プルフォウ・ストーリー2 月に降り立つ少女たち   作:ガチャM

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「プルフォウ・ストーリー2 ~月に降り立つ少女たち~」

舞台はUC0088年のアクシズ。ネオ・ジオン親衛隊のプルフォウを中心としたプルシリーズたちのストーリーです。

文、挿絵:ガチャM
設定協力:かにばさみ

※Pixivにも投稿しています。


第16回「新しい絆」

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 エイトは仕事で再びサイド3に戻らなければいけなかった。だから、アクシズにいるうちにマネージャーからの頼まれごとを解決してしまおうと考えたのだ。

 その頼みとは、CMに出演してもらう子役をスカウトすること。シリーズとして何本も収録するハンバーガーショップ『マクダニエル』のコマーシャルに、自分の妹役として出演してもらおうというのである。

 事務所でも探しているが、ディレクターが思い描いている子役をなかなか見つけることができないでいた。でも、ついに適任者を見つけてしまったのだ。

 

「なぜ気付かなかったのかしら。身内を過小評価してしまうというのは本当のようだわね」

 

 そう、自分の妹に出演してもらえれば良いのだ。なんと簡単な!

 容姿が似ているのは当たり前だし、出演料も安くすむはずだ。とくにイレブンは、ツインテールの髪型や背の低さが、妹というイメージにぴったりではないだろうか。少し無愛想な表情は鮮やか目のメイクでごまかしてしまえばいいし、軍務が忙しかったら撮影をアクシズですればよいのだ。問題は厳しいプルツーお姉様が許可を出すかということだが、とりあえずそれは置いておいて、基地でイレブンを探すことにした。

 プログラマーでもあるイレブンがいそうな場所といえばコンピューター・ルームだ。だが、そこにはおらず、他にも待機室や格納庫など考えうる部屋をすべて周ったが見つけられなかった。

 

「ああっ、もう! 時間がないのに!」

 

 サイド3へのフライト予定時刻は二時間後に迫っている。自分のシャトル『トリンキュロー』で向かうにしても、勝手にフライトプランを変更することはできないのだ。いや、有名人としての特権で、なんとか交渉してみるか? あるいは叱られそうだが、プルツーお姉さまに頼んでみても……。

 少し焦り始めたところで、偶然にもイレブンがバスルームに入っていく様子が見えた。これは、まさに好機だ! 裸で接すれば精神的にオープンになり、事がスムーズに運びやすいからだ。

 自分がレギュラー出演しているドラマ『アステロイド・ガールズ!』には毎回入浴シーンがあって、お風呂で仲間と親交を深めたりする。話題になるし、視聴率もアイドルとしての人気も跳ね上がるから、プロデューサーや脚本家が無理矢理に盛り込むのだ。しかし、実際には水着を着て入ってはいてもバストの大きさがわかってしまう危険性もあるから、アイドルにとっては諸刃の剣でもある。

 そんなことを考えながら更衣室で軍服と下着を脱いでしまうと、タオルを巻いてバスルームへと向かった。入っているのは、どうやらイレブンひとりだけのようで、これも都合が良かった。

 

「イレブン、早いお風呂ね」

「エイトお姉さま?」

 

 イレブンはツインテールをお団子にまとめて、目を閉じて湯船に浸かっていた。

 

「あなたと一緒にお風呂に入るのは久しぶりね」

「はい」

 

【挿絵表示】

 

 バスタブの近くに腰を下ろし、ボディタオルと石鹸を手に取りながらちらりと横目で妹の身体をみると、まだまだ幼いことに気づいた。肌は赤ん坊のようにもっちりと柔らかくて、平坦な胸は、ぷっくりと僅かな膨らみがあるだけだ。フォウお姉様やセブンお姉様はかなりスタイルが良いのだが、比較するとその差は圧倒的だ。姉妹の遺伝子は同じはずだが、こうも違いがでるのは……。

 

「お姉様、あまりじろじろ見ないでください。……胸を」

「あら、ごめんなさい。そんなつもりはないのよ!」

 

 仕事柄、女子のスタイルは気になるので観察してしまうのだが、つい凝視しすぎてしまった。

 

「イレブン、入ってきたとき気づいたんだけど、あなた少し疲れているんじゃない?」

 

 タオルで身体を磨きながら、軽く会話を始めてみる。

 要件を切り出すタイミングが重要なのだ。

 

「いえ大丈夫です。汗を流そうと考えただけですので。エイトお姉さまのほうこそ、芸能活動でお疲れではないのですか」

「まあね。でも、慣れたものよ。時間の使い方かしらね?」

「確かにスケジューリングは重要です」

 

 イレブンは頷きながら言った。

 

「タスクと時間を細分化して、工数を精密に管理することができれば、スケジュールを厳守しながら多数の仕事をこなすことが可能となります。人員不足のアクシズでは、文字通り必須のマネージメントスキルです」

「そう、その通り! タスクと時間が重要なのよね」

 

 妹の理屈っぽい物言いにうんざりしつつも、少し大げさなくらいに同意してみせる。

 

「ねえイレブン。あなたもタスク管理で異なる仕事をマルチで行ってみない?」

「どういうことですか? 私も、あまり時間に余裕はないのですが……」

「私はあなたの知性と冷静さを評価しているの。親衛隊のブレーン、秘密兵器ともいうべき貴重な才能でしょうね」

「あ、ありがとうございます」

 

 イレブンは、突然に褒められて困惑している様子だ。

 

「あなたの優れた能力を活かして、CMに出演してみる気はないかしら?」

「えっ?! CM? それはコマーシャルのことですか?」

「そうよ、コマーシャル! 華やかな芸能界へようこそ!」

 

 にっこりと笑いながら、両手を広げてイレブンをハグする真似をする。

 普段冷静なイレブンの、少し半眼気味な目が見開かれる。さすがに意外だったようだが、これは良い反応だ。勧誘が成功する手応えを感じた。

 

「CMで注目されれば、一気にスターになるのも夢ではないわよ!」

「……分かりました。そういうことですか」

「え、なにが?」

「だから、さっきからひとの身体をじろじろと……。水着や下着だなんて」

 

 イレブンの頬が赤く染まっていく。

 

「ちょっと、何か勘違いしてない?」

「グラマラスなモデルをお望みなら、フォウお姉さまやセブンお姉さまが適任ですから。どうせ私は背が低いです」

「あ、そうじゃないの! 妹役にぴったりだなって考えただけよ」

 

 しまった。まさか思考を読まれたか。

 

「無理です、すみません。大勢の人の前で水着になるなんて、胸を見られるなんて無理です!」

「ちょっと待って! 水着や下着で演技するわけないでしょう! そんなこと一言も言ってないじゃないの!」

 

 だがイレブンはバシャッと湯船から飛び出すと、小さなお尻を見せながら飛び出して行ってしまった。

 

「イレブン!」

 

 呼び止めも虚しく、ひとりバスルームに取り残されてしまう。どうやら妹には完全に誤解されてしまったようだ。

 

「そんな……」

 

 期待外れの結果に肩をがっくりと落とした。完璧な計画が脆くも崩壊してしまったのだ。イレブンは頭が良くて冷静なので、CM撮影の現場を分析して、すぐに適応できたはずなのに。

 

「なんてこと。ティモに何て説明すればいいのかしら」

 

 もう人を探している時間はない。マネージャーに大きなことを言ってしまったので、どう言い訳したものか頭を抱えた。仮にテンやトゥエルブを誘ったとしても、引っ込み思案のテンに撮影をこなせるはずもなく、軍務第一で堅物のトゥエルブに断られるのは目に見えている。だとすれば残るのは……。

 

「あ、エイトお姉ちゃんだ」

 

 ガラッとバスルームの扉が開いて、イレブンと入れ替わるようにナインが入ってきた。

タオルも巻いていない素っ裸で、両手いっぱいにオモチャを抱えている。

 

【挿絵表示】

 

「イレブン出ていっちゃったね。一緒に遊びたかったのに、残念だなあ~っ」

 

 ナインは心の底から残念そうに顔をクシャクシャにした。

 

「せっかく新しいお友達が増えたのになあ~っ」

 

 残念がる彼女の両手から、抱えきれないオモチャがガラガラと音を立てて床に転がり落ちた。

 

「あなた、いつもそんなにオモチャをバスルームに持ち込んでるの?」

「うん、そうだよ。こんど新しくハロちゃんが仲間になったの。シャボン玉を出すのが得意なんだよ」

「あっ、そう。ここは託児所じゃないのよ」

 

 たちまち幼児番組のセットみたいになってしまったバスルームに呆れつつ、このナインにCM出演させてみたらどうだろうかと想像してみる。無理だ。ナインはまったく子どもで、顔と頭の中は幼児そのもの。胸も真っ平らだから、妹役にしては歳が離れ過ぎて見えるだろう。この幼稚なナインに撮影をこなせるはずがない。親衛隊でもまるで役に立たないお荷物なのだ。

 思わずため息をつく。だが他にあてもないし、ただ座っているだけなら大丈夫かもしれない。あるいは勝手に遊ばせておいて、編集でそれらしく見せるとか……。いないよりはましか。

 

「ナイン、あなたいつも暇よね? 少し私の仕事を手伝ってくれないかしら」

「暇じゃないよ。今ね、はにゃーんをプログラムしてるところなの」

「なにそれ? そんなの、どこでも出来るじゃないの! ちょっとだけ収録に付き合って欲しいのよ。ただ座ってるだけでいいんだから」

「座ってるだけでいいの?」

「素人に演技を求めるわけないでしょう。妹役で座ってればいいの。オーケー?」

「わかった、いいよ」

「じゃ、早く支度して! エレカを呼ぶから。サイド3にいくわよ。お姉様たちには私から話しておくわね」

「さいどすりー?」

「スペースコロニーよ。ジオン共和国」

「わーい、旅行だね!」

「そうね。あなたにとっては、滅多にない機会でしょう」

「うん、すごく楽しみ」

「思い切り楽しみなさい」

 

 まあ、これで良かったのかもしれない。

 バスルームで無邪気にオモチャで遊ぶ妹に不安になりつつも、マネージャーのティモにぴったりの子役が見つかったと報告しなければと思った。

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