無事に助かってくれるのならそれで構わないという思いが今の彼女たちを駆り立てていた。

 あと数百メートルで彼女たちの主である八神はやてがいる病院までたどり着きそうな瞬間、彼女たちは何者かの手で連れ去られた。

 

「なっ!?」

「おい!?」

「ええっ!?」

「なぜ急に空間転移を!?」

 四者が同様に急な空間転移魔法に驚いていた。

 狼狽する彼女たちの前に、仮面をつけた人物が出てきてこう告げた。

「ヴォルケンリッター…闇の書の蒐集を再開しろ」

「どういう意味だ」

 彼女としてはあの約束を反故にするつもりもないし、あの少女は信じられると判断したのですぐに従う気はなかった。

「貴様達の主が殺されてもいいのか」

「───ッ!」

 仮面の人物は淡々と脅しの言葉を紡いだ。

「もし、三日以内に蒐集を再開しない場合、お前たちの主はこちらの魔法で書と関係なく惨たらしく殺される」

「……貴様!」

「ああ、間違っても私に反撃などしようと思わないことだな。もしそのようなことをしたらどうなるかぐらいわかっているはずだ」

 こちらの考えなど見透かしたように相手が脅迫してきたことに、シグナムは守護騎士を自称しながらろくに自身の主を守ることすらできていなかったことに歯噛みした。

 

Interlude end

 

 ───アースラ時間で二日後。

 ヴォルケンリッターたちは未だ行方不明だが、こちらはようやっと一つ、懸案事項が片付いた。

 インテリジェントデバイスの改造を終わえたエイミィが私達の部屋にやってきたからだ。

「はい、みなさーん!約束通りデバイスのチューンナップが完了しましたよ。ただし、フレームの強化までは手が回ってないので全力全開は禁止です。本当は一からフルチューンをやりたかったんだけど急ぎなら仕方ないですね…」

 ということで彼女からリボルバー式のカードリッジシステムを組み込んだレイジングハートを受け取る。

「Master. There's something you should know.」

「ごめん、ちょっと席外すね」

 レイジングハートが真面目な雰囲気で話してきたので私は急いで近くにあった誰もいない部屋に駆け込み、簡易の認識阻害の結界を張った。

 おそらくハッキングの調査結果が出たのだろう。

「で、どうだったの?」

「I'd like to quickly report the status of the investigation. Your expectation has come true.」

 あまり聞きたくはなかったけど調査結果は予想通りだったということか。

「わかった。ありがとうなの。犯人はわかった?」

「Yes, mom. The invader is Gil Graham. He's a clark of Time-Space Administration Bureau.」

「管理局の顧問ギル…グレアム?経歴は?」

「He's an aging Englishman and one of the few people from Earth with a magical aptitude.」

「地球のイギリス出身の初老の男?なんでそんな人がこの事件に……」

「I don't understand to that extent.」

 ともかくクラッキングの犯人がわかったのでリンディに報告しなければならないのだが…アースラが事件の担当であることを知っているということはそれなりの地位にいる人物が関係者であるかもしれない。ますます彼女がグルでないことを祈る。

 

 私は彼女が内通者であることも考慮しつつ、捕縛も視野に入れてリンディの執務室に足を運び入れた。

「お忙しいところすみません。お邪魔します」

「いいのよ。ごめんなさいね、報告書の類で散らかっちゃってるんだけど」

「大丈夫です」

 雑談をしながら頭の中で撃鉄を降ろし、魔力回路に魔力を流す。

 まだまだ半人前とはいえ私も魔術使いだ。

 相手に悟られないように事を進めるのは慣れている。

「この事件の犯人がわかりました」

「本当に!?」

「貴女の上官に当たる人、グレアムという人がクラッキングをしかけたようです。心当たりはありますか」

 彼女の反応を慎重に伺う。

 念のためガンドの詠唱はできている。

「そんなこと…彼が……ありえない───ありえません!」

 彼女は相当動揺しているようだ。

「こちらが調べた限りになりますが事実です。そのグレアムという人が今回の事件に関与している可能性が高いです」

「まさか…何かの間違えじゃ」

「法律違反で訴追されるのを覚悟でいいますが、アースラのサーバーをレイジングハートに調べさせました。彼によって追跡魔法へのジャミングの痕跡があったようです」

「でも───でも!」

 この反応を見ると内通者というよりも絶対にありえないという反応のようだ。

「どうしてそこまで彼の関与を否定するんでしょうか?もしかして、そのグレアムさんが犯人である理由がありえないという確証でもあるのですか」

「ギル・グレアム提督は私の夫でありクロノの父であったクライドのかつての上官です。彼が艦長を務めていたエスティアが闇の書の暴走に巻き込まれた際それを阻止するために艦を砲撃し、破壊するように命令を下したのが当時の艦隊司令…」

「───それが彼、ということですか」

 バラバラであったパズルのピースがハマり始めた。

「彼は本当に苦渋の決断を下したということを私はよく知っています。だからあり得ないのよ。なぜ?なぜ彼がこんなことを?」

「だからこそ…かもしれません」

 多数(世界)を救うために少数(一人)を切る。そのあり方はアーチャーや切嗣と同じだ。

「どういうこと…?」

「主という契約者一人という僅かな犠牲で済むのなら、闇の書という世界を滅ぼす可能性を内包するロストロギアを完全に消滅させられる可能性があるのなら───そう判断することもあり得るかもしれませんし、理解もできます」

 実際、生前の私も多数の被害者のために少数の加害者を倒すというそんな判断を取ることがあった。そうするしかない、そうしないと他が助けられないということがあった。

 本当に辛かった。繰り返す度に挫けそうになった。

 アイツとアインツベルン城で戦ったあの日、己の理想(はじまり)は決して間違ってなどいなかったと誓ったのに、この世の地獄を見続け何度心が折れそうになったか私はよく覚えている。

 ───だけど。

「だからといって彼の考えを良しとはしていません。私は彼と闇の書を穏便に止めます。まだ止められる手があるのなら、私はその可能性を絶対に手放しません。可能性を諦めることなんてしません」

「なのは…さん」

 彼女がすがるように私を見つめてきた。

「私はプレシアさんの事件以来、自分の手に余るものを救うんじゃなくて友達とか家族、大切な人のために『正義の味方』になるべきなのかもと考えていたりしますけど…でもやっぱりこの世のどこかで一人が消えた時に感じる誰かの悲しみを良しとできません」

 目の前で苦しんでいる人がいて、助けられるのであれば助けたい。だから助ける。

 誰のために己の力を使うかというあり方は変わっても、私の根源は同じだ。

「改めて貴女にお願いします……闇の書の主である人を必ず救い出してもらえますか」

 彼女は確固たる決意を持って私を見つめてきた。

 ───答えなどもう決まっている。

「わかりました、リンディさん。その命令、必ず遂行します」

 

 闇の書を意図的に放置した監督官のギル・グレアム逮捕はクロノ以下の管理局執行官に委任し、私達は彼女たちを探すために海鳴に戻ってきた。

 とりあえず数日ほど行方がわからない彼女たちを探すべく、何か手がかりがないかとあるビルの上で探知魔術を使おうとした時、もっとも最悪なタイミングで最悪な連中が私達の前に現れた。

「マスター…」

 いつの間にか現れた二人組がアリシアの首をしっかりとホールドしていた。

「全員その場から動くな」

「───ッ!」

 仮面の不審者にアリシアを人質に取られてしまい、私達はその場から動けなくなってしまった。

「アリシアちゃん!!」

「アリシア!」

「君達は…!」

「なんだい、貴様ら!!」

 コイツらは月村邸から帰る際に出会った謎の二人組!この状況、タイミングで彼らがわざわざ我々の出てくるということは、ずっと私達の誰かを監視していたのか!!

 あの時、月村邸にいたメンバーの中で一番その可能性があるのは……最近急に入院したはやてか!

「やっとわかったよ…自分がすっごい馬鹿だってことが」

 本当に灯台下暗しだった。

 柳洞寺の戦いの際にアーチャーに私が馬鹿だと叱られたことがあったが、あながち間違っていなかったかもしれないと思うとこんな時だというのに複雑な気分だ。

 ───さて、どうするべきか…。

 彼女は私のサーヴァントなので令呪で瞬時にこちらに引き寄せることは可能だが、言峰のように予備令呪がない今、これから先のことを考えると無意味な令呪の浪費は避けたい。

「特にそこのお前、前のように妙な真似をしようとしたらこの娘の首を折るぞ!」

 やっぱりあれ以降私はかなり警戒されているか。

 令呪に魔力を流し、アリシアへ命令を下すのに必要なのは最低でも三秒。だがそうしたら最後だ。

「ヴォルケンリッター!」

 感情的な方のやつに声に反応して姿を見せていなかった守護騎士達が姿を表した。

「シグナムさん!?」

「すまない……私達が不甲斐ないために主殿が人質に取られてしまった」

 ああ本当につくづく、ロクデナシ達ばかりだ。

「ううん、気にしないで。貴女達は悪くないから」

「無駄口をたたいてるとコイツを殺すぞ。いいから早くリンカーコアを奪取しろ。まずはコイツからだ」

「貴様、主殿だけではなくこのような幼子にまで手をかけろというのか…。仮とはいえ彼女との騎士の誓いを裏切らせること……あとで覚えていろ。それとすまない。せめて…苦しまないで欲しい」

 シグナムが恨みがましい目線を浴びせながらアリシアに近づいた。

「あああああああああ」

 彼女のリンカーコアから魔法と魔力が抜き取られ、闇の書にどんどんと飲み込まれていく。

「おい、様子がおかしいぞ」

 最初にザフィーラが異変に気がついた。

 ん…なんだかヴォルケンリッター達の様子が変だ。

「どういうことだ早すぎる…」

「おいおい、どういうことなんだよ。まだ三分の二近くページが残ってたのに全部埋まっただと!?」

 シグナムとヴィータが驚きの声を上げた。

「たった一人だけで闇の書が…完成した!?そんな予定より!?」

 仮面の人物達もまた驚きの表情を浮かべた。

 ───そうだ。アリシアの体はジュエルシードの内包した莫大な魔力の一部を内包しているのだ。

 普通であれば魔力で編まれたエーテル体で体を構成しているサーヴァントとは違い、遺体があり肉体を得ているサーヴァントというアドバンテージがあることでリンカーコアに常人が持てる許容量を遥かに超えたオドがあっても何ら不思議はない。

 彼女たちの動揺と同時に、我々の周囲に転移魔法の陣が展開される。

「えっ、これってもしかして───」

 フェイトが呆然として告げる。

 まあ結果はわかりきっている。

「───どこかに飛ばされちゃうかも?」

 とまぬけなやり取りをした瞬間、私達は空間転移をした。

 

「はやてちゃん!?」

 ───ッ!ここははやての病室じゃないか!

 私達はろくに状況も飲み込めずにどさどさと彼女の病室に落下してきた。

 どうやら書は完成すると契約者の元へ強制的に集められるようになっているようだ。

「…なのは?」

 彼女はベッドから首だけを動かして朦朧とする意識でこちらを見つめてきた。

「主殿!!」

「シグナム…いったいこんな時になにしてんのや」

 弱々しく返事をする彼女のもとに、完成した闇の書が近づいていく。

「主殿…まず貴女との約束を反故にし、蒐集を進めていたことを謝ります。そして先程、闇の書が完成しました」

「……なにやっとるんや。あれほど他所様に迷惑かけちゃあかんって言ったのに」

「お言葉ですが───」

「もういい、もういいよ。やっちまったことはしゃあない。うちも怒る気はないよ。いろいろ考えて、悩んだ結果そうしてくれたのなら、嬉しいから…」

「ある…」

 ───その瞬間、寒気がするほどの魔力がはやての周囲を覆い始めた。

 ここで闇の書を完成させたら騒ぎどころではない。

「ああもう!ここの修理代は管理局にツケておいてなの!!」

「なのははん…?」

「───投影開始(トレースオン)

 自分でも最高レベルのスピードで弓と偽・螺旋剣(カラドボルグツー)を投影した。

「───I am the born of my sword.(我が骨子は捻れ狂う) 偽・螺旋剣!」

「きゃああ!!」

 弱っていたはやても病室内に響き渡った突然の猛烈な衝撃波に悲鳴をあげた。

「主殿!?」

「なのはちゃん!?」

 驚いた彼女たちを尻目に、幸いなことに窓際に誰もいなかったので、そちらに向けて偽・螺旋剣で強引に穴を開け、はやてを抱えて飛び出す。

「なんや…なのはは死ぬ間際にうちにすごいサプライズプレゼント、くれるのか?それにしちゃ、随分派手な花火やけど」

 抱きかかえているはやてはオドの吸収が止まったことで元気を取り戻しつつあるが、状況は最悪だ。

 一刻も早く人気がない所へ移動し、破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)で彼女と闇の書とのリンクを切らなければ…。

「待っててね、絶対助けてあげるから!」

 私は近くにある大きな公園まで急いで飛行している。

 ───あと数十メートル。

 そう思った瞬間、私達は闇の書の放つ漆黒の魔力の渦に取り込まれた。

 

 ───私達が飛び出した直後、謎の二人組はフェイトとヴォルケンリッター達によって虚を突かれ取り押さえられ、バインドで捕縛されていた。

 今は犯人達と完成した闇の書の処遇をめぐりアースラと現状を確認していた。

「もしかして、グレアムさんの使い魔って…」

 すずかがモニター越しの彼女に問いかける。

「クロノの執行官見習い時代に教師を務めていたのが彼の使い魔、リーゼアリアとリーゼロッテよ。普段は猫で双子の使い魔だったんだけど」

 これが目の前で拘束されている二人だったのかと納得がいった一同。

「闇の書が完成しました。そしてなのはさんと書の契約者と思われる八神はやてさんが高濃度の魔力塊になって取り込まれたのをこちらで確認しました。このままでは暴走が始まってしまいます」

 犯人を捕まえても暴走を始めた闇の書を止める術がないのが現状だ。最悪の場合、グレアムの渡してきた切り札か最後の手段として艦載砲で内部に居るはやてとなのはごと彼女たちを攻撃しなければならない。

 その時、幼女が動いた。

「お母さん、預けておいたアレ、今すぐここに送って!!」

 魔力を抜かれたショックから回復したアリシアがアースラに居るプレシアに伝える。

「あの箱?わかったわ、すぐにそっちに送るわね」

 そういって画面から消えて数分後…。

 転移魔法でアリシアのもとに一つの長細い箱が送られてきた。

「『アリシアちゃん…もし闇の書事件で私に何かあった時はこれを開けてね』ってマスターに言われたんです」

 箱には装飾が施された一振りの美しい両手剣と一枚のメモとベルトが収められていた。

「剣…か?」

 ヴィータが尋ねる。

 日本語がまだ不慣れな彼女に変わりメモをフェイトが読み上げる。

「ええっと…『アリシアちゃんがこの箱を開けたということは、私に何かあったんだってことなのかな。管理者なのにみんなのこと守れなくてごめんね。この剣は昔、ある国の王様が選定の剣として王様になる間までに使っていたカリバーンという剣だよ。本人曰く、あくまで正式に王になるまでの間、儀礼的に使っていたから王様になった時に使っていた剣よりも能力は劣るらしいし、模造品の劣化版だけど闇の書を封印するのにきっと役に立つと思う。それとこれは私のヘアゴム。物心ついた頃からつけてたから、たくさん魔力が溜まってるの。これも強力な魔術礼装としてアリシアちゃんとすずかちゃんの役に立つと思うよ。私が情けなくて申し訳ないけど、後のことをよろしくお願いします。 なのはより』……なのは」

「なのはちゃん…はやてちゃん」

「マスター…」

 三人が書の内部に取り込まれてしまった彼女とはやてを想い悲痛な表情を浮かべる。

 その中で、真っ先に行動を起こしたのはやはり彼女の影響を強く受けたサーヴァントであった。

「マスターを守るの!だってあの時約束したんだもん、アリシアが必ず守るんだって!!」

「アリシア!?」

 フェイトが仰天する。

 アリシアはなのはの残したヘアゴムを腕に着け、ベルトで彼女のデバイスであるサファイアを背負い、空へと飛び立つ。

 その姿にマスターであり『正義の味方』の体現者であるなのはの姿を重ねた者が多かった。だから自然と少女たちの体が動いた。

「───ッ!アリシアだけに頑張らせるわけにはいかない…!私もなのはを助けるために行く!」

「私はここでユーノ君を守るね!」

「援護は任せなフェイト!」

 そんな彼女たちに刺激されたのはなにも味方だけではなかった。

「私達も主殿達を救うため、行くぞ!」

「おう!」

「はい!」

「ああ!!」

 彼女たちに後押しされたのかヴォルケンリッターも各々が戦闘モードに移行しアリシア達をフォローするために動き出した。

 

 ───そうして闇の書を封印するために各々が動き出した。




テスタロッサ道場!
プレシア「おっす、PT事件首謀者で、この話ではなんか空気になってて出番が欲しいミッドチルダの天才マッドサイエンティストことプレシアだ!」
アリシア「おっす、ししょー!師匠はこの話じゃ空気になるのは仕方ないことだと思いまっす!そもそも原作じゃし───」
プレシア「それ以上は言わせねえぞ!!」ボカッ
アリシア「実の娘に対して殴っ血KILLはだめじゃないですかししょー!!」
プレシア「うるせー!!ということで作者に殴り込みをかけて私の出番を作ったってことだ」
アリシア「うわあ…正直引くわー」
プレシア「魔法少女界は戦争が激しいから出番は作ってかなきゃいけねーんだよ」ドドン
アリシア「───それはそれとして正直、なのははこれからどうなるんだろうね。ヴォルケンリッターも含めて一番戦闘力があって指揮能力がある人が闇の書に飲み込まれちゃったんだよね」
プレシア「流されたー!?ま、まあ…そこはほら、闇の書が街中で暴走するってことは世界の危機じゃん?ということはさ───」
アリシア「あっ(察し)」
プレシア「大丈夫大丈夫。この話は問答無用のハッピーエンドだから死人は出ないわよ。でもランサーは死ぬかもしれないけど!」
アリシア「この人でなし!───次回、『リリカルでマジカルな世界に憑依転生した正義の味方』、『決戦の刻』!お楽しみに!!」

つづく…?
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